
Fender Flagship Tokyo Special Event with INORAN
LUNA SEAのギタリストとしてだけではなく、ソロ、さらにTourbillonとしても活躍するINORANが、3月27日に〈Fender Flagship Tokyo Special Event with INORAN〉を開催。超満員となったイベントの模様をレポートする。
“俺は絶対にこれを弾くんだ”ってJazzmasterに恋をしてしまったんです
会場は原宿にあるFender Flagship Tokyoの3階、Fender Custom Shop専用のフロア。ここにはマスタービルトやチームビルトによる最高峰の作品を取り揃えるばかりではなく、その空間自体もラグジュアリーで、ギターを好きな人なら誰もが憧れる場所。
自身のメインギターとして君臨してきたINORAN Jazzmasterに、待望の最新モデルが登場したINORAN。本イベントは、その最新モデルDennis Galuszka Masterbuilt INORAN Jazzmaster Desert SandおよびINORAN Jazzmaster Desert Sand Team Builtの発売記念イベントとして開催された。
このイベントに参加できたのは30名ほど。多数の応募者の中から抽選で選ばれた幸運な参加者たちは、開始前からハイテンションだ。そして定刻。MCのコールでINORANが登場すると、大きな拍手と歓声が上がる。思えば、INORANはLUNA SEAの東京ドーム2daysが終わったばかり。間近に立つINORANに興奮しないはずがない。


まずはMCが近況を聞く。LUNA SEAの35周年全国ツアー、そして東京ドーム2daysが終わったばかりだが、INORANは4月5日からソロで対バンツアー〈SONIC DIVE 2025〉を開催しており、RYUICHI、H,HayamaとのTourbillonも6月にアルバムリリースが決まっており、本人の言葉を借りれば“音楽の旅を休むことなく続けている感じですね”とのこと。
続いては、ギターに関する一般的な質問。まずはギターを始めたきっかけをMCが聞く。
「きっかけは、中学に入りたての頃に洋楽のチャート番組を見て、これはすごいなぁと思って音楽を聴き始めて。その頃ね、それこそヴァン・ヘイレンとかギターがフィーチャーされた音楽がけっこうあって、弾けるようになりたいと思った。正確には持ちたいって感じかな? いや、弾きたいと持ちたいの間の感情ですね。で、ギターを買ってバンドを始めたっていう」
当時を思い出してなのか、少年のような笑顔で答えるINORAN。この“弾きたいと持ちたいの間の感情”はギターを弾いている人にはわかると思うし、INORANは人の感情をいつもわかりやすい言葉で表現してくれる。続いては、ギターを始めた頃の練習方法を聞く。
「けっこうギターを触っていましたね。学校にギターを持っていっていたと思います。高校では最初、軽音楽部に入ったりしていました。中学の時から学校以外でもみんなで集まってイベントを組んだりライヴハウスでライヴもやっていたし。それでよく原宿に行ってましたもんね。で、思い出しました。原宿でけっこう有名な事務所さんにスカウトされたこともありましたね。そんな青春の思い出の地でもある原宿のFender Flagship Tokyoで、自分のギターの話をさせてもらえるなんて嬉しいとしか言いようがないですね」

続いては、INORANのアイコンとも言えるJazzmasterとの出会いについて。これが実にINORANらしいエピソードだった。
「LUNA SEAのリブート後、ヴィンテージギターを買っていたんですけど、2009年ぐらいかなぁ…Jazzmasterがものすごく欲しくなった夜があったんですよ。で、いてもたってもいられなくて。でも夜なのでお店が開いているわけがないので、次の日に行って速攻で買ったんです。その夜にJazzmasterがすっごいカッコよく見えたわけです。“俺は絶対にこれを弾くんだ”ってJazzmasterに恋をしてしまったんですよね。それはいまだに続いている。あの夜に、そう思わなかったらどうなっていたんだろうと思いますね。そんな縁で、フェンダーのスタッフの方とつないでくれた方がいらっしゃって、それからシグネイチャーモデルを作ってみない?というお話をいただいて」
INORANの話はどこかポエティックなので、ギターを弾かない人でもその気持ちが想像できる。Jazzmasterに恋をして、翌日に買いに行く。“Jazzmasterがものすごく欲しくなった夜があった”というフレーズも、直感やインスピレーションを大切にするINORANらしいと思った。


そして“いまだにその恋が続いている”というJazzmasterのシグネイチャーモデルとして、今回はCustom Shop製のINORAN Jazzmaster Desert Sandをリリース。
まずは開発の経緯から。ご存じの通り、INORANはJazzmasterのシグネイチャーモデルをすでに3本出している。その3本の範囲以外のレンジを持つJazzmasterを、マスタービルダーと作ってみたいと思ったのがきっかけだという。気になるのが、INORAN Jazzmaster Desert Sandの元ネタとなっているJazzmasterのプロトタイプ。
「これもたぶん夜だったと思うんですけど(笑)、ネットでたまたま見つけたんです。で、カッコいい!プロトタイプでこういうのがあるんだ!と思って、フェンダーのスタッフの方に調べていただいて。このプロトタイプのオマージュをシグネイチャーモデルにしたいな!みたいなことを言ったら、それいいじゃないですか!と言ってもらって、完成したのがこれです!」
ステージに置いてあるINORAN Jazzmaster Desert Sandを手に取るINORAN。やはりINORANとJazzmasterは運命で結ばれているのかもしれない。
INORANによれば、そのプロトタイプのDesert Sandはフェンダー史上でもレアなギター。それでも実機に忠実な形で復刻させながら、こだわりを詰め込んで誕生した今回のシグネイチャーモデル。こだわりは随所に散りばめられているが、ポイントとなる点は“全体的なバランスとピックアップですね”と教えてくれた。その中でもピックアップに関しては“今までシングルコイルだったんですけど、ハムバッキングに替えてよりパワフルにしていきました”と満足げだ。それ以外にも、プロトタイプと同じくメイプル指板にしたりとこだわりが詰まっている。そして、すでにライヴでもINORAN Jazzmaster Desert Sandを投入している。
「LUNA SEAの東京ドーム公演では『G.』と『BELIEVE』と『ROSIER』で弾いています。よりパワフルになりましたね」

この後も、ソロの対バンツアーかTourbillonのレコーディングで弾くと宣言したINORAN。
「ソロアルバム『Teardrop』も、シグネイチャーモデルのINORAN JAZZMASTER #1 LTDだけで作ったんですよね。そういうのもいいですよね!」というと、満席のオーディエンスから大きな拍手が起きた。それに応えて「じゃあアルバムを作ってツアーも廻りましょう!」と宣言すると、会場は大きな拍手で包まれた。大きな拍手に応えるようにINORAN Jazzmaster Desert Sandを演奏。ハムバッキングのサウンドをオーディエンスに楽しんでもらえるように、ピックアップポジションを変えながらギターの音を聴かせると再び大きな拍手が起きた。演奏後、インタビューの続きとしてビギナーへのメッセージを聞いた。
「やっぱり、ギターだけでなく楽器をみんなに弾いてほしいですね。僕もこの世界にずっと魅力を感じながら褪せることない人生を味わわせてもらって、そのきっかけをくれたのがやっぱり楽器だと思うから。そして、楽器屋にもいろいろな楽器屋があると思うんですけど、この原宿のFender Flagship Tokyoは日本一どころじゃないね。世界でも類を見ないフェンダーのラインナップがあって、スタッフもいろいろと教えてくれると思うんですよ。こんな楽器が欲しいとか、色でも形でもいいと思うし。Fender Flagship Tokyoを訪れてもらって、自分の可能性を広げてもらえるといいなと思いますね。本当にここは素晴らしい場所です」
最後にINORAN Jazzmaster Desert Sandについて聞くと「手に取るまで時間がかかるかもしれないですが、手に取ってもらいたい、しかないかぁ。このギターをカッコいい、欲しい、弾いてみたいと思うような気持ちがある人だったら、人生が変わると思っていますので、ぜひ!」と語ってくれた。大きな拍手が会場を包む中、イベントは終了した。

INORAN
ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして1992年にメジャーデビュー。
1997年よりソロ活動をスタートさせ、Muddy Apes、Tourbillonなどでも精力的な活動を展開。2010年にはフェンダーとエンドースメント契約を締結し、翌年に日本人アーティスト初のシグネイチャーモデルINORAN JAZZMASTER #1 LTDを発売。その後も2013年にINORAN JAZZMASTER #2LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka、2015年にINORAN ROAD WORN JAZZMASTER、2017年にはソロ活動20周年を記念したINORAN ROAD WORN JAZZMASTER 20th anniv. Editionなど多くのシグネイチャーモデルが発売されている。4月からは初の対バンツアー〈INORAN presents SONIC DIVE 2025〉を開催。日程は、4月5日(土) SUPERNOVA KAWASAKI(w/ASH DA HERO)、12日(土)名古屋CLUB QUATTRO(w/ The BONEZ)、26日(土)梅田CLUB QUATTRO(w/The Ravens)、5月4日(日)水戸ライトハウス(w/THE BACK HORN)、17日(土)渋谷CLUB QUATTRO(w/DEZERT)、18日(日)渋谷CLUB QUATTRO(w/OBLIVION DUST)。
https://inoran.org