Special Interview | SCANDAL -後編-
初めて“私は歓声を聞くためにバンドをやっているのかもしれない”と思った
2006年の結成より、アイコニックな4人のキャラクターとともに、抜群のポップセンスと圧巻のライヴパフォーマンスで日本のロックシーンをリードし続けてきたSCANDAL。2017年に日本人女性アーティストとしては初となるフェンダー社とのエンドースメント契約を締結した彼女たちが、“今本当に欲しい一本”と言える新たなシグネイチャーモデルを完成させた。インタビュー後編では、苦悩の末に生まれた最新アルバム『MIRROR』を振り返るとともに、北米ツアー、9月から開催予定のヨーロッパツアーを中心に話を聞いた。
『MIRROR』は“4人だから何だってできるんだ”を証明したアルバム
―2021年に結成15周年を迎え、今年1月にアルバム『MIRROR』をリリース。あらためてどんなアルバムなのか、それぞれの想いを聞かせてください。
HARUNA 結成15周年とコロナ禍が重なったこともあり、今までの自分たちをより振り返ることが多かった時期に作ったアルバムです。特にコロナ禍でライヴがあまりできなかったのが大きくて、ライヴを意識せずに曲を作ることが多かったので、今までの自分たちのイメージとはガラッと変わった新しい一枚になったと思います。
―「彼女はWave」は誰が作った曲なんですか?
HARUNA RINAがDTMで作った曲なのですが、意外とライヴで映えるんです。アメリカでリハーサルをしていたら、会場で準備しているスタッフのお姉さんもめちゃくちゃノリノリで。
MAMI バンドで生演奏してみたらめちゃくちゃ“バンド曲”でした。
HARUNA いろいろな曲をやってきた自分たちだからこそ表現できたと思う。16年前、ヴォーカル&ダンススクールで結成した4人ということを考えると、バンドのあり方は一つじゃないというか、“4人だから何だってできるんだ”を証明できたアルバムだと思います。
―MAMIさんにとって『MIRROR』とは?
MAMI 個人的には、こんなに苦しんだ制作期間はないと思うアルバムでした。
―何が苦しかったのですか?
MAMI 本当に曲が作れなくなっちゃったんです。今まではライヴを軸に、“こういう曲が欲しい”とみんなで話し合いながら作ってきたので、そのライヴに向けて必要な楽曲がわからなくなったのと、どう曲を作っていいのかがわからなくなって。でも曲は生み出さなきゃならないから、頑張って頭をひねるんですけど、それでも浮かばない時期があって。“自分たちの生活を軸に楽曲を作る”と頭を切り替えたら、多少はその気持ちもラクになったんですけど、ライヴが少しずつできるようになってきたとは言え、まだ完全にそこから抜け出せない自分もいて。苦しかったピーク時に作ったアルバムなので、初めて苦労したなと思いました。これが“産みの苦しみ”なんだって(笑)。
―なるほど。
MAMI そういう経験ができたのはすごく良かったと思います。いつまたそういう時期が来るのかわからないから、その時の心構えになるし勉強にもなりました。“これ以上できません!”っていうくらい、フルマックスの力を込めて作れたアルバムだと思います。
TOMOMI 思うように活動ができないことですごく落ち込んで、自分たちで答えが出せなかったんですよ。今までだったら“こうだからこう”と理論づけて曲を完成させられたけど、答えがないまま曲にして、それをリリースするところに行き着いて。自分たちとしては、すごく新鮮なアルバム作りだったと思います。今までだったら、“バランスを取ってもう少しテンポの速い曲を入れたほうがいい”と考えていたと思うんですけど、必然的にミドルテンポの曲が多くなったのも、自分たちにすごく正直だったと思いますね。ライヴがないと基本的に“ミドルな人間なんだな”って思いました(笑)。今はまだコロナ禍は完全には収束していませんが、それが明けた時、自分たちがどうなっているのか楽しみですね。
誰が欠けても表現できないライヴをやっている
―7月から開催された北米ツアーは、4公演を行ったところで新型コロナウイルスの感染により残りの5公演がキャンセルに。4公演はいかがでしたか?
HARUNA 久々に会えたことが何よりも嬉しかったし、アメリカでは声出しもできる状況なので、久々に歓声を聞いてちょっと胸が高鳴りましたね。ずっとファンでいてくれる人の顔もステージから見えて、4年ぶりに来てくれたんだと思ったら嬉しかったです。あと、曲は知らないけどフラッと観に来て、会場の空気を楽しんでいるのが見ててわかるお客さんもいて。それは日本に住んでいるとあまり感じられないことだし、そうやって日本のバンドの音楽がアメリカに広がっていくのを見られるのは、ものすごく貴重だなと思いました。
MAMI 久々にみんなの興奮している声を聞いて、初めて“私は歓声を聞くためにバンドをやっているのかもしれない”と思ったんです。すごく感動したし、感じたことのない感情が湧き出てきました。制作もそうだし、ライヴでもあまり笑顔ではないタイプの人間なんですけど、お客さんが楽しんでくれることに対してすごく感謝をするし、お客さんの表情や動きを見ると自分もすごく楽しくなれるんです。だから、もっとお客さんに声を出してもらいたいと思ったし、もっと楽しんでもらいたい、もっと楽しませようという気持ちが大きくなりましたね。
TOMOMI 久しぶりにできて本当に嬉しかったですね。都市によっては10年以上ぶりの場所もあって、すごく懐かしいTシャツを着ている人もいて。すぐに会える気がしていたのに、会えなくなることもあるんだと思ったし、久しぶりに会えた人がたくさんいて本当に嬉しかったです。
―9月からはヨーロッパツアーが始まりますが、意気込みを聞かせてください。
HARUNA 北米ツアーが残念な結果になってしまったので、次こそはちゃんと3公演を廻りきりたいなと。ヨーロッパツアーも久々なので、きっと待ってくれている人もいるだろうし、初めましての人にも会えたら嬉しいですね。
TOMOMI 本当に健康が第一ですね。会える時に会いたいです、絶対に。
MAMI 誰が欠けても表現できないライヴをやっているつもりなので、みんなで健康に廻り切ることが一番なのと、もちろんヨーロッパツアーにもMami Stratocaster Omochiを持っていくので、試行錯誤しながらカッコいい音を出して廻りたいと思っています。
―国が変わると、湿度も含めて環境が変わりますからね。
MAMI そうなんですよ。電圧も違うので、どんな音が出るのか楽しみでもありますね。
―ヨーロッパツアーは、基本的に前作と本作、二本のシグネイチャーモデルで廻るのですか?
MAMI はい。
HARUNA みんなそうです。それで充分なほど素晴らしい楽器なので。
―ツアーが終わった後、SCANDALはどう進んでいきたいですか? 個人の野望でもいいですし。
MAMI また曲を作らなきゃって。常に曲を作り出せたらいいなと思いつつ、ヨーロッパツアーで感じることにも期待しつつ。何か生み出さなきゃって焦りもありますが(笑)、ライヴは来年も続けていきたいです。
HARUNA あと、ガールズバンドの活動のギネス記録を目指しているので、そこに向けて心も体も健康でいなきゃいけないなって。
―ギネス達成したらお祝いとか考えているんですか?
HARUNA わからないけど(笑)。
MAMI みんなに祝ってもらう(笑)。
TOMOMI うん(笑)。
HARUNA そういうのは自分で言うことじゃないと思っていたけど、あらためて目標を聞かれたらそれが大きなモチベーションになっているとは思います。誰もが達成できるわけではないことを控えている身としては、今までやってきた証が実になればいいなと思うので。
―本当に体と心の健康を。
HARUNA それが資本だと思います。だから、あまり自分たちの首を絞めずに焦らずやっていけたらなと思いますね。
TOMOMI 続けることと、ライヴを飛ばさないことです。今までは交通安全と縁結びしかしていなかったけど、健康祈願をしておきます(笑)。
MAMI 神頼み(笑)。
前編はこちら
SCANDAL
2006年、大阪にて結成。メンバーはHARUNA(Vo,Gt)、MAMI(Gt,Vo)、TOMOMI(Ba,Vo)、RINA(Dr,Vo)。2008年、シングル「DOLL」でデビュー。翌年にリリースされた「少女S」でレコード大賞新人賞を受賞。2012年、異例の早さで日本武道館公演を達成。2013年には夢であった大阪城ホール公演を5分で即完させる。2015年、世界9カ国41公演を廻る単独ワールドツアーを大盛況に収め、初の東名阪アリーナツアーでは4万人を動員。2016年8月に結成10周年を迎え、結成地である大阪にて1万人を動員した野外コンサートを開催。2017年、ベストアルバム『SCANDAL』をリリース。2022年1月26日に10枚目のアルバム『MIRROR』をリリースし、3月より国内に加え北米とヨーロッパを廻るワールドツアー〈SCANDAL WORLD TOUR 2022 “MIRROR”〉を開催。
https://www.scandal-4.com