Interview | J -前編-
僕らが信じている音楽を絶対になくしちゃダメだし、一緒に守り続けていこうと伝えたいですね
LUNA SEAのJがフェンダーとエンドースメント契約を交わし、グレッグ・フェスラーとともに自らのカスタムベース57 Precision Bass® Relic Reverse Head Black Goldを制作してから1年。同モデルのシグネイチャーモデルが8月12日、Jの50歳の誕生日に発売される。ボディやネックの材質、リバースヘッドなど、あらゆるパーツにこだわり抜いたオリジナルベースを忠実に再現した本モデルは、Jの哲学が注ぎ込まれていると言っても過言ではないだろう。インタビュー前編では、コロナ禍で彼がどのようなことを考えていたのか聞いてみた。
― 緊急事態宣言が全国的に解除され、アフターコロナに向けてさまざまな活動が次の段階に入ろうとしています。とは言え、まだまだ予断の許さない状況が続いていますが、Jさんはどんな日々を過ごしていましたか？
J LUNA SEAとしては、結成30周年記念ツアー〈LUNA SEA 30th Anniversary Tour 2020 -CROSS THE UNIVERSE-〉がちょうど始まった頃に世の中がこういう状態になってしまい、4月以降のツアーはすべて延期という形を取らせてもらいました。最初は得体の知れない脅威にどう対処すべきか、メンバーもスタッフも含めて大変な日々を過ごしていましたね。 僕自身はこの期間、いつもだったら忙しくて向き合えなかったものにじっくり取り組んでいました。聴けなかった音楽をこの機会にじっくり聴いてみたり、自分のルーツに立ち返るような音楽に改めて触れてみたり、あるいは作りかけの楽曲を再構築してみたり。きっと皆さんも同じだと思うんですけど、自分と向き合う時間が増えたと思います。
― コロナの影響による、数少ないポジティヴな側面のひとつではありましたよね。
J そう思います。自分にとって大切なものが、より浮き彫りになったというか。
― 4月18日には、西川貴教さんとのコラボによる『仮面ライダーゼロワン』の映画の主題歌「Another Daybreak」の弾き語り動画をSNSにアップされていましたね。
J コロナ禍の中、西川くんから“音楽を通じて少しでもみんなを元気付けたい”と連絡があって。何かできないか話し合っていく中で、“じゃあ俺ギター弾くよ”と。そういう意味では、プライベートな話の中から自然発生的に生まれたんです。しかも、あの曲自体がすごくメッセージのある素晴らしい歌詞なので、今この状況にもすごくマッチしているなと。反響もとても大きく、みんなに思いが届いて良かったと思っています。
― 4月28日に配信されたLUNA SEAの新曲「Make a vow」も、遠隔で音を重ねる形で急遽制作されたとか。PVもリモート仕立てで、それぞれのプライベートな空間も垣間見え、普段よりも皆さんを身近に感じることができました。
J 確かにそうかもしれないですね。レコーディングも、すべてリモートで行ったのは僕らにとっても初の試みで。スタジオに入って、ドラムから順番にそれぞれが録っていく手法は以前からやっていたんですけどね。今回は、メンバーがそれぞれ別の空間でレコーディングを行って、そのデータをやり取りしながら完成させていきました。新しいスタイルでの制作は、とても新鮮で刺激的でしたね。
― またJさんはライヴハウス『Bigtwin Diner支援プロジェクト』などに応援メッセージなど送っていました。音楽は“不要不急”とされ、クラスターが発生した場所として槍玉に上げられてしまったのがライヴハウスだったわけですが、Jさんとしては並々ならぬ思いがあったのではないでしょうか。
J ライヴハウスには、そこへ行ってみなければ感じることのできない世界やクリエイティブな情熱、夢が間違いなく存在するわけですよね。世界中で聞かれている名曲も、そこから生まれてきたものが沢山ある。そのことを僕らミュージシャンは誰よりもよくわかっているわけですから、率先してその大切さを世の中に伝え、守らなければならないんじゃないかと僕は思っています。もちろん、他の分野でもそのような場所はたくさん存在しています。その意味で、音楽をやる人間として、まず声を上げなければならないのは“音楽のフィールド”に対してだと思ったんです。“ここを守れなくて、一体何を守れるのか？”という思いから、今回メッセージを送らせてもらいました。
― ライヴハウス再開に向けて、東京都でも新しいガイドラインが発表されました。
J これからライヴハウスがどうなっていくのか。元の形に戻ることができるのか、それとも新しいカタチに生まれ変わっていくのか。それぞれのケースごとに考えなければならないと思います。が、例えどうなったとしても、音楽というものの本質は変わらない。その音楽を守るために、自分ができること、すべきことは何なのか今後も考えていきたいと思います。
― 5月31日には、医療従事者・フロントラインワーカーズを支援するオンラインフェス『MUSIC AID FEST.〜FOR POST PANDEMIC〜』がLUNA SEAの呼びかけによって開催されました。GLIM SPANKY、一青窈、清春、倖田來未、TAKURO (GLAY)など、本当に世代も音楽ジャンルも多種多様なラインナップで、LUNA SEAの影響力を改めて思い知らされました。
J ありがたいことですよね。本当にたくさんのアーティストに参加してもらえて、改めて音楽の強さ、素晴らしさを感じることができました。
― 開催日までの期間を考えると、企画から準備、そして実現まで本当に大変だったのではないかと思うのですが。
J 実際、ゴールデンウィークが明けた頃から皆さんに声をかけさせてもらったんですよ。僕らの想いに共鳴してくれた皆さんが、たったこれだけの間に動いてくださったわけです。同時に出演者のスタッフの皆さん、番組制作の方々も含めて、本当に感謝しかないです。バンドを代表してこの場でお礼を言いたいですね。本当に僕らだけの力では成り立たなかっただろうし、逆に僕ら自身が力をもらいました。
― 医療従事者・フロントラインワーカーズの中にはLUNA SEAのファンも多いと思いますし、そういう方たちにはどんなメッセージを送りたいですか？
J コロナ禍というギリギリの状況の中、自分自身も感染するかも知れない恐れの中で働いてくださっている方々、多くの人が自宅待機している中、それでも外へ出て働いてくださった方々がたくさんいるわけじゃないですか。そのすべての人たちに敬意と感謝の思いしかないです。そして自宅で配信を観てくれていたみんなも、それぞれが向き合っている場所があって、そこで必死にこの事態と戦っている。すでに生活の一部になっている音楽やライヴ。僕らはその場所で知り合えた、いわば仲間ですよね。そんな仲間たちには“またいつの日か、元の場所で会おうぜ”と言いたい。そこがどういう形になっているのか今はまだわからないけど、僕らが信じている音楽を絶対になくしちゃダメだし、一緒に守り続けていこうと伝えたいですね。
› 後編に続く
J SIGNATURE PRECISION BASS® HEAVY RELIC® BLACK GOLD, MASTERBUILT BY GREG FESSLER
価格：1,161,000円（税抜）
付属品：デラックスハードケース、ストラップ、正規製品認定書
発売日：2020年8月12日（水）
※ 販売方法の詳細は、全国のFENDER CUSTOM SHOP取扱店までお問い合わせください。
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