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Cover Artist | SCANDAL -前編-

フェンダーはスタンダードな音色を出してくれる。だから変幻自在

1月26日に10thアルバム『MIRROR』をリリースしたSCANDALがFenderNews のCover Artistに登場。インタビューの前編では、昨年8月に結成15周年という節目を迎えた彼女たちに楽器を始めたきっかけを含め、SCANDALの“これまで”を振り返ってもらった。音楽性の変化とともに4年前に製作したシグネイチャーギターおよびベースもさらに馴染んできたようだ。

“もっと行ける!”と思えていることが、15年続けてこられた秘訣なのかもしれない

― バンド結成以前に通っていたヴォーカル&ダンススクールの講師の方から、“楽器をやってみないか?”と薦められ、みなさんが楽器を始めたことはよく知られていますが、楽器を薦められて最初はどんなふうに思いましたか?

TOMOMI そんなに抵抗はなかったです。先生の言うことは絶対みたいなところがあったので、“やってみないか?”と言われたら“はい”と答えるしかなかったというのもあるんですけど(笑)、もともと音楽が好きでスクールに通っていたので、楽器をやることがそんなにかけ離れているとは思わなかったんです。

― なるほど。戸惑いはなかったと。

HARUNA むしろ、自分に可能性を感じてもらえているんだってすごくわくわくしました。

RINA 私はスクールに入って、まだ1週間くらいだったんですよ。だから、“ドラムやってみたら?”と言われた時は“えっ⁉”ってなりましたけど、ステージに立てる人間になりたいという夢があったので、“チャンスがもらえるなら何でもやります!”ってすごく貪欲だったんです。ドラムのことは何もわからなかったけど、できるようになろうと思いました。

― バンドの音楽は、当時のみなさんにとって馴染みあるものだったのでしょうか?

MAMI ダンスを習っていたので、バンドよりはダンスミュージックを聴いていましたね。

TOMOMI ビヨンセとかクリスティーナ・アギレラとか、いわゆるディーバと言われている人たちをお手本にレッスンしていました。ただ当時、自分たちが高校生だった頃って、BUMP OF CHICKENやRADWIMPSが流行っていて、学校の軽音学部の子たちがコピーしていたんです。だから、まったく無縁というわけではなかったし、耳にしていたとは思うんですけど、それがバンドサウンドと思っていたわけではなくて、ただカッコいい音楽だと思っていました。

MAMI バンドを始めてからですね。バンドサウンドだと意識して聴くようになったのは。

― 最初から割と演奏できたんですか?

全員 いえ、全然(笑)。

TOMOMI そもそもヴォーカルとダンスのスクールなので、楽器を教えてくれる先生がいなかったんですよ。

― ええっ⁉

TOMOMI だから、自主練をするしかなかったんです。しかも、バンドのことなんて誰も知らないから、まずはライヴDVDを借りてきて、みんなで見ながら最初はパフォーマンスの練習から入って(笑)。楽器を持ってジャンプをしたり、ライヴでこういうポーズをしたらカッコいいとか、“外側”のことから始めた感じはありましたね。結成して1週間後にスクールの発表会みたいなイベントがあって、“1曲弾けるようになったら、オープニングアクトとして出してあげる”って言われてたんですよ。それでサディスティック・ミカ・バンドの「タイムマシンにおねがい」を一生懸命に練習したんです。

― 楽器を始めたものの、挫折してしまう人も多いと思うのですが、みなさんはなぜ続けられたんだと思いますか?

TOMOMI 知らなすぎたんだと思います。 

― 知らなすぎた?

TOMOMI 周りにダンスをやっている子たちしかいないから、最初は自分たちができていないとは思っていなかったんですよ(笑)。自分たちでは“できている”と思い込んでいたから、挫折することがなかったんです。たぶん、身近に同世代の上手な人たちがいたら、落ち込んでいたかもしれないけど、今思うと、全員が信じられないくらい強い心臓の持ち主だったから、楽しいという気持ちしかなかったですね。

HARUNA 常に小さな目標があったことも良かったと思います。結成して1週間で1曲演奏できるようになったらステージに立てるってこともそうですけど、そういう目標が常に目の前にあって、まずはそれを何とかできるようにするということを積み重ねてきたからなのかなと思います。

― ひとつずつ目標をクリアしてきたわけですね。

HARUNA はい、ほんとにひとつずつ。あと、4人で始めたっていうことも大きいと思います。

― 1人でやっていたら諦めていたかもしれないけれど、他の3人が頑張っているんだから自分も頑張らなきゃという。

MAMI そういう意味では、挫折できない環境だったのかもしれないですね。“やってみたら?”と言われたことに対して、“はい”と答えた以上、やり遂げなきゃいけないと思っていたところはあります。全員、責任感があるタイプなんですよ。

― きっと、それぞれに血が滲むような努力をしたんでしょうね。いや、弦を押さえると、最初は指から血が出るじゃないですか(笑)。

MAMI 滲みました(笑)?

TOMOM 滲みましたよ、あの頃は(笑)。

HARUNA 指先が硬くなって皮が白くなっていくのも、“お米みたいだね”って笑ってました(笑)。

TOMOMI 言ってたねー(笑)。

HARUNA すごく楽観的でもあったし、根性もあったし、そのスクールで何を学んだかって、続けていくことの大事さとか、絶対にやり遂げる根性とかだったと思います。そういうスクールで結成したってことも、長続きした理由のひとつだと思います。

― それから約15年半、SCANDALはメンバーチェンジせず、ずっと同じメンバーで活動を続けてきましたが、続ける努力ということもしてきたのでしょうか?

HARUNA 楽しいこともあったし、悩んだこともいっぱいあったし、波乱万丈な人生を送ってきたとは思うんですけど。

TOMOMI 続けるために特別、何か頑張ったってことはないですね。この4人を選んだスクールの先生がすごいんだと思います(笑)。“奇跡のバランス”とよく言ってもらうのですが、自分たちでもそう思いますね。

MAMI 高校の同級生とか、幼馴染とか、友達みたいなところからスタートしていないのが大きいと思います。最初から、無意識のうちにお互いに気を遣っていたと思うんですよ。“気を遣わなきゃ”と思っているわけじゃなくて、ものすごく自然に、それが15年間、苦もなく続いていて。最初から気を遣えるというか、空気を読めるというか、察知能力っていうんですか? そういう能力が高い人たちが集まったのかなって思います。

HARUNA それぞれが他の人の意見やアイデアを純粋に楽しめるんですよ。自分の意見はもちろんあるんですけど、それとは全然違う意見が出てきた時も“なるほどね”って、1回それを自分の中に取り入れられることが続けてこられた秘訣なのかな。

RINA 昨年、15周年の節目を迎えたこともあって、最近よく“今が一番、やりたいこともできているし、4人らしくバンドもできているし、そんな自分たちのことが好きだよね”って話になるんですけど、その度に“もっと行けるんじゃないかな”って思うんですよ。ここからもっともっと良くなるだろうって感覚があって、“これ以上は無理”と思ったことがないんです。ずっと自分たちに可能性を感じながら、“もっと行ける!”と思えていることが、15年続けてこられた秘訣なのかもしれないです。

最初のギターはフェンダーがいいなという憧れがあった

― そんな15年半の歩みの中では、フェンダーとの出会いもありましたね。

MAMI ありましたね。ギターを始めた当時は、“ギターと言えばこれでしょう”っていうのがStratocasterの形だったんです。だから“ギターを始めたら?”と言われて楽器屋さんに行った時も、まずはStratocasterの形のギターを探しました。最初に買ったのはいわゆる初心者セットで、フェンダーではなかったのですが、その後にちゃんとしたギターを買おうと決めて楽器屋さんに行った時、“この形のギターが欲しいんです”と言ったら薦められたのがフェンダーだったんです。

HARUNA 私も最初に買ったのは、フェンダーとは違うメーカーだったんですけど、インディーズで活動を始めてから、“楽器をやってみたら?”と薦めてくれた先生が貸してくれたのが、フェンダーのStratocasterでした。私もギターと言ったらStratocasterというイメージがあったので、しばらくはそのStratocasterを使っていたんですけど、メジャーデビューするタイミングでちゃんと自分のギターを買おうと思った時、Telecasterを見て“おっ、違う形だ”って思いました(笑)。Stratocasterと言うと、ギタリストってイメージが勝手にあったのですが、自分はギタリストでもあるしヴォーカリストでもあると思っていたから、Stratocasterとは違うモデルがいいなと選んだのがTelecasterで、そこからはTelecasterばかりですね。

TOMOMI 私も最初に買ったのは初心者セットだったのですが、ストリートでライヴをするようになってからもそれを使っていたら、スクールの先生が“貸してあげるよ”と言ってくれたのがフェンダーのJazz Bassで。上京する時に返しに行ったら、“それ、もうお前のだよ”と言ってくれて。それがファーストフェンダーになりました。

― RINAさんは白いTelecasterを以前、購入されましたが、なぜそれを選んだんですか?

RINA 最初のギターはフェンダーがいいなという憧れがあったんですよ。ここ(フェンダーのショールーム)に来て選ばせてもらったのですが、何本か用意してくださった中で、デザインが気に入ったのがちょっと木目が見える白いTelecasterだったんです。ひと目惚れでした。

― その後、みなさんはほぼフェンダーのギター/ベースを使っていらっしゃいますが、みなさんにとってフェンダーの魅力はどんなところなのでしょうか?

MAMI フェンダーはスタンダードな音色を出してくれるんですよ。だから変幻自在というか、素の音ももちろん好きなんですけど、私たちはエフェクターを使った特殊な楽曲も多かったりするので、そういう時にフェンダーのギターって何にでも対応してくれるんです。どんな曲にも対応してくれるのは、ライヴをする上でありがたいし、レコーディングの時も使いたいギターのリストには必ず入っていますね。

HARUNA そうですね。すごく万能だなと思います。どんな曲にも対応できるし、自分たちもこの15年、サウンドの変化があったのですが、その中でもずっとフェンダーを使い続けてきて。それはその変化にも対応してくれるからなんですけど、本当にサウンドが作りやすいんです。どんな音色でも出せるっていうのがめちゃくちゃ魅力だと思うし、あとは衣装にも合わせやすいんですよ。

TOMOMI そういう意味では安心感がありますね。SCANDALのサウンドの大黒柱。ずっとフェンダーと歩んできたなって思います。

― 2017年12月に発売された、HARUNAさん、MAMIさん、TOMOMIさんのシグネイチャーモデルは、長く使えるものということを考えて作られたそうですが、約4年間、使ってみていかがですか?

MAMI 現在は、割とそのシグネイチャー(Mami Stratocaster)がメインというか、アルバム『MIRROR』のレコーディングでも活躍する回数が多かったんですよ。たぶん次のホールツアー〈SCANDAL WORLD TOUR 2022 “MIRROR”〉は、ほぼ自分のシグネイチャーを使うことになると思います。それぐらい今の自分のスタンダードになっているんです。4年かけて、自分たちの音楽性もちょっとずつ変化してきたのもあるんですけど、4〜5年くらい前だといわゆるStratocasterのシングルコイルの音を使う機会もそんなに多かったわけではないんです。でも、年齢を重ねるとともにテンポや音色にも前以上に気を遣うようになってから、アルペジオを含めて単音弾きする曲が多くなってきて、そういう時に活躍するようになってきたんです。今となっては、主役ぐらいになっていますね。”大人っぽく”て自分で言っちゃいますけど(笑)、30代の女性として楽曲も音色も変化してきた中で、すごくピタッてきたんです。

― TOMOMIさんは使い続けてきた中で新たな発見はありましたか?

TOMOMI 一生使えると思うんですけど、今の気分にぴったりなんですよ。『MIRROR』のレコーディングでもすごく使ったし、今後はシグネイチャーベースを使う楽曲が増えるような気もしていて、楽器に自分が寄っていっている気がします(笑)。 

― HARUNAさんのHaruna Telecasterは、ライヴでいつもパワフルに鳴っていますね。

HARUNA そうですね。パワフルでもあるし、ちゃんとリッチな音も出るのですごく気に入っています。全然、持ち替えなしでもいけるんですよ。自分たちの楽曲はすごくバリエーション豊かだけど、その中でもエフェクターを使えばいろいろな音を出せるギターなので、本当に一生使えると思います。視覚的に“このギターのほうがいいかも”という理由で持ち替えたり、昔の楽曲だから作った頃の気分を思い出すために最初に使っていたギターに持ち替えることはあるんですけど、音色的なことで言うと、1回のライヴで20曲近くセットリストがあってもほぼ持ち替えずにやっていますね。

後編に続く

Left:Mami Stratocaster® Center:Haruna Telecaster® Right:Tomomi Precision Bass®


SCANDAL

2006年、大阪にて結成。メンバーはHARUNA(Vo, Gt)、MAMI(Gt, Vo)、TOMOMI(Ba, Vo)、RINA(Dr, Vo)。2008年、シングル「DOLL」でデビュー。翌年にリリースされた「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。2012年、異例の早さで日本武道館公演を達成。2013年には夢であった大阪城ホール公演を5分で即完させる。2015年、世界9カ国41公演を廻る単独ワールドツアーを大盛況に収め、初の東名阪アリーナツアーでは4万人を動員。2016年8月に結成10周年を迎え、結成地である大阪にて1万人を動員した野外コンサートを開催。2017年、ベストアルバム『SCANDAL』をリリース。2022年1月26日に10枚目のアルバム『MIRROR』をリリースし、3月よりワールドツアー〈SCANDAL WORLD TOUR 2022 “MIRROR”〉を開催。
https://www.scandal-4.com

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