Fender Flagship Tokyo Special Event with 新井和輝

フェンダー世界初の旗艦店として、連日多くの人々が訪れているFender Flagship Tokyo。新しいシグネイチャーモデルであるDeluxe Jazz Bass® V, Kazuki Arai Editionが発売された当日8月22日に、King Gnuのベーシスト、新井和輝によるトークイベント〈Fender Flagship Tokyo Special Event with 新井和輝〉が開催された。その模様をレポートする。

ニューシグネイチャーモデルの実演からファンとの交流まで濃密なひと時

日本のバンドシーン、音楽シーンを牽引するKing Gnu。そのベーシストである新井和輝のトークと演奏を間近で観れるチャンスとあって申し込みには多数の応募があり、来場した人の中には三重県から駆け付けたという人も。イベント開始定刻に新井が登場すると大きな拍手に包まれた。

新井がFender Flagship Tokyoに来たのは今回で3回目だそう。その印象やショップ内のオススメの場所を聞かれると「そもそも一つの楽器メーカーで、その商品しか扱っていない建物って初めてですよね。フェンダーってすごいなって思います。3階がカスタムショップフロアになっているんですけど、展示の仕方が完全にアパレルのハイブランドなんですよ。あと、控え室にいる間にトイレに行ったんですけど、3階のトイレはマジでやばい(笑)。俺、今楽器屋にいるんだよな?って気持ちになるぐらいです。ぜひ3階のトイレに行ってみてほしいですね」とユーモアを交えて答え、緊張気味のオーディエンスもリラックスしていく。


現在、King Gnuは制作期間中ということで、「昨日も今日も明日も制作で、今は4〜5曲を並行して制作しているのでちょっと大変です。アルバムのことばかりやっているから、夏らしいことは何もしていないです。ちょっと前、みんな花火大会に行っていたじゃないですか。いいなって思いながら家でアレンジしていましたね(笑)」と近況報告をしてくれた。

そんな中、King GnuはTVアニメ『呪術廻戦』第2期「渋谷事変」の主題歌でもある新曲「SPECIALZ」を9月6日にリリースするが、この曲に関しては「King Gnuの過去曲が好きな人、特に初期の曲を好きでいてくれた人にはハマると思います。いい意味でアングラな曲だけどポップだし、King Gnuらしいサイケな感じも入っている渾身の一曲なんじゃないかなと思っています」と語ると、オーディエンスからはリリースを待ちわびる拍手が起きた。

さて、この日に〈Fender Flagship Tokyo Special Event with 新井和輝〉が開催されたのには理由がある。実はこの日、新井のシグネイチャーモデルDeluxe Jazz Bass V, Kazuki Arai Editionが発売されたのだ。そのニューシグネイチャーの特徴について語る新井。


「ボディは通常のものよりも小さいのですが、これは僕がずっと使ってきたベースの形を踏襲しています。あとは、プリアンプとピックアップも踏襲しています。このピックアップはUltra Noiseless™ Vintage Jazz Bass®で、ベースで言うと心臓部分。これを載せている現行のフェンダーベースはAmerican Ultraなのですが、車で例えると理想のボディに理想のエンジン(ピックアップ)を積んだのがこのベースなんです」

専門的な話もしつつ、ビギナーのために終始わかりやすく説明する姿が印象的。“こんな先生がいたらいいなぁ”と会場にいたみんなが思ったはずだ。また、質問に対しても明け透けに答えるのも印象的だった。例えば“リフはどうやって考えますか?”という質問には、「例えば『Tokyo Rendez-Vous』という曲のベースリフは常田が考えたし、『飛行艇』のイントロとかそういうのを考える力は全然なくて。僕はグルーヴを出すことに集中したり、思ったことを弾いたりするタイプなので…。印象的なリフってどうやったら思い付くんでしょうね(笑)?」と答えていた。

これだけのスタープレイヤーであれば、質問をパスしたり自分をよく見せるための答えだってあり得るのだが、新井はそれをしない。そういう人柄がこのDeluxe Jazz Bass V, Kazuki Arai Editionにも現れている。

「今回は前作よりも値段を抑えたくて、塗装がラッカーからポリになっています。本当は20万円を切るのが目標だったのですが、僕もそのまま使えるというのが一つのコンセプトなんですよ。実際に本人が持っている楽器は高価で、その廉価版を出すのも考えたんですけど、買ったベースがそのままステージで使われているって何かアツイし信用できるなって。そうなると実際にステージで使えないと意味がない。だから僕が使うレベルを維持しつつ、どう価格を下げるのかずっと擦り合わせを行ったんです」

そう話すと、Deluxe Jazz Bass V, Kazuki Arai Editionによるスペシャルな演奏を披露してくれた。演奏後は新井の要望でオーディエンスからのQ&Aタイム。限られた時間の中で、3名が新井に質問をぶつけた。


Q. スラップベースがどうしてもうまく弾けません。オススメの練習方法はありますか? ちなみに5弦ベースを弾いています。
「5弦ベースだと難しくなっちゃうんだけど、まずはサムピングと言って、親指で音をしっかりと出さないと意味がないんです。なので、まずは親指の練習からだと思います」

Q. 二つ質問があるのですが、アドリブとか聴かせる時は音楽理論が生きているのですか? もう一つはどのメーカーの弦を張っているのか教えてください。
「理論は多少勉強したけれど、あまり気にしなくていいと思っています。“音楽理論を知らないとダメ”と思うかもしれないけど、感覚で弾くのもすごく大事。俺はどちらかというと音楽理論を勉強してきたタイプだけど、常田は“これのここだけ下がったやつ”みたいな表現もけっこうあって、それでも音楽はできるから。ただ、調(キー)がドレミファソラシドなのかマイナーなのかだけを大まかに把握しておけば、アドリブも基本的にはできるので問題ないと思います。弦はフェンダーのものを張っています」

Q. King Gnuのベースのフレーズの中でも「白日」のAメロや「Sorrows」が特に好きですが、そういうリズムの型はどのように生み出しているのですか?
「まずはその曲がどういうノリなのかが大事。『白日』も『Sorrows』も曲のテンポ感やノリは違うけれど、曲が求めているノリは少なからずあるはずなんです。その曲が求めているノリを正直に出すのが正解なのか、あえて違うノリをぶつけたほうがいいのか。そのためには、色んな曲をいっぱい聴いたり弾いたり、どういうアプローチを取っているのかを聴いていく作業ですよね。理論的に考えることも大事だけど、大前提として楽しく音楽を聴くことがすごく大事だと思います」

そして、最後にビギナーに向けてのメッセージが送られた。

「ベースは難しいけれど、やればやるほど楽しさがどんどん出てくるスルメみたいな楽器です。嫌になった瞬間は一度もなく続けてこられたので、とにかく楽しんでもらえればいいなと思います」と話すと大きな拍手が起こる。新井はこの日も制作に戻るということだったが、この大きな拍手には、多忙の中イベントを開催した新井への感謝と、ニューアルバムへの期待が込められていたはずだ。

Deluxe Jazz Bass V, Kazuki Arai Editionについてのインタビューはこちら
前編:https://fendernews.jp/special-interview-kazukiarai/
後編:https://fendernews.jp/special-interview-kazukiarai-2/

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