Player Plus Studio Sessions: Powered by Fender -前編-

アメリカ/イギリス/オーストラリア/メキシコ/日本で開催され、プロ以外の一般プレイヤーを対象にプロスペックのレコーディングスタジオとエンジニアの録音環境をプレゼントする、アーティスト応援プログラム『Player Plus Studio Sessions: Powered by Fender』。数多くの応募者の中から2名が選ばれ、昨年12月下旬に当選者のひとりであるKoyo MoritaさんがFREEDOM STUDIO INFINITYにてレコーディングを行った。それだけでもスペシャルな体験だが、この日は何と審査員も務めた日本屈指のギタリスト“Char”がサプライズ訪問! ブルースセッションを行うなど、夢のようなひと時となった。本プロジェクトに対する想いを、Koyo Moritaさん、そしてCharに聞いた。

Player Plus Studio Sessions: Powered by Fender

終わりたくないと思うほど楽しかった(Moritaさん)

― 今回のキャンペーン『Player Plus Studio Sessions: Powered by Fender』についてどう思いましたか?

Moritaさん ギターが1本もらえるということと、レコーディングスタジオを使わせていただけるということが、僕の中でとても魅力的でした。結果はどうなるかわからないけど、チャンスをつかめるのならば挑戦してみたいなと思って応募しました。当選の連絡が来た時は信じられなくて(笑)。当選が決まってからは、スタジオレコーディングするための準備をしてきました。

― 今回、どのような曲をレコーディングしましたか?

Moritaさん コロナ渦もあって、ソロギターのスタイルが多かったので、今回は挑戦の意味もこめてソロギターのオリジナル曲をレコーディングしています。ギター1本だけの作品です。

― レコーディング中、スタジオにCharさんがサプライズで遊びに来てくれました。

Moritaさん 最初は何が起きたのかわからなくて。“あ、Charさん”みたいな感じだったんですけど、あとから起こっている事態のヤバさに気づきました(笑)。Charさんにお会いしたあと、音を録り直したりしたのですが、頭が切り替えられなくて(笑)。あまりにもインパクトが大きかったですね。ここ何週間は、たぶん余韻に浸ると思います。

― お二人でブルースセッションもされましたね。

Moritaさん バッキングのグルーヴがすごかったです。僕のリズムに合わせてくれていると思うのですが、すごく自分的に調和させてもらった感じがあって。終わりたくないと思うほど楽しかったですね。

― プレゼントされたフェンダーのPlayer Plus Nashville Telecasterですが、弾いてみていかがでしたか?

Moritaさん 弾いていてボディに振動が伝わりますね。最近は、メインギターよりもずっとこのギターを弾いているくらい弾きやすいです。僕はカントリーが好きなのですが、カントリーの音色にも合うし、普通のTelecasterとは違った作りで、他の音色も出せて、さらに使い勝手も良くなっている印象です。これから、メインギターになると思うくらい使いやすいです。

― フェンダーというブランドに対する印象は?

Moritaさん 小さい頃からギターを弾いていますけど、ギターのメーカーと言えばフェンダーというイメージですね。憧れのメーカーです。最近使っていたギターは違いましたが、それまではフェンダーのStratocasterを使っていましたし、ギターアンプも自分のプレイスタイルに合っているという理由もあって、フェンダーアンプを弾いたあとは他のアンプが弾けないくらいです。楽器屋さんでも、試奏する時は絶対にフェンダーを選びますね。僕にとってフェンダーはなくてはならない存在です。

― 今後の音楽活動は?

Moritaさん 今はギター講師をメインでやっていますが、ギター講師が忙しくなると、自分の演奏活動ができない状況が続いてしまいます。今はコロナ渦の影響もあって、レッスンもオンライン化を進めています。今後、オンライン講座に切り替えると時間にもう少し余裕ができるので、自分の演奏活動をもっと積極的にやっていきたいですね。

ギタリストとしての表現をし続ける人であってほしい(Char

― フェンダーがグローバルに行ったキャンペーン『Player Plus Studio Sessions: Powered by Fender』では、Charさんは審査員としても関わりました。今回のキャンペーンについてどう感じますか?

Char アメリカ的な企画だよね。アメリカは店で演奏しているバンドがたくさんいるんだよ。ホテルのラウンジは毎晩4回ステージとかしているし、小さいレストランでも週末はバンドが生演奏していたり。やっぱり向こうは、ライヴをやる場所が日本と違って圧倒的に多いじゃない? そうやって鍛えられている人が、レコーディングスタジオに入りたいっていう想いはあると思うんだよ。だから、レコーディングというのはミュージシャンたちの願望でもあるよね。でも、今回Moritaくんみたいな人が出てきたのは、本当にこのキャンペーンをやって良かったなと思うべきだし、俺もそう思うしね。

― レコーディング現場でCharさんとサプライズ対面。その後、ブルースセッションまでされました。

Char もともと審査に応募してくれた映像と音源を聴いて、めちゃくちゃギターのことをよく知っている人だなって思った。まさか、さっきやったような12小節のブルースで、ここまで遊べるとは思っていなかったね。ま、考えてみれば当然なんだけど。あれができないと他もできないから(笑)。セッションで充分遊べていたしね。これは言語を超えた会話だから、本当にギター好きなんだなぁって安心したね。

― Charさんにとってレコーディングとは?

Char レコーディングって大きく分けて3つあって、1つ目は記録としてのライヴレコーディング、2つ目はクラフトとして、スタジオアートとしての作り方。3つ目はバンドで“せーの”で、その空気感をどうやって録るのか、この3つに限られる。基本的に俺の場合はバンドで“せーの”で録って、クラフトワークも交えながら作業していくことが多いね。ライヴ録音は特別だけど。

― Charさんがレコーディングで大事にしていることは何ですか?

Char 一番大事なのはドラムの音。一番エアーを使うし、でかい生音だしさ。だから、いくら編集ができようとできまいと、レコーディングでドラムがそのプレイヤーに一番合っているスタジオを選ぶのが大事。広すぎてもダメだし狭すぎてもダメ。ギターなんかどうにでもなるんだよ。下げてくれって言ったら終わりだから(笑)。ドラムはベードラやスネア、シンバルとか少なくてもマイク10本くらい使うことになるからさ。時間をかけてドラマーが納得する音を作ったら、レコーディングっていうのはラクなんだよ。良いバンドの良いレコードは、ドラムの音が良いよね。ギターは個性がもっと出るから。俺らの時代って、エフェクターはワウとファズとテープエコーくらいしかない頃だから、なるべく俺はクリーンで録っている。あとから自分のエフェクターをつないで音を作るけどね。

― Charさんは2021年にデビュー45周年を迎えましたが、中学生からのスタジオミュージシャン時代も含めると50年です。

Char 4チャンネル、8チャンネルの時代からやっているから、この50年間で機材の発展とともに、こちらもそれに合わせていくしかないというか。それが良かったことや悪かったこともあったけど、結局はリミットの問題だよね。“これしかチャンネルがない”っていう中でやるのと、今のPro Toolsで無尽蔵にできるもの。要するに、今はその上で編集ができちゃうわけじゃない。今のレコーディングで考えているのは、どこまで編集をするべきか、どういう空気を残したいかだと思うんだよね。

― 新作アルバム『Fret to Fret』はいかがでしたか?

Char 16年間、アルバムを出していなかったんだけど、1つの理由はそれなの。CDを作ったって面白くないなって。だから、今回はアナログレコードを作る。A面とB面を足して44〜45分の作品を作るという前提で考えると、やっぱりスタジオでアナログ録音がいいに決まっている。CDを作って“どうせならアナログレコードも出しましょうよ”じゃなくて、アナログレコードを作って“CDを出してもいいよ”っていう。

― これからプロフェッショナルを目指すプレイヤーへ、アドバイスをお願いします。

Char “プロフェッショナル”の定義なんだけど、俺らの時ははっきりしていてレコードデビューした人がプロ。それ以外のキャバレーでやっている人もプロだったし、お金をもらっている人はプロだった。ゴールはレコードデビューだったけれど、今はその定義がないから。例えばギタリストだっていうのであれば、ギタリストとしての表現をし続ける人であってほしいし、ひいては自分で作詞作曲をできるアーティストになってもらいたい。それがギターの良いところだから。気軽に持って歩いて作曲できるからね。自分もこの先、生きている限りはギターを弾いているだろうし。やっぱり、その歳の新曲を作りたいなと常に思っているよ。今の時代じゃないと表現できないこと、今の俺じゃないと表現できないことって必ずあるからね。

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Char

1955年6月16日、東京生まれ。本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。ZICCA REDORDS主宰。8歳でギターをはじめ、10代からバックギタリストのキャリアを重ねる。1976年、「Navy Blue」でデビュー以降、「Smoky」「気絶するほど悩ましい」「闘牛士」等を発表。Johnny,Louis & Char結成翌年、1979年に日比谷大野外大楽堂にてフリーコンサート〈Free Spirit〉を行う。1988年、江戸屋設立以降、ソロと並行してPsychedelix、BAHOでの活動を行う。2018年、ギターマガジンによる、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票『ニッポンの偉大なギタリスト100』にて、1位に選ばれる。オリジナル楽器ライン“ZICCA AX”も展開中。
https://www.zicca.net

【ニューアルバム】
16年ぶりのオリジナルアルバム「Fret to Fret」絶賛発売中。
https://www.zicca.net


Koyo Morita

奄美大島出身。幼い時から三味線、チヂン ( 島の太鼓 ) などで奄美の音楽に親しみ、7 歳からギターを始める。ヤマハの主催するTEENS’ MUSIC FESTIVALに出場し、ギター雑誌 Go!Go!GUITAR に掲載される。高知大学在学中に作曲を学び、卒業後に関西で施設演奏、レコーディング、バンドサポート、BGM など幅広く活動を行う。現在はギター講師をメインに活動し、これまでに150名以上の生徒さんを指導。各SNSにて演奏動画などを公開中。
https://linktr.ee/koyomorita

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