Fender Next Special Interview | ハク。

今までだったら“何言ってるん?”って思っていたことも、今は全力で笑える

2026年9月にメジャー1stフルアルバム『世界が変わる時』をリリースした、大阪発の4人組バンド、ハク。。彼女たちは、フェンダーの次世代アーティスト支援プログラム「Fender Next 2026」にも選出され、さらに注目度を高めている。今回のインタビューでは、2025年6月に行われた〈FenderNews Public Recording with Haku. at Fender Flagship Tokyo〉とは少し異なるアプローチで、ハク。の世界に迫った。


どういう会話ができるかを考え始めた時、バンド内の関係性がガラッと変わった気がする

──皆さんの音楽との出会いから聞かせてください。

カノ 私は父がドラムをしているので、本当にちっちゃい頃からお父さんのバンドのライヴを観に行って、爆音の中で爆睡していました(笑)。音楽や楽器はそれくらい身近にあったんですけど、その頃聴いていた音楽は記憶になくて。でも、そのあとにダンスにハマったり、姉がバンド好きで音楽をやっていたこともあって、わたしも影響を受けて高校生の時に軽音部に入部しました。ベースを始めた頃は、お父さんのバンドのベースの人にいろんなことを教えてもらいましたね。

まゆ 私は3歳の頃から10年くらいエレクトーンをやっていました。で、高校に上がるタイミングで別の楽器をしたいと思った時に、エレクトーンは両手両足を使うから、“ドラムもできるんじゃないか…?”っていう軽い気持ちで軽音部でドラムを始めて、そこからハク。に入りました。

──エレクトーンをやっていた頃はどんな音楽を聴いていたんですか?

まゆ クラシックが多かったですね。めっちゃベタなんですけど、ショパンとか。でも、中学生になってからK-POPが好きになって、高校の時は邦ロックフェスに行ってライヴキッズをしていたり、聴く音楽はわりとよく変わっていました。

なずな 私は、両親が音楽好きだったので、車や家でよく音楽が流れていた記憶があります。親はユニコーンとかゆずとかMr.Childrenとかを聴いていて、私の初ライヴは4歳の時に観たゆずのライヴです。で、なぜか小学6年生のクリスマスの時、サンタさんに“ギターが欲しい”と言ったらしくて(笑)、クリスマスの朝にギターが置いてありました。でも、誰も教えてくれる人がいなかったからそのまま触らずに置いていて、中学の軽音楽部に入ったタイミングでようやく弾き始めました。

あい 私は小さい頃から教会に通っていたので、最初に触れたのは賛美歌だったと思います。その次にインパクトがあったのが私の叔母で、私のことを抱っこしながら“芋虫さん♪”みたいな自作の歌を歌っていたのをめっちゃ覚えています。どんな言葉でもリズムに乗せて歌っているんですよね。そのことが直接影響を与えたわけではないんですけど、“あ、それ歌詞になるんや”みたいな刺激は今も受けていますね。

──あいさんがギターを手にしたきっかけは?

あい 高校受験で勉強に疲れていた時に、最寄り駅の近くのお店でたまたまアコースティックギターがセールで売っていたので弾かせていただいて、そこで購入したのが始まりです。

──え、その場で買ったんですか。

あい そうです。そこから、曲のコードが載っているサイトを見ながら好きな曲を弾くようになりました。そのサイトはコードを押さえる場所まで書いてくれていたから見よう見まねでやってみて、歌を歌うのも好きだったから弾き語りを始めました。

──そこはなずなさんとは違うんですね。

なずな 私は弾き方がわからなさすぎて、お母さんに“どうやって弾くん?”って聞いたら、“わからん”って(笑)。しかも、ギターを手にしたのが小学6年生やったんで、その頃の私にはネックが太くて押さえられなくて諦めていましたね。

──皆さんそれぞれ、初期はどんな練習をしていたんですか?

カノ 私はコツコツ練習するのがすっごく苦手で、高校から軽音に入ってなずなとバンドを組んだんですけど、課題曲として与えられたSCANDALの「DOLL」を、いきなりタブ譜を見て押さえようとしていました。基礎から勉強するっていうことができなくて、最初から正解しかやりたくなかったんですよね。

まゆ 私はドラムを習いに行きました。本当は叩き方を全部知りたかったんですけど、先生から“フィーリングでやっちゃいなよ”って言われて。そういうのが一番苦手なのに(笑)、渡された楽譜をなんとなく読んで、とりあえず1曲叩ききるところから始めていた気がします。そこから徐々に基礎を学んでいきました。

なずな 私が最初に弾いたのは絢香さんの「三日月」で、まずはどのパート希望の子でも弾き語りの発表をしないといけなかったので、楽譜を見て、コードを弾いて、発表の日までに弾けるようにするっていう。バンドを組んでからも、私の中学はバンド練習ができる場所が1ヶ所しかなくて。しかも、バンド数がすごく多かったので30分しか練習ができなかったから、部活には毎日行っていたけど、一人で楽譜と向き合うのが練習のメインだったかもしれない。

──それは大変でしたね。

なずな めっちゃ大変です! 部員の数が100人を超えていたんで。しかも、バンドを掛け持ちしてもよくて、私は7人組バンドもやっていました。

あい マジ? すごい。

──では、あいさんは?

あい 私は弾き語りから始めたので、最初はバッキングしか知らなかったんです。でも、高校生になってバンドを組んだ時に、リードギターの子が“この曲、めっちゃむずい!”って言うから“どんだけむずいんだろう”と思って、その曲をコピーするためにYouTubeの動画を0.5倍速で流したりして練習しました。

──カノさんとなずなさん、まゆさんとあいさんがそれぞれ同じ高校だったんですよね。そして、とある専門学校にある高校生向けの軽音サークルで4人が出会うという。ここ数年、高校生のバンド活動がかなり活発ですが、それはやっぱり、コンテストが多かったり、優勝賞品がフェスへの出演権だったりする影響が大きいんでしょうか。

カノ 大きいと思います。ハク。を組む前、私となずなは外部でバンドを組むのも、外部のライヴに出るのもダメだったんですけど、最近はそういうのがOKになっている学校が多いんだと思います。あと、ハク。を結成してから、私たちは10代限定のコンテストで優勝して大阪の野外フェスにオープニングアクトとして出演することを目標にしていたので、私たちと同じようにフェスのステージを目指すバンドが増えているのもあるのかなと思いますね。実際、私たちもそのために曲を作ったりしていましたし。

──ハク。として初めて曲をつくるにあたって、あいさんが書くことは自然に決まったんですか?

あい それまでも弾き語りで曲は作っていたんですけど、バンドの曲は作ったことがなかったからめっちゃ難しくて、いろんなバンドの見よう見まねから始まりました。

──その頃、コロナ禍が世界を直撃していたと思うんですけど、どうやってモチベーションを保っていたんですか?

カノ 逆にコロナがあったことで、家でできること…例えば手作りのMVを作ってみたり、外じゃなくても楽しめるコンテンツを作り出そうと自分たちで考えたことは大きかったと思います。

あい 私は曲作りとかですごく悩んでいたので、山口一郎(サカナクション)さんの配信を見てめちゃくちゃモチベを保っていました。一郎さんは“真似はいつか自分のオリジナルになるよ”ということを話していて、私もまずはいろんな音楽を真似してみて、それを自分なりに消化していけばいいんだなって。今はデモの段階から音の想像ができるようになったし、メンバーに“こういうふうに弾いてほしい”ということも言えるようになりました。

──ハク。は高校生の頃に組んだバンドで、そこからコンテストに出るようになったり活動が本格化するにつれて、友達同士という感覚から徐々にビジネスパートナー的な側面も出てきていると思います。そういった関係性の変化についてはどのように捉えていますか?

あい 当時、私は全然将来のことなんて考えていなかったし、ライヴを重ねていっても、どう表現したいのか感覚を掴むのがすごく遅かったんですよ。だから、4、5年目くらいまでは仕事としては見られていかなかったかもしれません。めちゃくちゃ難しくて。でも、それ以降はみんなで話し合う回数が増えたし、自分の意見を言うだけじゃなくて、なんでこの人がこの意見になったのかなとか、噛み砕いて考える余裕も少しずつ出てきて。その頃から“これは仕事だ”みたいな変化が自分の中で生まれました。

──まゆさんはどうですか?

まゆ 3人が音に対してすごくストイックに考えていたり、めっちゃ練習しているのを見ると、こっちもそういうモードにならないとなって思わされます。

あい まゆは負けず嫌いというか。

まゆ 確かに負けず嫌い。みんな頑張っていて、自分だけ置いていかれたくないし、負けたくない、自分ももっと上を目指したいっていう気持ちは常にあるかもしれないです。

──ライヴハウスで出会ったわけではなく、学校やサークルで出会って、そこからみんなで一緒に成長していくバンドって、ちょっと独特だと思うんですよね。

カノ でも、私の場合、あいちゃんとまゆとはバンドメンバーとして関係がスタートしているんですよね。なずなとは高校に入る前から仲がよくて、私が軽音に入った理由もなずなが誘ってくれたからだし、ずっと一緒で。で、今振り返ってみると、まだ高校生だしいつまでバンドが続くかわからんしって勝手に思っていた部分があって、あまり言葉を選ばずにみんなと接していたというか、けっこうきついことを言っている自覚があったんですよね。でも、あいちゃんもさっき言っていたけど、私も人の気持ちを噛み砕いて考えられるようになったし、自分の気持ちもしっかり相手に伝えた上でどういう会話ができるかを考え始めた時、バンド内の関係性がガラッと変わった気がします。だけど、4人で話している時は友達っぽい会話になることもあるし、切り替えはできていると思う。あと、あいちゃんとは今のほうが友達感が強いかも。

あい うん、仲よくなった。昔が仲悪かったっていうことではなくて。

カノ 今までだったら“何言ってるん?”って思っていたようなことも(笑)、今は全力で笑える感じにはなっていると思います。

あい 気を使わない友達っていうよりも仲間、みたいな。


フェンダーと共にここまで来た

──人間的にも一緒に成長している一方、皆さんの音楽はどう変化していきましたか? 新作『世界が変わる時』を聴いて思ったんですけど、徐々にUSインディ感が増してきている気がして。コード感の影響なのかはわからないですが、より洗練されてきているなと。

あい バンドを始めて、いろんな音楽を聴くようになったんですよ。最初は“あ、これいいじゃん”って思っても何が好きなのか説明できなかったんですけど、“このフレーズが好き”“なんでこれが好き?”って自分の中で掘り下げるようになったんです。それを繰り返すうちに“好き”の度合いがどんどん深くなっていって。なので今回は、デモを聴いた自分がその曲にハマれるかどうか、私が最初に“好き”って思った感覚と同じになれるかを大切にして、“好き”が深くなった自分の引き出しから取ってきたっていう感じです。

──サウンド面では、楽器そのものの音をすごく大事にしているように感じます。

あい そこは自分でも気にしているところです。スタジオでも、例えばハイハットの3つ目にベースが来るから、それを感じながらみんなでノリを出そうって話をしたり。それも音の表現につながると思ったんですよね。逆に、本当にちょっとしたズレで曲が全然想像できなくなったりするから、そこはめっちゃ気をつけました。レコーディングでも、まゆに何回も同じフレーズを叩いてもらったりしています。

──まゆさんのドラムはすごくタイトですけど、サウンド全体はいい意味でルーズ感があるんですよね。

あい ドラムに関しては、曲を作っている最中に“ドラムはこれがいい”っていうイメージが湧いてきて、レコーディングではシンプルにそれに近づけてもらっている感じです。だから、まゆに音の雰囲気を伝える時は、“外国人のおじさまが気怠そうに叩いている感じ”とか、“スネアは、もうちょっと振り下ろすのが早いほうがいい”とか、そういう伝え方をしています。

──それを解釈してプレイに反映させるのは大変ですね。

まゆ でも、言っていることはすごくわかるので、しっかり再現したいという気持ちで取り組んでいますね。

あい あと、自分となずなのギターはLとRに分かれているんですけど、聴いている時にあんまり距離が離れてほしくないなとか、そういうことをイメージしたりしていました。

──では、今回のアルバムは、自分たちの鳴らしたい音をはっきり形にできた作品だと。手応えはいかがですか?

カノ リリースされた直後にリスナー目線で最初から最後まで改めて聴き直したんですけど、それぞれの曲に色があるし、めちゃくちゃ良くてびっくりして。それと同時に、まだまだできるなっていう気持ちも芽生えました。

なずな 今回、完全新曲が4曲あるんですけど、お客さんが“この曲が好き”とかいろいろ言ってくれたり、「GO」を聴いて泣けたって言ってくれている人もいて、自分たちの作った音楽がちゃんと届いてるんやっていうのをすごく感じています。“今までやってきたな!”って感じ(と肩を組むジェスチャー)。

カノ 肩組みてえ(笑)。

なずな 昨日もメンバーと一緒にご飯に行って、“リリースおめでとう!”ってやってきました。

──ツアーは10月からスタートしますが、過去最大規模で全国のライヴハウスをがっつり回ります。目標や課題などはありますか?

あい 初めて行く千葉なども含めた15ヶ所全部で、何かを得て学んで、次に活かしていきたいと思っています。

──そして、バンドとしては「Fender Next 2026」にも選出されましたね。

カノ フェンダーの存在は音楽を始める前から知っていたし、世界の音楽の共通言語というくらいみんなに愛されているので、そんなブランドから私たちを選んでいただけたことは本当に光栄だし、ここから羽ばたいていけるというのはすごく嬉しいことだと思っています。私が初めて自分で手に取った楽器はフェンダーで、そこからハク。の曲が紡がれていっているので、フェンダーと共にここまで来たなと勝手に思っています。もっとフェンダーのことを好きになりたいし、これからも一緒にやっていきたいなって強く思っています。

──今日は学生時代の話をたくさんお聞きしましたが、ビギナーの方々へ向けて何かアドバイスがあれば聞かせてもらえますか?

あい 一番は、楽しくあってほしい。もちろん、それは苦しみを乗り越えてこそだと思うんですけど、人それぞれ音楽に対していろんな距離感があるじゃないですか。なので、自分なりの音楽との向き合い方を見つけられたら、めっちゃ楽しくなると思います。

──そのためにはどんなことをしたらいいと思いますか?

あい 音楽を聴いて踊る! 専門学生の時、私はダンスミュージックのプレイリストをつくって夜な夜な踊っていたんですよ。誰にも見せられないけど、それが楽しくて。70年代のディスコソングとか、そのアーティストになりきって踊るとすごく楽しいと思います。

──指板を見てばかりではなく、もっと視野を広く持ったほうがいいと。今日お話を聞いていて感じましたが、皆さんは佇まいが自然ですよね。日常生活の中で音を鳴らしているような印象を受けます。

あい さっきも言ったんですけど、音楽との距離感をつかんでいるからこそ、そう見えているのかも。

カノ 私は普段、音楽をあんまり聴かないんですよ。聴くとしても、アジアと北欧のインディくらいで、1週間イヤホンをしないこともあったり。でも、最近気づいたんですけど、私は季節の変わり目を音や雰囲気で感じていて、自分にまとわりつく何かを大事にするという感覚はプレイにもつながっていると思います。

なずな 自分が弾いているフレーズは、“ザ・ギタリスト”というものではないと思っていて。ギュイーンと鳴らすカッコ良さ、カッコつけるカッコ良さももちろんあるけど、私はそうはなれないし、自分には合っていない。今の私のプレイやフレーズは、飾りすぎていない、日常の素に近い感じなんだと思います。


ハク。
2019年、大阪にて結成。あい(Gt,Vo)、なずな(Gt)、カノ(Ba,Cho)、まゆ(Dr)からなる4ピースバンド。揺れ動く感情の表裏を、透明感ある歌声とUK/USインディからの影響を感じさせるサウンドで表現する。2022年1月に初のミニアルバム『若者日記』をリリース。2023年8月には1stフルアルバム『僕らじゃなきゃダメになって』を発表。映画『6人ぼっち』の主題歌「南新町」や、テレビ東京系『シナぷしゅ』の“つきうた”選出などで話題を集め、2025年9月にTOY’S FACTORYよりメジャーデビュー。2026年9月9日にメジャー1stフルアルバム『世界が変わる時』をリリースし、10月30日からは同作を携えた全国ツアー〈みんなの世界が変わる時ツアー〉を開催する。
https://hakumaru.com/

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