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Unlimited Expression | Ichika Nito (Dios)

フェンダーが提案する新機軸のギター「American Acoustasonic」シリーズに秘められた無限の可能性にフォーカスする「UNLIMITED EXPRESSION」。今回登場するのは、常識に囚われない発想を持った自由なプレイスタイルで、日本のみならず海外ファンも多く持つギタリスト“Ichika Nito”が登場。フェンダーとの出会い、コロナ禍中の葛藤、そして創造性豊かな彼の音楽をサポートするAmerican Acoustasonicシリーズについて話を聞いた。

Acoustasonicって思考を必要とするギターだと思います

― コロナ禍に見舞われた2020年はどのような活動でしたか?

Ichika 3月にDiosというバンドで楽曲「逃避行」を出したのですが、基本的にはそのバンドの準備でした。曲を作ったりとか。今はまだ1曲しか出ていないんですけど。

― Dios結成の経緯はコロナ禍がきっかけで?

Ichika コロナ禍の2年ほど前から、ヴォーカルのたなかと一緒にバンドを組みたいと相思相愛で。本気でやろうという話だったので、メンバーをしっかり揃えて、曲もアルバムを作れるぐらいまで用意して、1年ぐらいの見通しで準備期間をもっていたところにコロナ禍に入ってしまったんです。だったらもう少し遅らせてもいいかなと、ようやく3月末にスタートできました。あと、YouTubeで動画も投稿しています。実はコロナ前から、音楽に対する向き合い方でずっと葛藤していて。

― どんな葛藤ですか?

Ichika 音楽の精神性じゃないですけど、音楽って誰目線で作って、誰目線で聴いてもらうものなのかを考えていて。音楽に感情を乗せて届けるということは、例えばテクニックとして100点満点の悲しい音が出ても、自分が本当にその音楽に悲しい気持ちを持って弾いていない場合、それは本当の意味で魂がこもっていないんじゃないかなと。でも、魂を込めていないとも言い切れない。葛藤しているだけでは活動も止まってしまうし、バンドの準備をしている間は別に活動できているわけではないから、ヤバイと思ってしまって。そういう葛藤から生まれる副産物のような曲をYouTubeで細々と挙げていたら、それがコロナ前からヒットし始めて、今は登録者数が138万人(21年4月下旬現在)まで伸びたんです。だけど、葛藤はまだ続いています。

― さて、あらためてフェンダーとの出会いを教えてください。

Ichika 中学生くらいの時、お父さんが音楽好きで楽器をたくさん持っていたんですけど、ギターがフェンダーのStratocasterだったんです。なので、初めて触ったギターがそのStratocasterでした。当時ハマっていたアイアン・メイデンの耳コピから始めて、めっちゃ歪ませて弾いていましたね。

― ストラトはどうでしたか?

Ichika 当時はそれしかギターを知らなくて、比較する基準もなくてよくわからなかったんです。今みたいにギター動画も見ないし、そもそもヘビメタくらいしか興味がなかったですし。

― のちに他のギターも弾くようになり、フェンダーの特徴はどんなところだと思いましたか?

Ichika 他のギターを知ることで、“フェンダーってスタンダードなんだ”ということを知りました。でも、そこで一回フェンダーから離れたんですよね。長い間。またフェンダーを触りだしたのが4年後でした。その間、フェンダーのギターはまったく触らなかったですね。

― フェンダーから遠ざかった理由は何だったのですか?

Ichika 当時はメタラーだったので、ハムバッカー(ピックアップ)を使っていたんです。あと、初めて自分で買ったギターが7弦ギターで、フェンダーに多弦ギターがなかったというのはありました。それからソロギターになったのですが、ソロギターでも多弦ギターばかりを弾いていたので、長い間6弦を弾いていなかったんです。だけど、2年前にまた6弦に戻ってきて、6弦ギターと言ったらフェンダーだよなってもう一回戻ってきた感じですね。

― 今、フェンダーのギターは何本お持ちですか?

Ichika 6〜7本くらいですね。American EliteのStratocaster、American UltraのJazzmaster、American Professional IIのStratocaster、さらにAmerican AcoustasonicはStratocaster、Telecaster、Jazzmasterの3モデル、ヴィンテージのフェンダーも持っています。


― Acoustasonicはすべての機種を使用していただいていますが、総じて特徴を挙げるとすると?

Ichika まずは“軽い”のが僕にとっては一番です。重量は3kgないと思うんです。長時間弾いていると、4 kgもあるギターだと重くて疲れちゃって、“やーめた”ってなっちゃうんです。あと、ヘルニアになりたくないし(笑)。そこはけっこう大きなポイントですね。

― 音の特徴はいかがでしょうか?

Ichika Acoustasonicって、オリジナルの音を作ることに向いた楽器というか。ギターって本来そういうものだと思うんです。例えばAmerican Acoustasonic Telecasterの場合、Telecasterの音も出るしアコースティックギターの音も出る。一見そう思われがちだと思うんですけど、ポイントはそこではなくて、その両方を合わせたようなまったくのオリジナルの音。そこがポイントだと思っていて。それを作ってどういう音楽に活かされるのか、どういう楽器編成で活きるのか。そのパターンをいま探してるところで、とても楽しんでいます。

― それはStratocaster、Telecaster、Jazzmaster、全部違うということですよね?

Ichika はい。持ち味が三者三様の音ですし、バンドサウンドに向いているものもあるかもしれないし、オーケストラに向いているかもしれない。はたまた、ソロに合う音かもしれないし、ヒッポホップのトラックに合う音かもしれない。そういうパターンをこれから試していきたいなと思っています。

― シリーズ3作目としてリリースされたAmerican Acoustasonic Jazzmasterはいかがですか?

Ichika あくまで個人的な自分の感覚ですが、American Acoustasonic Jazzmasterが一番好きです。まずはデザインがすごく好きで、平行四辺形のようなシェイプにサウンドホールがあるのが見た目的にもバランスが良くて。このホワイトカラーも好きですね。見た目って愛着が湧くし。

― どんな場面でAmerican Acoustasonic Jazzmasterを使っていますか?

Ichika Diosの新曲でも使っています。クリーンサウンドと、フラメンコギターのような使い方をしたところで弾いています。あとは、カッティングでも使っています。

― テレキャスでもストラトでもなく、American Acoustasonic Jazzmasterにした理由は?

Ichika カッティングの音が一番好きだったからです。アコギの音とは違い、新しいカッティングのグルーヴ感があるんです。切れ味があって、これは良いなと思って使っています。

― これでどんどん発明的な音を出してほしいです!

Ichika そうですね。Acoustasonicって本当にプレイヤー次第だと思っているんです。出る音が新しいので、音楽自体が良くなければ聴き手からしたら“何じゃこりゃ?”って感じると思うんです。よくわからない音で、よくわからない音楽をされても困ってしまうと思うので、ちゃんとそれに適した良い音楽があってこその楽器だと思っています。ひとつ面白い話があって、僕がこのAmerican Acoustasonic Jazzmasterを弾いてる時、海外のファンからコメントが来たんです。Acoustasonicシリーズが、既存のStratocasterやTelecasterといったフェンダーの“ザ・メイン”になるためには、この楽器を使ってヒットチャートに入る楽曲が出ることだと。“確かに”と思いました。だから、このAcoustasonicを使ったヒット曲、アーティストが出ることがこれから大事なのかなとも思っています。

― Ichikaさんに期待します。では最後に、楽器のビギナーにアドバイスをお願いします。

Ichika どの視点で自分の音楽が存在しているかを、一回考えてみてほしいですね。そういう意味では、Acoustasonicって思考を必要とするギターだと思います。音楽は楽しいものだし気持ちいいものだけど、楽器を弾くことについて考えることも必要なのかなと。なぜなら、楽器も音楽も生き物だと思っているので。人間と一緒で、音楽や音、楽器も一つ一つ持っているものが違う。書物を読んで、頭の中で想像を掻き立てて丁寧に味わうように、考えることが音楽や楽器にも必要なんだなと思います。


American Acoustasonic™ Jazzmaster® はフェンダーアコースティックギターの進化を加速させ、音楽をさらなる高みへと導きます。フェンダーとフィッシュマン®により共同開発されたアコースティックエンジンは、きっと素晴らしいインスピレーションを与えてくれるはずです。アコースティックのフォーキーなサウンドからエレクトリックギターのリズムトーンまでをこなすこのギターは、無限の可能性を秘め、新しい扉を開く革新的なモデルです。


Ichika Nito

クリスタルのようなサウンドと研ぎ澄まされた感性で、日本のみならず海外からも高い注目を集める。Instagramにおいて、彼の投稿する動画の多くが10万再生を超え、ギタリストにも関わらずフォロワーが45万人を突破。1st EP「forn」がiTunes Storeアルバム総合チャート10位、Amazonデジタルミュージック、Bandcamp総合3位にランクイン。ギターバージョン&(Ba)バージョンとして2枚同時リリースした2nd EPは、アメリカやロシアでインスト部門第1位を獲得。 2018年にはインストバンド“ichikoro”を川谷絵音らと結成。2021年3月には新バンド“Dios”の結成を発表、同時に1stシングルを配信リリース。
Twitter:@ichika_mo
YouTube:youtube.com/channel/UCq3Wpi10SyZkzVeS7vzB5Lw

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