Interview | 春畑道哉
日本製のシグネイチャーモデルを手にしてもらえれば、僕がどんなギターをステージで弾いているのかわかる
TUBEの春畑道哉が作曲と演奏を行ない、長きに渡ってサッカーファンに親しまれている「J’S THEME(Jのテーマ)」。それを再レコーディング&リアレンジした「J’S THEME(Jのテーマ)25th ver.」を収録した、Jリーグ開幕25周年記念アルバム「J’S THEME〜Thanks 25th Anniversary〜」が発売された。春畑のエモーショナルなギタープレイを満載したこの作品と、今回新たに発売が決まった新シグネイチャーモデルについても話を聞いた。
― Jリーグ開幕25周年を記念して、オリジナルテーマソング「J’S THEME(Jのテーマ)」の新ヴァージョン「J’S THEME(Jのテーマ)25th ver.」が完成しましたが、そもそも25年前にJリーグのテーマ曲の制作の依頼が来た時のことを憶えていますか?
春畑道哉(以下:春畑) 「サッカーがJリーグとしてプロ化されて、これからプロ野球のように身近なものになると思う。テーマソングは春畑が死んだ後も流れ続けることになるだろうから、気合いを入れて作ってほしい」と言われました(笑)。それまで、サッカーはそんなに詳しくなかったので、海外の大きなクラブチームの映像で勉強したんですけど、こんなに熱狂するものなのか、野球の応援とは違う熱さがあるなと思いましたね。
― 当時、春畑さんは毎年のようにソロアルバムを出していましたが、インストゥルメンタル曲を作るモードにはなっていたのですか?
春畑 当時、ソロアルバムは実験の場みたいなところがあって、興味の赴くままに曲を作っていたんですけど、Jリーグのテーマに関してはしっかりしたメロディーのある楽曲として仕上げようと思いましたね。
― バラードっぽい曲調になっていますが、先方からそういうリクエストがあったのですか?
春畑 いや、最初、サッカーと言えば、トリッキーなドリブルとかオーバーヘッドキックとか、そういう攻撃的なイメージがあって、速いロックが似合うんだろうな思ったんです。それで「BORN TO WIN」という曲を作ったんですよ。
― 「BORN TO WIN」は25年前にリリースされたシングル「J’S THEME(Jのテーマ)」のカップリング曲(「J’S THEME〜Thanks 25th Anniversary〜」にも収録)ですが、こちらが先だったんですね?
春畑 そうです。それで、生のサッカーの試合を観に行かせてもらったら、感動する場面もあって、ただスピーディなだけじゃないなと思ったんです。負けたほうのチームのサポーターと選手の強い結びつきとか、そういうシーンにも触れて、新たに作ったのが「J’S BALLAD(Jのバラッド)」(同シングルのカップリングで、ニューアルバムにも収録)だったんです。このメロディーができて、もっと未来へ向けて、進んで行ける感じを出そうと思ってできたのが「J’S THEME(Jのテーマ)」です。
― そうだったんですか。そして、この曲がJリーグの開幕式のピッチで演奏されたわけですね。
春畑 開幕式は各チームのフラッグが出てきたり、すべての進行が秒刻みで決まっていて、その進行表をあらかじめ見ていたんですけど、当日、式が始まった時は「ついにこの日が来た!」と興奮しましたね。360度、観客で埋め尽くされていて、ブブゼラとか歓声が地響きのように聞こえてきました。
― そこで披露された曲が25年経って、今回、再レコーディング&リアレンジされて「J’S THEME(Jのテーマ)25th ver.」という曲に生まれ変わりました。この企画はどういう経緯があって実現したのですか?
春畑 「J’S THEME」でJリーグの25周年を盛り上げることが何かできないか、スタッフがJリーグさんと話をした時に、「25年ごとに再アレンジしたら面白くないですか?」という話が出たんです。でも、リアレンジって危険じゃないですか? 過去にリアレンジをした時に「オリジナルのほうが良かったです」という声を聞いたことがあるので、オリジナルへの思い入れが強い人には大概受け入れてもらえないんだなと思いました。自分が他のアーティストのリアレンジ曲にも同じような感覚を持っているので、どういう風に変えようか迷いましたね。ビートやテンポを変えるとか、キーを変えるとか、楽器を変えるとか、歌い回しを変えるとか、そういうのはすぐに何パターンも思いつくんですよ。でも、Jリーグさんから“変わるもの”と“変わらないもの”というテーマをいただいて、テンポとメロディーとコードは変えないでいこうと思いました。それで、25年前になかったシンセの音源やリズムの音源を使ってサウンドを変えてみました。それと、実際に試合を観に行ってみたんですけど、試合が始まる前に会場の外で家族とか子供たちがサッカーボールで遊んでいるのを見たんです。小さな子供たちがサッカーの試合を観て、育っていくんだなというのを観た時に、ポジティヴ感というか、未来へ向かってという印象を出したいと思いました。
― なるほど。ギタープレイに関してはいかがですか?
春畑 昔の音源を聴くと、ピッキングとかヴィブラートがメッチャ強いなと思いましたね。若さが出ているというか…。自分では今のヴィブラートのほうが曲調に合っていると思います。
― ギターのトーンが違いますよね。
春畑 違いますね。今回はいろいろなギターとアンプ、スピーカー、エフェクター、マイキングの組み合わせを試して録ってみたんですけど、同じメロディーを一体何テイク録っているんだって感じでした。その中から音と演奏の良いものを選んだんですけど、ギターは最近のツアーでほぼメインで使っていたフェンダーのAmerican Elite Stratocasterで弾いたものが選ばれました。アンプはフェンダーのBassbreakerを使いましたね。
― 他にギターに関してオリジナルヴァージョンと異なる部分はどういうところですか?
春畑 主メロはできるだけオリジナルに忠実に弾いていますが、バッキングはオリジナルとは違っていて、付点8分系のバッキングが片方のチャンネルで鳴っていたり、アコギのストロークも入れています。それと、ディストーションのかかったバッキングも左右で入れていますし、広がりのある音になっていますね。
― 続いて、新しく発売されるシグネイチャーモデルMichiya Haruhata Stratocasterについて教えていただけますか? 日本製だそうですね。
春畑 以前からできるだけコストを抑えて、若い子も買えるシグネイチャーモデルを作りたいと思っていたんです。さすがに50万円を超えると、子供に買ってあげるよという値段じゃないですし、高校生が頑張ってバイトして手にできそうな価格のモデルを作ってほしいとお願いしていたんです。それがようやく実現して嬉しいです。
― 限定生産というわけではなく、レギュラーモデルとして発売されるのもポイントだと思いますが、このモデルはフェンダーカスタムショップ製のMichiya Haruhata Stratocaster IIIがベースになっていますね。
春畑 7月に行なわれたTUBEの東京国際フォーラムホールA公演でも最初に出来上がったモデルを試してみたんですけど、すごくいいと思いましたね。日本製のほうが音にまとまりがあって、アームの掛かりがタイトで、俊敏に反応します。スペックに関してもかなり忠実に再現していて、ピックアップはカスタムショップ製と同じで、ボディに直付けにしています。ネックシェイプもカスタムショップ製のものを3Dスキャナーで撮って再現しています。
― ピックガード付きのストラトキャスターで、ピックアップを直付けにするのは他のモデルにはないこだわりだと思いますが、どういった部分がお気に入りですか?
春畑 直付けすると、パワーコードを弾いた時にボディが直接鳴るし、ローも良く出るんですよ。
― 見た目も美しいですし、1本のギターとしても魅力的ですね。では最後にメッセージをお願いできますか?
春畑 ニューアルバム「J’S THEME〜Thanks 25th Anniversary〜」には25年前に作ったヴァージョン「J’S THEME(Jのテーマ)」と、今の僕が弾いたヴァージョン「J’S THEME(Jのテーマ)25th ver.」の両方が楽しめる作品になっています。フェンダーのAmerican Elite Stratocasterを使って弾いた新しいヴァージョンは、今の自分の年齢にマッチした演奏だと思うので、聴き比べてみたら楽しいですね。それと、日本製のシグネイチャーモデルMichiya Haruhata Stratocasterが発売されます。これからギターを始めたいと思っているような若い人でも大人の人でも、手にしてもらえれば僕がどんなギターをステージで弾いているのかわかると思うので、ぜひチェックしてみてほしいですね。それから、12月に2年ぶりにソロツアーを行います。今まで試したことがない方法で作った新しい曲が、自分ではとても興味深いものになっていて、それもやろうと思っていますので、ぜひ足を運んでください。
Michiya Haruhata Stratocaster®
カスタムショップ製のMichiya Haruhata Stratocaster IIIに詰め込まれたアイディアを、余すことなく採用した日本製のシグネイチャーモデル。ゴトー製ブリッジ、直付けのピックアップ、機能的なコントロール部など、こだわりが詰まった1本に仕上がっている。
MICHIYA HARUHATA STRATOCASTER®
PROFILE
春畑道哉
85年、TUBEのギタリストとして「ベストセラー・サマー」でレコードデビュー。86年、3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」の大ヒットでバンドとしての地位を確立。87年、TUBEと並行してソロ活動を始め、現在までにシングル3枚とアルバム12枚をリリース。92年、シングル「J’S THEME」が日本初のプロサッカーリーグであるJリーグのオフィシャルテーマソングとなる。93年のJリーグオープニングセレモニーでは音楽を担当、国立競技場の約6万人の観衆を前にライブを行った。2002年5月9日、フェンダーと正式にアーティストエンドース契約を締結。日本人のギタリストとしては初めてのシグネイチャーモデルを発売。これまで、Michiya Haruhata Stratocaster、Michiya Haruhata BWL Stratocaster、Michiya Haruhata III Stratocaster Masterbuilt by Jason Smithという3本のシグネイチャーモデルを発表している。ソロデビュー30周年を迎え、2016年11月に発売した最新アルバム「Play the Life」がオリコン週間ランキング9位を獲得し、インストアルバムとして異例のヒットを記録した。
› Website:http://www.sonymusic.co.jp/artist/MichiyaHaruhata
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【通常盤】¥2,000(tax in)
Sony Music Associated Records
2018/08/22 Release