緑黄色社会 Actor tour 2022
4人組バンド緑黄色社会が、全国19都市20公演を廻る全国ホールツアー〈Actor tour 2022〉を開催中。フェンダーのグローバルプロジェクト『Fender NEXT 2022』の日本代表に選ばれた“リョクシャカ”のライヴでは、フェンダー楽器が数多く活躍している。今回は、2022年4月10日(日)昭和女子大学 人見記念講堂にて行われた東京公演の模様を、ツアーが続いていることもあり機材にフォーカスしてレポートしていく。
楽曲に応じて多彩なフェンダー楽器を持ち替え、色鮮やかな音世界を表現
〈Actor tour 2022〉は、2022年1月に発表した最新アルバム『Actor』を引っ提げたキャリア最大規模のホールツアー。多種多様な楽曲が揃ったアルバムの世界観を、圧巻のパフォーマンスとバンドサウンドで見事に表現している。
ツアー中盤となる東京公演では、会場に響き渡る長屋晴子(Vo,Gt)のヴォーカル、穴見真吾(Ba)のグルーヴィなベースプレイ、楽曲に彩りを添える小林壱誓(Gt)のギターサウンド、peppe(Key)のダイナミックな鍵盤さばき、さらには美しいコーラスワークやサポートの比田井 修(Dr)による堅実なプレイによって、有機的なアンサンブルを構築。緩急をつけたライヴの展開は、観客の心を終始つかんで離さなかった。
彼女たちの磨き上げられたパフォーマンスには、“ショー”のような見応えがある。それと同時に、バンドと観客の精神的な距離が近く、ライヴハウスさながらの温かな空気をも生み出せるのが緑黄色社会のライヴの魅力と言えるだろう。例えば「Landscape」では演奏前に手拍子のレクチャーを行い、観客が声を出せない状況でもファンとの交流を実現。それによって会場の一体感をより一層高めている。また、MCでは“思い出精算タイム”と称してこれまでの公演を振り返る場面もあったが、メンバーが楽しそうにツアーを振り返る様子からは、4人がいかに各地で充実した日々を過ごしてきたのかが伝わってきた。
衣装や舞台セットにおいてもショーを彷彿とさせたが、メンバーの演奏中の一挙手一投足には、演出だけに頼らず、あくまで自分たちのパフォーマンスで観客を楽しませようという気概が感じられる。そんな4人の想いも相まって、洗練されつつもアットホームというコンセプチュアルな公演が実現していたのだろう。
そんな今回のライヴでは、楽曲に応じて楽器を持ち替え、色鮮やかな音世界を表現していたメンバー。小林壱誓がメインで使用していたのはAmerican Professional Telecaster®(カラー:Crimson Red Transparent)で、コードを刻んで歌を支えたりギターソロで存在感のある音色を響かせたりと、あらゆる場面で本機が活躍していた。「Landscape」では、peppeのドラマチックな鍵盤の音色と対になるように、繊細なギターサウンドで楽曲を彩る場面も。さらに「アーユーレディー」や「たとえたとえ」では、パワフルなギターサウンドで長屋の歌声をプッシュ。ローからハイまで力強く響き、コード感が明瞭に聴こえてくるその音色は、バンドサウンドにグルーヴを生み出すのにも一役買っていた。
アンサンブルの要となっていたのは、穴見真吾が奏でるベースサウンドだ。Player Plus Precision Bass®(カラー:Cosmic Jade)のふくよかながらも芯のある音色は、流れるようなベースラインでも激しいスラップでも粒立ちが良い。そしてその豊かな鳴りは、音数が少ない場面でもサウンドの隙間を埋めるような懐の深さがあり、土台をどっしりと支えていた。また、「LITMUS」「Landscape」で登場したヴィンテージの深いグレーのJazz Bass®は、使い込まれ味の出ている渋いルックスだけでなく、アグレッシヴな音色でも存在感を発揮。ローはタイトに鳴り、ハイポジションでは一音一音の抜けが抜群。特に「LITMUS」のベースソロでは、楽曲をエモーショナルに仕立てる立役者となっていた。
長屋晴子は、最新シングルの楽曲「陽はまた昇るから」でAmerican Acoustasonic™ Telecaster®(カラー:Black)を使用。優しくも切なさを帯びたこの楽曲において、本機の担っていた役割は大きい。Telecasterのきらびやかさとアコースティックならではの温かさを兼ね備えた音色は、バンドサウンドに馴染みつつもしっかりと前に出てきて彼女の歌を後押ししていた。
ライヴ中のMCで小林が“まだ折り返しにも行っていない〈Actor tour〉ですが、東京公演でもう果ててしまおうかなというくらいの気持ちでやります”と宣言した通り、全身全霊のパフォーマンスで魅了した本公演。観客は手を挙げたりハンドクラップをしたり体を揺らしたりと、思い思いにライヴを楽しんでいて、彼女たちの演奏が会場にいた一人ひとりに届いていたことを実感した。“国民的な存在”を目指すと公言している4人の想いの強さが表れたこのツアーを経て、緑黄色社会はさらなる成長を遂げるに違いない。