Cover Artist | 山中拓也(THE ORAL CIGARETTES)-後編-
ジャズマスとテレキャス、最強の2本かもしれない
6月13日にリリースした4thアルバム「Kisses and Kills」がバンドにとって初となるオリコンチャートNo.1という快挙を成し遂げた4人組ロックバンド、THE ORAL CIGARETTES。そのフロントマン、山中拓也(ヴォーカル&ギター)が現在使っているメインギターや、ギター遍歴を語るインタビューの後編。合わせて、9月から始まる「Kisses and Kills Tour」の意気込みも聞いた。
― 「山中さんが最初に買ったギターは?
山中拓也(以下:山中) まずは小5の時に12,000円ぐらいのを買いました。 その後、中学生になってから、70,000円ぐらいのフェンダーの木目のTelecasterを買いました。当時、the band apartがすごく好きだったんですけど、(ヴォーカル&ギターの)荒井(岳史)さんがストラトとテレキャスを使っていたんですよ。それと、マンガ「BECK」の影響も若干あります(笑)。
― そこから、現在使っているフェンダーのAmerican Deluxe Telecasterを手に入れるまでに何本かギター遍歴はあるんですか?
山中 ありましたね。高2の時にやっていた3ピースバンドではギター&ヴォーカルだったんですけど、その時はUSA製フェンダーのサンバーストのストラトを使ってました。あきらかにあきら(Ba)と前にやっていたバンドで、僕、リードギターをしてたんですけど、その時もそれでしたね。当時、奈良ですごく憧れていた先輩が新たに始めたバンドにギタリストとして誘ってもらったんですよ。でも、その先輩がめちゃめちゃ厳しくて。“コードの押さえ方、一からもう1回やろう。ここからここのコードに移る時は、こっちのほうがいいから、この押さえ方に変えて”とか、“カッティングの時、打つ音しか感じてない。休符も感じて”とか言われながら、その練習を1日中やらされて、僕、レッチリの「Get On Top」って曲、めっちゃ嫌いになったんですよ(笑)。それでも耐えながら半年ぐらい、その先輩とバンドをやってたんですけど、ある時、スタジオでブチ切れちゃって、カート・コバーンみたいにストラトをバーンってやったらネックからバコーンって折れて。“うわ、やってもうた。でも俺、ばりロックやわ”って思いながらスタジオを出たんですけど、翌日、めっちゃいいギターやったのにって後悔しました。それで、もうバンドやめようと思って、代わりのギターを買うこともなく、1カ月ぐらいプラっとしている時、ふらっと楽器屋に入ったら、今使っているテレキャスが置いてあって。何か知らんけど、それを見た瞬間、“これ買おう”って思ったんですよ。20万円以上のギターを買ったのはその時が初めてだったんですけど、“もうバンドやめへんのやろな”と思って。そのギターを買ったことが、腹を括ってバンドをやろうと思うきっかけになりました。
― そのTelecasterの何が腹を括らせたんですか? 20万円以上したからってことではないですよね?
山中 それも若干ありますけどね(笑)。でも、あんだけやめようと思っていたのに、あんだけ音楽欲がなくなっていたのに、そのギターを見ただけで“うわ、ギター弾きたいな”って思ったのはけっこう新鮮な感覚だったと思います。
― ひと目惚れしたギターを、実際弾いてみていかがでしたか?
山中 手に馴染む感覚があって、一発鳴らした時の音が自分が求めていた音とかなりマッチしてたんです。その時、これをずっと使っていくんだろうなって思いましたね。
― 求めていた音というのは?
山中 先輩のバンドでめっちゃ練習したカッティングの気持ち良さを感じるっていう意味では、ばっちりハマってたし、歪ませた時にテレキャスのガリッとした感じがなかったんですよ。それがすごく良かった。テレキャスって歪ませるとバキバキってなりがちで、それがいいという人もいるかもしれないけど、僕はカッティングの時はジャキッとしててほしいけど、歪ませた時は馴染んでてほしいんです。それをどっちもしっかり鳴らせたんですよ。
― それをもう10年ぐらい使ってきたわけですね。
山中 そうですね、僕の音楽人生をずっと見てきてますね。
― 16年末にフェンダーのClassic Player Jazzmaster Specialを導入したのはどんなきっかけから?
山中 オーラルのサウンドのやりたいことが変わってきたんです。リードギターのシゲ(鈴木重伸)も最初はストラトを使ってて、中音域〜高音域でガリッとギターロックっていうのがオーラルの最初の形だったんですけど、だんだん下の音域が必要なサウンドになってきて。それで1回、シゲがレスポールに替えて、僕もセミアコに替えた時期があったんですよ。でも、テレキャスからの振り幅がすごく広くて(笑)。“行き過ぎた。ちょうどいいところないのかな”と思って、別のギターを探している中で、“テレキャスよりももうちょっと中音域がガツッと出て、なおかつ上のカッティングもキレイに出るギターはないですか?”ってフェンダーさんに相談したとき、何本かJazzmasterを弾かせてもらって。その中で今のジャズマスを一発目にバーン!って弾いた時、“あ、これです”ってなりました。
― 使い勝手はいかがですか?
山中 めちゃめちゃいいですね。チューニングが狂うみたいな噂も耳にしましたけど、全然狂わないし出音もかなりいい。アンプはEVHの5150を使っているんですけど、そことの相性もばっちりですし。だから、今はメインでがっつり使ってます。
― EVHの5150の話が出ましたが、オーラルには「5150」というタイトルの曲があります。そのタイトルは“今にも犯罪をしそうなクレイジーな奴”を意味するアメリカの警察の無線暗号に由来するそうですが、アンプの型番とは関係ないんでしょうか?
山中 なくはないです(笑)。テックさんにすすめられてレコーディングでずっと使っていたEVHの5150を、自分で購入したタイミングがちょうど「5150」を作り始めたところだったんですけど、曲作りに苦しんでいたせいか、精神的にかなり追い込まれていたんですよ。そんな時に作った曲だから、歌詞もだいぶやばくて。そんな曲のタイトルを何にしようと考えた時、ふとアンプの5150のほんまの意味って何やろ?って思ったんですよ。今まで多くのアーティストがタイトルに使ってきたけど、知らんなと思って調べてみたら、“ヤバい奴”と“51+50で101。限界を突破している状態”を意味していることがわかって、“マジか!? その時の俺にぴったりだ”と思ってそのままタイトルにしたんです。
― 5150のどんなところを気に入っているんですか?
山中 とにかく歪みがキレイなんですよ。クリーンでもクランチみたいに使えて、めっちゃ使えるし、単純に見た目もカッコいい。5150の意味もカッコいいし、フェンダーギターとの相性もいいし。
― 山中さんはアンプで音色を作って、足元でスイッチングするだけだそうですね。
山中 ディレイを1個置いていますけど、ほぼスイッチングだけですね。昔から、エフェクターで音を歪ませるのが嫌いなんです。アンプで歪ませたほうが絶対にパンチ力があると思うし、そもそも足元(エフェクター)がめっちゃ多いのが嫌なんです。だって俺、ヴォーカリストですから(笑)。足元でパンパンやるよりも歌に集中したい。それもあって、アンプで歪みを作っちゃってるんです。
― 今後、こんな音が必要になるとか、こんな音を出していきたいというビジョンはありますか?
山中 ギターで出す特殊な音についてはシゲに注文してますね。シンセで作ったらできるんですけど、ギターで変態チックな音を作ってほしいんですよ。自分のギターに関しては、ジャズマスとテレキャスの2本で全然困っていない。けっこう最強の2本かもしれないです。
― 最後に、9月から始まるツアー「Kisses and Kills Tour」の意気込みを聞かせてください。
山中 ライヴハウスシリーズの後に初めてのアリーナツアーもあるので、気合いをがっつり入れたいと思いながら、今回、さらに自由にやりたいことを突き詰めていけたアルバムになったので、僕らメンバー4人が自分たちの音楽を楽しんでる姿を見せるのが、1周回って一番カッコいいんじゃないかっていうのもあります。僕らが好きなロックスターは、自分たちの音楽に死ぬほど酔っていたと思うから、今度は僕らが自分たちの音楽に酔って、それに対してお客さんがどれだけ気持ち良くなれるか。そこを追求したいので、あまり決め事なしに自由に行こうと思ってます。その場その場でしか生まれない空気が絶対にあるはずだから、それを観に来てほしいですね。
› 前編はこちら
American Deluxe Telecaster
山中「真剣にバンドをやっていこうと腹を括るきっかけになったギターです。フラッと入った楽器屋で一目見た瞬間に“買おう!”と思いました。実際、持ってみたら手に馴染む感覚があって、一発鳴らした時の音が自分が求めていた音とかなりマッチしていたんです。バンドをやっていない時期で、音楽欲を失っていたにもかかわらず、見ただけでギターを弾きたいと思ったのは新鮮な感覚でした。」
PROFILE
THE ORAL CIGARETTES
2010年、奈良にて結成。メンバーは、山中拓也(Vo,Gt)、鈴木重伸(Gt)、あきらかにあきら(Ba,Cho)、中西雅哉(Dr)。人間の闇の部分に目を背けずに音と言葉を巧みに操る唯一無二のロックバンド。メンバーのキャラクターが映えるライヴパフォーマンスを武器に全国の野外フェスに軒並み出演。リリースする作品は常に記録を更新し、4枚目のアルバム「Kisses and Kills」はオリコン初登場1位を記録。2017年6月には初の日本武道館公演、2018年2月には地元関西にて大阪城ホール公演を開催し両日とも即日完売で成功を収める。BKW!!(番狂わせ)の精神でロックシーンに旋風を巻き起こしている。
› Website:http://theoralcigarettes.com
New Relese
Kisses and Kills
【初回盤】¥3,780(tax in)【通常盤】¥3,024(tax in)
A-Sketch
2018/06/13 Release