ユアネス ONE-MAN LIVE TOUR 2022 “6 case”
ユアネスが全国ワンマンツアー〈ONE-MAN LIVE TOUR 2022 “6 case”〉を実施。1stフルアルバム『6 case』を携えて、結成の地・福岡を皮切りに全国8箇所を廻った今回のツアー。東京・LINE CUBE SHIBUYA（渋谷公会堂）にて行われたファイナルの模様をレポートする。
情景描写が鮮明な物語性のある楽曲、緻密に織り重なった重厚なサウンドで魅了
ツアー最終公演の会場は、キャリア最大のキャパシティとなるLINE CUBE SHIBUYA。広いステージの後方にはスクリーンが設けられていて、どのような演出を交えてライヴが行われるのかと期待を高めてくれる。
SEの「ZQ5QEBS」とともにオープニング映像が流れると、メンバーが登場。黒川侑司（Vo, Gt）が“〈ONE-MAN LIVE TOUR 2022 “6 case”〉、本日ツアーファイナル。最後までよろしくお願いします”と挨拶して、アッパーチューン「アミュレット」で幕を開ける。American Elite Jazz Bass®︎ Vを用いた田中雄大（Ba）の流麗なベースラインや、小野貴寛（Dr）によるタイトなリズムが疾走感を生み出し、観客は手拍子をしたり拳を上げたりして、開始早々から一体感がもたらされていた。
「BE ALL LIE」では、古閑翔平（Gt, Programming）が奏でるMade in Japan Hybrid II Telecaster®︎の音色が、時に激しく時に美しく、質感を変えながら楽曲を躍動させる。田中はスラップやハイポジションを駆使したフレーズなど1曲の中でさまざまなプレイを展開していたが、そのベースサウンドは濃密なアンサンブルの中で常に抜けて響いていた。その後は、息を吞むような小野の激しいドラムソロから「少年少女をやめてから」へと続く。冒頭からアグレッシヴな3曲で畳み掛け、会場の熱気を瞬く間に上昇させた。
“バンドとして、このキャパシティの会場でライヴをするのは初めてです。天井がめちゃくちゃ高い！ 最高！”と興奮した様子の黒川。実は演奏中に機材トラブルがあったそうだが、そんな様子は微塵も感じさせないところが頼もしい。そして、男女の台詞から成るポエトリーリーディングの楽曲「変化に気づかない」から「凩」を続けて披露したのち、“このワンマンライヴツアーは全8箇所で行っているんですけど、今すごく実感しております。（これまで）廻ってきた7箇所分のパワーがちゃんと出ています。任せてください。今日、めっちゃいいライヴができますわ”（黒川）と宣言した。
中盤は、物語性の強い楽曲と構築されたサウンドで魅了していく。「色の見えない少女」では、ミュージックビデオをスクリーンに投影することで楽曲の世界に観客を没入させつつ、切ないストーリーをバンド演奏でドラマチックに表現。田中のたゆたうようなベースラインと、古閑の美しい粒立ちのギターサウンド、土台を堅実に支える小野のドラムに加え、黒川の伸びやかな歌声が響き渡る。照明や映像といった演出と彼らのパフォーマンスとの相乗効果により、楽曲の情景が鮮明に浮かび上がってくるようだ。
黒川が“せっかくツアーファイナルだから、みんなでしゃべろうよ”と呼びかけると、“今のご時世でこうやって時間を作って遊びに来てくれたというのは、今日という日もそうですし、これからの活動の支えになります”（古閑）、“こうやって見に来て応援してくれることが背中を押してくれる力になるので、今日ここで会えてよかったです”（田中）と、それぞれファンへの感謝の気持ちを述べる。小野は、1曲目で田中が感極まった表情をしていたと明かして“それを見て俺もめちゃくちゃ泣きそうだった。ドラムを叩くのに集中すると目を瞑るクセがあるんですけど、今日は目をガン開いて、この光景を目に焼き付けようと思います”と語る。黒川は、世相もありアルバム制作前から不安を抱いていたことを吐露して、ツアーを開催できた喜びを噛み締める。そして“これからもみんなで楽しめるような音楽を提供できたらいいな”と決意を表した。
本編終盤は温かみのあるナンバーを披露。「籠の中に鳥」は日常を慈しむような映像がスクリーンに映し出される一方で、演奏では壮大な音世界を描き出す。古閑の煌びやかなアルペジオがアンサンブルを立体的にして、さらに黒川の熱のこもった歌声が聴き手の感情に訴えかけてくる。そして感動的な空気に満ちた中、本編を締めくくった。
アンコールでは、古閑がMC中に涙を堪えきれず声を詰まらせる場面も。田中も感極まった表情を見せながら、福岡時代の楽曲「色の見えない少女」について“この曲のMVをそのままこの会場に連れて来られたのは、やっぱり嬉しいですね”としみじみと語った。その後、黒川が“せっかくいただいたアンコールだから、元気な姿を見せて帰ろうぜ”とメンバーを鼓舞。「ヘリオトロープ」と、『6 case』のクラウドファンディング限定盤のみに収録されている「スポットライトさがして」を披露した。
また、ゲストにヴォーカリストのnemoiが登場して、シティポップを彷彿とさせるユアネス初のフィーチャリング曲「49/51」をデュエット。田中がダンサブルなグルーヴを牽引し、心地良いバックビートに乗せて観客はゆったりと体を揺らす。最後に黒川が“元気の出るような、僕らから100％のパワーを与えるような楽曲を”と述べると、ラストの「pop」へ。古閑の浮遊感のあるギターと田中のうねるようなベースがコントラストを生み、4人のエモーショナルなプレイで会場の熱は最高潮に。観客は拳を突き上げて、心ゆくまでライヴを堪能していた。
情景描写が鮮明な物語性のある楽曲、映像・照明を駆使した演出、さらには緻密に織り重なった重厚なサウンドで魅了したユアネス。その中でも各パートの音像が明瞭で、ひとつひとつの音が埋もれることなく会場の隅々までしっかりと届いていた。そういった楽器隊が支えているからこそ、黒川の芯の通った歌声が最大限活きてくるのだろう。ユアネスの楽曲は、広い会場で真価を発揮するということを感じさせたライヴだった。
photo by @hilf_ntlo, @kisa_nkmr
【SET LIST】
SE.ZQ5QEBS
01.アミュレット
02.BE ALL LIE
03.（ドラム繋ぎ）
04.少年少女をやめてから
05.変化に気づかない
06.凩
07.Alles Liebe
08.色の見えない少女
09.日照雨
10.泳ぎ手
11.躍動
12.Layer
13.Bathroom
14.「私の最後の日」
15.籠の中に鳥
ENCORE
01.ヘリオトロープ
02.スポットライトさがして
03.49/51 (feat.nemoi)
04.pop
ユアネス：https://yourness.jp/
