UNLIMITED EXPRESSION Vol.10

Unlimited Expression | 田渕ひさ子(NUMBER GIRL、toddle)

フェンダーが提案する新機軸のギター「American Acoustasonic」シリーズに秘められた無限の可能性にフォーカスする「UNLIMITED EXPRESSION」。 今回登場するのは、NUMBER GIRLやtoddleでの活動をはじめ、サポートギタリストとしてもさまざまなフィールドで活躍している田渕ひさ子。フェンダーJazzmasterの魅力を知り尽くした田渕は、American Acoustasonic Jazzmasterをどう思ったのだろうか。


こういう音を表現したいと思った時に、100%応えてくれるのがJazzmaster

―  田渕さんにとって、フェンダーとの出会いはどのようなものだったのですか?

田渕ひさ子(以下:田渕)  中1の頃にギターを始めました。自宅からバスに乗って40〜50分のところにある楽器屋さんへ、ギターを眺めによく通っていたのですけど、フェンダーはお店の奥の高いところにいつも飾ってあって(笑)。“あれを手に入れれば、私もプロになれる!”くらいの憧れの存在でしたね。カタログだけもらって帰ってきて、家でゴロゴロしながらずっと眺めていました。

―  最初に手に入れたフェンダーのギターは赤いJaguarだったそうですね。

田渕  はい。高校生の頃にバイトでお金を貯めて購入しました。フェンダーと言えばTelecasterやStratocasterのイメージが強いですが、自分の性格がひねくれているのもあって(笑)、何かちょっと変わった形のJaguarに惹かれてしまったんですよね。金属の部分が多いじゃないですか。楽器屋さんに並んでいる時も、ビカビカ光って一際目立っていて。思わず手に取りたくなるギターが欲しかったので、迷わずJaguarを選びました。

―  かなりいろいろと改造をしてきたとか。

田渕  “改造魔”になっていました(笑)。ボディに穴を開けて、レスポールのテイルピースを付けてみたり、シングルコイルサイズのハムバッカーに交換したり。いわゆる“弦落ち”に悩んでいたというのもあったのですが、とにかく改造が楽しかったんですよね。それが、のちにJazzmasterを使いこなす上でかなり役立ちました。“弦落ち”で悩んだことはほぼないくらいです。

―  Jazzmasterは、楽器屋さんからすすめられて手にしたそうですね。

田渕  そうなんです。“Jaguarを使っているなら、きっと違和感なく使えるしいいと思うよ”と言われて。すすめられるがままに購入したのがきっかけです(笑)。それが、今もメインで使っているJazzmasterですね。

―  Jazzmasterの魅力は、どんなところにありますか?

田渕  真ん中あたりのツヤッとした感触って、Jazzmasterでしか出せない音だと思うんですよ。おそらくそれは、ブリッジのところで弦が“ヒャーン”と響く共鳴音も、すごく大きな要素になっているんじゃないかなと。音の太さもサステインも大好きで、自分が欲しいと思っているジャストな音が得られる…というか、ずっと長く弾いているうちにJazzmasterのそういうサウンドが好きになっちゃったんでしょうね(笑)。私が“こう弾きたい”“こういう音を表現したい”と思った時に、100%応えてくれるのがJazzmasterです。

―  Jazzmasterにまつわる、印象的なエピソードというと?

田渕  たくさんあるんですけど、本当にいろんなところで“Jazzmasterを買いました”と声を掛けていただくことですかね。恥ずかしながら“田渕さんに憧れて”というふうに言ってくださる方もいますし、そうではなくても会話の糸口として、“そう言えばJazzmasterを買ったんですよ”とおっしゃる方もいて(笑)。それってすごく嬉しいことだなと思います。

―  田渕さんに会うと、Jazzmasterの話がしたくなってしまうというか。

田渕  確かに私も、Jazzmasterを使っているギタリストの方にお会いすると、Jazzmasterの話をしたくなっちゃうんですよね。ちょっとした仲間意識みたいなものが、Jazzmaster使いの間にはあるような気がして。それってストラトやテレキャスではあまり見ない光景じゃないですか。そういうところもJazzmasterの好きな理由のひとつですね。


―  では、今回発売されたAmerican Acoustasonic Jazzmasterを弾いてみてのインプレッションをお聞かせください。

田渕  自分が持ち慣れたJazzmasterの形なので、やはりすごくしっくりきました。以前、American Acoustasonic Telecasterを弾かせてもらったのですが、こちらはJazzmasterっぽい、中音域が温かい感じもちゃんと再現されていて良いですね。ピックアップもハムバッカーが搭載されていて、その音が最高でした。弾いていて、本当に気持ちの良いサウンドです。

―  ご自宅でもAmerican Acoustasonic Jazzmasterを弾いていますか?

田渕  常に膝に乗せています(笑)。“よし、弾くぞ”と気合いを入れるまでもなく、気づけば手に取ってしまうというか。例えば家で、アンプをつながずにエレキを弾くと“エレキの生音”という感じになっちゃうじゃないですか。でも American Acoustasonic Jazzmasterだと、生音だけでちゃんと良い音がするので、弾いていてとても気分がいいんです。

―  アコギほど、音量も大きくないですし。

田渕  そうそう。アルペジオを弾くくらいなら夜中でもいける。それに、アコギはやっぱりボディが大きいから抱えるのが大変なんですよね(笑)。

―  American Acoustasonic Jazzmasterには、アコースティックトーンとエレクトリックトーンで構成される5種類の異なるトーンセットが用意されていて、セレクターのポジションの切り替え、MODノブの操作によってさまざまなサウンドの組み合わせが楽しめます。

田渕  どの組み合わせもいい音なのですが、個人的には5-A(Rosewood Dreadnought)と4-B(All-Mahogany Small Body)が気に入りました。あと、2-B(Lo-Fi Piezo Crunch)がすごく良かったです(笑)。確かにローファイかつユニークなサウンドですが、コード弾きとかするとすごく気持ち良くて。Jazzmasterならでは!という感じがしましたね。

―  American Acoustasonic Jazzmasterを、どんな人にオススメしますか?

田渕  バンドの中で、アコギとエレキを違和感なく切り替えられるので、そういうサウンドを求めている人にももちろんおすすめですが、ソロでライヴをされていたり、家でDTMなどをやったりする人も、これ1本あればさまざまなサウンドが出せるので重宝すると思いますよ。

―  田渕さんの近況も聞かせてもらえますか?

田渕  コロナ禍で、やるはずのライヴが中止や延期になることが続いてしまったのですが、そんな中でもサポートでやらせてもらっているPEDROは精力的にツアーをやったり、大きい公演をやったり、音源もコンスタントに出すなど攻めた活動をしていて、それに自分はとても救われました。今年になって、少しずつ他の活動も再開していて。NUMBER GIRLも、先日発表した野音ライヴから少しずつ稼働していく予定です。そして、宅録で作っているソロ作品ももうすぐリリースする予定です。

―  では最後に、ギターを弾いている読者へメッセージをお願いします。

田渕  今はSNSや動画サイトなど、発表する場がすごく多いですよね。“これで正しいんだろうか?”とか、“こんなので発表していいのかな?”と悩むこともあると思うんですけど、初期衝動ってすごく大切だし、音楽に正解はないと思うので、ためらわずどんどん発信してほしいですね。私も、みなさんのそういう作品をぜひ聴いてみたいです。


American Acoustasonic™ Jazzmaster® はフェンダーアコースティックギターの進化を加速させ、音楽をさらなる高みへと導きます。フェンダーとフィッシュマン®により共同開発されたアコースティックエンジンは、きっと素晴らしいインスピレーションを与えてくれるはずです。アコースティックのフォーキーなサウンドからエレクトリックギターのリズムトーンまでをこなすこのギターは、無限の可能性を秘め、新しい扉を開く革新的なモデルです。


田渕ひさ子
1975年、福岡県出身。13歳からギターを始め、19歳でNUMBER GIRLに加入。
紅一点のギタリストとして注目される。その強烈なインパクトのあるギターは、ギター・マガジン誌が主催する“史上最も偉大なギタリスト100人”に数少ない女性ギタリストとして選出されるなど、今や日本のロック・シーンを代表する女性ギタリストの一人といえる。
2002年、NUMBER GIRL解散後は自身がリーダーであるtoddle をスタート。また、bloodthirsty butchers、LAMA等のバンド活動以外にも、ギタリストとして、PEDRO、小谷美紗子、clammbon、など多くのアーティストと共演。他にも、楽曲提供やプロデュース、弾き語りなど活動の幅を拡げている。
2015年には、初の弾き語りソロアルバム「note wo tojite」を会場・通販限定でリリース。
16年7月にはtoddleの4枚目のNew Album「Vacantly」をリリース、初のセルフプロデュース作品となっている。
17年8月待望の弾き語りソロアルバム「360°」を発表。
2019年、NUMBER GIRLが再結成。
2021年4月には4年ぶりとなるソロ作品「rectangles」をリリース
› Website:https://hisakotabuchi.tumblr.com | https://numbergirl.com | http://toddle.to

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