フジファブリック LIVE TOUR 2023 ”Particle Dreams”

〈フジファブリック LIVE TOUR 2023 “Particle Dreams”〉東京公演が、2023年9月12日(火)渋谷Spotify O-EASTにて開催された。7月に予定していたワンマンの振り替え公演となる今回。山内総一郎(Vo,Gt)のフェンダーギターを軸に、2ヶ月越しの想いをぶつけた公演の模様をレポートする。

長年の愛用フェンダーギターと新しいモデルが“共演”

ピークは過ぎたものの残暑が続くこの日、夏をテーマとした「陽炎」でライヴがスタート。山内総一郎(Vo,Gt)のトレードマークとも言える62年製のStratocaster®(Fiesta Red)の澄んだサウンドに加え、加藤慎一(Ba)の59年製Precision Bass®︎のリッチな音色と金澤ダイスケ(Kb)のエネルギッシュな鍵盤の音色がアンサンブルを躍動させる。


大きな歓声に感慨深そうに耳を傾けた山内は“Particle Dreamsツアー東京ファイナル、始めます!”と宣言し、「自分勝手エモーション」を披露する。「東京」では、観客の手拍子とサポートの伊藤大地(Dr)による重厚なドラムが融合。4人でソロ回しを行い、加藤のワウを用いたファンキーな音色、山内の粘りのあるギターサウンド、金澤の流れるような鍵盤さばきなどで観客を圧倒する。「SHINY DAYS」では、パーカッシブで実直なベースサウンドがグルーヴを牽引。山内がStratocasterの小気味良い音色やアームプレイで、加藤と金澤のヴォーカルを後押しする場面も見られた。

冒頭から全身全霊のパフォーマンスで沸かせた彼らだが、待ってくれたファンへの感謝が原動力にあったのだろう。山内は“どうもありがとう!そしてみんな、ごめんな!”と、力いっぱい手を振る。“またみんなの前でライヴできることが本当に嬉しく思います。今日「Particle Dreams」という曲に込めた想いを伝えて、また一つ未来に進めるんじゃないかな”と述べた。続けて“フジファブリックは5周年、10周年、15周年とか、夢をみなさんと共有して一緒に叶えてきた、そういうバンドなんです。来年20周年を迎えるにあたって、またみんなと一緒に夢を見ようじゃないかって。(「Particle Dreams」は)そういう願いを込めて作った曲です”と想いを明かした。

ツアータイトルにも起用した6月配信シングル『Particle Dreams』では、グルーヴィな金澤のシンセに乗せて、ファンが体を揺らす。今回のセットリストは、観客が踊ったりクラップしたり手を振ったりできる曲が特に多く、“踊れること”“会場が一体になれること”を意識していたように思う。そこにはリスナーの心安らぐ場所を作りたいというフジファブリックの意志が感じられた。

加藤による70年代製Precision Bassの骨太なサウンドと金澤のスペーシーな音色が彩る「地平線を越えて」を経て、会場が暗転。すると暗闇から、きらびやかなギターサウンドが聴こえてきた。ステージが再び照らされると、見慣れないギターを持った山内の姿が。上品なホワイトカラーを基調としたStratocasterのボディに、フロントはワイドレンジハムバッカー、リアはTelecaster®︎のピックアップが搭載されており、ストラトにTelecasterのブリッジを装備するという組み合わせに目を引いた。ここで演奏したのは「Time」で、軽やかに爪弾かれるリフやコード弾き、ハーモニクス、指弾きのギターソロなど、あらゆるプレイでぬくもりのあるサウンドを響かせていた。


「ブルー」では、高校時代から愛用しているというBlue MetallicのStratocaster 40th Anniversary Modelを手に取る。長年の愛機とじっくり対話するように、アウトロでは長尺のソロを展開する山内。弾き込まれているだけあり鳴りが良く、緻密なプレイに対する音のレスポンスも速い。エモーショーナルなギターにつられて金澤と加藤の演奏も熱を帯び、観客をさらに魅了。山内のギタリストとしての真価と、いまだ底知れないバンドのポテンシャルを存分に体感したひと時となった。


先ほどのクールな演奏から一転し、“どう?良かった?”と観客の反応を確かめ、顔を綻ばせるメンバーたち。ここでメンバー紹介があり、金澤は“近い!”と感嘆の声を上げながらフロアを見渡す。“今、史上最高の「ブルー」をやりましたけどね。このあとも史上最高をお届けするつもりでやってまいります”と予告。加藤は、思い入れがある聖地・渋谷でライヴができることを喜んだ。

山内は“ここから最高に持っていきたいんですけど、みなさん大丈夫ですか?”と呼びかけ、「瞳のランデヴー」を金澤とのツインヴォーカルで披露した。「WIRED」で勢いを加速させたのち、「Feverman」では再び白いストラトを使用。力強くキレのあるギターの音色やタイトなベースサウンドで煽る。続く「Surfer King」では、山内が大きく開脚してアグレッシヴにギターをかき鳴らし、瑞々しいサウンドを届ける。そして、中毒性のある「ミラクルレボリューション No.9」で本編を締めくくった。


アンコールでは、まず山内が登場。10月25日にリリースするシングル『プラネタリア』の制作が大詰めであることを明かし、カップリングで収録予定の「ココロコロコロ」を白いストラトで弾き語り。それまでとは違った温かなサウンドが歌を後押しし、このギターがリードギターからバッキングまで幅広く使えることがよく分かった。

その後メンバーを呼び込み、夏の終わりのナンバー「若者のすべて」を披露。ここでは、メイン機の62年製を元にマスタービルダーのジェイソン・スミスによって製作されたFiesta RedのStratocasterの伸びやかな音色がノスタルジックに響きわたる。

最後のMCでは白いストラトを手に取った山内が不意に“ギター作ったんだ!いいだろ〜!”と満面の笑顔で新しい相棒を紹介し、まるで少年のように無邪気にギターを爪弾く。そのまま“みんな、ぶち上がって行こうぜ!”と「徒然モノクローム」へ。力強いギターの音色にうねるような加藤のベースサウンドと高揚感を誘う金澤のシンセと共鳴し合い、スパートをかけていく。最後の「LIFE」では、“ギター、俺!”から山内のソロに突入するお馴染み流れを新しいギターで行い、フロアを熱狂させる。本機を持った山内の動きはいつも以上に活発で、このギターの取り回しの良さもうかがえる。本ライブでは、これまで愛機54年製オリジナルブラックガードのTelecasterを使うことが多かった曲でも新しいストラトに持ち替えており、その完成度の高さが伝わって来る。終演後は10月に控える〈プラネットコロコロ TOUR 2023〉での再会を約束して、4人はステージを後にした。

奇しくも、長年の愛用フェンダーギターと新しいモデルが“共演”した本公演。山内のギタリストとしてのこれまでの歩みと、これからの将来が交差していたようだ。この日登場したギターが今後どのように活躍し、加藤や金澤とどのようなアンサンブルを作り上げていくのか。デビュー20周年を目前にしたフジファブリックから今後も目が離せない。


【SET LIST】
1. 陽炎
2. 自分勝手エモーション
3. 東京
4. SHINY DAYS
5. Particle Dreams
6. 地平線を越えて
7. Time
8. ブルー
9. 瞳のランデヴー
10. WIRED
11. Feverman
12. Surfer King
13. ミラクルレボリューション No.9

ENCORE
1. ココロコロコロ(弾き語り)
2. 若者のすべて
3. 徒然モノクローム
4. LIFE


フジファブリック:https://www.fujifabric.com/

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