Players’ After School | Char -後編-
この秋、文化祭を控える高校生バンドを応援するため、綾小路 翔(氣志團)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、Charの3人のアーティストがサプライズで高校の軽音楽部を訪れ、特別講義を行うというスペシャルな企画「PLAYERS’AFTER SCHOOL」が行われた。最後は、日本屈指のギタリストChar。後編ではインタビューをお届けする。
― 講義お疲れ様でした! まずは講義の感想から教えてください。
Char もっと一人一人とちゃんと話しができれば良かったんだけど、時間に限りがある中で、できることはできたかなって思っています。
― 教えると同時に、学校という場所に来ると懐かしい気持ちというか、何か思い出したところもあったのでは?
Char そうだね。2つあって、1つは“やっぱり昔と変わらないな”ということ。もう1つは“思いっきり変わったな”ということ。変わらないのはロックやバンドっていうのは、自分たちの気持ちを表現するティーンエイジャーの精神的な特権なんだってこと。一方で、今のティーンエイジャーは恵まれすぎているとも言える。いいとか悪いじゃなくて、例えば楽器一つとっても、昔より安く買えるし、いいものが買える。エフェクターだって買い放題だし。学校の中でバンドが演奏できる部として存在しているし。俺の時代に学校の放課後で演奏したら、下手したら警察署行きでしたよ(笑)。でも、そういう環境の変化はいい意味で変わっているんだなって思いたいです。
― ええ。講義の後半で“浦安爆走族”という男子バンドの演奏も観てもらいましたが。
Char 学祭で演奏している写真が高校の卒業アルバムに載ってるんだけど、彼らより俺らのほうが大人っぽかったかなぁ(笑)。でも、中味は同じだろうけどね。で、その卒業アルバムの写真を見るとすごく真剣に演奏しているんだよね。学際の時に音楽室で演奏しているんだけど、弾いてる俺も真剣だし、観てる奴もミニコンサートを観てるような表情だし。うーん…何かいろんなことを思い出すね。2年から3年になる時、生徒手帳を変えるじゃない。更新する時に俺が一番遅くて、事務局から「竹中君、早く写真出してくんないと生徒手帳作れないよ」って言われて「何でもいいの?」って聞いたら「何でもいい」って。ちょうど持っていたのが前の年にバンドで合歓(ねむ)の郷に合宿しに行った時に、フェンダーのストラトを持ってギューンって弾いてるやつで(笑)。「これでもいいの?」って聞いたら「それでもいい」って。だから3年の時の生徒手帳写真はストラトを持っている写真なの(笑)。しかも、生徒手帳に「今月の収入〇〇」とかって書いてあんの(笑)。その時は俺、すでにスタジオミュージシャンやってたからね。
― 驚きです! ところで、今日の講義で部員たちから何かインスパイアや刺激は受けましたか?
Char もちろん。こういう機会って一生忘れないと思うし、それがどういう形で表に出るかわからないけど、まぁ嫌でも何か形で出るでしょう(笑)。でもどうせなら、男の子のバンドと女の子のバンドを観てみたかったね。こういう機会はなかなかないんだから、もしも次に機会があるなら、もうちょっと生の演奏を観てみたいね。
― 来年以降の参考にさせてください。今日は東海大学付属浦安高等学校にお邪魔しましたが、全国の高校にはたくさんのバンドマン、ギターギッズたちがいます。彼ら、彼女たちにCharさんからアドバイス、メッセージをお願いします。
Char 講義の中でも言ったんだけど、今しか表現できないことがあるんだよ。それは考えてやるもんじゃなくて、感じるままで俺はいいと思うんだ。それを“ああしろ”“こうしろ”っていうのは違うと思う。だいたい、ロックなんて学校に行って学ぶことじゃないんだよ。だって、今日までギターを弾いたことないヤツが、今日からでもロッカーになれるもんだから。でも、ギターは楽器だし音楽だから、深さや奥行きはある。だから、その先はもう自分次第でいいと思う。今の俺もそうだよ。63歳の今日しか表現できないし。それはやっぱり何歳になっても変わらない。アドバイスすることなんかないよ。もちろん細かいことを言ったらいっぱいあるんだけど。だから「どうやったらギターが上手くなるんですか?」って言われたってなぁ(笑)。
― (笑)。
Char どこまで難しいことをやるかはその人次第だよ。それより、俺らの世界はギターをジャカジャーン!ってかき鳴らすだけで“オッケー!”っていう世界だから。それがギターっていうウェポンのいいところなわけだから。そのギターの楽しさが広がってほしいなって思うね。その一点かな、こういう講義をやりたいと思った理由は。面倒くせぇと思うけど、俺がこういうことをやることによって“ギターって面白れぇな”って思ってくれて、ギターを弾く人が増えたら嬉しいよ。
― そうですね。
Char それと同時に、このエレキギターっていう楽器はなくならないことを確信したね。うちの親父はこんなものなくなるって言ってたからね。俺が40になった時でも、「お前いつまでギターなんかやってんだ? 早くちゃんとした仕事見つけろ!」って言ってたからね(笑)。
― (笑)。講義の最後に部長さんにフェンダーのプレイヤーシリーズのStratocasterを贈呈しましたが、何か託した想いはありますか?
Char 今日の夜中にはネットオークションに出ることを祈る!
― ハハハハハ!
Char それがロックンロールだから。それで「やられたぁ」みたいな(笑)。でも、ロックの良さってそういうところなんじゃないのかなって思うよ。後生大事にしていただきたいという気持ちはあるけど、今日中にオークションに出してみろって思うよね。で、誰も買わないと「意外と無名じゃん、アイツ」ってみんなで言ってるっていう(笑)。
― (笑)。講義でも言っていましたが、音楽で大事なのは“Have fan”ってことですよね。
Char そうですね。音楽は“学”じゃなくて“楽”なので。点数で競うものではないんですよ。講義でも言ったけど、音を楽しむ能力は全員のDNAの中に組み込まれて持っているんだから、ひょっとしたら“国算理社英”よりも音楽を中心にしたほうが世界平和になるかもしれない。俺も音楽でいろんな国のヤツと実際ここまで仲良くやってきたから。その理由はやっぱり音楽だからだと思うんだよね。音楽のいいとこってそこだよね。「お前何好きなの?」「俺、ジミ・ヘンドリックスが好き」「OK!」みたいな。理屈じゃないよね。
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Char
本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。10代からバックギタリストのキャリアを重ね、76年にシングル「Navy Blue」でデビュー。ソロと平行してJohnny, Louis & Char、Phychedelix、BAHOなどのバンド活動も積極的に行い、2009年にインディペンデントレーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、2017年にWebメディアOfficial ”Fun”club「ZICCA ICCA」を開設。ギターマガジン主催の「ニッポンの偉大なギタリスト100」でグランプリに選出されるなど、日本を代表するプレイヤーのひとり。
› Website: http://top.zicca.net/