Interview | MIYAVI -後編-

MIYAVI

独特のスラップ奏法や高度なテクニックによって世界中から注目されるギタリスト、MIYAVI。2016年に入手して以降、何度もカスタマイズを施しながら理想のサウンドを追求してきたオリジナルのFENDER CUSTOM SHOP製モデルを、MIYAVI本人の監修のもと忠実に再現したシグネイチャーモデル「MIYAVI Telecaster」が発売される。それを記念し、2回にわたってお届けしているインタビュー。後編では、コロナ禍のステイホーム期間にMIYAVIが考えていたこと、アフターコロナ、withコロナでの音楽の届け方、ライヴのあり方など“MIYAVI節”全開でたっぷり語ってもらった。

その時代の中で何を歌っていくのか、僕はギターを通して訴えていきたい
 

― 新型コロナウイルス感染拡大による自粛期間中、MIYAVIさんはどんな日々を過ごしていましたか?

MIYAVI  海外ツアーも映画出演も延期、キャンセルになってしまい、コロナ禍では難民支援をしたくても海外へ行けないので、娘たちと一緒にギターを弾いていました。今、GUCCIさんとお仕事をさせてもらっていますが(新作コレクション「Gucci Off The Grid」のグローバルキャンペーンのヴィジュアルを担当)、コロナがなければもっといろいろな展開をしたいと話もしていました。特に東京オリンピックパラリンピックでは難民選手団を呼ぶ計画もあったのですが、それも白紙になってしまうなど本当に大変な年でした。日本なんて特に“今年はオリンピックイヤーだ!”って感じだったじゃないですか。僕自身も年明けは普通に南米ツアーしていましたからね。1月はコロンビアの難民キャンプへ行って、2月はロスにも北海道にも行ったのに、もうずっと前の出来事のように感じます。

 すべての人類にとって、自分や自分の仕事などを見つめ直さざるを得ない時間だったんじゃないかな。自分の生活習慣もそうですし、これまでの経済活動もそう。音楽家にとっては“音楽のあり方”ですよね。どうやって音楽を届けていくのか、そもそもなぜ音楽をやっているのか。ただ、個人的にこのパンデミックは“必然”だったのかなと思うところもあります。

― というのは?

MIYAVI  これまでずっと目の前のことにばかり追われてきて、消費のサイクルに組み込まれて自分たちは生きてきたけれど、果たしてそれでいいのか、それって僕たちが消費されているということなんじゃないの?って。ビジネスとしては正しいのかも知れないけれども、自分たちが暮らしているこの地球にどう寄り添って生きていくのか、今回そこが問題点としてはっきりと浮き彫りになった気がします。“このままじゃダメだよね?”ということを再確認できた1年だっだし、そういう意味で必然だったのかもしれない。

― 難民支援の活動もしているMIYAVIさんは、コロナ以前から音楽、文化、エンターテインメントの必要性と常に向き合ってこられたのではないかと思います。

MIYAVI  そうですね。目の前の人が“生きるか死ぬか”の状況の時に、ギターを抱えて歌っていられないじゃないですか。僕にギターを持つ意味などあるのだろうか?ということを、ずっと自分自身に問いかけながら生きてきました。それでもなお、人が人であるということ、生かされるのではなく尊厳を持って生きていく上で、エンターテインメント、特に音楽というもので人にメッセージを伝えていくことは大きな可能性を秘めていると思うんです。

― その可能性というのは?

MIYAVI  例えば、スピーチを聞いてくれない人に対しても、音楽を使えば聞いてくれるかもしれない。しかも音楽が素晴らしかったり、カッコ良ければカッコ良いほど、そのメッセージが届く可能性も増えていきます。それについては常々感じてきましたし、特にギターという楽器は言葉さえも超えてメッセージを届けられるものだから。

 今、ちょうどアメリカ大統領選が繰り広げられていますが(インタビューは11月4日に行われた)、世界はより、対立と分断が加速しているように感じます。すごく危険な時代でもあるし、その時代の中で僕らは何を歌っていくのか。やっぱり僕はギターを通して叫んでいきたい。なぜなら、僕はギターに命を救われたからなんですよね。もともとサッカーをやっていて、怪我が原因でサッカーを挫折して。夢を持てなかった時期は本当につらかった。未来が見えない。

― 生きていく上で夢は必要だ、と。

MIYAVI  人によって夢は料理人になることだったり、インタビュアーになることだったり、ギターのクラフトマンになることだったり、それぞれ違うと思うのですけど、やっぱり人生は何かを追いかけること…挑戦して失敗して、また挑戦して達成し、そうやって挑戦し続けることに意味があると思うし、夢を持つことは人に与えられた特権だと思うんです。

 僕はサッカーの夢は諦めましたけど、“ギターで挑戦していく”という夢を持つことができた。僕にできることは、このギターを使って新しい可能性、見たことのない聴いたことのないものを作ることだと思っている。なので、この先コロナを経て、自分自身がどう変わっていくのか楽しみでもあるんですよね。

― 今後のライヴのあり方について、どのようなヴィジョンをお持ちですか?

MIYAVI  ライヴもリアルだけでなく、ヴァーチャルなものもどんどん増えています。形にこだわらず僕はライヴでの衝動、衝撃をファンの皆と共有していきたい。“Wow”という言葉こそが未来を作ると僕は信じているんです。その“Wow”を拡散するために僕は音楽を作るし、パフォーマンスをするし、それを通じてみんなと“Wow”を共有したい。今回、開発した僕のシグネイチャーモデルもそう。手に取って“Wow”と思ってもらいたいし、自分なりの“Wow”を生み出してもらいたいですね。

― では最後に、一言メッセージをお願いします。

MIYAVI  最初に話したように、ギターを弾く行為って自分と向き合うことにも近い気がするんです。自分で課題を作って練習して、その課題を達成して次に進んでいく。そうすることで違う景色が見えてくる。このギターで是非、誰も見たことのない、新しい景色を描き出してほしいと思っています。僕も手にとってくれた皆がどんな音を奏でてくれるのか、楽しみですね。


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MIYAVI

MIYAVI TELECASTER®
「サムライギタリスト」の異名で世界中を股にかけ活躍するギタリスト、MIYAVIのシグネイチャーモデル。

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PROFILE


MIYAVI
エレクトリックギターをピックを使わずにすべて指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国300公演以上のライヴとともに、6度のワールドツアーを成功させている。2015年にグラミー受賞チーム“ドリュー&シャノン”をプロデューサーに迎え、全編ナッシュビルとL.A.でレコーディングされたアルバム『The Others』をリリース。また、アンジェリーナ・ジョリー監督映画『Unbroken』では俳優としてハリウッドデビューも果たした他、映画『Mission: Impossible -Rogue Nation』日本版テーマソングのアレンジ制作、SMAPへの楽曲提供をはじめさまざまなアーティスト作品へ参加するなど、国内外のアーティスト/クリエイターから高い評価を受けている。常に世界に向けて挑戦を続ける“サムライギタリスト”であり、ワールドワイドに活躍する今後もっとも期待のおける日本人アーティストの一人である。
› Website:http://myv382tokyo.com

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