Special Interview | 藤原ヒロシ
ファッションデザイナー、音楽プロデューサー、ミュージシャンの藤原ヒロシが主宰するfragment designとフェンダーのコラボレーションが実現。ボディトップのローズウッドや洗練されたグラフィックデザインが目を引くFender×Fragment Telecaster(WhiteとBlack)に加え、ストラップ、ピック、フーディー、Tシャツなどがラインナップ。斬新な要素が取り入れられているこのTelecasterについて語ってもらった。
洋服や家具を作る感覚で作ったのがこのTelecasterです
──フェンダーとのコラボレーションは、どういう経緯で決まったんですか?
藤原ヒロシ(以下:藤原) 色々な出会いがありまして。正直なところ“僕でいいのかな?と思ったんですけど(笑)。
──Telecasterを選んだ理由は?
藤原 形が好きなんです。“カッティングをするならばTelecasterのほうがいい”という話を聞いたのも理由でした。僕はギターソロを弾くタイプではないので。
──Fender×Fragment Telecasterはボディ材が独特ですね。バック材がアルダーでトップ材がローズウッドというのは、なかなかないと思います。
藤原 ローズウッドを使いたかったんです。木目がキレイですからね。全体的に“ギターを作る”というよりは、洋服や家具を作る感覚で作ったのがこのTelecasterです。
──このサイズの質の良いローズウッドを確保するのは、かなり難しいんです。化粧板として薄いものを貼ることはあるんですけど、このTelecasterには厚みがあるローズウッドが貼られています。
藤原 これくらい厚いローズウッドを貼ることは、なかなかないんですね。
──そうなんです。ローズウッドはアルダーと較べると硬質なので高音域が出やすい木材です。アルダーは中域が出やすいので、ローズウッドと組み合わせたことによって高音域から低音域までバランス良く出るTelecasterになりました。
藤原 とてもシンプルでキレイな見た目になりましたね。デザイン画は白から始めたんですけど、“黒もやってみて”と言ってやってもらったんです。白は派手な感じでもあるので、地味なほうが好きな人には黒がいいのかなと。
──ロゴのデザインや位置も、いろいろ試しながら決めていったのでしょうか?
藤原 グラフィックデザインをやる感じでデスクトップ上でやっていきました。こういうのはわりと慣れているので。
──指板のドットのポジションマークがないのも、このギターの特徴です。
藤原 ネックサイドのドットのほうが見やすいですし、それだけあればいいんじゃないかなと前から思っているんです。僕はクラシックギターをいくつか持っているんですけど、手に入れてから最初にするのは、ネックサイドに白マジックで点を打つ作業です(笑)。それで充分だなと思っています。
──その他に関しては、伝統的なTelecasterの仕様になっていますね。
藤原 はい。トラディショナルなオリジナルのTelecasterに近いものにしてもらいました。ピックアップとかそういうところに関しては、プロの方々にお任せしています。
──どのようなギタリストにオススメしたいですか?
藤原 最初の1本というよりも、セカンドギターくらいのほうがいいのかもしれないですね。
──Telecasterを何本か持っている人にぜひ試していただきたいです。ボディ材が独特ですから、ギタリストのお知り合いから“弾かせて”と言われるかもしれないですね。
藤原 そう思ってもらえたらいいですね。でも“買ってください”って言います(笑)。
──(笑)。藤原さんはギターを選ぶ際、どのような点を重視していますか?
藤原 前はヴィンテージギターがすごく好きでした。好きなサイズ感とかは自然と決まっていきますよね。でも、エレキギターはほとんど弾かなくて、Telecasterを使うのも初めてです。フェンダーのエレキギターはJazzmasterを持っていました。もう手放してしまったんですけど。あと、Stratocasterも所有しています。
──サカナクションの山口一郎さんから誕生日にもらったAcoustasonic Telecasterもお持ちですよね?
藤原 はい。あれはエレキギターに慣れている人に合っているギターだと思います。
──フェンダーには、どのようなイメージがありますか?
藤原 ソリッドボディのエレキギターと言えば、やっぱりフェンダーですよね。昔から弾いていたのはアコースティックギターでしたけど、エレキギターもいろいろ見ていたんです。50年代のヴィンテージのフェンダーギターとかキレイですから好きでした。
──今回のコラボレーションは、エレキギターとの距離が縮まる機会にもなるのではないでしょうか?
藤原 そうですね。もしかしたら作る楽曲にエレキギターを入れるようにもなるかもしれない。たまにライヴでエレキギターを弾くことはあったんです。今後、エレキギターを弾く機会がある時はこのTelecasterを使ってみたいですね。
──このTelecasterはケースも特別製ですね。外装のツイードは通常ならば黄色ですが、これは特注のブラックのツイードです。内側もこのケースならではの色になっています。
藤原 色に関してはギターに合わせました。“フェンダーのツイードといえば黄色ですけど、これが黒になったらいいですね”という話をしていたんです。
──ストラップとピックも白と黒の2色、ギターとは別で販売されます。
藤原 ストラップはシンプルな素材で、派手過ぎないものにしています。こういうシンプルなもののほうが好きなんです。ストラップもギターもそうなんですけど、ギタリストが作ったわけではなく“デザインが好きな人が作った”という感じなんですよね。デザインの要素と楽器としての大事な部分が上手く融合できていればいいなと思っています。
──フーディー、スウェット、Tシャツも販売されますが、“MUTING CONGRESS”というプリントが目を引きます。
藤原 僕はカッティングが好きなので“MUTING”という単語を使いました。
──カッティングするには“muting”が必要ですからね。
藤原 そうなんです。“MUTING CONGRESS”は“カッティングを弾く演奏家たち”みたいな意味合いです。
──カッティングもそうですけど、日本でしか通じないギターに関する表現はけっこうあるんですよね。チョーキングも英語ではベンディングですから。
藤原 日本独特のギター用語があるのは面白いですね。60年代中頃の日本でのエレキギターブームが、それだけすごかったということなのかもしれない。
──アパレル製品に関しては、Fender×Fragment Telecasterに合うデザインにしたんでしょうか?
藤原 そこまではなかったです(笑)。ギターを弾かない方々にも着ていただきたいので。ギターは洋服みたいに毎日着替えるものではないので、スタンダードとしてずっと使えるものになっていたらいいなあと思っています。ギターの白色のピックガードは、使い込むとクリーム色になっていくんですか?
──経年変化でそうなっていくと思います。
藤原 それが良い味になっていくのも楽しみですね。
──自分だけの風合いになっていくギターだと思います。
藤原 ギターってそういう楽しさもありますよね。このTelecasterも長く愛用していただけたら嬉しいです。
Fender x fragment Strap | Fender x fragment picks
藤原ヒロシ
ファッションデザイナー、ミュージシャン、fragment design主宰。1964年、三重県出身。10代でDJ活動を始め、日本におけるクラブDJの先駆けとなる。1985年には高木完とヒップホップユニット、タイニー・パンクスを結成。翌年に日本初のクラブミュージックレーベルであるMAJOR FORCEへ参加。1990年代に入ると音楽プロデューサー、作曲家、編曲家としての才能を発揮し、これまでに数々のアーティストをプロデュース。YO-KINGとのユニットAOEQやソロ活動なども行なっている。主宰するfragment designではボーダーレスかつ刺激的なコラボレーションが大きな注目を集めている。