のん PURSUE TOUR – 最強なんだ!!!
のんが2ndアルバム『PURSUE』を引っ提げて、約5年ぶりの単独ツアー〈NON PURSUE TOUR -最強なんだ!!!-〉を東京・大阪にて開催。2023年7月9日(日)東京・Zepp Hanedaにて行われた初日公演は、彼女の20代最後のライヴとなった。フェンダー愛用者であるのんのギターが3種類登場した東京公演の模様をレポートする。
身体の一部のように溶け込んだTelecasterが、歌声をより輝かせる
7月13日に30歳となり、音楽活動の肩書きを“創作あーちすと”から“アーティスト”へと改めた“のん”。歳を重ねる直前の6月に発表したアルバム『PURSUE』は、20代の彼女の活動や生き様が詰まった作品となっている。そんなアルバムの収録曲を中心に構成された本公演では、エネルギッシュなロックチューンを全18曲披露。要所要所でフェンダーギターが活躍した。
ステージに立ったのんが元気いっぱいに“みんな来てくれてありがとー!”と感謝の気持ちを伝えると、アルバムの1曲目でもある「Beautiful Stars」でライヴをスタート。のんにお馴染みの日本製Candy Apple RedのTelecaster®︎を勢いよくストロークしながら、力強くキュートな歌声を響かせる。堂々とした佇まいと快活なギターサウンドは“最強なんだ、私”というこの曲の歌詞を体現していた。
2曲目の「へーんなのっ」ではSatin Surf Green のAmerican Performer Stratocaster®︎ HSSを使用。エフェクターを強く踏み込み、両足を大きく広げてギターをかき鳴らす姿はロックスター然としている。また、間奏ではギターを弾きながらステージ前方に行き、観客にクラップを促す場面も。Stratocasterのバランスが取れた素直な音色は、のんのアグレッシヴなパフォーマンスに寄り添っていた。
続いてサイケデリックなVJをバックに、元GO!GO!7188のユウ(チリヌルヲワカ)とノマアキコが書き下ろした「ナマイキにスカート」を届け“今日は一緒に楽しもうぜ!行くぞー!”とフロアをさらに煽る。宇宙空間を思わせるVJを駆使した「僕は君の太陽」を披露したのち、「むしゃくしゃ」の曲中にはステージに倒れ込んで“あー、もう無理だ!もう歌えない!疲れた!でも頑張れって言われたら歌える気がする”と弱い一面を見せた。すると、客席から大きな声援が飛んで演奏を再開。めげそうになってもファンの応援を活力にして立ち上がる、彼女のキャリアそのものを表したようなワンシーンだった。
のんが奏でるAmerican Vintage II 1972 Telecaster® Thinline(Aged Natural)の音色から始まったのは「薄っぺらいな」。空気をふんわりと纏った柔らかなギターサウンドは、アンビエントなエフェクトも相まって幻想的な雰囲気を演出。一方でその音色には芯が通っており、切なさと強さを併せ持った彼女の歌声を引き立てる。
その後は椅子に座り、サポートメンバーのひぐちけい(Gt)と2人でカヴァー曲を披露。ひぐちが奏でるアコースティックギターの調べに乗せて、忌野清志郎「I LIKE YOU」とKIRINJI「エイリアンズ」をしっとりと歌い上げる。さらに「荒野に立つ」を歌い“今まで自分が話さなかったようなことをヒグチアイさんに打ち明けて作ってもらった曲なんです。自分の分身みたいな曲が誕生したなと思って興奮しています”と述べ、この日会場に集った観客や配信で見守るファンのことを思い浮かべてこの曲を歌ったと明かす。そして“次はぶち上げていくぞ!”と煽り「Oh! Oh! Oh!」を演奏した。
ここで再びCandy Apple RedのTelecasterを手にすると、サディスティック・ミカ・バンドのカヴァー「タイムマシンにおねがい」「やまないガール」「こっちを見てる」を立て続けにパフォーマンス。パワフルなギターの音色が会場をよりヒートアップさせる。「タイムマシンにおねがい」では歌に寄り添いつつアンサンブルをカラフルにしたTelecasterだが、「やまないガール」では歯切れのいいサウンドで楽曲の疾走感を強調し、「こっちを見てる」では粗く粒立った音色を響かせるなど、さまざまな表現を実現した。
終盤では再びAmerican Vintage II 1972 Telecaster Thinlineが登場。「夢が傷むから(Inspired by 東京百景)」では鋭いギターサウンドがバンドサウンドを有機的に仕立てる。ひぐちとのユニゾンで始まった「鮮やかな日々」では、歯切れの良さを残しつつも温かな音色が楽曲を彩った。曲の途中でのんは“めちゃくちゃ楽しくて幸せな気持ちでいっぱいです”と述べて“Zepp Hanedaを光の粒でいっぱいにしたいんです”と、観客にスマホのライトを点灯するよう呼びかける。光に包まれながらのんがギターを弾き歌う様子は実に感動的だった。そして拳を突き上げながら「この日々よ歌になれ」を歌い、本編を締めくくる。
アンコールではTelecasterをかき鳴らしながら「スーパーヒーローになりたい」を歌唱。野趣に溢れつつもぬくもりのあるギターの音色に乗せて、楽曲に込めたメッセージを観客に届ける。冒頭から全身全霊でギターを弾き歌い続けたのんは“歌いすぎて唇が痺れてきた!”と力尽きそうになるが、ここで再び声援が飛び交う。ファンからパワーをもらった彼女は、エネルギッシュにこの日のラストナンバー「わたしは部屋充」を演奏した。
喜びも苦労もエネルギーに変えて、ファンと共に走り続けてきたのん。“アーティスト”へと変化を遂げる直前に行われたこのライヴでは、力強く歌う姿やギターを奏でる佇まいから確固たる自信が溢れ出ていた。20代の音楽活動の集大成であり、さらなる成長を予感させる、そんな希望に満ちたライヴだった。
SET LIST
1. Beautiful Stars
2. へーんなのっ
3. ナマイキにスカート
4. 僕は君の太陽
5. むしゃくしゃ
6. 薄っぺらいな
7. I LIKE YOU
8. エイリアンズ
9. 荒野に⽴つ
10. Oh! Oh! Oh!
11. タイムマシンにおねがい
12. やまないガール
13. こっちを⾒てる
14. 夢が傷むから(Inspired by 東京百景)
15. 鮮やかな⽇々
16. この⽇々よ歌になれ
ENCORE
1. スーパーヒーローになりたい
2. わたしは部屋充