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Squier®︎ Special Interview | 武田祐介(RADWIMPS)

自分が思い描くサウンドを鳴らしてくれるポテンシャルが充分にある

デザインやサウンドなど、フェンダーの伝統を受け継いた兄弟ブランドSquier®(スクワイヤー)は、その高いコストパフォーマンスでビギナーからプロのアーティストまで幅広い層に愛用されている。RADWIMPSのアンサンブルを下から支えるベーシスト、武田祐介もその一人。原型を留めぬほど大幅に改造を重ね続けたのは、その確かなクオリティが根底にあるからだという。

─ 武田さんがスクワイヤーのベースを購入した経緯を聞かせてもらえますか?

武田祐介(以下:武田) もともと僕は、楽器を改造することに興味があったんです。常日頃から楽器にまつわるオカルト話を、楽器職人や、楽器店スタッフの友人らと披露して盛り上がっていて(笑)。例えば“ネジ1本交換しただけで音が大きく変わる”とか、“バックプレートの質量を変えただけで鳴りが違う”とか、巷で囁かれているそういった噂話が実際どこまで本当なのかを検証してみよう、という集まり。そのための“土台”となるベースを何にするか考えた時に、スクワイヤーのベースが思いついたんですよね。

─ それはなぜですか?

武田 もう10年以上前の話になるのですが、当時センター北駅にある山野楽器さんによく通っていて。お店にあるエフェクターを試奏する時に使われていたのがスクワイヤーのベースだったんです。それまでスクワイヤーというと、楽器初心者が手にする“入口”のモデルというイメージがあったのですが、そのお店に置いてあったスクワイヤーのベースの音が、めちゃくちゃ良くて。思わずスタッフの方に“これ、売ってもらえませんか?”と頼んでしまったくらいなんです。もちろん断られましたが(笑)、その時の記憶がいまだに鮮明にあったのが大きな理由ですね。

─ ちなみに楽器の改造に興味を持つようになったのは、どうしてだったのでしょう。

武田 どうしてでしょうね(笑)。中学1年生の頃、初めて購入したベースが日本製フェンダーのフレットレスベースだったのですが、確か1年後には“改造したい欲求”がすごいことになっていたんです。“中身はどうなってるんだろう?”という単純な疑問からピックアップを外してみたり、キャビティの中を開けてみたり。思えば昔から機械いじりが好きで、“とりあえず開けてみよう”という気持ちが強い子供だったんです。“仕組みを確かめてみたい”という願望が昔から強かったのかもしれないですね。

─ では、今お持ちのスクワイヤーベースにどんな改造を施したのか、改めて教えてもらえますか?

武田 ほとんど原型を留めていないくらい改造しているので、どこから説明したらいいでしょうね(笑)。まずはパッと見で“おいおい!”と思われそうなのは、フレット数が増えているところ。もともと21フレットの筐体なのですが、それを24フレットに増やしました。しかもネックを延長したのではなく、ボディに指板と同じ木材を貼っているんですよ。それに伴い、ボディのカッタウェイを削って弾きやすいようにしました。ボディの裏面も同じ理由で少し削っていますね。

トップ材は少し薄くして表面にメイプル材を貼っています。スクワイヤーにメイプル材を使っていたら面白いかなと思って、これは遊び心のひとつですね…って、一体何をやっているんですかね(笑)。

─ あははは。

武田 木工はそのくらいですが、ハードウェアはすべて交換しています。例えば、ブリッジをアルミ材にしたのは、ここの質量を変化させると音にどう影響するかを検証するためです(笑)。軽量のアルミだけでなく、逆に重いブリッジを付けてみるなどいろいろと試してみましたね。今のところ軽いほうが気に入っています。

ネックジョイントプレートも、軽いチタンにしました。ネジももちろん換えていますね。ピックアップは何度か交換していますがまだいろいろと試してみたいところですね。それから、テンションピンを交換したのはけっこう大きかったかな。もともと5弦だけにテンションがかかるようなピンが打ってあったんですけど、外した時の鳴り方の方が好みでしたね。

─ そういった改造は、段階的に行いながら音の変化を確認していったのでしょうか。

武田 そうです。まずは、わかりやすいところでピックアップなどのサーキット部分を交換して…とやっていくうちに、こんなことになっていました(笑)。今のところ、かなり汎用性が高く使用できる音になったのかなと思っていますね。ボディもだいぶ軽くなり、ライヴでも使用したことがありますし、家でデモ音源を録音する時にもたまに引っ張り出しています。考えてみると、ジャズベタイプの5弦ってほとんど持っていなくて。そういうサウンドが欲しい時には重宝しています。コロナ禍でリモートレコーディングが主流になってからは、家で録ったベーステイクがそのまま採用されることも多く、このスクワイヤーベースを使用した楽曲もありますよ。

─ スクワイヤーベースはどんな人にオススメだと思いますか?

武田 これから楽器を始めようと思っている初心者の方には間違いなくオススメですよね。価格的にもお手頃ですし、なおかつ自分が思い描くサウンドを鳴らしてくれるポテンシャルも充分にあるので。僕はここまで手を加えていますが一番重要なネックはそのままです。逆に言うとそこが信頼できたからここまで改造して愛用する楽器になったんです。だからまずはこのスクワイヤーを弾き込んでみて、これを基準に“もう少しローの出るベースを”“もっとミドル/ハイに特徴のあるベースを”というふうに“自分の音”を探していくのがいいんじゃないかなと。

─ ところで今、RADWIMPSは制作中だそうですね。

武田 もうずっと制作が続いています。きっと皆さんに楽しんでもらえるようなお知らせができると思うので、期待していてほしいです。僕自身は今さらながら“日々の練習がいかに大事か”を再認識しているところです。最近はエレキベース以外の楽器を演奏する曲も多くなってきて、逆に今まで気づかなかったエレキベースの面白さ、醍醐味を味わっています。それは一つ、大きな収穫ですね。

─ では最後に、これから楽器を始めようと思っている人へアドバイスをお願いします。

武田 まず“音”をイメージすることが大切ですね。楽器を始める時、タブ譜などを使って練習する人は多いと思うんですよ。どのフレットのどの弦を押さえればいいのか、視覚的にわかるタブ譜はすごく便利ですが、まずはそのフレーズを耳で覚え、それが頭の中でしっかり鳴っていることをイメージしながら楽器を使って再現する、という流れをつかむクセをつけたほうが上達も早いと思うんです。そのほうが、曲全体の中でフレーズがどう機能しており、どう鳴っているのかを把握しやすい。自分が演奏している楽器だけではなく、他の楽器の音も意識して聴くようになる。最初はきっと大変だと思うのですが、長い目で見た時にはそのほうが音楽を深く理解できるようになりますよ。


武田祐介(RADWIMPS)

1985年生まれ、横浜出身。RADWIMPSのベーシスト。マーカス・ミラーなど技巧派のベーシストに憧れた影響もあり、スラップ奏法を駆使し、また緻密なアレンジにも定評があり2000年代以降の日本のバンドシーンの中でもとりわけ注目されるベーシストの1人。2016年に社会現象にもなった映画『君の名は。』では、RADWIMPSとして音楽全般を担当。第40回日本アカデミー賞で最優秀音楽賞を受賞した。メジャーデビュー15周年を迎えた2020年11月に〈15th Anniversary Special Concert〉を開催。2021年には東日本大震災の被災地への思いを込めたコンセプトアルバム『2+0+2+1+3+1+1= 10 years 10 songs』をリリースした。2022年3月公開の映画『余命10年』では、主題歌「うるうびと」や劇伴音楽を担当。
http://radwimps.jp

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