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Cover Artist | ゲスの極み乙女。 -後編-

解体して再構築して次に向かっていく

予測不能な展開を見せる卓越した演奏と、プログレやヒップホップを基調としつつあらゆる音楽を貪欲に飲み込むスタイルで、2022年に結成10周年を迎える4人組バンド“ゲスの極み乙女。”がFenderNewsのCover Artistに登場。インタビューの後編では、日本の音楽シーンの今後、結成10年を迎えてのバンドのビジョン、ベストアルバム『丸』や6月に予定されているワンマン〈ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」〉について話を聞いた。

ギターが戻ってきている感覚がある

― 今年はバンド結成10年ですね。おめでとうございます。

二人 ありがとうございます。

― そもそも、結成当時から長期で活動していこうというビジョンはあったんですか?

川谷絵音(以下:川谷) 全然。遊びみたいな感じだったので。どこまでやるか決めていなかったですね。趣味が10年間続いている感じです。

― 休日課長さんは?

休日課長(以下:課長) 10年を経て、まだ10年、20年続きそうだなって。4人の底が見えない気がしますね。出し切っていないというか、まだまだ出てきそうな魅力があります。

― その源は何でしょうか?

川谷 メンバー間で熱い話とかもしないし、こういう風に盛り上げようとかいう話もしないんですよね。ライヴ前もずっと関係ない話をしていて、始まったよと言われてステージに出る感じなんです。

課長 フェス前もギリギリまでどうでもいい話してるもんね。

川谷 気付いたら始まってる、みたいな。ライブ前の気合い入れもちゃんとやったことがなくて、

いい意味でそういう熱がないから、趣味の延長っていう感じですかね。仕事している感覚もあまりないですから。

課長 堅苦しさはないですね。本当に伸び伸びとやっています。あと、シンプルなんですけど、みんな音楽が好きなんですよ。特に川谷なんかすごいですけど、偏りもなく幅広い音楽を聴いていて、情報交換もしています。で、これはカッコいい、カッコ悪いという基準がみんな共通している。そこは源としてあるんじゃないかなって思います。

― ここ最近だと、どんなサウンドを聴いていますか?

川谷 レディオヘッドのメンバーが始めた、ザ・スマイルというバンドの新譜はめちゃくちゃ良かったです。で、ギターが戻ってきている感覚があって。UKでもウェット・レッグというバンドが全英1位になったり、ポストパンク的なのが注目を浴びているじゃないですか。ブラック・ミディも、ライヴを観に行ったんですがめちゃ好きでした。ちょっと前までは、トラップみたいなものばかりだったんですけど、ギターが戻ってきて嬉しいなと思います。最近、“ギターソロを飛ばす”みたいなのがツイッターのトレンドになっていて…。でも、そういう感じでもないような気がするんですけどね。ヒップホップも、生バンド感に戻ってきている気がするので。

― 何で若い人たちはギターソロを飛ばして聴くんでしょうかね?

川谷 そもそも飛ばして聴くほうが面倒臭くないですか?

課長 流しときゃいいじゃんって思うんですけど(笑)。

川谷 飛ばす時に熱が冷めますよね。そのあと落ちサビに行かれても…って思います。

課長 たぶん落ちサビにはなれない(笑)。

― 休日課長さんはどんなサウンドを聴いていますか?

課長 ずっとジョー・ダート(ヴルフペックのベーシスト)は聴いています。あとサンダーキャットが、何だかんだ一番聴いちゃうかもしれないです。ものすごく趣味のど真ん中のことをやっているので。

― サンダーキャットを筆頭に、新時代のベースヒーローが現れてベースシーンにも変化があったように感じますが、休日課長さん的に意識しているベースプレイは?

課長 スタイルを固めないことですね。“俺はこれだ!”と思わないようにしているかもしれない。いろいろやってみるというのを、意識しないように意識しています。

― 川谷さんは楽曲提供もたくさんなさっていますが、ギターという点で意識していることは?

川谷 僕は結局、ポストロックが一番好きな気がしていて、2009年くらいにすごく戻りたくなるんですよね。ずっとそういうのばかり聴いているし、楽曲提供の時もわりとギターをガンガン入れるようにしています。結局はギターが好きなので、ギターが入っていないと薄いなって思っちゃう。ゲスではあまり入れなかったりするんですけど。

― それはなぜですか?

川谷 入れている曲もあるけど、ゲスはちゃんMARIのピアノをフィーチャーした方が成り立つ場合も多いので。TikTokとかで流れてくる音楽は、とにかくギターが薄かったり、デモかな?と思うような簡易的なトラックも多いですよね。日本はだいたい海外と5年くらいラグがある気がするので、ギターが戻ってきている感覚は日本ではあと5年くらいかかるんじゃないかな?と思ったりしますけど(笑)。

― この先の日本の音楽シーンはどうなっていくと思いますか?

川谷 今はまたボカロ的なトラックが流行っていたりして、ボカロP+歌い手だったり、ボカロPが自分で歌ったり、シンガーソングライターの時代にもなりつつあり、バンドがいなくなっている感じがあります。とは言えフェスが復活してきて、バンドはバンドでいいなっていう思いはあるし。King Gnuみたいなバンドがちゃんと売れているから、やっぱりみんなギターが好きなんだと思うんです。ああいうバンドが上にいれば、後のバンドがちゃんと育ってきて、ギターはまたどんどん増えてきそうな気はするんですけどね。だけど、しばらくはライトなTikTokバズ先行のトラックモノが続くんだろうなと思います。

― そんな時代において、ゲスはどんな立ち位置で行くんですか?

川谷 別に考えはないですね。その時々で考える感じです。面白いことをしながら、いろいろなことは考えていますけど、先のことを考えてもわからないので。2〜3ヶ月後くらいの話しかできないですね。

― 10周年と言えば、5月11日に発売になった『丸』に続き、6月18日に幕張メッセで大きなワンマン〈ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」〉が予定されていますが、どんな内容になりそうですか?

川谷 こういう周年の時って、最近ゲスを聴いていなかった人とかいろいろな層が来ると思うので、全方位が楽しめるライヴにしようと思っています。コアファン向けではなくて、聴いたことのないような人でも楽しめる感じでやりたいなっていう気持ちがありますね。『解体』っていう公演名なんですけど、解体して再構築して、次に向かっていく感じ。すごく先まで考えているわけじゃないけれど、ちょっと先の話までは考えているので。次のステップが楽しみになるようなライヴになればいいなと思っています。

課長 思い出深い場所というのもあるし、弦1本つま弾くとあの大きな会場が震えるということがすごく幸せなことだと思うので、ライヴに向けて最高の状態に持っていきたいですね。

― ちなみに、ゲスの曲の中でビギナーがカヴァーするのにオススメの曲は?

川谷 有名どころだと「私以外私じゃないの」だけどそれはマジで難しいし、昔の曲かな。何だろう?

課長 ギターに関しては難しいイメージしかない。

川谷 あ、「song3」はバレーコードが出てこないので弾きやすい(笑)。

課長 僕は「キラーボール」かな。

川谷 弾いていて楽しいかもしれないね。

課長 楽しいと思います。

川谷 ゲスじゃないけどDADARAYの「fake radio」とか?

課長 「fake radio」は難しいんじゃない? 僕は難しいよ(笑)。

川谷 じゃあ弾いてみてよ。サビ裏の。

― プロデューサーの無茶振りが!

(休日課長が難しいフレーズを弾く)

― こんなに難しいことをサビ裏でやっているんですか!

川谷 3分間くらいずっとこのフレーズを弾いてるもんね。これが、ビギナーへのオススメのフレーズです(笑)。プロでも弾けない人がいると思います。

― 最後に、ビギナーへメッセージをお願いします。

川谷 ギターは好きな曲をコピーするところから始まると思うので、弾きたい曲があれば続く気がします。よくバレーコードが押さえられないから辞めたっていうけど、バレーコードなんて押さえなくても別に弾けるし。いろいろな弾き方があるので、そのへんは軽い気持ちで始めてほしいと思います。ギターがやっぱり一番始めやすいですから。バンドをやっていなくても、ギターは弾き語りでも成り立つし、今のうちに始めておいても損はないと思います。

課長 ベースって、バンドで一緒にスタジオに入った時にその魅力に気づくんです。なので、まずは仲間を見つけてスタジオに入ることをオススメします。僕は、レッチリの「バイ・ザ・ウェイ」のイントロをギターと一緒に初めて合わせた瞬間、もう鳥肌がすごかったんです。これがアンサンブルの中のベースか!みたいな。最近は一人で弾く人も多いから、楽しみ方はいろいろとあるかもしれないけれど、僕は楽器ができる人と1回スタジオに入ってみるのがいいんじゃないかなって思いますね。

前編はこちら

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休日課長:Player Plus Active Meteora® Bass|川谷絵音:Made in Japan Junior Collection Telecaster®


ゲスの極み乙女。

2012年5月、indigo la Endのヴォーカルでもある川谷絵音を中心に結成。プログレ、ヒップホップを基調とし、独自のポップメロディを奏でる4人組バンド。メンバーは、川谷絵音(Vo,Gt)、休日課長(Ba)、ちゃんMARI(Kb)、ほな・いこか(Dr)。2014年4月、3rdミニアルバム『みんなノーマル』でunBORDEからメジャーデビューを果たす。2022年5月11日、アルバム『丸』をリリース。6月18日には幕張メッセ幕張イベントホールにて〈ゲスの極み乙女。結成10周年記念公演「解体」〉を開催。
https://gesuotome.com/

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