Cover Artist | tricot -前編-

American Vintage II 1957 Stratocaster®はすごくtricotっぽい音がする

日本のみならず海外からも高い評価を得ている4人組バンド“tricot”から、中嶋イッキュウ(Vo,Gt)、キダ モティフォ(Gt,Cho)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba,Cho)がCover Artistに登場。インタビュー前編では、3人のヴィンテージ楽器に対する価値観、そしてAmerican Vintage IIシリーズのインプレッションについて語ってもらった。

設定を頑張らなくても音抜けがいいし樹の温もりも伝わる

──以前も3人揃ってインタビューさせていただきましたので、楽器を始めたきっかけなどの詳細は割愛しますが、確かキダさんが学校の先輩でギターが無茶苦茶うまかったという…。

中嶋イッキュウ(以下:中嶋) はい。先輩、本当にすごかったです。その先輩がいる軽音楽部に私が入って…というのがザックリとした流れです。

──しかし、その時は大人になってバンドとしてヨーロッパツアーを廻るとはまったく思っていなかったですよね?

キダ モティフォ(以下:キダ) まったく思っていなかったです。

中嶋 だって20年近く前ですよね。高校1年生で出会ってから現在までのほうが、出会う前よりも長いんですよ!

──楽器をやっていなかったらそうはならなかったわけですから、何とも不思議ですね。さて、今日はAmerican Vintage IIシリーズを試奏していただき、一番気に入った1本のインプレッションを聞きたいのですが、その前に3人のヴィンテージ楽器に対する思い入れや憧れを聞かせてください。

キダ 私はヴィンテージというものにまったく馴染みがなくて。今まで手にしたことがないので、どういう音が鳴るのかもよくわかっていない状態でしたね。

──ヴィンテージに興味がない?

キダ 興味ないわけじゃないのですが、ヴィンテージにこだわりがあるわけでもないので手にする機会がなくて。ヴィンテージはすごくいいという話は聞くのですが、別に自分が気に入ったギターを弾けばいいやくらいの感じだし、値段的に手が届きにくい印象があって、自分は買えないだろうなとずっと思っていました。避けているわけじゃないけど、選ばなかっただけっていう感じです。

──イッキュウさんは?

中嶋 どちらかと言うと世にないもの、オリジナルのものが好きで、あとは単純に見た目を大事にしていて。ヴィンテージは見た目がかなりシンプルなイメージがあったし、高価というのもあったし、音の良し悪しもあまりわからないタイプなのでヴィンテージ自体に興味がなかったんですよね。
ただ数年前、もっとギターを上手くならなあかんと思って、ケツを叩く意味でもいいギターを買おうと。そもそも自分でギターを買ったことがなかったので、ヴィンテージに詳しいギタリストの方と一緒に、最初は見た目重視で探しに行ったんです。どれにするか決める中で、“一度高いストラトを弾いたほうがいい”と言われたんですよ。で、69年製のStratocaster®️を弾いたら欲しいと思っちゃって、予算を大きく超えたのですが分割で買いました。

──具体的に何が良かったんですか?

中嶋 同じフレーズを弾いても、めちゃくちゃ上手く聴こえたんですね。これはバンドの役に立てるかもしれないなと思って買いました。でも、キダ先輩に弾いてもらったら、もっといい音がしていましたね(笑)。だから先輩にあげたいなと思っています。でも、バンドの底は上がったなという感じです。

キダ いい音でした。これがヴィンテージか!と思いましたね。

──ヒロミさんは?

ヒロミ・ヒロヒロ(以下:ヒロミ) 私も今までヴィンテージは手にする機会がなくて、値段的にも候補に入れていなかったんです。でも、一度友人にフェンダーのヴィンテージのPrecision Bass®︎を借りたことがあって。どういいかと言われたら難しいんですけど、設定を頑張らんでも音抜けがいいし樹の温もりも伝わる。それを一度体験してから、ヴィンテージってすごいと思いました(笑)。

流行りの音色とは真逆で、それが新しい

──今回、American Vintage IIを試奏していただきましたが、気に入った1本を理由とともに教えてください。

ヒロミ 私はAmerican Vintage II 1954 Precision Bass®を推しメンにしました(笑)。まずは見た目がかわいい。色合いも100点(笑)!

中嶋 弾く前からこのプレベを選んでほしいなと思っていました。キュートな見た目で、憎いですね。

キダ レトロ感がいいよね。

ヒロミ 実際に鳴らしてみて“樹の温もりがある音”という感じで、いわゆるドンシャリのような最近の流行りの音色とは真逆で、それが私的には新しいというか。どちらかと言うと、ドンシャリでギャリっとしたカッコいい音を好きなベーシストが多いと思うんです。私もそうなのですが、それがまったくないのが逆に新鮮で。このベースを使って既存曲を弾いても雰囲気がめちゃ変わりそうやし、曲作りやレコーディングで使ってみたらどうなるんやろ?ってすごく興味が湧きましたね。

──具体的にどういう曲調で弾いてみたいですか?

ヒロミ 指弾きで弾くと良さそうな気がしたのですが、私はどちらかと言うとピック弾きがメインなので、レコーディングで使うとどうなんねやろ?と興味深々です。ピックでガシガシ弾いても今までとは違う太さだし、ピック弾きでレコーディングで使ってみたいと思いました。

──ギターの二人はまだ迷っているんですか?

中嶋 使用する意図で迷っていますね。American Vintage II 1951 Telecaster®はバッキングを弾いていてもメインのように聴こえるというか…カッコ良くてすごくオシャレな音がする印象。American Vintage II 1972 Telecaster® Thinlineは深い感じが面白いなと思って、American Vintage II 1957 Stratocaster®はすごくtricotっぽい音がするなと。今弾いているフレーズにすごく馴染んだので“どうしよう!?”と迷っています。

キダ American Vintage II 1957 Stratocasterは、自分の持っている69年製のストラトと弾き比べてみてどうなん?

中嶋 言葉にするのは難しいけれど…違うものっていう感じがしましたね。でも、それはそれでいいなって。だからキダ先輩が何を選ぶかで決めようかなと。

──では、キダさんはいかがでしょうか?

キダ ストラトとシンラインで悩んでいます。今はストラトタイプのギターをメインで使っていて何本か持っているんですけど、ほとんどがリアピックアップを外したものなんです。リアを使っていない理由は、初めて手にしたギターのリアの出力がすごく小さくて細い音だったんです。そのイメージがずっとあったのですが、American Vintage II 1957 Stratocasterを弾いたら自分が使っているセンターピックアップぐらいのハリというか強さがあって新鮮でした。American Vintage II 1972 Telecaster Thinlineは、fホールがあるギターを持っていないということもあって気になって。フロントピックアップで弾いた時に丸いけどハリがあって、単音のリフ、カッティング、バッキングを弾いた時にすごく良さそうだと思っています。なので…American Vintage II 1972 Telecaster Thinlineを選びます!

──イッキュウさんはどうしますか?

中嶋 American Vintage II 1951 Telecasterにしようかな。先輩のシンラインとシルエットは被っていますけどね。ストレートなテレキャスの音がオシャレで、今まで弾いてきたギターの音との差が一番ありそうだと思ったし、いろいろな場面で広がりそうな気がしたので! ドラえもんの配色のAmerican Vintage II 1957 Stratocaster(Sea Foam Green)も捨て難いんですけど(笑)。

キダ そこなんや(笑)。

ヒロミ:American Vintage II 1954 Precision Bass | 中嶋:American Vintage II 1951 Telecaster | キダ:American Vintage II 1972 Telecaster Thinline

>> 後編に続く(近日公開)


tricot
2010年9月1日、中嶋イッキュウ(Vo,Gt)、キダ モティフォ(Gt,Cho)、ヒロミ・ヒロヒロ(Ba,Cho)とともに結成。直後に自主レーベル、BAKURETSU RECORDSを立ち上げる。展開の予測できない独特でスリリングな楽曲と、エモーショナルな力強さと心の琴線に触れる繊細さを併せ持つヴォーカルが絶妙にマッチし、唯一無二の世界観を生み出している。2014年以降は、欧米、アジアに活動の幅を広げ、現在までに109公演を成功させた。2015年に2月にはイギリスのNME.COMで特集記事が組まれ、同年4月にはアメリカのRolling Stone.comの「あなたが知るべき10組のニューアーティスト」に選出。2017年11月15日吉田雄介(Dr)が加入。 2019年、メジャーデビューの決定とavex/cutting edge内にプライベートレーベル「8902 RECORDS」設立を発表。同年9月25日のメジャーデビューシングル「あふれる」のリリースを経て、2020年にはアルバムを2枚リリースするなど精力的に活動を続け、2021年に入ってからも有観客ワンマンライブ「サイレントショー 秘密」を東京、大阪で開催。2022年には最新アルバム「不出来」をリリース。国内のみならず海外でも注目度が急上昇中のロックバンド。
https://tricot-official.jp/

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