Fender Flagship Tokyo Special Event with Takashi Kato

東京スカパラダイスオーケストラのギター・加藤隆志が、去る2月26日に〈Fender Flagship Tokyo Special Event with Takashi Kato〉を開催。この日、ローンチされたKyle McMillin Masterbuilt Takashi Kato 1965 Stratocaster Ultimate Relic “RYUBOKU”の公開トークイベントの模様をレポートする。

夢の中の夢というか、夢の頂点ぐらいのこと。過去にタイムスリップして自分に言ってあげたいですね

Fender Flagship Tokyoの3階にあるフェンダーの最上級ギターを生み出すFender Custom Shop専用のフロアに、抽選に当選した幸運な参加者が主役の登場を静かに待っている。このフロアにはマスタービルトやチームビルトによる最高峰のモデルが展示されており、参加者たちはそのお宝ギターに目を輝かしている。

MCのコールで加藤が登場すると大きな拍手が起こる。参加者への感謝の言葉を述べたあと、早速このイベントの山場を迎える。Kyle McMillin Masterbuilt Takashi Kato 1965 Stratocaster Ultimate Relic “RYUBOKU”(以下:RYUBOKU)をこのフロアにあるショーケースに陳列するセレモニータイムだ。まずは長いテーブルに置かれたギターケースから“RYUBOKU”を加藤が取り出すと、参加者から歓声が沸き上がる。その“RYUBOKU”がショーケースの中に収められると大きな拍手が起き、加藤は照れたような表情を見せた。


「ギタリストとしては夢の頂点ですよね。このフロアに展示してあるギターはカスタムショップやマスタービルダーの方の気持ちが吹き込まれたギターたちで、その中に“RYUBOKU”が加われて嬉しいのと同時に、その名に恥じないようにこれからも活動していきたいと緊張感で背筋が伸びる思いです。そんな素敵な時を皆さんと迎えられて本当に嬉しいです」

念のために説明をすると、加藤のトレードマークになっているのが65年製のStratocaster。加藤が長年愛用してきた証とも言えるレリックが印象的で、そのルックスから“流木”という愛称で呼ばれている。この日のトークステージにも、オリジナルの“流木”と今回の“RYUBOKU”のプロトタイプが並んで置かれているが、パッと見はどちらがオリジナルか区別がつかない。それくらい見事に仕上がっている。

セレモニーに続いてトークタイム。スカパラは今年デビュー35周年で、11月16日(土)に甲子園球場でのワンマンが決まっている。加藤は甲子園への意気込みを「集大成を見せたいです。実は単独としては初めてのスタジアムライヴなんです。甲子園球場は天井が抜けているし、建物も昭和の感じが残っていてスカパラの音楽がすごくぴったりだなって。そして、絶対に晴れます!」と力強くコメントしてくれた。


加藤がフェンダーを弾くようになったのは、鳥取から上京して少し経った95年くらい。この時に購入したのはストラトではなく61年製のTelecasterだった。

「そのままテレキャスでいくかと思いきやStratocasterの音に魅了されたんです。その時、ようやくStratocasterの音がギターの中の最高峰かもしれないと思い始めたんです。それで購入したのが“流木”です。その時の“流木”はまだキレイな状態で、まさに去年に発売されたMade in JapanのTakashi Kato Stratocasterのような状態の65年製でした。スカパラで弾き始めたのがちょうどその頃で、99年のフジロックに中村達也さんと出演した時の映像が残っているんですけど、その時はまだピカピカでしたね」


“流木”との出会いから約25年。マスタービルダーのカイル・マクミリンによって作られたのが今回の“RYUBOKU”だ。そのこだわりについて聞かれると、凛とした表情で語ってくれた。

「まずはレリックです。最近はヘヴィレリックが多いですけど、“RYUBOKU”はヘヴィの上のアルティメイトレリックですから究極のレリックです。あとは下地の白。Olympic Whiteというカラーがベースで、その上にLake Placid Blueを乗せたんじゃないかっていう話もあるくらいで、2トーンなんですけど自然なグラデーションです。それを再現するのが大変だったと思うのですが、マスタービルダーのカイル・マクミリンさんが職人技で一本一本を見事に再現しています。僕のローディーでも見分けがつかないほどです(笑)。カイルさんとは直接お会いしていませんが、インスタにコメントをいただいて。“20数年で自然についたキズ自体が芸術品でありアートです”とおっしゃってくださったのが心に響きました」

そして加藤は“RYUBOKU”を弾きながらトークを展開。このレリックがどのように出来てきたのか。また、オリジナルのメイプルネックを徹底的にプロファイリングしたナローネックや、ラウンドラミネートされた7.25インチラジアスのローズウッド指板についても、スカパラのお馴染みの曲のフレーズを弾きながら説明を加えてくれた。音まわりでは「ピックアップは65年製のものをベースに、“最近はこういう音が出したい”とイメージしたものに少しカスタムしています」と言及した。そして、今回の“RYUBOKU”とオリジナルのヴィンテージとの違いについて熱く語ってくれた。

「カスタムショップは、今はもうヴィンテージのコピーモデルではないという認識です。カスタムショップはカスタムショップとして走り始めていて、ヴィンテージとカスタムショップは世界が全然違うんです。カスタムショップは長年蓄積されたデータの中で最高峰の素材を用いて、選ばれた職人さんだけが作るものなんですね。ヴィンテージギターも発売当初は量産されていたものだから、そういう意味でもまったく違うものとして捉えています。僕の中で“こういう音を出したいな”という感覚はヴィンテージで培ってきたけど、“その音にいかに早くアクセスできるか”が新しいギターを持つ上では大事だと思っています。そのポテンシャルが一番高いのがカスタムショップだし、その中でも“RYUBOKU”はめちゃくちゃ精度が高い。言うなれば“RYUBOKU”はヴィンテージの音がする、スペックがとてつもなく高いギターということです。あとは調整も大事ですね。細かい調整を毎日のように行うので、自分のイメージにどんどん近づけていく中での振り幅というかポテンシャルが高いギターを持つことが大事なのかなと。この“RYUBOKU”が20数年後にどのようになっているのかとても楽しみです」

そして、いよいよ“RYUBOKU”による演奏へ。最新曲「The Last Ninja」のギター抜きのトラックを流しながら“RYUBOKU”で演奏すると、間近で観ていた参加者はさすがに興奮を隠せない様子だった。


今回のイベントの感想を聞かれた加藤は「皆さんに来てもらえて本当に嬉しいです。長年の夢だったのと、夢の中の夢というか、夢の頂点ぐらいのことなので、皆さんに祝っていただいて本当に最高でした。過去にタイムスリップして言ってあげたいですね。スカパラに入りたての頃、MCが本当に下手くそで、辞めて田舎に帰ろうかなと思った自分に。帰らなくてよかったです。スカパラは35周年が始まったばかりですが、今年一年も頑張りますし、さらに20年この“RYUBOKU”と一緒にやっていくので皆さんも一緒に行きましょう。よろしくお願いします」と満面の笑顔で語ると、会場からは大きな拍手が巻き起こった。

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