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Special Interview | Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)-後編-

ドレダケ手法ガ変ワロウトモ、本質ハ永遠ニ変ワラナイ

1991年にリリースされ、音楽シーンを根底から引っくり返すような衝撃を世界中に与えたニルヴァーナ不朽の名盤『ネヴァーマインド』。その発売30周年を記念し、カート・コバーンのシグネイチャーギター「Kurt Cobain Jag-Stang」が発売された。本モデルは、カート自身が気に入っていたJaguarとMustangの要素を組み合わせて作られた、本人のカスタムモデルの復刻版。彼が亡くなる直前に最終モデルが完成したため、ライヴでは数回使用されただけだが、個人的なノートに本モデルに関する記録が残されており、いかにJag-Stangが重要なギターだったか知ることができる。カートから多大なる影響を受け、自身もJaguarを愛用しているMAN WITH A MISSIONのJean-Ken Johnnyに、ニルヴァーナの中で特に思い出深い曲、そしてすべてのプレイヤーたちにアドバイスをいただいた。(※本文は翻訳した記事を掲載しています)

アノ曲ヲカヴァースルコトハ、サンクチュアリニ踏ミ込ンデシマウ危険性ガアッタ

― Jean-Ken Johnnyさんがニルヴァーナと出会った『ネヴァーマインド』の発売から今年で30年ですが、アルバムの中で一番好きな曲とその理由を教えてください。

Jean-Ken Johnny 「オン・ア・プレイン」という曲ですね。恐ろしいほどポップに聴こえたんです。コードの響きがすごく素敵だなと思って、改めて聴き直して解析したらドロップDチューニングなんですよね。アルバムの中では唯一だったと思います。“アドナインス感”が素敵で、明るくも取れるし、でもマイナーほど暗くもないあのコード感がものすごく好きです。僕は未だに支配されているんですよ。皆さんお気付きの人も多いかもしれませんが、僕はアドナインスコードをめちゃくちゃ使っているんですよね(笑)。アンニュイで、陽にも陰にも取れるし、ただ暗すぎなくてメロウ。しかも、押し付けがましいメロウさではなくて、陰の部分がすごくナチュラルな、陽も混じっているような響きなんです。歌詞もすごく素敵ですよね。“I love myself Better than you. I know it’s wrong So what should I do?”というキメの台詞も、人間の心理を見事についていると思いますし、やられました。

― MAN WITH A MISSIONとしては「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」と「リチウム」をカヴァーしていますが、この2曲はバンドにとってどんな存在ですか?

Jean-Ken Johnny 「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」に関しては、自分自身もニルヴァーナの大ファンだったので、あの曲をカヴァーするってことは、サンクチュアリに土足で踏み込んでしまう危険性があるのは重々承知していたんです。それと同時に、僕らがあれをカヴァーしたいと思い始めた時期が、ちょうどDJのマッシュアップが流行っていた時期だったんですよね。カヴァーをした2010年って、ちょうどロックミュージックが転換期を迎えていたんです。デジタルなものに寄せて行こうという流れと、オーセンティックなものに生き残ろうという2つの流れがありました。そんな中で、マッシュアップはオーセンティックなロックの力強さも生命力も提げたまま、近代的な新しいものに挑戦していてカッコいいなと思ったんです。これをバンドでもできないか。それをやるとしたら、それに耐え得るだけの楽曲が必要だろうなと思った時に、サンクチュアリに足を踏み入れるのはどうか?とうちのベースが考えまして。それで初めてやらせていただいたのが「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」のカヴァーでした。

― さて、ニューアルバム『Break and Cross the Walls I』が11月24日にリリースされますね。

Jean-Ken Johnny MAN WITH A MISSIONにとって3年半ぶりのオリジナルアルバムです。こういった時期も重なってなかなかライヴができなかったので、大きな置き土産を皆さんに届けたいということで2部作になります。14曲入り2枚、計28曲の2部作の第1弾を、11月24日に発売させていただきます。

解析デキナイ倍音ニ一番エモーショナルヲ感ジル

― コロナ禍で制作へのクリエイティビティに影響はありましたか?

Jean-Ken Johnny 単純に物理的に時間がありました(笑)。僕自身はあまり時代背景に影響されたくはないのですが、とは言えこの2年半はなかなか心にくる2年半でもありまして、いろいろなことを考えさせられる時間でもありました。疫病云々というよりは、いろいろな問題がより顕在化したような気もしています。そこを見つめ直す良い機会になりましたし、実際に楽曲のメッセージや制作にも何だかんだ影響しているのかなと思います。コロナ禍というものの影響を踏まえた上で、皆さんが聴いて確実に背中を押されるような、あとは何か考えさせられるような作品になっていると思いますので、ぜひ聴いていただきたいと思います。

― Jean-Ken Johnnyさんから見て、人間の音楽は今後どう変化していくと思いますか?

Jean-Ken Johnny どうなっていくんですかね。僕の中では、すべての楽器がデジタルになっていくにつれて、アナログやデジタルだけでなく、耳に残るメロディとしてのリフ化が本当に進んでいるなと思っています。最初はドラムが複雑なビートではなく4つ打ちメインになって、次にベースやギターがサンプルになり、同じリフの繰り返しの中でどれだけ展開していくかになった。歌もヴォーカルが歌うのではなくて、もう始まっていますけれどもボーカロイドが歌ったり、そういったものになってしまっていると思うんです。だから、いつの間にかAIに取って代わられると思うんです。

 ただ、結局は皆さんもすでに物足りなさを感じているんですよね。実際に生物がやらないと生まれない、フェンダーのギターの特色でもある解析できない濃さだったり、解析できない倍音だったりに一番エモーショナルを感じるんです。そこが一番心を突き動かすポイントなんじゃないかって、みんな感じていると思うんですよね。それを全部削ぎ落としたものがデジタルだとすれば、今度はデジタルな音楽をやっている人たちが、デジタルの力でそれをどれだけアナログに近づけていくか。それを今追っかけ直しているのかなと思います。結局、どれだけ手法が変わろうとも、本質は永遠に変わらないという確信はありますね。

― MAN WITH A MISSIONの曲で、ビギナーがカバーするとしたら良い曲はありますか?

Jean-Ken Johnny 僕らの楽曲は全部簡単なので(笑)。

― ニューアルバム『Break and Cross the Walls I』の中では?

Jean-Ken Johnny 簡単な楽曲ね…。ギターワークがいろいろと入っているのであれば、「INTO THE DEEP」はものすごく疾走感もあるしコピーもしやすいし、非常に楽しいと思います。ドロップCチューニングですけどね。気をつけてください。弦がダルダルに(緩く)なるので(笑)。

― 最後に、ビギナーへ向けてメッセージやアドバイスをお願いします。

Jean-Ken Johnny 最初にニルヴァーナをコピーするのはめちゃめちゃ良いと思いますよ。一見、簡単だから弾けちゃうんです。でも、その先は本人次第です。味付けをどうするか、カートに近づきたいのか、自分の味を出したいのか。それが楽器の一番の楽しみ方でもあるので。楽器はマジで良いものですよ。自分のもうひとつの分身ができる感覚になるので。演奏しているのはもちろん本人ですけれども、他の人(プレイヤー)を憑依させたりもできてしまう遊び道具でもあります。本当に大好きな楽曲をいろいろと聴いて、手始めに楽器を弾いてみて、新しい扉を開いてほしいなと思います。

前編はこちら


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KURT COBAIN JAG-STANG® 2021年、Nirvanaの代表作『Nevermind』の発売30周年を記念して、カートが理想としたJag-Stangギターが登場しました。パワフルなパワーコードに最適なパンチの効いた音色を出すアルダーボディは24インチショートスケール設計により弦の張力が抑えられており弾きやすく、7.25インチラジアスのローズウッド指板を備えたメイプルネックは快適なコード弾きを実現します。ヴィンテージスタイルのシングルコイルとカスタムハムバッカーは、カートのクラシックなトーンを再現します。Mustangスライダースイッチは、4つの異なる設定をダイヤルで調整できる柔軟性を備えており、様々なイン/アウトフェイズのトーンを提供します。


Jean-Ken Johnny(MAN WITH A MISSION)

ジャン・ケン・ジョニー。頭がオオカミで身体が人間という“5匹”組ロックバンド、MAN WITH A MISSIONのギター/ヴォーカル/ラップ担当。2010年よりバンドを本格始動し、同年11月に 1stミニアルバム『WELCOME TO THE NEW WORLD』を発表。2011年6月、アルバム『MAN WITH A MISSION』でメジャーデビュー。その後、数多くの夏フェスに出演し注目を集め、2012年7月にはフランスで行われた〈JAPAN EXPO 2012〉に出演。2013年には初の日本武道館公演、初の横浜アリーナ単独ライブを敢行。その後、全米、ヨーロッパツアーも積極的に行うなど活動はワールドワイドに拡大する。2015年1月に活動5周年を記念したアルバム『5 Years 5 Wolves 5 Souls』を発表。結成10周年を迎えた2020年、ドキュメンタリー映画『MAN WITH A MISSION THE MOVIE -TRACE the HISTORY-』の公開や、B面・カバー集やベスト盤『MAN WITH A “BEST” MISSION』をリリース。2021年11月24日、ニューアルバム『Break and Cross the Walls Ⅰ』をリリース。
https://www.mwamjapan.info

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