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Special Interview | Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)-前編-

カートノギター像ヲスゴク体現デキルギター

1991年にリリースされ、音楽シーンを根底から引っくり返すような衝撃を世界中に与えたニルヴァーナ不朽の名盤『ネヴァーマインド』。その発売30周年を記念し、カート・コバーンのシグネイチャーギター「Kurt Cobain Jag-Stang」が発売された。本モデルは、カート自身が気に入っていたJaguarとMustangの要素を組み合わせて作られた、本人のカスタムモデルの復刻版。彼が亡くなる直前に最終モデルが完成したため、ライヴでは数回使用されただけだが、個人的なノートに本モデルに関する記録が残されており、いかにJag-Stangが重要なギターだったか知ることができる。カートから多大なる影響を受け、自身もJaguarを愛用しているMAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyに、カート・コバーンのギタリスト像、そしてKurt Cobain Jag-Stangの魅力について存分に語っていただいた。(※本文は翻訳した記事を掲載しています)

ソノ得体ノ知レナイ共感性ニ衝撃ヲ受ケマシタ

― ニルヴァーナの音楽に初めて出会った時のことを覚えていますか?

Jean-Ken Johnny もちろん覚えています。最初に聴いたのはたぶん皆さんと一緒ですね。多くの方が聴いたアルバム『ネヴァーマインド』を初めて聴いた時です。僕自身、当時は80年代のハードロックを聴いていたのですが、世界中で同時多発的に起きたであろう『ネヴァーマインド』の衝撃。一夜にして自分の好きな音楽が180度変わりました。普段耳にするものとのあまりの異質さ。サウンドだけではなくて、存在としてのあまりの異質さに”あ、こんなのアリなんだ”と思いながら、自分がアリ・ナシもわかっていない状況なのに“アリなんだ”という感覚に打ちひしがれた記憶があります。

― その衝撃とは具体的には何だったと思いますか?

Jean-Ken Johnny 僕は英語がわかるほうで、自分が今まで聴いてきた音楽はテーマが非常に明るいもの、前向きなもの、もし暗いものだとしても何かをすごく風刺していたと思うんです。そういった陰の要素は理解の範疇だったのですが、あれほどまでに内省的なもので、しかもきっちりとした描写のしようのない内情のエモーション、鬱屈したものとその爆発力と衝動を赤裸々に詩的に訴えて、それを世界の人がどうこうとかじゃなくて、いち個人の自分が聴いてても突き動かされるものがあるという、その得体の知れない共感性に衝撃を受けました。こんなのが曲として歌われていいんだって、サウンド以前にそこに一番衝撃を受けたんです。で、追随するように90年代でグランジやオルタナ、ギターロックの方々がテーマにして、それが一大ムーブメントになりました。音楽史の中で、ニルヴァーナと(セックス・)ピストルズくらいしかやってのけていないんじゃないかと思うぐらい、社会現象になりましたよね。社会現象と言えてしまうムーブメントが起きていることにも衝撃を受けました。

― 人間だけではなく、オオカミにも衝撃を与えるのはすごいことかと。当然影響を受けたと思うのですが、ニルヴァーナをカバーし始めたのはいつですか?

Jean-Ken Johnny むしろ、初めて『ネヴァーマインド』を聴いた時にギターを触り始めましたね。カート・コバーンのプレイスタイルって、一聴するとシンプルなんですよ。だから、僕も含めた世界中の多くのギターキッズが勘違いしたであろう“これ、俺でもできる”現象(笑)。で、やればやるほど、サウンドや音色、ギターと本人の伝導率の良さも重要なんだと後々気付くんですけど、一聴して“あれ?これ俺もできるんじゃねーか?”というものが、世界中の人々を虜にしたひとつの要素なのかもしれないと思っています。

― 実際のプレイスタイルや演奏に関して、カートからどのような影響を受けましたか?

Jean-Ken Johnny 当然、速く弾く練習もしましたし未だに練習しますけど、もっと根底にある一番大事なものは、薄っぺらい意味じゃなくて本当にエモーションなんだということ。そこに一番影響を受けているかもしれないですね。僕はニルヴァーナのおかげで、自分の音楽遍歴が固まったような気がしています。それ以降、聴く音楽がものすごく変わりました。そして、ニルヴァーナと出会ってそういう匂いのするアーティストを必死で探すことに開眼した瞬間でもありました。以来、そこに着目して未だに音楽を聴き続けていますし、自分もプレイヤーとしてそこを見てほしい、感じてほしいなと思います。そう思わせるようなプレイスタイルしかり、リフしかり、そういうものにフォーカスしていくようになりました。

フェンダーハエモーションヲ聴キ手ニ伝導スル要素ガヒトキワ強イ

― カートのように、エモーションを聴き手に伝導させていくのには何が必要だと思いますか?

Jean-Ken Johnny わからないですね。それは永遠の課題だと思います。気持ちを込めるなんて、どんなスポーツでもよく言われることだと思うので。だけど、今フェンダーの取材を受けているからじゃなくて、フェンダーはエモーションを聴き手に伝道する要素がひときわ強いメーカーだと思っています。ギターという楽器自体が、ヴォーカルと同じくらい人格が憑依しやすいというか、伝導率が高い楽器だと思うんです。ファンダーは、エッジの効いたエモーションをものすごく赤裸々に増幅させてくれるメーカーのひとつなんじゃないかなと思っています。

― カートがフェンダー社と一緒に製作したKurt Cobain Jag-Stangに対して、彼は“ギターを弾き始めて、自分が求めているすべてが完璧にミックスされたものを見つけることができなかった。だけどJag-Stangは、私が知っている中でもっともそれに近いものだ”と語っています。共感できるポイントはありますか?

Jean-Ken Johnny 自分の中でのカート・コバーン像というか、カートのギター像をものすごく体現できるギターなんだろうなと弾きながら思いました。おこがましいですけど、おそらくご本人のプレイスタイルを一番よく聴かせるタイプのギターに仕上がっているなと思いましたね。80年代、90年代のオルタナ・ギターロックのいちファンからすると、あの90年代のサウンド感の中でパワフルな個性を出すという意味では、ものすごく素晴らしいギターが出来上がったなという感想です。

― 実際にKurt Cobain Jag-Stangを弾いてみて、カートはこのギターに何を求めたのでしょう。

Jean-Ken Johnny 正解なのかどうかはわからないけれど、弾いた時に、実際に出している音よりも自分でも予測していない、ふくよかな倍音がエモーショナルに聴こえてきたんです。もしかしたら、カート本人もそういう音が好きなのかなとおこがましくも思いましたね。フェンダーギターの“ジャキーン”って感じも好きですけど、それプラス弾いている時に出ている、下手したらエンジニアさんが嫌うような倍音というか、ちょっとそれ出過ぎじゃない?みたいな低音がエモーショナルに聴こえるんです。たぶん、カートはそこも好きなんじゃないかなと勝手に思っています。

― すでにKurt Cobain Jag-Stangの復刻版の実機を弾いていただいていますが、弾きやすさなどはいかがでしょうか?

Jean-Ken Johnny めちゃくちゃ弾きやすいです。単純にショートスケールというのもあります。僕が今使っているJaguarよりも1フレット短いのですが、めちゃくちゃ弾きやすいです。何よりも音色、サウンド感が、僕と同じ90年代のギターロックが好きな方なら、Kurt Cobain Jag-Stangを弾いて興奮しない人はいないと思います。

― ライヴでも使えそうですか?

Jean-Ken Johnny 全然使えると思います。ただひとつあるとしたら、けっこうクセがあるので(笑)、バンドやアンサンブルになった時、ギターとして目立つという意味であれば、これほどのものはないです。当然、自分のエモーショナルをすごく増幅してくれるし、そのまま出してくれる楽器でもありますが、裏を返せば、それだけ“乗りこなせなきゃいけないよ”ということでもあると思います。Kurt Cobain Jag-Stangを鳴らすんだったら、ちゃんとカッコ良くなきゃダメだよって。

後編に続く(近日公開予定)


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KURT COBAIN JAG-STANG® 2021年、Nirvanaの代表作『Nevermind』の発売30周年を記念して、カートが理想としたJag-Stangギターが登場しました。パワフルなパワーコードに最適なパンチの効いた音色を出すアルダーボディは24インチショートスケール設計により弦の張力が抑えられており弾きやすく、7.25インチラジアスのローズウッド指板を備えたメイプルネックは快適なコード弾きを実現します。ヴィンテージスタイルのシングルコイルとカスタムハムバッカーは、カートのクラシックなトーンを再現します。Mustangスライダースイッチは、4つの異なる設定をダイヤルで調整できる柔軟性を備えており、様々なイン/アウトフェイズのトーンを提供します。


Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)

ジャン・ケン・ジョニー。頭がオオカミで身体が人間という“5匹”組ロックバンド、MAN WITH A MISSIONのギター/ヴォーカル/ラップ担当。2010年よりバンドを本格始動し、同年11月に 1stミニアルバム『WELCOME TO THE NEW WORLD』を発表。2011年6月、アルバム『MAN WITH A MISSION』でメジャーデビュー。その後、数多くの夏フェスに出演し注目を集め、2012年7月にはフランスで行われた〈JAPAN EXPO 2012〉に出演。2013年には初の日本武道館公演、初の横浜アリーナ単独ライブを敢行。その後、全米、ヨーロッパツアーも積極的に行うなど活動はワールドワイドに拡大する。2015年1月に活動5周年を記念したアルバム『5 Years 5 Wolves 5 Souls』を発表。結成10周年を迎えた2020年、ドキュメンタリー映画『MAN WITH A MISSION THE MOVIE -TRACE the HISTORY-』の公開や、B面・カバー集やベスト盤『MAN WITH A “BEST” MISSION』をリリース。2021年11月24日、ニューアルバム『Break and Cross the Walls Ⅰ』をリリース。
https://www.mwamjapan.info

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