Cover Artist | ホリエアツシ(ストレイテナー)-前編-

今回は“自分の楽曲の型”みたいな、ものを壊したい想いがあった

ストレイテナー

4人組オルタナティヴロックバンドの“ストレイテナー”から、ほぼすべての楽曲の作詞作曲を手掛けているホリエアツシがCOVER ARTISTに登場。インタビュー前編では、コロナ禍での過ごし方や音楽との向き合い方、そして、9月5日に行われた2ndアルバム『TITLE』の再現スタジオライヴ〈TITLE COMEBACK SHOW〉、10月14日にリリースされる配信シングル「叫ぶ星」を中心に話を聞いた。

バンドが動いていることに甘えていたのが、ガラッと楽曲主導に移行した感じ
 

― コロナ禍はどう過ごしていましたか?

ホリエアツシ(以下:ホリエ) レコーディング期間でした。もともと今年の上半期にレコーディングをして、リリースしてからツアーというスケジュールになっていたので。

― 特に大きなツアーがなくなったわけではないんですね。

ホリエ 2〜3月あたりはもともとほとんどライブがなかったんですけど、その後、当初はこの時期ならできるだろうと思っていたイベントもどんどん中止、延期になりましたよね。これまでだと制作中でも、呼んでくれたフェスに出演していたのも今年は全部なくなったので、とことん制作に集中する形になりました。ライヴができないのは寂しいですけど、それで集中できた気はしますね。ライヴをやると過去の曲を演奏するから、その都度、その時の頭に戻るじゃないですか。戻ることなくずっと新曲のことを考えているという意味では、いい影響もあったかもしれないですね。

― クリエイティヴに集中できた?

ホリエ こんなことでもない限りあり得ない話なので。外タレじゃんって(笑)。彼らは1年かけてワールドツアーがあって、それが終わると2年くらいは制作するじゃないですか。そんなに長い期間ではないですけど、意図せずそうなった感じですよね。それが良かったのかはわからないですけど。言い方は悪いかもしれませんが、ある意味、これまでのルーティンから外れたから、それが作品に影響しているのは間違いないと思います。

― ずっと制作をしていたんですか?

ホリエ ずっとですね。4月末から5月末はスタジオが休業していたのですが、その間はそれぞれ家で作業していて。僕は歌詞を書いたり、曲について考えたりしていました。

― そういう面では、あまりバンドとして止まった感じはなかったと。

ホリエ 僕はずっと曲のことを考えているから止まっていないというだけで、メンバーは違うと思いますよ。ライヴがなくなって集まることがなくなったので、たまにツイッターでメンバーが“俺、何の人だったっけ?”みたいなことを冗談でつぶやいていましたし(笑)。

― ミュージシャンって、楽器に触っている時間や曲を作っている時間で精神衛生を保てているのではないかと思いました。

ホリエ そうですね。状況とか情勢が変化していくたびに、精神的にも何かしら影響はあるじゃないですか。基本的にはネガティヴな影響なんですけど、そういう思いを吐き出して、それでも前向きになろうという気持ちとか、そういうものも音楽に出ていく感覚もあるし。だから、美しいものばかりじゃなくて、自分の中のおぞましい部分とかもぶつけられたりするんです。実際にそういう曲もできましたし。

― あと、ギターを弾いている間はそこに没頭できるので、余計なことを考えないですし。

ホリエ 確かに、この時期にむちゃくちゃギターが上手くなったヤツとかいますからね(笑)。

― コロナ禍で生まれた新曲たちは、今までと変化は感じますか?

ホリエ 自分ではけっこう違うと思いますね。ライヴに左右されずに、純粋に楽しんでいる感じはあると思います。あと、これまで若干バンドが動いていることに甘えていたのが、ガラッと楽曲主導に移行した感じです。

― 良く言えばバンドのグルーヴという言い方もできるけど、そうじゃないところで楽曲を生めたと?

ホリエ そうですね。今回は“自分の楽曲の型”みたいなものを壊したいという想いがあったのですが、それは壊せたかなと思います。メロディだったり曲の展開、歌詞の書き方とか。ただ、それもインスピレーションがあってのこと。ずっとライヴに従事していると、目の前のものが大事なのでその壁を越えられないんです。だけど、こうも時間があると、これまで聴いてこなかった古い曲や面白そうな音楽を聴けたのも助けになりました。詳細はまだ言えないのですが、いずれそれがリリースされるのですが、けっこう面白いと思います。


バンドでやること自体が楽しいし頼もしいなと。ヘンな話、いいバンドだなと実感できました
 

― 〈TITLE COMEBACK SHOW〉と題して、2005年リリースの2ndアルバム『TITLE』の再現ライヴを配信していましたね。

ホリエ はい。どういう形で配信ライヴを行うかは、バンドそれぞれで試行錯誤していると思うのですが、僕はやっぱりお客さんがいないとモチベーション的に難しいと思っていて。冒頭で話した通り、もともと決まっていたツアーがあったわけではなかったので、配信ライヴをやるなら良いタイミングで良いコンセプトでできたらと考えていたんです。それで、何年か前から浮かんでは沈んでいたアイディアなのですが、大物の海外バンドが日本のフェスに来た時に、アルバム縛りのセットリストでやるじゃないですか。それってある意味、歴史上の人物みたいなアーティストがやることだと僕は思っていたんです(笑)。でも、このタイミングで配信ライヴのコンセプトとしてやるにはすごく適しているなと思って。

― 適しているとは?

ホリエ 普段通りのライヴを配信するのってどういう気持ちなんだろう?とか、それをコンスタントにやっていこうと思ったら、果たしてファンは楽しんでくれるのだろうか?とか、いろいろと考えたんです。でも、アルバムの再現で全曲演奏することは、絶対にこのタイミングでしかやらないことなので、ファンは喜んでくれるんじゃないかなって。

― 実際にやってみてどうでしたか?

ホリエ ファンのリアクションはすごく良かったです。バンドとしても、いいステップになった気がしますね。もともと自分たちの身体に馴染んだ曲だし。最近のバンドの傾向としては、ライヴでお客さんと向き合って感謝の気持ちを伝えていたし、“お客さんがいるからバンドがある”という気持ちを全面に出していたんですね。15年前は、もっとストイックに自分たちを追い込んで、“観たいと思う人だけが観てくれればいい”という感じというか、ある意味へり下って“ライヴに来てください”とは発していなかった。配信ライヴは、あの頃の自分たちの曲を、自分たちの内側と向き合って演奏しました。あのステップがあったから、“画面越しでもいけるんじゃないかな?”と思えた気がします。

― 必要なステップを踏めたと?

ホリエ 本当に嘘がない感じで、4人で一緒に音を鳴らしているだけでも楽しいなって、自然と笑みがこぼれてくることに気付けました。そこですごく自信を持てたから、8カ月ぶりにお客さんの前でやった中野サンプラザでの〈THE SOLAR BUDOKAN2020〉のステージは、堂々とやれました。目の前にお客さんがいようがいまいが、演奏を楽しめると思えたので。普段のライヴでは、お客さんにだいぶ力をもらっているので。1回このタイミングで自分たちを見つめ直す作業は、必要だったかなと思います。

― 大きなホールで久しぶりにバンドで爆音を鳴らしてみて、いかがでしたか?

ホリエ バンドでやること自体が楽しいし頼もしいなと。ヘンな話、いいバンドだなと実感できました(笑)。

― 10月14日には配信シングル「叫ぶ星」もリリースされます。

ホリエ この間の配信ライヴでお披露目したんです。それから1カ月ちょっと経って、ちゃんと音源として聴いてもらえたらと思っています。

― どんな曲ですか?

ホリエ バンドらしい曲で、さっき話していた“型を壊した”という類の曲ではありませんが、最初にこの曲が自分の中で出来た時から、リズムや曲のノリなどが二転三転して。それから4人で3月か4月にスタジオに入って音を鳴らした時、この曲は逆に“自分たちの型にはめよう”と思った、まさに逆の逆の発想のような曲です。だから、『TITLE』の全曲ライヴのあとにお披露目したんです。今だと鍵盤を入れたり同期を入れたりするけど、あの頃のバンドサウンドです。音色もいじらず。OJ(大山純)だけすごい複雑で速いアルペジオを弾いていますけど(笑)。

― ホリエさんのギターは15年前と同じ感じなんですね。

ホリエ まぁ“エモ”と言われた頃のキラキラした轟音ギターですね。ヘッドフォンで聴いたら“シャーッ!”といってますよ(笑)。エレキギターって、やっぱりいいなと実感しました。


› 後編に続く

 
ストレイテナー

ホリエアツシ 使用機材

AMERICAN ORIGINAL ’60S TELECASTER®
音楽の「エレクトリック化」が世界を席巻した60年代に名を刻んだ当時のテレキャスターモデルの伝説的なスタイリングとトーンに加え、モダンなプレイヤビリティとスイッチング・オプションを提供。

PROFILE


ストレイテナー
1998年始動。メンバーは、ホリエアツシ(Vo,Gt,Piano)、ナカヤマシンペイ(Dr)、日向秀和(Ba)、大山純(Gt)。2000年にシングル「戦士の屍のマーチ」でデビュー。2004年1月、メジャー1stアルバム『LOST WORLD’S ANTHOLOGY』をリリース。2009年3月より全国ツアー〈Nexus Tour〉を敢行。ファイナルを初の日本武道館で行う。バンド結成20周年となる2018年の10月に、人気投票1~25位の楽曲+メンバーセレクト4曲+新曲「Braver」の合計30曲を15曲ずつ分けて収録したベストアルバム『BEST of U -side DAY-』『BEST of U -side NIGHT-』をリリース。2019年10月19日、バンド史上初の野外ワンマンライヴ〈Fessy〉を日比谷野外音楽堂にて開催。2020年9月5日、2ndアルバム『TITLE』発売15周年の節目に、現体制で披露する再現スタジオ配信ライヴ〈TITLE COMEBACK SHOW〉を開催。

› Website:https://www.straightener.net

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