THE ONE. FOR SEIJI KAMEDA.

プレベは大地と会話しているような感覚

アーティストが日頃より愛用しているフェンダーギターと、新たに発表されたAmerican Professionalシリーズのギターをまったく同じ環境で演奏し、見た目、弾き心地、トーンなどの違いを語ってもらう“THE ONE. FOR ALL.”。当企画の肝は、新モデルがどんなものなのか事前にまったく知らされないまま初対面を果たすということ。だからこそリアルな反応を見ることができる。今回は、音楽プロデューサー、ベーシストとして日本の音楽シーンを支え続ける亀田誠治が登場。愛用のベースについて語ったあと、いよいよ新モデルとご対面。その反応やいかに?


プレベは時代を超える音なんです

──まずは、今日お持ちいただいた愛用のPrecision Bassから紹介してください。

亀田誠治(以下:亀田) かわいいやつなんですよ(笑)。ずっと66年製のJazz Bassを弾いていたんですけど、2000年代のはじめ頃から、良いヴィンテージのプレベが欲しいとミュージシャン仲間に言いまわっていたんです。そうしたらスピッツの田村明浩さんが“亀田さん、良いのあるよ、白の62年製の良いやつがあるから譲るわ!”って。一発で商談成立です。

──実際に弾いてみて、いかがでしたか?

亀田 すっごく良かったです。ネックが薄くて、愛用している66年のジャズベと双子のような感じ。このベースでは本当にたくさんレコーディングしました。東京事変のアルバム『教育』に入っている「御祭騒ぎ」とか、秦基博さんの「鱗」もこれ。主に半音下げチューニングで使っていました。チューニングを下げても太くて輪郭のある音が出るし、歪まない。めちゃくちゃ信頼していましたね。

──20年以上の付き合いになりますが、ヴィンテージならではの魅力は?

亀田 不思議なことに、数ヶ月、半年ぶりにケースから出しても、まったく状態が変わらないんです。これ、良い楽器の証拠ですよ。ノーケアなのにピッチも安定しているし、いつでも弾きやすい。2022年に上演したミュージカル『ジャニス』でも、このプレベともう1本のプレベで全公演をやりきりました。やっぱり時代を超える音なんですよね。
しかも、今日はエフェクターも何もつないでいません。アンプもフラット。これだけで、60年代、70年代に聴いたベースサウンドが出る。ファンキーにもメロウにもなるし、トーンを絞るとまた違った表情になる。こんなにシンプルなのに、ベースの楽しさが全部詰まっているんです。

──亀田さんと言えばJazz Bassの印象が強いですが、プレベならではの魅力はどこでしょう?

亀田 実は僕、最初はプレベの見た目のほうが好きだったんです。男らしくて、ガシッとしていて。でもジャズベを選んで、そこから自分なりの奏法が生まれていった。だからジャズベの歴史は僕自身の歴史でもあるんです。 一方、プレベはエレキベースの開拓者ですよね。ウッドベースが抱えていた音量とピッチの問題を克服した楽器。弾いていると、音が“ポン、ポン”って跳ね返ってくる感じがするんです。ジャズベは音が吸い込まれる感じだけど、プレベは大地と会話しているような感覚。太いネックも“小賢しいことしないでよ”って言っているみたい。どんな奏法でも、ちゃんと届く音になる。本当にかわいいやつです。


この新しいプレベは今、産声を上げたばかり。これから良い景色を見ていく

──そんな亀田さんに、今日はフェンダーの新しいプレベ、American Professional Precision Bassを弾いていただきます。実物を見るのは初めてですよね?

亀田 恐るべしドッキリ企画です(笑)。おお! 何これ! すっごく好きな色! Oxblood? 良いですね。しかも軽い! あと、楽器って匂いを嗅ぎません? ヴィンテージだとケースがタバコ臭かったりするけど、これは新しい、ピュアな匂いがする(笑)。

──では、実際に弾いてみてください。

亀田 (試奏)おお! めちゃくちゃ良い! さっき話した“ポン”という跳ね返りが、より強くてしっかりしている。僕だったらもう少し弦高を下げますけど、どの弦、どのフレットでも一定の音が出る。これがすごく大事なんです。音にばらつきがないから、いろんなニュアンスをつけられるし、攻めたプレイもできる。ステージで何も気にせず演奏できるって、ものすごく重要なこと。ベースのメンタルが良くないと、バンドのメンタルまで悪くなっちゃうから(笑)。それに裏通しのブリッジも良いですね。弦のテンション感や音の跳ね返り、ピッチの安定にもつながる。いろいろ工夫されていますね。

──60年以上前の愛機と比べて、違いは感じますか?

亀田 新しいほうはネックが少しスリムに感じるし、手に馴染んですごく弾きやすい。そして何より音が若い。フレッシュなんです。よく楽器屋さんで“弾き込めば良い音になりますよ”って言われるじゃないですか。でも僕は“今が良い音”って言ってほしいんですよ(笑)。弾き込んだ音にはもちろん魅力があるけど、生まれたての音にも、その瞬間にしかない良さがある。
僕のプレベは60年以上、いろんな景色を見てきた。ほかの楽器の音を聴いて、メンバーの表情を見て、いろんな魂が入っている。でも、この新しいプレベは今、産声を上げたばかり。これから良い景色を見ていくんです。良い楽器って、ずっと弾いていたくなるんですよ。いろんなフレーズを試したくなる。むしろ楽器のほうから“もっと弾いてよ”って言ってくる感じ。これはまさにそういう1本ですね。

──このAmerican Professional Precision Bassは、どんな場面で使いたいですか?

亀田 まず一日中弾いていたい(笑)。それからライヴでお客さんを驚かせたいですね。“えっ、亀ちゃん、その新しいフェンダー何!?”って。色も本当に気に入っています。

──そのライヴといえば、11月9日、10日にBillboard Live TOKYOで、TelecasterとPrecision Bassの75周年を祝うスペシャルライヴ〈Fender x Billboard Live TOKYO presents THE NIGHT OF TELE® & P-BASS® 〜The 75th ANNIVERSARY〜〉が開催されます。

亀田 僕がこのイベントのプロデュースを担当させてもらいます。本当に嬉しく、光栄に思っています。Telecasterはソリッドボディのエレキギターの歴史を切り拓き、Precision Bassは正確なピッチと大音量を実現した。“レオ・フェンダーさん、あなたはすごいよ!”って(笑)。僕はウッドベースも弾きますけど、やっぱりエレキベース弾きなんです。自分の音楽人生を支えてきてくれた、その原点を祝えるわけですから。
今回は佐橋佳幸さん、SATOKOさん、皆川真人さん、そして僕という気心の知れたメンバーでスペシャルバンドを組みます。ゲストには東京事変でもおなじみの長岡亮介さん、MIYAVIさん、緑黄色社会の長屋晴子さんと穴見真吾さん、元チャットモンチーの橋本絵莉子さん、曽我部恵一さんが参加してくれます。テレキャス愛、プレベ愛を持った人たちが集まるので、歌あり、セッションありの、楽しいお祝いパーティーになると思います。もちろん、この日は僕もプレベを弾きますよ。だってお祝いだもの(笑)!

──カヴァー曲なども期待できそうですね。

亀田 あるかもしれませんね。例えば、そのアーティストがなぜTelecasterを選んだのか、音楽的なルーツが見えてくるようなライヴにしたい。楽器と音楽って全部つながっていますから。ギターやベースの歴史は、もっと良くしていこうという向上心の歴史でもあるんです。改良を重ねながら進化して、同時にプレイヤーたちにも愛され続けてきた。その始まりにフェンダーがいる。75周年は、そういう歴史をみんなで祝う機会だと思っています。

──最後に、これからベースやギターを始める人へメッセージをお願いします。

亀田 これから楽器を始める人は、めちゃくちゃラッキーな時代に生まれています。YouTubeやSNSで、本物のミュージシャンが本気で演奏している姿をいつでも見られる。先生はどこにでもいるんです。それに楽器って、昨日弾けなかったことが今日弾けたりする。逆もあるけど(笑)。自分の成長を一番身近で教えてくれるのが楽器なんですよ。 そして、ぜひ楽器を持って外に出てほしい。一人ではできないことも、バンドならできる。みんなと一緒に演奏すると、本当に楽しいですよ! そして、最後に個人的な宣伝を。2027年も5月に〈日比谷音楽祭〉を開催します。この音楽イベント、入場無料なんですよ。ぜひとも良い音楽、良い演奏に触れてほしい。それで楽器を始めてくれたら最高です!

左:ご本人私物 | 右:American Professional Precision Bass(Oxblood)


亀田誠治
1964年生まれの音楽プロデューサー / ベーシスト。東京事変のベーシストとして活動するほか、これまでに椎名林檎、スピッツ、平井堅、GLAY、いきものがかり、JUJU、石川さゆり、西川貴教、チャットモンチー、アイナ・ジ・エンド、リーガルリリー、神はサイコロを振らない、チャラン・ポ・ランタンなど、数多くのアーティストのサウンドプロデュースやアレンジを手がける。2007年、2015年の「日本レコード大賞」で編曲賞、2021年に「第44回 日本アカデミー賞」優秀音楽賞、2024年には「第19回 渡辺晋賞」を受賞した。また、さまざまな舞台音楽や、ブロードウェイミュージカルの日本公演総合プロデュースを担当。現在、NHK Eテレ「ウェルカム!よきまるハウス」に出演し、子供たちに伝えたい往年の名曲を紹介している。
2019年より親子孫3世代がジャンルを超えて音楽体験ができるフリーイベント「日比谷音楽祭」の実行委員長を務めている。(https://hibiyamusicfes.jp/)
2026年11月には、TelecasterとPrecision Bassの誕生75周年を祝うスペシャルライヴをBillboard Live TOKYOでプロデュースする。
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