My Original Playlist | ウエノコウジ(the HIATUS)

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90年代、日本にビートロックを巻き起こしたTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTのベーシストとしてシーンに出てきて以来、ずっとビートロック番長であり続けているウエノコウジ。そんなウエノのプレイリストは、音楽性だけではなく、プレイスタイルのルーツでもある曲たちだ。進化し続けながらもブレない男、ウエノコウジの入魂のルーツ8曲とは?


ミッシェルのメンバーからパブロックを教わって、どっぷりハマった

 

―  今回リストに挙げていただいた曲は、ウエノさんの音楽的な核であるビートロックのコアソングが堪能できると同時に、ウエノさんにとってのロックスター的なルーツも垣間見える気がします。

ウエノコウジ(以下:ウエノ)   確かに、今の俺のベーススタイルに辿り着くまでのルーツをわかりやすく挙げたつもりではいるんだよね。なので、ブルースといった黒人系の音はとりあえず全部切りました。もちろん俺が好きなビートロックも掘り下げていけば、最終的には黒人音楽に辿り着くんだけど、そこまで広げるときりがないからね。俺が楽器を手にしたきっかけ、俺のプレイスタイルの礎になる曲を抜粋して挙げています。

―  1曲目にキャロルが挙がってますね。

ウエノ   家の近所に悪いお兄さんがいて、その人にキャロルを教えてもらったんだよね。それがすべての始まりなんだよ。

―  初めて聴いたロックがキャロルだったと。

ウエノ   そう。もちろん後追いだけどね。

―  何歳の時ですか?

ウエノ   小6か中1くらいだったと思う。その人から甲斐バンドやARBといった九州のロックを教わったし、ビートロックもその人が教えてくれた。でも、すべての始まりはキャロルだったんだよね。

―  そう言えばキャロル時代の矢沢さんは、ベースを弾きながら歌ってますよね。

ウエノ   そうなんだよ。しかも、曲によってはフェンダーのJazz Bassを弾いていらっしゃいます。



―  敬語なんですね(笑)。キャロルからどういう経緯で洋楽を聴くように?

ウエノ   キャロルと洋楽の間に、シーナ&ザ・ロケッツ、THE MODS、THE ROOSTERSといった福岡のビートロック、明太ロックを好きになったんだよね。そうなると結局、パンクにいくんだよ。で、パンクで最初に食いついたのがザ・ジャムだった。ザ・ジャムはスーツを着てたでしょ? それが俺にはカッコ良かった。それと、明太ロックもそうだけど、とにかく速いのがカッコいいと思っちゃう。

―  ウエノさんが速いビートロックに惹かれたのはなぜだったと思いますか?

ウエノ   肌に合ったんだと思う。あと、兄貴がドラムをやってたんだけど、メタルの超絶技巧派んほうにいっちゃったんだよね。その反面があるのかもしれない。

―  確かにビートロックってテクニックじゃないところがありますもんね。

ウエノ   そうなんだよね。今回のリストには入れてないけど“これなら俺でもできるな”って最初に思ったのはジョニー・サンダース(ニューヨーク・ドールズ、ザ・ハートブレイカーズ)だもん。

―  納得です(笑)。でも、パンクって速いだけじゃないわけで。

ウエノ   そうそう。聴いていくと、例えばザ・ジャムっていうバンドは、黒人の音楽に憧れてそれを自分の解釈、つまりテンポを速くしてやってるのがカッコいいってことがわかって。シングルのB面を聴くと、黒人音楽のカバーが入っていて、そういうのを知っていくうちに“カッコいいな”ってさらに好きになったんだよね。



―  クラッシュも多様な音楽要素を含むバンドですよね。

ウエノ   ロカビリー、レゲエ、スカ、もちろんパンクも入ってるからね。ザ・クラッシュもそういういろんな音楽的要素があるところに惹かれていったしね。で、なぜ「ロック・ザ・カスバ」を挙げたかというと、ベースです。

―  というと?

ウエノ   俺、ベースを買って最初にやったことって、「ロック・ザ・カスバ」のポール・シムノンのストラップの長さに合わせることだったからね。

―  そこからですか(笑)!

ウエノ   むしろそこからですよ。俺が白いフェンダーのPrecision Bassを使い出したのもポール・シムノンの影響です。シムノンと言えば、白いフェンダーのPrecision Bassなわけじゃない。さすがに俺のベースには血は飛んでないけど(笑)。しかも、今でも俺のストラップの長さは変わってない。それは「ロック・ザ・カスバ」の映像を見てもらえばわかります。あの時のままです。俺にとっては、シムノンのストラップの長さがゴールデン比だと思ってるので。

―  弾きにくくないんですか?

ウエノ   そりゃ短いほうが弾きやすいよ。

―  シムノンのストラップの長さでベースを構えて、最初からガンガン弾けました?

ウエノ   けないけどカッコいいじゃん。だって、俺らがパンクに求めたのって、理屈じゃなくてカッコ良さだから。革ジャン着たのもカッコいいからだしね。そういうのって中2から変わってない。俺はカッコいいと思ったら、とにかく1回真似するんだよ。みんなそうだとは思うけど。で、好きになったらずっと変わらず好きなんだよね。

―  ブレないですね。

ウエノ   そうだねぇ。クラッシュからロカビリーの良さも教えてもらって、ロカビリーも好きになった。ロカビリーが好きになると、ロッカーズっていうモッズと真逆の文化を知るわけ。で、リーゼントにライダースを着て、セパハンバックステップのバイクに乗るわけですよ。俺はリーゼントこそしてないけど、未だに革ジャンを着てるし、セバハンバックステップのバイクに乗ってるもん。だから、カッコいいと思う部分って本当に変わらないんだと思う。

―  プレイリストに戻ると、ドクター・フィールグッドはウエノさんが挙げないと…。

ウエノ   俺が挙げとかないと示しがつかないよね。大学に行ってミッシェルのメンバーからパブロックを教わって、どっぷりハマったんだよね。それまで俺が聴いてた曲って、ある意味速さだけみたいなところがあったんだけど、パブロックはペラペラなのにカッコ良かった。特にフィールグッドは黒っぽいところ、ブルースの要素があるしね。



―  パブロックものはチバさんが聴いてたんですか?

ウエノ   チバも聴いてたし、アベ君の前のギターも聴いてたね。ミッシェルって、最初はダムドみたいなパンクバンドやろうぜ!みたいな感じで始まったバンドだった。でもそこから変わる時に、パブロックがひとつのキーワードになったんだよね。

―  ミッシェルを通してドクター・フィールグッドを聴いたって人は多いですよね。

ウエノ   その流れで言うと、ヘッドコーツもミッシェルで知ったっていう人も多いかもね。ヘッドコーツは、ジャンルで言うとパブロックじゃなくてガレージだけど。あの音質、それからリフ一発で持っていく感じにすごく影響を受けたね。上手い下手じゃないからね、ヘッドコーツは。

―  ハイテクな時代なのに、なぜヘッドコーツのようなザラザラした荒っぽいローファイな音にキュンときちゃうんでしょうか?

ウエノ   空気の震えじゃない? 土屋昌巳さんが言ってたんだけど、音って空気の震えだからそれが伝わんなきゃダメなんだよって。今の音ってあんまり震え感がないんだよね。上手く聴こえるし、キレイには聴こえるんだけど。

―  なるほど。

ウエノ   それと匂い。逆に言えば、震えも匂いもないのが好きな人もいるわけだからさ。ただ、俺らの年代は空気の震えがガーンときたほうが好きだし、匂いがありまくったほうが好きなんだろうね。

―  そう言えばウエノさん、今年50歳ですよね?

ウエノ   そう。誕生日にイベントやるんだわ。3月27日。渋谷O-EASTを押さえてしまいました(笑)。

―  出演は?

ウエノ   the HIATUSが出てくれる。あと、前座が武藤とウエノ(武藤昭平 with ウエノコウジ)。それ以外にも、俺と古市コータローとクハラカズユキと鍵盤の山本健太でハウスバンドを作って、そこに何人かゲストボーカルを迎えます。

―  武藤昭平 with ウエノコウジはニューアルバム『JUST ANOTHER DAY』が1月22日にリリースされましたね。

ウエノ   最近、グラム・パーソンズにハマっていて、いま俺の中ではカントリーブームが来ているのね。で、今回の武藤・ウエノの新譜はカントリーテイストなんだよ。だから、俺は中2の頃から全然変わってない。これがいいなと思ったらそれをやる!

―  素敵です。ベースもずっとフェンダーのPrecision Bassですよね。

ウエノ   そうだね。ヴィンテージのベースも持ってないし。ヴィンテージは興味があってお金に余裕がある人は買ってもいいと思うんだけどね。俺の場合は、自分が気持ち良ければいいんだよね。プレベで十分気持ちいいからね。


【the HIATUS ウエノコウジのMy Original Playlist】


  • 1.キャロル / ルイジアナ
  • 2.The Clash / Rock the Casabah
  • 3.The Jam / In the City
  • 4.The Who / Boris the Spider
  • 5.Dr.Feelgood / She Does It Right
  • 6.The Stooges / I Wanna Be Your Dog
  • 7.Thee Headcoats / Troubled Times
  • 8.Alabama Shakes / Hold On

the HIATUS
メンバーは、細美武士(Vo,Gt)、masasucks(Gt)、ウエノコウジ(Ba)、柏倉隆史(Dr)、伊澤一葉(Kb)、一瀬正和(Dr)。2009年5月27日、 1stアルバム『Trash We’d Love』をリリース。最新アルバムは2016年7月6日にリリースされた『Hands Of Gravity』。ウエノコウジのバースデイライブ「golden jubilee~ウエノコウジ50生誕祭~」を3月27日(月)渋谷TSUTAYA O-EASTにて開催。
› the HIATUS OFFICIAL WEBSITE | http://thehiatus.com/


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