SILENT SIREN 年末スペシャルLIVE TOUR 2021「FAMILIA」
SILENT SIRENが、活動休止前のラストライヴ〈年末スペシャルLIVE TOUR 2021「FAMILIA」〉を12月30日(木)東京体育館にて開催。その模様をレポート。
笑顔と涙が交錯するドラマティックな一夜
11年間の活動に区切りをつけるラストライヴ
ガールズバンドとしてロックシーンを牽引してきたSILENT SIREN。思えば、彼女たちが歩んできた11年間は決して平坦なものではなかった。デビューしたての頃はアイドルバンドと認識する人も多かったが、それでもガールズバンド史上最速で日本武道館ワンマンを開催し、2015年の年末に開催された〈Silent Siren 2015 年末スペシャルライブ 覚悟と挑戦〉ではサポートギタリストが抜けて、すぅ(Vo,Gt)がリードギターを担当することに。さらに翌年には横浜アリーナ公演とワールドツアーを敢行、そのまた翌年には日本武道館2Days公演など、まるで己を奮い立たせるように何度も分厚い“殻”を破ってきた。その成長の集大成とも言えるライヴが、〈年末スペシャルLIVE TOUR 2021「FAMILIA」東京公演〉だ。この日は、サポートメンバーとして渡邊悠(Dr)と、初期メンバーでサウンドプロデューサーとして、作曲者として長年彼女たちを支えてきたクボナオキ(Gt)を迎えた5人編成でのステージとなった。
流麗なピアノSE(start)をバックに、巨大ビジョンにバンドのマスコットであるサイサイくんとお城が完成していくムービーが流れると、白と薄紫色を基調としたドレッシーな衣装に身を包んだメンバーが登場。拍手が会場を温かく包み込む中、1曲目に紡がれたのは本ツアーのタイトルにもなっている「FAMILIA」。
ひなんちゅ(Dr)が2021年9月に脱退し、ドラムを全編打ち込んでつくった1曲。サイサイファミリーのために作ったこの曲を冒頭に持ってくる理由は明確で、“いつでも 帰れる 場所がある”という歌詞が彼女たちからのメッセージのように胸に響く。
続いては、フェンダーのTelecaster Thinlineによるすぅのカッティングと、カスタムされた長年の愛機「ネイティ」(American Standard Jazz Bass)によるあいにゃん(Ba)のスラップから始まる「フジヤマディスコ」。会場の熱気を一気に沸点へと到達させるキラーチューンで、“私たちがSILENT SIRENです!”というすぅの宣戦と呼応するように観客全員のLEDリストバンドが真っ赤に輝き、ロックバンドとしての強靭さを見せつけたかと思えば、続く「八月の夜」では疾駆するサウンドと美しいメロディに夢見心地に。
「とうとうやってきたね。全世界のサイサイファミリーの想いも乗せて、最高のライヴにしましょう!」(すぅ)
心の中で渦巻くさまざまな想いに、正面から対峙しているかのような真っ直ぐな眼差しに、見る者も彼女たちと歩んだ時間や思い出を追憶していたに違いない。溢れんばかりのバイタリティがハジけるような「milk boy」「Sweet Pop!」から、「ビーサン」ではゆかるん(Kb)もショルダーキーボードを持ち、3人は会場中央まで伸びた花道へと歩を進め、その先のセンターステージでファンたちと視線を交錯させる。「BANG!BANG!BANG!」では、ピンクのJazzmasterとカスタムされたPrecision Bassの明瞭かつ抜けのあるサウンドも相まって、降り注ぐ真夏の日差しのようなまぶしい音世界を描いて見せた。
中盤では、彼女たちの繊細な一面をうかがい知ることができるバラードが続く。懐かしい冬の曲「I×U」では、ピアノとストリングスの旋律に乗るすぅのピュアな歌声に思わず息を呑み、手拍子も自然発生した「stella☆」、12月15日に2枚同時発売されたベストアルバム『SIREN』から、新しい人生の始まりを歌った春曲「恋爛漫」、2017年の日本武道館公演の際に会場限定でリリースされた幻の楽曲「シンドバッド」など、メンバーの息遣いが聴こえてきそうなミドルテンポの楽曲群を披露。歌心のあるベースラインはもちろん、豊潤なサスティンとどっしりとした安定感のあるヴィンテージのPrecision Bassが、そのサウンドスケープの構築に一役買ったのは言うまでもないだろう。
「みんなありがとう。今日は泣きたくなかったけど…」。ここまで涙をこらえてきたすぅだが、思わず涙。この日はあえてMCで話す内容を考えずに来たという彼女が、その胸の内を吐露する。
「1000回以上はライヴをしてきたけれど、こんなにもいろいろな人に愛されるバンドになるとは思っていなかったし本当に嬉しい。サイサイは悔しいことも言われてきたけど、唯一無二のバンドだと思っています。私たちは誰よりもサイサイが好き。このバンドは人生でした。田舎から飛び出した何も持っていない私に、すべてをくれた場所でした。活休は自分たちが出した答えだけど、悲しいし寂しい。楽しいことはいろいろとあるけれど、私はこれ(バンド)が一番楽しいと思っています。私たちは未来に向かって進んでいきます。ここで鳴っている音が、私たちの答えです」
バーガンディのStratocasterに持ち替え、まさに今の心境にピッタリの「Answer」「KAKUMEI」を情感たっぷりに歌い上げた。
演奏が終わり、暗転から再びステージに照明が灯されると、サポートメンバーを除く3人だけの姿が。しかも、すうがベースを、あいにゃんがギターを、ゆかるんがドラム。演奏した曲は、初の音源であるミニアルバム『サイサイ』の1曲目に収録されている「ランジェリー」。ベースソロに初めて挑戦するすぅをはじめ、初々しさを感じさせる演奏の中にも、楽曲としての、SILENT SIRENとしてのネイキッドな魅力が露わになり、その“いびつさ”がかえって彼女たちの音楽を愛おしく感じさせた。
ライヴ終盤は、会場がダンスホールと化したアッパーチューン「DanceMusiQ」を皮切りに、ゆかるんのシンセも色鮮やかな「ALC.Monster」、髪の毛を振り乱しながら弦をかき鳴らすすぅとあいにゃんの姿が印象的なロックナンバー「女子校戦争」、あいにゃんがメインヴォーカルを務める「てのひら」など、屈強な楽曲たちを次々に投下。「11年目を支えてくれたみんな! これからも一生ずっとずっとヒーローです!」。そうすぅが叫ぶと、「HERO」でライヴ本編は幕を閉じた。
アンコールで再びステージに姿を現した3人。「寂しすぎるぜー! 終わりたくないぜー!」と本心を爆発させたすぅは、バンドへの想いを涙を拭きながら話し始める。大切なバンドと出会えたこと、今までで一番大事に演奏したこと、気持ちの整理をつけるにはあまりに時間がなかったこと、そして、SILENT SIRENを世界で一番カッコいいバンドだと信じていること。
「私たちはいったんステージから降りるけれど、曲は生き続けます。みんなに、ありがとうと大好きを伝えたい。SILENT SIRENになれて本当に良かったです!」
アンコール1曲目は、バンドを結成して初めて作った曲「チラナイハナ」。3人の目には涙が浮かんでいる。内省的でありながら、それでも散らない花のような強さを手にしようとするセンチメンタルな曲は、まるで彼女たちが辿ってきた心の旅を描き出すようだ。
「ラストは笑わせてください」(すぅ)
最後は、ボディからヘッドまで全体を純白でまとったシグネイチャーモデルSILENT SIREN Telecasterを手にし、3人で肩を組みながらセンターステージへと歩み、笑顔満開で「ぐるぐるワンダーランド」「チェリボム」を紡ぐ。しおらしい締めではなく、みんなが笑顔のまま再会を約束できるように。そんな心意気がとても彼女たちらしい。まだ実感が湧かないような、フワフワとした客席に手を振りながら「こんなことが人生に起こるなんてすごいことだよ! 音楽って、バンドっていいぞ!」と感極まった表情で訴えるすぅ。 メンバーひとりずつ感謝の気持ちを伝え、最後はマイクなしで「以上、SILENT SIRENでした!」と別れを告げた3人。バンドをひとつのドラマとするのであれば、SILENT SIRENほど感情を揺さぶる存在は稀有だろう。ステージ上で泣きながら強く抱き合う3人の姿を見て、会場にいる誰もが思ったに違いない
【SET LIST】
- FAMILIA
- フジヤマディスコ
- 八月の夜
- milk boy
- Sweet Pop!
- ビーサン
- BANG!BANG!BANG!
- I×U
- stella☆
- 恋爛漫
- シンドバッド
- Answer
- KAKUMEI
- ランジェリー
- DanceMusiQ
- ALC.Monster
- 女子校戦争
- てのひら
- HERO
ENCORE
- チラナイハナ
- ぐるぐるワンダーランド
- チェリボム
SIRENT SILEN : https://silent-siren.com/