Players’ After School | 綾小路 翔(氣志團)-後編-
この秋、文化祭を控える高校生バンドを応援するため、綾小路 翔(氣志團)、ハマ•オカモト(OKAMOTO’S)、Charの3人のアーティストがサプライズで高校の軽音楽部を訪れ、特別講義を行うというスペシャルな企画「PLAYERS’ AFTER SCHOOL」が行われた。1人目は、氣志團の綾小路 翔。後編ではインタビューをお届けする。
― 正則高等学校での「PLAYERS’AFTER SCHOOL」。課外授業、お疲れ様でした。まずは今日の課外授業の感想を聞かせてください。
綾小路 翔(以下:綾小路) いまどきの高校生の方たちはみな真面目ですね。みなさん真っ直ぐで、大人しくて。僕みたいな不思議な者が来たのでヘンな緊張感を与えてしまったのかなって思ってますけど、少しでも楽しんでいただけたのなら嬉しいし、こういう人間と触れ合ったことが皆さんの創作意欲につながれば意味があったなあと思います。
― 翔さんも学生時代にバンドを組んだとおっしゃっていましたが、その頃の自分と比べてどうですか?
綾小路 比較対象として僕はあまりにも違うところにいすぎたので(笑)。でも今日、みなさんと接して感じたことは、もしかしたら僕もこういう学校に行きたかったなって。こうやって一緒に音楽を楽しめる友達がたくさんいるのはいいなと。一緒に技術を磨き上げられる仲間たちがいるのはとても羨ましいなと思いました。質問の答えですが、今も昔も変わらないのは、楽器好きな人の音楽愛ですよね。あと、流行り廃りこそあれど、ライヴハウスの数って減っていなくてむしろ増えている。楽器に触れたいと思う若者たちって実は減っていないんだなと感じました。むしろ、僕たちの頃よりも多いんじゃないかな。そんな熱い彼らが、これからどんな音楽を作るのかすごく気になりますね。
― 講義の締めで“逆にみんなから教えてもらいました”ということを言っていましたが、高校生バンドと接して気づかされたこととは?
綾小路 音楽に対しての真摯さですよね。僕が想像していた以上に、皆さんはすごく真っ直ぐに音楽と向き合っていました。そこに関して、僕はかなりいい加減なので、本当に反省しなきゃなって思いましたね(笑)。僕がしゃべっていることを、みんな真面目にノートを取っているのを見て気づかされたことは多々ありました。例えば、今一度、僕もいろいろなものに触れなきゃなって。僕は僕なりに凝り固まっている部分があるなと思ったので。
― ノート、みんな一生懸命に取っていましたね。今日の学生たちにとって、翔やん先生の言葉がアーティストから直接もらった最初の言葉だと思うんです。講義の後、みんな“勉強になった”“刺激になった”と言っていました。
綾小路 だといいですねえ。本当に自由に音楽をやってほしいなって思うんです。個人的な感想ですけど、刺激的な音楽ってそんなに生まれていないと思っていて。今って、皆さんの演奏も楽曲もまとまっていて素晴らしいんですよ。技術も才能も我々の時代とは異次元に来ている。でも“そう来たか!”“そういうことになるのか!”ってところがなくて。意外とびっくりさせられていないなっていうことのほうが多い。だから、次の世代の人たちにはもっともっと自由にやってほしいなと思っています。先人たちから学ぶことも大事だけど、それをぶっ壊すような人たちが生まれてほしいなって。“お前らが今までやってきたことは全部クソだ!”くらいの勢いで新しいことをやってほしいです。もっともっと自由な発想で音楽を作ってくれたら、僕らももっと刺激になるし、逆に僕らは僕らでしかできないことがあるだろうと思っています。
― 講義の最後にJazzmasterを軽音楽部に贈呈しましたけど、“自由にやれよ”“ぶっ壊してくれよ”そういうスピリットを授けているように思いました。
綾小路 そうですね。僕自身Jazzmasterを愛用しているので、皆さんにも楽しんでもらえたらいいなぁと。僕は曲作りに行き詰ると新しい楽器を買うんです。そのギターを弾いた瞬間に、いつもの自分では行けない場所に行けたり、いつもの発想にはない弾き方ができたりするんです。だから、みんなにはいっぱいいろんな楽器に触れてほしいなと思ってJazzmasterをプレゼントさせて頂きました。楽器だけじゃなくて、いろんな文化や音楽に触れたり、違う国に行くのもいいと思います。若い人たちには無限の可能性が広がっているので、そこはすごく羨ましいです。今日彼らと接して、羨ましいなって思いながら過ごした数時間でしたね。
― 今日は正則高校の軽音楽部の皆さんと触れ合うことができましたが、全国には高校生バンド、あるいはこれからバンドをやりたいと思っている人がたくさんいます。彼ら、彼女らに翔やん先生からメッセージをお願いします。
綾小路 バンドの数だけバンドのスタイルがあります。ただ、赤の他人と何かひとつのことを成し遂げるっていうのは本当に難しいことです。だから、バンドがバンドでいられる期間って、人生においても本当に貴重な時間だし、意味がある時間です。だからこそ、バンドをやりたいという気持ちや、バンドをやっているこの瞬間は何事にも代え難いんです。やればやるほど嫌なことも多いですし、難しいこと、頭を抱えることも増えるんですけど、このバンドでやれていることは奇跡の時間なので、ぜひこの一分一秒を皆さんも、苦しんだり楽しんだりもがいたり、時には分かち合ったりしてもらえればなと思います。
― 今は放課後の教室でインタビューをしているのですが、この状況にいると学生時代を思い出します。学生時代にバンドをやっていた方々も、もう一度バンドをやってほしいなって思いませんか?
綾小路 本当にそう思います。しかも、大人になっていろんなものから逃れてから楽器を始めると素晴らしいですよ。僕らみたいに音楽を生業にして生きていこうとすると、いろんなことで苦しむんです。でも、ある程度大人になってから、例えば子育ても落ち着いて、仕事もある程度落ち着いてから始める音楽活動やバンド活動は本当に楽しいらしいです。いろいろな煩悩から逃れてから始めると楽しいみたいです。自分の中で何となく“焦げ付いて”いるものを感じている人がいたら、楽器をプレイすることをオススメしたいですね。当時やっていた方はもちろん、今までまったく楽器に触れてこなかった方たちも、絶対に楽しいので。“ギターが弾ける生活”、すごく良いんじゃないかな。ぜひ会社帰りに楽器屋さんに立ち寄ってみるのはいかがでしょうか? 子供の頃だとつらいことが、大人になると楽しかったりするんです。
― 素晴らしい提案ですね。
綾小路 そして、僕は20年来フェンダー派なので、忖度なしにフェンダーをオススメします。JazzmasterとVibro Kingなのですが、なんというか、誤魔化しが効かないものを選んでしまって(笑)。シンプルで抜けが良いので音が本当に目立つんですよ。ただ、その分下手がバレちゃう。だからこそ面白くて、ずっと使い続けてしまうところがあって。このいぶし銀の音を現代で鳴らすことにカタルシスを感じています。しつこいけど目立ちますしね(笑)。やるからにはとことん目立ちたいし、とことんモテたい。そんな中坊的な不純すぎる動機だけで今日までやってきましたが、正直答えはまだ出ていません(笑)。だからこそ、この先も追求していこうと思います。ぜひこの綾小路に騙されたと思って、皆様もギターを手にしてみたらいかがでしょうか?
› 前編はこちら
綾小路 翔(氣志團)
孤高のヤンクロックバンド「氣志團」の誇り高き團⻑。1997年、千葉・木更津にて氣志團を結成。2001 年メイジャーデビュー。ジャンルレスにアンダーグランウンド、オーバーグラウンドの両サイドを行き来する、天下無双のツッパリ・クリエイター。2012年より地元房総エリアにて、フェス形式に変えた「氣志團万博」を開催し、他のフェスとは一線を画したラインナップが話題となり毎年約4〜5 万人を動員している。今年は『氣志團万博 2018 〜房総爆音爆勝宣言〜』と題し、9月15日・16日、千葉県・袖ケ浦海浜公園での開催が決定している。
› Website: www.kishidan.com