Ultra Test Drive Sessions | 日野”JINO”賢二 × 新井和輝(King Gnu)-後編-
JINOさんのAmerican Ultra Jazz Bass 音が良すぎて正直どうしようかなと(笑)
“限界とは超えるもの”をタグラインに冠し、最先端の技術を投入して製作されたAmerican Ultraシリーズを手に、確かなスキルを持つアーティスト2名によるセッションを、動画とインタビューで紡ぐ『Ultra Test Drive Sessions』。第3回目は、国内外問わずグローバルに活動するスーパーベーシストのJINOと、目覚ましい活躍を遂げているKing Gnuの新井和輝が登場。前編でのセッションを踏まえ、後編ではAmerican Ultraシリーズの魅力、そして“限界を越えるための秘訣”について話を聞いた。
― 後半のセッションはどうでしたか?
新井和輝(以下:新井) 実は僕、King Gnuではあまりスラップって弾かないんですよ。
日野”JINO”賢二(以下:JINO) 嘘つけ! だって今のスラップ上手かったじゃん!
新井 いやいや、こういう場でスラップを弾くのが初めてなので、ちょっと焦っている部分もあって。というのも、やっぱりタイム(テンポ)に出るんですよ。普段からもっとジャムセッションをしなきゃいけないなって思うんですけど…。馴れないのもあって、ちょっとハシっちゃうんですよね。その時にJINOさんが幅のあるバッキングを弾いて、ドッシリとしてくれるので、“あ、危ない”って気付くんです。何て言うんだろう、JINOさんの音には長さがあって、その中で自分の音を見つめられました。それでJINOさんってやっぱりすごいなと思いました。勉強になります。
JINO 和輝、かわいいでしょう(笑)? 自分の悪いところを言えるのは大きな人間だからだよ。だから俺もライヴでミスをした時は、ライブ直後に“間違えちゃった、ごめんなさい。今度また頑張ります!”って自分の悪いところを話すよ。そうすると、向こうはもう何も言えないじゃない? “ああ、また頑張れよ”って言われる(笑)。だから今みたいに、自分の弱点を最初に言えるのはすごいよ。
新井 恐縮です。
― JINOさんは後半のセッション、どうでしたか?
JINO いい感じの会話になったよね。楽しかったもん。あっという間だったしね。
新井 そうですね。
JINO 最後の着地は、“ここらへんかな?”って終わりにした感じ。でも、お互いの音を聴きながら弾いているからちゃんと着地できた。お互いの音を聴きながら演奏していたからテンションも上がったし、何時間でも演奏できたね。
― ずっと見ていたかったです。
JINO “能ある鷹は爪を隠す”で、和輝はまだ全部を見せていないから。テクニカルなことを。師弟関係だから俺に対してリスペクトがあるからかもしれないけど、70〜80%でも絶対にカッコいいから和輝は本当に大丈夫だよね。
新井 ありがとうございます。
― さて、今日使っていただいたAmerican Ultraシリーズですが、今後どんな場面で使っていきたいですか?
新井 JINOさんが所有しているAmerican Ultraシリーズがものすごく気になってしまって…。僕が使っているモデルと、プリアンプとピックアップはまったく同じなんだけど木材が違う。あとは、弦の本数が違うだけでここまで音が違うんだなと。JINOさんの選りすぐりの1本なんですけど…。ちょっと弾かせてもらってもいいですか?
JINO もちろん!
JINO 重さもいいでしょ?
新井 はい。音が良すぎて、正直どうしようかなと(笑)。本当にAmerican Ultraシリーズの4弦で、いいモデルを探そうと思いましたね。King Gnuでは5弦ベースを弾くことが多くて、セットリスト的にベースを持ち替える時間があまりないのもあるんですけど、それを差し引いても4弦がやっぱりエレキベースだなっていう気がしました。
JINO だってほら、5弦ベースが生まれるまで、俺たちのベースヒーローはみんな4弦ベースで弾いてきたから。俺も5弦は使っているよ。American Ultraの4弦、King Gnuでも使ってみたら?
新井 そうですね。今はPAの人にも話を聞いて、American DeluxeとAmerican Ultraの5弦を使い分けているんです。でも、ウルトラのほうが倍音が出るんですよ。バンドではフィルターをかけることが多いんですけど、かかりはウルトラのほうがすごく良くて。
JINO フィルターをかけるってどういうこと?
新井 オートワウをけっこう使うんです。その時にアメデラのほうが音が沈むから、そのぶんかかりが良くなくて。そういう意味で、フィルターをかける時はウルトラを使いますね。
― JINOさんはどんな時にこのAmerican Ultraを使うんですか?
JINO 実は、初めてこのベースで録音したアルバムがもうすぐ出るんですよ。ジェフ・ミルズと一緒にやったアルバムで。ジェフ・ミルズってテクノを作った人だから。初めてAmerican Ultraを使って丸々レコーディングしました。
新井 それはすごく楽しみですね!
JINO うん、すごくいい音だったよ。
― このAmerican Ultraには“限界とは超えるもの”というコンセプトがあるのですが、お2人はプレイヤーとして壁にぶつかった時、これまでどうやってその限界を超えてきましたか?
JINO でかいバネを買ってジャンプ!
新井 跳び箱的な感じですね(笑)!
JINO つまり、心はウルトラマンですから。シュワッチ!と言いながらバネを使って、ウルトラで乗り越える!
新井 いただきました!
JINO 和輝はどうやって乗り越えてきた?
新井 どうだったんですかねぇ。JINOさんは?
JINO 童貞と同じだよな。怖いけど頑張る(笑)!
新井 でも、そういうことですよね。考えずにまずは踏み込んじゃう。僕も昨日まで“明日はJINOさんとセッションだ。やばい”と思ってソワソワしていたんですけど、もういいやと思って諦めて寝ちゃいました(笑)。だから、踏み込んでみるのが大事なのかな。
JINO そうだよ。だって、コントロールできないものってあるじゃん。例えばタクシーに乗って渋滞につかまって、“運転手さん、もうちょっとアクセル踏んでよ!”って自分にプレッシャーをかける人と“もう遅れちゃう。しょうがないな。任せまーす”、どっちが長生きすると思う?
― 任せまーす!のほうでしょうね。
JINO そうなんですよね。俺もこの取材に20〜30分遅れて来てるから(笑)。タクシーの運転手さんが優しい人で、俺が何も言わなくても“どうしますか?”って聞いてきたから、“いや任せます。早く行けたら嬉しいです”ってこれだけ。遅れるのならもうしょうがない。“JINOさんと明日やるんだ”はかわいいけど、それを乗り越えて“もうどうでもいいや”って。さすが。そこだよ、音楽をやる上で必要なものって。
新井 そうですね。
JINO “どうしよう”と怖がっていたらどうにもならない。もう何でもいいやって頑張る、ただやるしかない。
新井 本当にそうですね。意外と人前に出ちゃうのがいいのかもしれないですね。まず水に飛び込んで、泳ぐしかない状況を作り出す。自分で自分を水中に落とせるかどうかです。
― たしかに、いくら陸で水泳のイメージをしてもしょうがないですもんね。最終的に水に入らないと泳げないですから。
新井 JINOさんに初めて“アシスタントに入りたいです”と言ったのもその一歩でしたから。で、こういう風に一緒にセッションできるようになったわけじゃないですか。振り返ると一歩一歩の積み重ねだなって。考えずに飛び込め!ということですね。
AMERICAN ULTRA SERIES
フェンダーのUSA製ラインナップの新しいフラッグシップとなるUltraシリーズは、卓越したプレイヤー向けのハイエンドスペックを満載しています。ミディアムジャンボフレットを装備した10〜14インチのコンパウンドラジアス指板をフィーチャーした独自Modern Dシェイプネックは、丁寧なエッジのロールオフ加工が施され、ボディとネックヒール部には新たなコンター加工を採用。まるで体の一部に溶け込むような快適な弾き心地を実現しています。
Jazz Bass®モデルには新ヴォイシングをフィーチャーしたプリアンプ内蔵のUltra Noiseless™ Vintage Jazz Bassピックアップを搭載し、高出力でありながら透明感のある、広いダイナミックレンジを確保したサウンドが得られます。HiMass™ブリッジが豊かなサスティンとタイトなボトムを実現。
AMERICAN ULTRA JAZZ BASS® V(右)
AMERICAN ULTRA JAZZ BASS®(左)
PROFILE
日野”JINO”賢二
幼少の時、父である日野皓正(トランペッター)とともにNYに移住。9歳よりトランペットを始め、16歳でベースに転向。17歳の時、ジャコ・パストリアスに師事する。19歳よりプレイヤーのみならずミュージックディレクターとしてプロ活動を開始。89年にはアポロシアターのハウスバンドの一員として出演。その後、父の日野皓正や叔父の日野元彦のアルバムに参加、NYブルーノートなどのライブハウスを中心にベーシストとして活動。2003年、アルバム『WONDERLAND』でのデビューを機に本拠地を日本に移して活動。数々のライヴサポート、レコーディングワークと共に、エレクトロニック・ジャズ・カルテット SPIRAL DELUXEでの活動や、ジャズ、ファンク、R&Bをクロスオーバーさせた自身のプロジェクトJINO JAMなど、多岐に渡って世界の音楽シーンで活躍するスーパーベーシスト。
› Website:https://www.jinobass.com
新井和輝 -King Gnu-
東京藝術大学出身で、独自の活動を展開するクリエイターの常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt,Vo)、勢喜遊(Dr,Sampler)、新井和輝(Ba)、井口理(Vo,Kb)の4名体制で始動。2017年4月、バンド名を“King Gnu”に改名。2019年、2ndアルバム「Sympa」でメジャーデビュー。2020年1月15日発売の最新アルバム「CEREMONY」はオリコン週間アルバムランキング及びデジタルアルバムランキングの2部門で初登場1位を獲得。とてつもない速度でその人気を拡大している。
› Website:https://kinggnu.jp