The Rock Freaks Vol.6 | 大森南朋

ROCK FREAKS VOL.6

アーティストとフェンダーによるケミストリーを写真で切り取るエキシビジョンシリーズ「THE ROCK FREAKS」。第6回目は、テレビドラマ、CM、映画、舞台に活躍する大森南朋。


曲を作ってギターを持って人前で表現すると、自分で作った武器で戦えている感じがする

今や日本を代表する役者と言っても過言ではない大森南朋。そんな大森南朋は役者だけではなく、2014年から「月に吠える。」というバンドのギター&ヴォーカルとして活動し、音源リリースとツアーとバンド活動も本格的に行っている。「役者がバンドをやっていると、片手間でやってる風に思われるけど、役者になるまではずっと売れないバンドマンだったんです。だから、バンド活動は片手間ではなく、ようやく夢が叶った感じなんです」と語る大森はとても嬉しそうだ。

役者とバンドでギターを弾くことはどう違うのだろうか?

「役者は人が、作った脚本の世界の中で自分を表現していくんです。曲を作ってギターを持ってそれを人前で表現していると、自分で作った武器で戦えている感じがします。俳優の方がこの記事を読まないことを願うとして(笑)。僕は、俳優だけだと退屈でした。そもそもギタリストになるのが夢だったので。最初は俳優をやりたくなかったぐらいなので、役者になった時、“あーあ、役者になってしまった”と思ったぐらいですから(笑)」

音楽とギターに目覚めたのは兄の影響だという。「映画監督をやっている兄貴がいるんですが、兄貴は小さい頃ヘビメタ好きで、オジー・オズボーンとかアイアン・メイデンとかが兄貴の部屋から流れてきてたんです。でも、兄貴のことが大嫌いだったから、同時にヘビメタも大嫌いになって(笑)。中学になるとヘビメタじゃないロックを聴くようになるんです。邦楽だとレベッカやHOUND DOGとかがリアルタイムで、洋楽だとマイケル・ジャクソンやマドンナ、U2とかなんですけど、そのあたりを聴いているとその奥にはザ・ビートルズやローリング・ストーンズがあることがわかってくるわけです。それから、ビートルズとストーンズを聴くようになり、すぐにギターにも興味を持つようになりました」とヒストリーを語ってくれた。

最初は家にあったガットギターを弾いていたそうだが、当然のように自分のギターが欲しくなる。それから中学3年の冬休みに郵便局でバイトをし、稼いだバイト代で初めてギターを購入したそうだ。その時のことを大森は悔しそうに振り返った。

「うっかりフェンダーじゃないギターを買ってしまったんです。そもそもストーンズを聴いてギターに興味を持ったわけです。しかも立ってギターを弾く人に無性に憧れて、キース(・リチャーズ)がTelecasterを弾いてるポスターを買って部屋に貼っていたぐらいなのに、中3なんて子供なのでギター屋さんに行ったら舞い上がってしまい(笑)。それでフェンダーを買い損ねてしまった」

ROCK FREAKS VOL.6

Photo by Maciej Kucia (AVGVST)

初めてフェンダーを購入したのは、大森が役者になる直前だったという。「22歳ぐらいの時です。その時は少しだけ役者もやっていましたけど、売れないバンドマン人生真っ只中でした。バンドではフェンダーじゃないギターを弾いていたんですけど、どうしてもフェンダーを弾きたくてTelecasterを買ったんです。すごく気に入っていたんですけど、知り合いのバンドマンに貸したら、そのテレキャスを持ったまま大阪に帰ってしまい手元になくなってしまいました」

大森はその後もバンドを続けたかったが、20歳を超えるとバンドには必ず試練が訪れる。将来への不安&就職問題だ。

「バンドマンといっても暇なわけで、僕はオーディションに行ったりしながら、ちょこっと映画も出たりしてたんです。でもお金がなくて、吉祥寺の古着屋でバイトをしてました。そうこうしていたら映画『殺し屋1』のオーディションに受かり、役者の仕事が少しバタついてきて、毎週入っていたバンド練習ができなくなったりして。メンバーに迷惑をかけるというのと、みんなも普通に仕事をしてたんです。僕は本気でバンドをやり続けようと思っていたんですが、メンバーはバンド活動をナメている感じがあって。それで、ライヴの打ち上げでケンカして、僕がバンドを抜けました」

それから役者としての道を歩み出すが、最初は全然食えず、バイトをしながらの生活だった。だが、今は冒頭に書いた通り名実ともに日本を代表する役者に成長した。役者として成功した大森には、リベンジしたことが2つあった。まずは、バンドを再び始めること。

「バンドを辞めても、大好きなギターはずっと家で弾いてました。バンドをもう一度やりたくて」と語る大森は、4年前にバンド“月に吠える。”を結成し、音源制作とライヴ活動を積極的に行いその夢を果たしている。

もう1つは、手元からなくなったフェンダーのTelecasterを手に入れることだった。「役者でお仕事をたくさんいただいたので、高価なヴィンテージのテレキャスを買おうかと思ったんです(笑)。でも、現行のテレキャスを買って自分でそのギターを育てたいなぁと思いまして。その時にメキシコ製の音がいいという噂を耳にしたので、メキシコ製の現行のテレキャスを買いました」

今回の撮影で大森が持っているのがそのテレキャスだ。撮影中も合間を見ては、ストーンズやTHE STREET SLIDERSのリフを嬉しそうに弾いている。大森にとって月に吠える。の活動は仕事なのだろうか? 遊びなのだろうか? あまりにも嬉しそうにギターを弾いているので、そんな質問をぶつけてみた。

「仕事らしくしないとみんな締まらないので、一応“仕事です”と言いますけど、そんな感じではやっていないです。かと言って遊びではなく、『真剣に遊んでます』という感じです」と答え、さらにこう続けてくれた。「バンド、いいですよー。昔はやっていたけど辞めてしまった人、ぜひまたバンドをやってみてください。あと、やったことのない若い人もぜひバンドをやってほしいです。PCで曲を作っていないで、スタジオでメンバーと音を鳴らすの、本当に楽しいから!」と大森はインタビューを締めてくれた。

撮影とインタビューが終了しても、フェンダーギターのことをいろいろとフェンダースタッフに聞いている大森。どうやら、ローズネック/指板で黒ボディのテレキャスを探しているようだ。「ハリーさん(村越“HARRY”弘明)と土屋公平さんが2人でやっているJOY-POPSのライヴを観に行ったら、ハリーさんが弾いているローズネック/指板で黒ボディのテレキャスの音がすごく良かったので、それを買って、今回の月に吠える。のツアーで弾きたいなぁと思っていて」と少年のような笑顔でスタッフに話しかけている。

月に吠える。は、6月末から3週連続で限定配信シングルをリリースし、全国ツアーを廻っている。故にバンドマン・大森南朋はとても幸せなのだ。


大森南朋
72年、東京都出身。2001年、映画「殺し屋1」で初主演を務め、07年のテレビドラマ「ハゲタカ」ではエランドール賞 新人賞、第33回放送文化基金賞 演技者賞、映画版「ハゲタカ」では第33回日本アカデミー賞 優秀主演男優賞を受賞。17年、映画「THE OUTSIDER」でハリウッド映画デビューを果たす。
› Official Site:http://apache2001.co.jp/artist/omori_nao/

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