The Professional Vol.2 | 草刈愛美(サカナクション)
10月14日、全世界で発表された最新シリーズ“AMERICAN PROFESSIONAL II”。V-Mod IIピックアップ、新たなカラーバリエーション、象徴的なDeep Cシェイプネックなど、あらゆる面が刷新された本シリーズのローンチに合わせて、プロアーティストのアイデンティティやマインドを切り取るコンテンツ“The Professional”を展開。第2回目のアーティストは、サカナクションのベーシストである草刈愛美。ベースとの出会いや、アーティストとしてのこれまでの歩み、そしてプロアーティストとしてのこだわりを聞いた。
― 草刈さんは10代の頃からいろいろなバンドで演奏されていますが、そもそもなぜベースだったのでしょう。
草刈 元から音楽は好きで、ピアノを弾いていたり、ギターが家にあったり、音楽には馴染みがあったんです。それで、今までとは違う楽器をやってみたいという意識がありました。
― ベースを始めた当時、憧れていたベーシストは?
草刈 ビリー・シーンです。ちょうどMR.BIGが流行っていたんです。同時にジャミロクワイも流行り出したので、そういう音楽も聴き始めました。日本のアーティストではTHEE MICHELLE GUN ELEPHANT、同じ頃にUKロックも聴き始めて・・・と、かなりバラバラバラな感じではありましたね。
― 今日はフェンダーのAmerican Professional IIを弾いていただいたので、“プロフェッショナル”というキーワードでお話を聞かせてください。プロベーシストとしてレコーディングでこだわっている点は?
草刈 サカナクションって、みんながそれぞれの楽器に責任を持つというよりは、全員が全員を監視し合っているような感じなんです(笑)。“そのドラムいいね。そのベースいいね”って、みんなですべてを了解し合って作っていくんです。自分が表現したいことはもちろんですけど、他の人が“こういうのどう?”と提示してくれたら、それも加味しながら作っていきます。自己とみんなの気持ちとのバランスを取りながら、きちんとやるということですね。
― ライヴでこだわっている点は?
草刈 ライヴは、きちんとみんなの了承を得たフレーズを自分が責任を持って演奏する場所なので、みんなで作った自分のパートを責任を持って演奏します。そのポテンシャルをもっと生かしながら、お客さんにどう届けるかに気をつけることに集中しています。
― なるほど。
草刈 それと、プロベーシストとしていろいろなことができるようになりたいという気持ちがずっとあるんですよね。バッキングとしてのベースの役割や、踊ってもらうためのパーカッシヴな側面もありますし、もちろん音階楽器なのでフレーズとして印象に残ったり人の気持ちを動かしたり、それらを全部詰め込んだプレイをしたいなと思っています。
― ポップスだけではないベースラインが、サカナクションの特徴でもありますよね。あのようなベースラインは、どのようにクリエイティヴしているのでしょうか?
草刈 曲を作る時、ベースだけを弾くってことが今のところはないんです。コロナ禍でステイホームになってからは特に、リズムからベースから他のパートも全部1人で作るわけです。曲がどういうベースラインを求めているかを考えると、必然的にバリエーションが増えますね。
― 普段からフェンダーのJazz Bassを使っていただいていますが、フェンダーとの出会いは?
草刈 最初は手が小さかったこともあって、ミディアムスケールの別のメーカーのベースを手にしたんです。でも、フェンダーベースへの憧れはずっとありました。“本物=フェンダー”みたいな感覚があったので。それで高校生の時にフェンダーのベースを手に入れました。モデルは覚えていないのですが、それをずっと磨いて使っていました。
― 愛用ベースがPrecision BassではなくてJazz Bassなのは?
草刈 ジャズベのほうがネックが細いからです。手がすごく小さいので。プレベの良さを知ったのは最近です(笑)。やっと弾けるようになったという感じです。
― サカナクションのサウンドを考えるとプレベもありですよね?
草刈 はい。“このバンドにはプレベだったんだ”とやっと気付きました(笑)。
― では今後はプレベも?
草刈 今後はプレベも出てきます。約4年前のシングル「多分、風。」で初めてプレベを使ったんです。今作っている楽曲でも、ジャズベにするかプレベにするかすごく迷ったんです。両方とも弾き比べて、結局はジャズベになりました。
― なぜですか?
草刈 プレベは中音域をきちんと主張するところは良さとしてあるんだけど、アンサンブルを考えた時に歌い過ぎたり出過ぎる感じがあったんです。今作っている曲のベースを支えるには、ジャズベのほうがフィットしていたんです。なので、最新の曲はジャズベを選んでいます。
― 今後はジャズベとプレベの二刀流で?
草刈 もちろんそのつもりです。両方の良さがすごくわかったし、今回、本当に悩んでかなり弾き比べて面白かったので。
― 改めてフェンダーベースの魅力とは?
草刈 フェンダーの魅力は、安心感というか、シンプルなものがずっと前から今まで芯を変えずに続いている楽器だということですね。偉人が使ってきたその歴史、時間の重みに安心感があります。自分が弾いた音が木に響いて、それがちゃんと音に出るという、楽器としての良さがシンプルに一番わかるのがフェンダーの楽器なんです。
― 小手先じゃなくて、楽器本来の部分がしっかりとある。
草刈 はい。自分の気持ちや感情がストンと出るんです。
― そして今回、American Professional IIシリーズのAMERICAN PROFESSIONAL II JAZZ BASSを弾いていただきましたが、弾いた感想は?
草刈 ヴィンテージも弾いたことがあるのですが、新しい楽器は人の手を一度も介していないので、新車に乗るとか新築に住むような、ちょっとした“違和感”があるのが普通なんです。柔らかくない、ぶつかる感じが、新品にはあると思うんです。今回もその感じがあるのかなと思ったのですが、最初からしっくりと馴染んて、やっぱりフェンダーだなと思いましたね。一番シンプルなものは失っていないし、プレイアビリティも格段にアップしているなと思いました。
― ちなみにこの緑色のカラー(Mystic Surf Green)はジャズベのヒーローカラーなんです。
草刈 そうなんですね。本当にありがとうございます(笑)。
― 通称“ミドラー”ですもんね。なぜそんなに緑が好きなんですか?
草刈 自分でもわからないんです。思い返してみたら小学校の時からなので、理由はわからないですね。気づいたら緑色を魅力的に感じていました。
― 今後、AMERICAN PROFESSIONAL II JAZZ BASSをどんなシーンで使ってみたいですか?
草刈 新しい楽器はきちんと整備されている安心感もあるので、まずはライヴでの活躍はあると思います。今持っているジャズベは77年製のメイプル指板で、ホワイトアッシュのめちゃくちゃ重たくて硬いボディなんです。極端なジャズベなので、AMERICAN PROFESSIONAL II JAZZ BASSは王道のジャズベとして使いますね。ジャズベを選択する時に、まずは弾いてみる楽器に選ばれそうな気がします。
― 最後に、プロを目指しているベーシストにアドバイスをお願いします。
草刈 ベースは1人ではできないので、自分が妥協しないメンバーを見つけることがまずは大事だと思います。それと、どういう形で活躍したいのか、バンドをずっとやりたいのか、バンドじゃなくてプレイヤーとしていろいろな場所で弾くために頑張りたいのか。そういうビジョンを持つことが大事な気がします。あとは、合奏する時のベースの役割は経験でしか学べないと思うので、たくさんの人と演奏したり、同じ人と何回も演奏するなど、回数を重ねることが大事です。そういう合奏のチャンスを、自分で探していくのがいいんじゃないかと思います。
― 受け身ではなく積極的にいけと。
草刈 そうですね。チャンスを得る努力はしたほうがいいと思います。ひとつひとつが自分の身に入っていくと思うので。
― では、プロになるために一番大切なことは何だと思いますか?
草刈 それは…辞めないことですね(笑)。
AMERICAN PROFESSIONAL II JAZZ BASS®
世界で最もプレイされているエレクトリックギター&ベースの新シリーズ”AMERICAN PROFESSIONAL II”が登場。V-Mod IIピックアップ、新しいカラーバリエーション、そして、アイコニックな”Deep C”シェイプのネック。American Professional II Jazz Bass®の手に馴染む感覚とサウンドの多様性は、手に取り、耳にした瞬間、すぐにお分かりいただけることでしょう。プロの楽器の新たなスタンダードとなるような幅広い改良が、American Professional IIシリーズには詰め込まれています。
PROFILE
草刈愛美
サカナクションのベーシストとして、2007年にメジャーデビュー。13年に渡る活動の中で7枚のオリジナルアルバムを発表し、全国ツアーは常にチケットソールドアウト。大型野外フェスではヘッドライナー常連。現在の音楽シーンを代表するロックバンドの一組である。また第39回日本アカデミー賞にて最優秀音楽賞をロックバンド初受賞するなど、さまざまな活動で多方面から高い評価を得ている。ベースプレイヤーとしてもBASS MAGAZINEの表紙に2度選ばれ、プレイヤーとしての評価は高い。シンセ・ベースとエレキ・ベースを巧みに使い分けたグルーヴィなプレイが持ち味。緑色が好き。
› Website:https://sakanaction.jp