Cover Artist | INORAN -後編-

フェンダーとの特別な出会い

Inoran

ソロ活動20周年を迎えたINORAN。インタビュー後編ではジャズマスターについての想いを語ってもらった。

ジャズマスターしか弾きたくないなって思った(笑)
 

―  フェンダーのジャズマスターと出会ったタイミングで英語詞が増えて、サウンドもパワーロックというかドシッとした感じに変わっていくタイミングが後期だと思うのですが、振り返ったときに何かキッカケがあったのでしょうか?

INORAN   自分にとっての究極の音楽の理想は、どこでも聴ける、聴いても遜色のない音楽なんです。世界で聴かれている音楽、たとえばU2とかオアシスだったらビーチや地下鉄、雪山で聴いても変わらない。響きは変わるけど、どこでも聴ける音楽だと思う。包容力やレンジの狭い音楽はやりたくないし、そう思い立ったのがLUNA SEAで2010年に開催したワールドツアー「LUNA SEA 20th ANNIVERSARY WORLD TOUR REBOOT -to the New Moon-」のときだったんですよね。アメリカとかドイツ、これまで行ったことのない土地で僕らを待ってくれている人たちがいて、この人たちから多くのものをもらったから僕も何か届けるものを作りたい。そういう想いでソングライティングをしていたときに、英語詞が合うメロディーのほうが多くて。英語詞が合うメロディと合わないメロディー、日本語が合うメロディーと合わないメロディーがあるんですけど、それが自然とそっち(英語詞)のほうに向かったんです。

―  その中にジャズマスターという存在もあって。

INORAN   うん。そのツアー中に最初のジャズマスター(INORAN JAZZMASTER #1 LTD)をプレイしているんですけど、ジャズマスターしか弾きたくないなって思った(笑)。長年活動を続けていると、自分のパブリックイメージもあるし、ファンが求めているものもわかる。いろんなギターを使って、いろんな音楽ジャンルをマルチにこなすのもいいんだけど、あえて絞って掴みたいものをひとつだけ掴みたいなと。それが僕の中で、LUNA SEAのワールドツアーとジャズマスターを持ったときにロックだったわけですよ。だから2011年にリリースした『Teardrop』は極力1本のギターで、ダビングもせずに1本のジャズマスターだけで作って。やりたいこと、やりたくないことっていう次元の話ではなくて、たとえばみんなでシンガロングしたり、広がっていく音楽を作るためには自分のイメージやスタイルをひとつにしなきゃいけない。いい意味でも悪い意味でも自分を制約しながら模索していって、その決意表明が『Teardrop』というアルバムで。それからストーリーが突っ走っていくんですけど、そこにジャズマスターがいてくれたのがすごく大きい。大きいというか、ほぼすべてですよね。フェンダーの取材だから言ってるんじゃなくて、本当にそう思ってるんですよ(笑)。

―  シンガロングという意味では、『INTENSE SIDE』に収録されている新曲「Shine for me tonight」はアコースティックと美しいストリングスが印象的で、みんなで口ずさめるようなアンセム感がありますね。

INORAN   『INTENSE / MELLOW』を作る過程の中で、新曲も欲しいよねっていう話になって。ライブを想定しながら、未来に向かうための楽曲を書いていったんです。その中の楽曲のひとつで、こういうノリは弾いている側も楽しいし、みんなも楽しんでくれるかなと思ってチョイスしました。

―  ストリングス以外の楽器はINORANさんが演奏しているんですよね。

INORAN   何かやりたくなったんだよね(笑)。1人で演奏するとね、デモテープもそうだけどつまらないんですよ。僕は根っからのバンドマンなので、リズムとかノリのクセが一緒なので、1人で演奏するとベースとかドラムのノリが合っちゃうんです。音楽って、特にロックはリズムやノリのズレが面白いと思っているので、それがなくなると広がりがなくなるんだけど、あえてそれをやることによってライブで広がりを見せるかもしれない。音源になった時点で完成形じゃないと考えると、ライブで広がっていくのも面白いのかなと。

―  先ほど自分を制限するという話がありましたが、では本作もジャズマスターに絞って使用されたんですか?

INORAN   ほぼ100%ジャズマスターですね。使用モデルの使い分けは、まずはドラムとかベースを積み上げていって、エンジニアと“この曲はチームビルドだよね”とか、“左はビルドで右は白(INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER®)だね”とか、そのあたりは感覚ですね。モデルの個性については共通認識としてみんな持っているので。だから使ったのは1号機のINORAN JAZZMASTER #1 LTD、2号機のINORAN JAZZMASTER® #2LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka、あとはチームビルドの3本かな。この間もLUNA SEAの現場で使ったんだけど、今は青のジャズマスター(INORAN JAZZMASTER® #3LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka)が絶好調なんですよ。

―  数あるギターの中で、ジャズマスターを持つ理由は何ですか?

INORAN   もちろん音もルックスも好きなんだけど、今思うとシグネイチャーモデルをミーティングしながら作ってもらって完成したあとに、フェンダーファクトリーに行って、フェンダーファミリー(スタッフ)に惚れちゃったんですよね。人に惚れちゃったんですよ。だからもう次元が違うというか。

―  そう言っていただけるのは、フェンダーにとってとても光栄なことです。楽器とミュージシャンってひとつじゃないですか、ライブ中も物理的に一番近くにいるものなので。だから切っても切り離せないものですよね。

INORAN   そうですね。だから出会いがすべてですよね。

―  話は遡りますが、INORANさんはソロ名義ではあるけどバンドじゃないですか。メンバーもYukio Murataさん(my way my love / Gt)、u;zo(Ba)、Ryo Yamagataさん(Dr)で固定というか。ライブを観るたびに結束力が強くなっていると感じるんですけど、今のメンバーが揃うタイミングはどこだったんでしょうか。アルバム『Teardrop』のときですか?

INORAN   いやいや、そのときはu;zoはいたけどRyoくんはいなくて、2012年の「Solo Works 15th Anniversary Year 2nd Stage Live Tour 2012 “Dive youth, Sonik dive”」からかな。その前の「Live Tour 2011 “Hide and Seek”」でRyoくんとu;zoのリズムコンビを初めてやって、2012年からMurataさんが参加してくれて。それ以来ずっとこのメンバーですね。

―  今のバンドメンバーでガチっとハマった瞬間が良かったんですかね。

INORAN   そうですね。2012年に「“Seven Samurais” EUROPEAN TOUR 2012」をバンドメンバーとスタッフ合わせて6人くらいで行ったときかな。そこで結束力が強くなった。それぞれが世界に出ているプレイヤーたちなので、気がラクだし戦い方を知ってるよね。これがないとライブができないっていう人たちじゃないというか、すごく悪い状況でもいい状況でも一緒に楽しめる、楽しみ方を共有できる器がある。雨が降ったら雨が降ったときの楽しみ方ができて、晴れたら晴れたときの楽しみ方ができる。音楽って不安を取り除くために活躍するものでもあるから、曲を作っている僕が……まあみんなで作っているけど、作り手である俺たちがそれを吹き込まなきゃダメでしょっていう考えです。

―  ライブを観るとメンバー自身がすごく楽しそうにしているなって思っていたんですけど、なるほどって腑に落ちました。9月から始まる全国ツアー「SOLO 20TH ANNIVERSARY TOUR 2017 -INTENSE / MELLOW-」はどのようなライブになりそうですか?

INORAN   メンバーと連絡を取り合っていても、このアルバムにメンバー自身が触発されているので、初日から飛ばしていくようなツアーになると思います。いい景色を見にみんなのところに行きます。

―  ライブの光景が浮かぶ曲が多いので、間違いなく楽しめるツアーになるだろうなって予感しかしないですね。

INORAN   同感ですね。僕もMurataさんも2人ともジャズマスター使いなので、極上のジャズマスターサウンドを堪能しに来てください。

› 前編はこちら

Inoran

INORAN JAZZMASTER® #3LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka
INORANのソロ活動20周年を記念して、マスタービルダー デニス・ガルスカによって製作された1本。


INORAN
ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして1992年にメジャーデビュー。1997年よりソロ活動をスタートさせ、Muddy Apes、Tourbillonなどでも精力的な活動を展開。2010年にはフェンダーとエンドースメント契約を締結し、翌年に日本人アーティスト初のシグネイチャーモデル「INORAN JAZZMASTER #1 LTD」を発売。その後も2013年に「INORAN JAZZMASTER® #2LTD, Masterbuilt by Dennis Galuszka」、2015年に「INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER®」、2017年にはソロ活動20周年を記念した「INORAN ROAD WORN® JAZZMASTER® 20th anniv. Edition」など多くのシグネイチャーモデルが発売されている。

› INORAN:https://inoran.org/

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