Special Interview | Ken(L’Arc~en~Ciel)

“Experiment”という言葉通り、実験的に弾いてみたいという想いがあった

Kenの新たなシグネイチャーモデル「Ken Stratocaster® Experiment #1」が発売された。昨年のL’Arc~en~Ciel結成30周年記念ツアー〈30th L’Anniversary TOUR〉で初登場し、今年5月の東京ドーム2days〈30th L’Anniversary LIVE〉ではメインギターとして使われたモデルだ。“実験=Experiment”と名付けられたこのギターの発想やこだわりについて話を聞いた。


──Ken Stratocaster Experiment #1(以下:Experiment #1)は、どんなアイディアからスタートしたのですか?

Ken “Experiment”という言葉通り、実験的に弾いてみたいという想いがあったんです。まずは、ボディで試したかったことがありました。経年劣化とともにボディの塗装が削れていくと、いい音になるんじゃないか?という予測が今までの経験上あって、初代のシグネイチャーモデルKen Stratocaster Galaxy Redの時に、ボディに耳を近付けて生音を聴くと振動が大きいところと小さいところがあって、気になるポイントがあるとハサミでボディを削っていたんです。
その次にKen Stratocaster Paisley Fantasy(以下:Paisley Fantasy)が完成して。Paisley Fantasyは模様があるから、ボディ裏の目立たないところを削って耳を当てて聴いた時、“ボディ裏のコンター加工がなかったら巻き弦だけでなくプレーン弦でも低めの音が出るんじゃないか”とふと思ったのが最初のアイディアです。Telecaster®︎を弾くと、もうちょっとゴツンと音がしてるイメージもあって。それも重なって、コンター加工がされていない、削られていないボディを実験として弾いてみたいと思ったんです。“そういうことはできますか?”とフェンダーに伺ったら“やってみましょう”という話になって、コンター加工がされていないプロトタイプを作ってもらいました。

──今までのシグネイチャーから引き継いだ部分もありますよね。

Ken Paisley Fantasyで音への影響も良かった、ピックアップのダイレクトマウントを試したいと。マスタービルダーのグレッグ・フェスラーが製作したピックアップの組み合わせで何年か弾いていたんですけど、フロントピックアップに切り替えた時のバランスを変えたくてV-Modピックアップを紹介してもらいました。Paisley Fantasyとの組み合わせが良かったのでそれも盛り込もうと。あとは、これも何年か前から取り付けているピックアップバランサー。通常、フロントとリアをピックアップセレクターで切り替えるだけですが、リアとフロントをミックスできるようにバランサーを入れて。ネックもPaisley Fantasyは充分に太かったんですけどさらに太くしてもらいました。

──出来上がったプロトタイプを触ってみての印象はいかがでしたか?

Ken 去年のツアー中の秋頃に“完成しました”と連絡があって、最初、表も裏もコンター加工なしで作ってもらったんですが、弾いてみたら“弾きにくい!”と思って(笑)。それで、ボディトップだけAcoustasonic®︎のように削ってもらいました。最低限のコンター加工を入れてもらって家に持ち帰ったのですが、やっぱりフィットはしなかったんですね。それから、自分でゴリゴリと削って、削っては構え、削っては構えを繰り返して(笑)。“これくらいでいいんじゃないかな?”ってところまで削ったけど、そのままだと引っ掛かるのでオリーブオイルを塗りました(笑)。ツアー中で、ステージでいきなり使ってみたらわりと気にならなくて、このボディに決まりました。

──Experiment #1は、コンター部分にゴールドの塗装を施したオリジナルホワイトですね。

Ken 日本の磁器や金継ぎのイメージでできたらいいなと思って、普通のホワイトよりも磁器のような白にしてもらいました。削ったコンター部分を木目のままにするのも意外と面白かったんですよ。悩んだけど、気になったら削ればいいから金色にしました。

──Experiment #1はどんなサウンドですか?

Ken これまでのシグネイチャーモデルの流れの中にあって、ちょっとワイルドで野性的な音ですね。それに加えて、ゴツっとしたところが出るイメージですね。

──プレイ的にExperiment #1が映える時は?

Ken ローコードではなく、ミドルポジションの5度コードや9thを入れた歪みのコードもすごく響きやすいですね。その辺りがドーン!と音抜けがいい印象ですね。

──弾き心地はどうですか?

Ken とてもいいですね。ボディ裏のコンター加工がないと厚みがあって弾きやすいです。座りながら練習する時、ボディ裏にコンター加工があるとギターが寝ちゃうんですよ。そうなると手首を巻いて(前に出して)弾くようになりがちだけど、Experiment #1はそれがないぶんアコギに近くて手首がラクに入る。ボディトップのコンター加工も手首がラクに入って指弾きしやすいし、手首に余白があるから動かしやすいですね。

──どんな人に手に取ってもらいたいですか?

Ken 単純に見た目が好きな方。あとは、普通のストラトを持っていて、ちょっと違うことを試してみたい人にも手に取ってもらいたいですね。弾いてみて面白かったら嬉しいし、ネックシェイプを変えたりボディを削って改造してもらってもいい(笑)。実験したい人はこのギターの名前の通り、いろいろと削る部分がたくさんあるので、ケガしないようにやってみてほしいなと思います。

──さらに、シグネイチャーストラップも3種類発売されますね。

Ken 昔は細めのストラップを使っていたんですよ。だんだん弾き方が変わったりしているのか、幅が広めのストラップが好きになってきましたね。ストラップは服を着ている時の肩との摩擦がポイントで、滑りすぎても弾きにくいし、滑らなさすぎても弾きにくいんです。ネックを立てて弾く時に、うまくギターがついてこないと気になっちゃうんですよね。そのへんも含めてちょうどいいストラップを作ってもらいました。あとは穴の強度。ストラップが切れないような穴の位置とか、使っていると経年劣化するので仕方がないですが、なるべく頑丈にしてもらいました。


Ken
L’Arc~en~Cielのギタリストとして、1994年にメジャーデビュー。
これまでに43枚のシングル、12枚のオリジナルアルバムをリリース。1996年アルバム「True」にて初のミリオンセラーを達成。1999年2枚同時リリースのアルバム「ark」「ray」では600万枚のセールスを記録。1997年東京ドームのコンサートチケットが4分で完売、1999年「1999 GRANDCROSS TOUR」にて65万人(全12公演)を動員(アジア各国にてクローズドサーキット中継)。そして2012年には、アジア、アメリカ、ヨーロッパを巡る『WORLD TOUR 2012』を敢行。ニューヨークではアジアのロックバンド初となるマディソン スクエア ガーデンでの単独公演、ファイナルの日本公演ではロックバンドとして初の国立競技場公演を行うなど、バンドにとって通算3度目となったこのワールドツアーは過去最大規模となり、海外11都市で10万人以上の観客を動員、日本公演も含む動員数は45万人を超えた。2021年にはL’Arc~en~Ciel結成30周年を迎え、5月には幕張メッセで結成記念公演、9月から12月にかけて「30th L’Anniversary TOUR」を開催、2022年5月21日、22日には30周年を締め括る「30th L’Anniversary LIVE」を東京ドームで開催。2002年から活動しているSONS OF ALL PUSSYSではヴォーカル・ギターを担当。これまでに3枚のミニアルバム、シングル、3枚のDVDを、2006年より開始したソロ活動では、アルバム、ミニアルバム、2枚のシングル、DVDをリリース。近年では、様々なバンドの楽曲プロデュースや楽曲提供をするなど、多方⾯に活躍の場を広げている。
L’Arc~en~Ciel : www.LArc-en-Ciel.com

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