Special Interview | ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)-前編-

Squierブランドより、85年からわずかな期間だけ生産されていたユニークなモデル「Katana」のベースを、カスタマイズしながら多くのステージで愛用してきたOKAMOTO’Sのベーシスト ハマ・オカモト。このたび、その特徴的なカスタマイズを完全再現したシグネイチャーモデル「Hama Okamoto Fender® Katana Bass」が、Fenderブランドより期間限定生産される。奇抜なルックスとは裏腹に、本格的なサウンドでハマを魅了してきた「Katana」。その魅力について本人にたっぷりと語ってもらった。

海外に輸出していたモデルが巡り巡って逆輸入される。そのストーリーに感慨深い気持ちでいっぱいです

─ 今回、シグネイチャーモデル「Hama Okamoto Fender® Katana Bass」のリリースが決まったわけですが、そもそもオリジナルのKatanaとはどのように出会ったのでしょうか。

ハマ・オカモト(以下:ハマ) 僕は中学2年の時に、亀田誠治さんのプレイを東京事変の映像で見て、そこでベースのカッコ良さに気づいたんです。“この人の使っているベースは何だろう?”と思って、地元の楽器屋さんでフェンダーの図鑑みたいな本を買って。読んだらそこには楽器の“仕様”が細かく書いてあるんです。そこで亀田さんのベースが66年製モデルだということも判明するわけですが、そうやって調べていくうちに、どんどんフェンダーのことが好きになっていって。いろいろな資料本を手に入れていく中で、自分が生まれた頃の年代のベースに興味を持つようになったんです。80〜90年代のモデルって、60〜70年代に比べると少ないんですよ。その割には、そこに紹介されているモデルのインパクトがものすごく大きくて(笑)、その中でも異彩を放っていたのがKatana Bass。そういう意味では、中高生くらいの頃からその存在は知っていたんです。

─ そうだったんですね。

ハマ 次にKatana Bassと出会ったのはebay。僕はレコードと楽器に関しては、海外通販に手を出したら終わりだと思って(笑)、しばらくその手のサイトは見ないようにしていたんです。でも、ある時にふとKatana Bassのことを思い出して、ebayで検索をかけたら案の定そこにあったんですよね。

─ 二度目の出会いが(笑)。

ハマ そう。どうしようかすごく迷ったんですけど、調べてみるとKatana Bassって日本で作られたものを、海外輸出用として85年から1年間しか生産されていないらしくて。きっとこの先、国内で探してもそうそう見つからないだろうなと思ったらいてもたってもいられなくなってしまった。それで、初めてebayで購入することにしたんです。それが5〜6年前のことですね。

─ 手に入れたKatana Bassを、ご自身でもかなりカスタマイズを施したそうですね。

ハマ そうなんですよ。まず、オリジナルはピックガードが付いていないんです。それだとちょっと弾きづらいというのもあって、フェンダーのスタッフと一緒にいろいろとアイディアを出し合った結果、現在付けている丸っこいデザインのオリジナルパーツをイチから作っていただきました。それを付けたことでますますKatana Bassに愛着が湧いてきて。出音も普通にいいというか、僕はPrecision Bassをメインで使っているんですけど、ピックアップはプレシジョンと同じだし、ネックはやや短めだけど弾いていて何の違和感もなかったんですよね。これならコレクション用ではなく、ライヴなどの現場でもまったく問題なく使えると思ったので、それからはメインベースのひとつとして演奏するようになりました。

─ 弾き心地はいかがですか?

ハマ こんなヘンテコな形をしていますけど(笑)、すごく弾きやすいんですよ。片方だけ伸びているVのところに肘も乗せられるし、ちゃんと右手を安定させて弾くことができる。普通のジャズベやプレベを弾くのと同じフォームでも、基本的には問題なくて。見た目の印象よりも実は大きくないんですよね。あと、ネックがすごく握りやすいんですよ。プレベって年代によってはすごく太かったりするので、日本人には運指に苦労することもあるんです。僕は自分のシグネイチャーベースにもジャズベのネックをつけるくらいなので、やっぱり握った時の感覚が気になるところなんですけど、Katana Bassはそういう意味ではとても弾きやすい。小柄な人にオススメのベースとして長らく君臨していたMustang Bassも、その座を明け渡す時が来たんじゃないかなと思っています(笑)。

─ 今回、シグネイチャーベースを作る上で特にこだわったところは?

ハマ やっぱり、いかにこの特徴的なフォルムを再現するかが肝でした。最初は90パーセント無理だろうなと思っていたんですよ(笑)。ボディはもちろん、ヘッドの形もイレギュラーだし、デカールも作らなければならないし…。価格もべらぼうに高価なのは嫌だなと思っていたから、もう難点だらけだったんです。ほんと、ダメ元でいろいろとリクエストしたのですが、それをここまで見事に再現してもらって驚いています。オリジナルのKatana Bassと並べても、ほとんど違いがわからないですよね。ヘッドの裏に僕のサインが入っているのはちょっと照れくさいですけど(笑)。あと、オリジナルはストラップを留めるピンの位置が非常に使い勝手が悪く、ヘッド落ちするので自分で打ち直して使っているんですけど、そこも今回は再現してもらっています。

─ カラーリングに関しては?

ハマ 今回、オリジナルにもあった黒、白に加えてシェルピンクを新たに作りました。ピックガードはそれぞれ白、べっ甲、黒のものを取り付けています。シェルピンクはオリジナルのKatana Bassにはないカラーなのですが、ちょっと前にフリーがシェルピンクのシグネイチャーJazz Bass(FLEA Jazz Bass)を出していましたし、個人的に“シェルピンク、いいな”と思っていたんです。

─ 実際にKatana Bassのシグネイチャーモデルが完成して、今どんな心境ですか?

ハマ ほんの短い期間に日本で製造され、海外に輸出していたモデルがこうやって巡り巡って逆輸入されるという、そのストーリーに感慨深い気持ちでいっぱいですね。フェンダーという、長い歴史を持つメーカーじゃないと起こり得ないことだと思いますし。きっと、僕じゃなければやらなかったことだろうなという自負もあります。最初、こういう奇抜な形をしたベースを、僕みたいな風貌の男が真顔で使い始めたらみんなギョッとするんじゃないかと思ったんですよ。“何で?”って(笑)。やっぱり、楽器ってその形から想像する音楽ジャンルがあるじゃないですか。特にKatana Bassみたいなフォルムだと、そのジャンルに縛られがちだと思うんですけど、それをひっくり返したいという気持ちもあったんですよね。こういう奇抜なビザール楽器を、メインストリームな音楽シーンで平然と使うのって、ものすごく痛快だしカッコいいと思いませんか?

後編に続く


Hama Okamoto Fender® Katana Bass : Squierブランドより1985年からわずかな期間だけ生産されていた貴重なモデル「KATANA」を大胆なカスタマイズを施しながら多くのステージで使用してきたハマ•オカモト。この度その特徴的なカスタマイズを完全に再現したモデルが、ハマ•オカモトシグネイチャー第2弾としてフェンダー75周年の今年、2021年期間限定生産で復活


ハマ・オカモト(OKAMOTOʼS)

中学校からの同級生で結成された4人組ロックバンドOKAMOTO’Sのベーシスト。2010年、日本人男子として最年少でアメリカの音楽フェス〈SxSW2010〉に出演。アメリカ7都市を廻るツアーや豪州・アジアツアーなど、海外でも活躍。2021年9月29日には9枚目のオリジナルアルバム『KNO WHERE』をリリース。フェンダーミュージカルインスツルメンツコーポレーションの日本人ベーシスト初となるエンドーサーでもある。
http://www.okamotos.net

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