Cover Artist | Char -後編-
日本製にしかできないものを作りますって言うから、勝手にすればって(笑)
日本を代表するロックギタリスト、Char。来年には古希(70歳)を迎えるが、そのカリスマ性も、最高のテクニックに裏打ちされた色気に満ちたギタープレイも、衰えるどころか、ますます磨きがかかっている。 そのCharのシグネイチャーモデル、Char Stratocaster Burgundyがついに完成。Made in Japanならではのこだわりと、精緻さと、技と工夫を詰め込んだ、至高のモデルとなっている。後編では、このChar Stratocaster Burgundy開発のきっかけや出来上がるまでの経緯、様々な魅力、Charのこのギターに対する思い入れなどについて語ってもらった。
バーガンディを使って、ストラトの良さが分かった
──まずはCharさんが長年愛用してきている、オリジナルの59年製バーガンディミストメタリックのストラトキャスターについてお聞きします。あれは1983年ごろに入手されていますよね?
Char 銀座にあったスモーキースタジオに、まーちゃん(加部正義)の友達がバーガンディとピンクのストラトを、買わない?って言って持って来たんだ。なので出会いは銀座です(笑)。2本で50万円だったんだけど、バーガンディだけ25万で買った。バーガンディを選んだのは、そんな色、見たことがなかったからね。これは珍しいなと思って。
──そのあと、バーガンディが大きいライヴでファンの前に登場したのは、1984年9月29日の日比谷野外音楽堂でのことになりますね。
Char そうですか(笑)。覚えてない。
──(笑)。そのあと、バーガンディがCharさんのメインギターになっていきますけど、その理由はどういうところだったんでしょうか? 色もそうでしょうが、やはり音が?
Char だいたいギターなんてのはさ、音がどうこうなんてのは自分で作るもんだから。でも、バーガンディはクリーンの音が良かったかな。さっきも言ったけど、クリーンの音が基本だからね。
──ムスタングもCharさんを象徴するギターですが、ムスタングと比べてどうですか?
Char ムスタングにはムスタングの音があって、ムスタングでストラトの音は出ないし、逆も無理だし、比べてもしょうがないよね。ただ、ムスタングってのはもともとスチューデントモデルだから…俺、大人になったんじゃないの? 84年に(笑)。でもまあ、バーガンディを使って、ストラトの良さが分かったんだろうね。1本目のストラトは、(デビュー以前に)かっぱらわれたから、拗ねてたんだけどね、ストラトなんかもう使うもんかって(笑)。バーガンディ以降、他のストラトも使ったけど、ダフネブルーのとかジェフ・ベックモデルとか、それぞれ全然音が違うよね。良い悪いじゃなくてね。ただ、バーガンディで作った曲がどんどん増えたから、そしたらライヴでもバーガンディで表現したほうがいいかなってことはある。まあ、そんなにこだわってはいないけど。すぐ浮気するタイプだし(笑)。まあでも、どこまで行ってもバーガンディのあの色だよね。やっぱり他の人が持ってない色を持ちたいって思うじゃん。ストラトなんてだいたいの人が持ってる中で、この色は俺しか持ってないぞって。子供みたいなもんだよね(笑)。
この価格でこれが出せるのは、作っている方々の愛があるとしか思えない
──それでは、今回リリースされるChar Stratocaster Burgundyについてお聞かせいただきたいのですが、開発のきっかけはどういうところだったんでしょうか?
Char これまでもお世話になっているフェンダーの日本チームが、ぜひMade in Japanで俺のシグネイチャーストラトを作りたいとおっしゃってくれて。だから、やれるものならやってみな、って(笑)。USA製とは違うアプローチで日本製にしかできないものを作りますって言ってくれたんで、勝手にすればって(笑)。まあ、断る理由はどこにもなかったね。Made in JapanでUSA製と比べられないようなものを作ってもらえるっていうのは、Made in Japanの俺としても誇らしいし。
──Fender Custom Shopから以前、バーガンディのレプリカモデルが出ていますが、それとはどういう部分を変えたい、改善したいと思いましたか?
Char そこはフェンダーに任せてた。それはもう信頼関係だよね。俺が好む音は彼らが一番知ってると思ったし、そこは委ねるしかない。それはCustom Shopでポール・ウォーラーという若いビルダーに頼んだのも同じ理由で、作る人の個性も出してもらってかまわないと俺は思ったから。オリジナルの59年製の音そのものを求めてはいないしね。もちろんそこをある程度求めたと思うけど。でも、同じになるわけないし、同じならオリジナル使ってればいいわけだから(笑)。
──ネックはオリジナルのバーガンディの形状をプロファイリングしてあるそうですね。また、フレット交換などの際に指板が削られて薄くなって、そのために弦のテンション感が緩くなっているのを再現するためにネックポケットを深くするなど、プレイアビリティの面でオリジナルに近づける工夫が凝らされています。一方で、トレモロユニットのキャビティを3mm大きく取ってアーミング時の可変幅を広げるなどの、オリジナルにはない仕様も加えられています。そういうところも含めて、Charさんとしては実際に使ってみての感想はいかがでしたか?
Char まずはネックが俺の手によく馴染む。ここはギタリストにとってはボディーより大事かもしれない。音は、んー、若い(笑)。ギターって、弾いていくとだんだん自分の癖がついていくもんだけど、若いギターには若いギターにしか出ない音がある。で、弾いてるうちに、その子の良さが分かってきて、どういう音を出してもらいたがっているかが分かってくるんだよ。ギターによって、弾かされる場所って決まってるものなんだ。ムスタングで「Smoky」が出来たのと一緒で。だからこの新しいストラトも、弾かされる場所が出てくるんだと思う。そこを探してあげたいよね。とにかく、Custom Shopのモデルと比べても、この価格でこれほど手が込んだものを出せるっていうのは、作っている方々の愛があるとしか思えなし、あとは弾くだけかなってくらい良くできてる。
──Charさんファンの方はもちろんですが、それ以外にはどういう人に使ってもらいたいですか?
Char パープル好きの人(笑)。色んな楽器があるけど、エレキぐらいカラーバリエーションがある楽器ってないと思うんだよ。その中でもレアなバーガンディミストだからさ。もちろん、音や弾き心地にもすごくこだわって作ってくれているのは分かってるけど、その上でやっぱりこの色がね。一家に1本、バーガンディミストいかがですか? あって損はないですよ、みたいな(笑)。
──では、Charさんファンの皆さんにも、このストラトについて一言いただけますか?
Char 買うな!(笑)俺だけしか使わないから、使うな!(笑)
──そう言われたら余計買うと思います(笑)。
Char でも、Custom Shopのモデルと比べても、この価格でこれほど手が込んだものを出せるっていうのは、作っている方々の愛があるとしか思えないよね。俺が社長だったら却下するよ(笑)。
──最後に、来年の70歳に向けて、Charさんの今後の活動について教えてください。
Char コロナ禍以降、小まめにライヴをやれていないから、ライヴハウス的な会場も含めて、ライヴを積極的にやっていきたいよね。ギターを持って人前に立つのが俺の仕事だから、それを出来る限り増やしたいなって思ってる。元気なうちにさ(笑)。ストラトと同じで、俺も来年70周年だけど、そう思うと自分の人生、ほとんどギターと共に生きてきている。子供のときにギターに出会って良かったなと思うよね。エレキギターって俺のために出てきたもんじゃないかな、俺はエレキギターを弾くために生まれてきたんじゃないかな、って思いたいぐらいだね。
──Char Stratocaster Burgundyを新しい相棒として、Charさんには今後とも活躍して、日本のロックシーンを活気づけていただきたいと思います。
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Char
1955年6月16日東京生まれ。本名・竹中尚人 (たけなか ひさと)。ZICCA REDORDS 主宰。8歳でギターをはじめ、10代からバックギタリストのキャリアを重ねる。1976年『Navy Blue』でデビュー以降、『Smoky』『気絶するほど悩ましい』『闘牛士』等を発表。Johnny, Louis & Char 結成翌年、1979年に日比谷大野外音楽堂にてフリーコンサート「Free Spirit」を行う。1988年 江戸屋設立以降、ソロと並行して、Psychedelix、BAHO での活動を行う。2009年にはWEB通販主体レーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、TRADROCK シリーズを発表。2015年5月、還暦アニヴァーサリーアルバム『ROCK 十』を発表。2016年、ギターマガジン誌による、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて1位に選ばれる。2018年、Fender Custom Shop にて日本人初のプロファイルドモデルを発表、オリジナル楽器ブランドZICCA AX にて、様々なオリジナル楽器アイテムを展開中。2020年、ギターマガジン誌投票「ニッポンの偉大なギター名盤」にて、1stアルバム「Char」が一位に選ばれる。2021年9月、16年ぶりのオリジナルアルバム「Fret to Fret」を発表。12月にはデビュー45周年武道館公演を開催。2022年4月、同公演の映像作品を発売。2023年7月、最新アルバム『SOLILOQUY』を発売。2024年11月25日より自身の69(ROCK)イヤーを記念した全国ツアー”69 SPIRITS” Tour 2024を全国8箇所で開催予定。2025年2月11日(火・祝)に有明アリーナでCharがホストとなり、ジェフ・ベック・バンドのメンバーに加え、布袋寅泰さんと松本孝弘さんも参加される一夜限りのコンサート、「A Tribute to Jeff Beck by Char with HOTEI and Tak Matsumoto featuring The Jeff Beck Band -Rhonda Smith, Anika Nilles, Jimmy Hall & Gary Husband-」が開催予定。
https://www.zicca.net/
Photo direction by Taichiro Yoshimoto
Photograph by Tsutomu Yabuuchi
Styling by Yohei Shibayama
Hair&make-up by SUGO
Costume(HEUGN、5351 POUR LES HOMMES、GOD SUNS、MAYSER)