Fender Custom Shop Experience | 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)の公開カスタムオーダー
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フェンダーが誇るトップライン・ブランド「FENDER CUSTOM SHOP」の魅力を堪能するイベント『FENDER CUSTOM SHOP EXPERIENCE』が6月15日、原宿・表参道エリアの2会場で開催。表参道ヒルズ スペース オーでの“ステージ会場”では、新藤晴一(ポルノグラフィティ)、斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)、長岡亮介(ペトロールズ)による“公開カスタムオーダー”に加え、INORAN(LUNA SEA)がKen(L’Arc~en~Ciel)をゲストに迎えてのスペシャルライヴ&トークセッションを開催。ここでは、斎藤宏介の公開カスタムオーダーの模様をお届けする。
表参道ヒルズ スペース オーにて行われたトークイベントでは、アーティストが目指す“最高の1本”を実現するべく、シニアマスタビルダーにギターをオーダーする企画が実現。“Experience #2 Custom Order”では、UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介がシニアマスタービルダーのジョン・クルーズにオーダーを行うことになった。
斎藤はFENDER CUSTOM SHOPに対するイメージとして、「フェンダーの中でも高級な、間違いないものを作ってくれるイメージがあります。値段も張りますけど、そのギターを手に入れたら自分がギタリストとしてランクアップできるわけですから、ここ表参道ヒルズで買い物をするイメージですね(笑)」と例え満員の観客を沸かせる。
斎藤は「せっかくジョンさんとやらせてもらえるので、僕達じゃないと作れないギターを作ってみたいですね」と意気込んだあとに製作したいモデルを聞かれ、迷うことなくStratocasterを挙げた。3ピースバンドということもあり、1本のギターで幅広いサウンドメイクができるギターというのがその理由だ。
「僕のバンドはいろんなことがギターに求められるので、それに応えるにはStratocasterが適しています。うわ物がギターしかないので、飽きさせずにワンマンライヴをやるとか、レコーディングでアルバム1枚を通して聴いてもらうには間違いなくStratocasterだと思っています」とストラト愛を語った。
この日、斎藤はMichael Landau Signature 1963 RELIC STRATOCASTERを持参。マルチレイヤー処理が施され、サンバーストの上からフィエスタレッドをカラーリングしているのが特徴だ。さらに、部分的に塗装が剥げて下の木材も見えるビジュアルがオリジナリティをうかがわせる。
ジョンは「この塗装は得意としているので、今日はいろいろなアイデアを聞かせてほしいです。この色は特に自分でも気に入っていて、ゲイリー・ムーアが使っていたフィエスタレッドだし、得意なので作り甲斐があります。いろんな音楽に対応できるStratocasterを選んだのもいいチョイスです。新しいカスタムギターができた時、女性ファンが倍になることを保証します(笑)」と自信たっぷりに語ると、「モテるということですね、最高です(笑)」と斎藤も応える。
ここで木材の選定に入り、ボディとネックの好みを聞かれた斎藤は「あまりこだわりが強いわけではないですけど、選ぶ時はアッシュボディが多いですね。指板はローズウッドのほうが歌っていて気持ちいいことのほうが多いです」と述べ、実際に自分たちの曲をワンフレーズ弾いて「ベーシックはこのギターでありつつ、もう少し細かいところをブラッシュアップしていけたらいいなと思っています」とリクエストを告げる。
ジョンは「生き生きとした音ですね。60年代のストラトはアルダーボディにローズ指板がスタンダードですけど、アッシュボディの組み合わせも可能です。ローズのキャラクターが出やすい木材でもありますから。現在、お気に入りのナンバーワンギターをお持ちでしょうけど、カスタムビルダーの一番の目標は、これから作るギターがナンバーワンになることです」とボディとネックの組み合わせで生まれる個性を強調。
ステージ上にはもう1本、メイプル指版でリバースヘッドの黒いStratocasterを持ってきた斎藤。こちらはJimi Hendrix Voodoo Child Signature Stratocasterで、ジミ・ヘンドリックス仕様と言えるモデルだ。こちらも斎藤が実際に弾いてみせる。
「これはパワーがすごいんです。ずっしりしていて、ネックの握りも持った感じと音が一緒でがっしりしている。ローがしっかり出て、弾いた瞬間にバーン!と広く音が出てくる感じ。僕は歌っているときに、あまりミドルが出てほしくないんです。歌のふくよかな部分とギターがぶつかり合う感じなので。どちらかと言うと上(高音域)がキラッという感じがほしいかな」と好みの細部を語ると、ジョンは「今の2本の試奏を聴いて感じたのは、ランドゥ・モデルはアルダーとローズの組み合わせで音がダークになる傾向があるということ。でも、アッシュとの組み合わせでいいとこ取りというか、アッシュの明るい部分とローズのダークな部分を組み合わせることで違った音を出すことができます。また、逆のアプローチも可能で、アルダーボディにメイプルネックを組み合わせると、今度はボディが暗めでネックが明るめになる。それも面白い組み合わせですね」と提案を出す。
さらにピックアップの選定に移り、サウンドの好みを語る斎藤。「フロントのふくよかな感じ、センターの広がる感じが好きなんですけど、リアだけもうちょっとパワーが欲しいですね。ひょっとしたら、リアだけ出力高めのピックアップにするのもアリかなと思っています」と具体的に要望を挙げる。
これに対してジョンはいくつかのピックアップを推薦。「リアにはいろんな種類があるので可能性があります。“ヴォーントーン”というピックアップを数年前に開発したんですけど、出力は少し低いのですが、クリーンで弾いた時にきらびやかな音がしつつ、ゲインブースターで持ち上げた時にちゃんと歪んでくれる。これは実際にスティーヴィー・レイ・ヴォーンのストラトを分解した時、その構造を見て、そこからインスパイアされて作ったピックアップです。きらびやかで高音の伸びもいいです。あと、リアポジションで一番気に入っているのはTelecasterタイプ。特別なやり方ですけど、白いピックアップカバーを作ってストラトに入れたことがあります。これもリアでバイト感が出せます」とかなり特殊な組み合わせも提案。
他にもいくつかのピックアップを勧められたが、「試奏できる機会があるといいですね。弾き比べてみるとわかると思うので。今は決めきれないかな…」と斎藤が悩んでいると、「ピックアップの組み合わせは無限にあります。ただ、少しプレイを見させていただいて、クリーンの大事さもあるしリアで歪ませる場面もあるので、プレイスタイルや音のチョイスを擦り合わせて作っていけば、今のようなサジェッションができると思ますが、最終的に選ぶのはプレイヤーですから。ピックアップに関してはそれぞれのマスタービルダーのこだわりがあって、他の人のモデルには使われないものもあるので、特別なパッケージにして個人的に送ります」という計らいで、ピックアップの決定は今後に持ち越された。
そして、ボディのカラーリングについて「マルチレイヤーが気に入っているので、そこは残しながら色のバリエーションは変えてもいいかな」と、マルチレイヤーへのこだわりを斎藤が語ると、「個人的にはオリンピックホワイトがおすすめです。3トーンサンバーストの上にオリンピックホワイト。いろんな色の組み合わせでオーダーする方が増えていて、下に黒とかサーフグリーンを入れてもいいですね」とジョンがアイデアを出すと、「サンバーストの上にオリンピックホワイトは思っていた通りです。その上にエイジド加工もしてもらって」とイメージ通りのカラーリングに話が進む。
「いいチョイスです。オリンピックホワイトをカッコ良くエイジドさせて、ラッカーにクラックが入ったあと、50~60年弾き込んだようにできます」とジョンが得意のカラーリングであることを語ると、「確定ですね(笑)」と斎藤が嬉しそうに笑い一気に完成に近づいた。
細かいパーツやアセンブリについては今後、さらに詰めが必要になるが、今回のプロジェクトから生まれるギターの愛称を聞かれた斎藤。出来上がった時、ファンにとっても“あの時に話題なったギターだ”とわかる名称がいいのでは?と司会者に振られると、「“ヒルズ”でいいんじゃないですか(笑)」と冒頭の話にかけて答えると、ジョンがモテるギターの話から「“レディキラー”にしましょう。もっとファンが増えますよ(笑)」と提案。「レディキラーストラトキャスター、かっこいいですね」と語り、嬉しさを隠せない斎藤だった。
最後に斎藤が「本当に光栄です。いろいろとアイデアがもらえたのも嬉しいですし、世界の一流プレイヤーのギターを生み出している方とこうしてお話しできたのも嬉しい。さらに、そのギターを自分で弾けるというのもミュージシャン冥利に尽きるので、恥じることのないミュージシャンになろうと改めて背筋が伸びました。ありがとうございました」と感謝を述べると、「さらに表現力が豊かになって、音楽がより良く演奏できるギターを作るのが我々の使命ですので、楽しみにしていてください」とジョンが抱負を語りイベントは終了。貴重な1本が誕生するプロセスを垣間見せてくれた。
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