Cover Artist | 小原綾斗(Tempalay) -前編-

American Professional Classicは今っぽい音に寄せているけど“枯れ感”もある

FenderNewsが毎月一組のアーティストにフォーカスする「Cover Artist」。今回登場するのは、独自の世界観と実験的なサウンドで新しいポップスの形を提示し続ける3人組バンド、Tempalayのフロントマン・小原綾斗。前編では、幼少期から音楽に目覚め、初めてギターに触れた日々、そしてバンド活動を始めた青春時代を振り返る。さらに、最新モデルAmerican Professional Classic Jaguarを試奏しながら、その音の印象や“フェンダーらしさ”への想いを語ってもらった。


パンテラのダイムバッグ・ダレルが大好きで、稲妻模様のメタルギターに憧れてました

──音楽に目覚めたきっかけは?

小原綾斗(以下:小原) 小さい頃、家や車の中でずっと90年代のJ-POPが流れていました。母はJ-POPをよく聴いていたし、父はYAZAWA(矢沢永吉)が好きだった。そのへんが最初の音楽体験だったと思います。あとは映画ですね。両親がよく映画館に連れて行ってくれました。最初に見たのは『ゴジラ』やジブリ作品でした。

──楽器を始めようと思ったのはいつ頃ですか?

小原 うちは電器屋なんですけど、そこにバイトで来ていた人が昼休みにアコギを弾いてたんですよ。小学生の時にそれを見て“それ、なんなん?”って聞いたら、“これはモテる装置や“と(笑)。それでギターを始めました。

──当時はどんな音楽が好きだったのですか?

小原 その頃『速報!歌の大辞テン』というテレビ番組があって、そこで流れていたトップチャートの曲をよく聴いてました。あと、兄貴がバンドをやっていて、その周辺でコピーされていたGOING STEADYとかも好きでしたね。THE STAND UPや太陽族はライヴも見に行っていましたし、そのあたりがバンドへの入り口だったと思います。

──ギターを始めた頃は、そうした曲をコピーしていたんですか?

小原 そうですね。お年玉で1万円くらいのミニアコギを買ったんです。中学に入ってからは、真っ白いストラトタイプのギターに買い換えて。まだアンプを持っていなかったのですが、それでもチョーキングの練習などしていましたね。当時はタブ譜という存在も知らなくて、とにかく学校から帰ってすぐに耳コピばかりしていました。コードも最初は全然知らなかったけど、自然と覚えていった感じです。田舎だったので、音楽をやってる奴なんて周りに全然いなくて、イチから叩かせたり弾かせたりしてバンドを組んでました。

──それが中学生の頃?

小原 そうです。マキシマム ザ ホルモンとか10-FEET、銀杏BOYZをコピーしてました。マキシマム ザ ホルモンのコピーバンドでライヴハウスにも出ていましたね。会場がパンパンになるくらい人を集めてました。その頃にはもうオリジナル曲もやってたんですよ。兄貴が曲を作ってたんですけど、それを見て“作っていいんや”って思えたのが大きいです。

──かなりお兄さんの影響が大きかったのですね。

小原 そう思いますね。最初に見たライヴも兄貴のバンドやし。地元は高知のかなり田舎で、ライヴハウスに行くのも車で1時間かかるような場所に住んでいたので、公民館を借りてライヴをやったりしていました。あと、テレビのオーディション番組に出て中四国大会まで行った記憶がありますね。当時の僕はギタリスト志望だったのでヴォーカルは別にいたんですけど。パンテラのダイムバッグ・ダレルが大好きで、稲妻模様のメタルギターに憧れてました。ライヴではパンツ一丁に体操服着てシャウトしてましたね(笑)。


Jaguar特有のチャリチャリした感じよりも、現代的にチューニングされている

──今日弾いてもらったAmerican Professional Classic Jaguar(Faded Sherwood Green Metallic)についても聞かせてください。こちらを選んだ理由は?

小原 Jaguarはフォルムがかっこいいなと思っていたんですよ。でもちょっと“じゃじゃ馬”なイメージがあったし、これまでしっくりくるモデルになかなか出会えなかったんです。なので今回、いい機会なので挑戦してみようかと。色味もめっちゃ好きですね。見た目で選んだ部分もあります。

──実際に弾いてみてどうでしたか?

小原 今のモデルは昔より扱いやすくなっている印象がありますね。歪ませてはないので完全にはわからないですけど、思っていたより中域(ミッド)がしっかりしている印象でした。Jaguar特有のチャリチャリした感じよりも、現代的にチューニングされているというか、今っぽい音に寄せている感じがする。それでいて、ちゃんと“枯れ感”もあるしバランスがいいなと。

──持った感触はいかがでしたか?

小原 僕、体が小さいので意外と大きいなと思いました。でも、Jazzmasterよりは少し小ぶりですよね? ショートスケールだから弾きやすい部分もあるけど、ボディとのバランスはちょっと独特でしたね。重さもけっこうあって、体との相性はまだこれから探っていく感じです(笑)。

──どういうシーンで使えそうですか?

小原 レコーディングの時に、あえてビザールギターとかも結構使うんですけど、ハイのクセが全然違うので、“もう少し品が欲しいな”って時に今回のJaguarはちょうど良さそうだなと思いました。ライヴで使うのはもう少し先になりそうですが、スタジオではいろいろ試してみたいなと思っています。

American Professional Classic Jaguar(Faded Sherwood Green Metallic)

>> 後編に続く(近日公開)


小原綾斗(Tempalay)
2014年に結成されたロックバンド。メンバーは小原綾斗(Vo,Gt)、藤本夏樹(Dr)、AAAMYYY(Syn,Cho)。2015年9月、EP『Instant Hawaii』でデビュー。サイケデリックやオルタナティブロックを軸に、ポップスやエレクトロなど多様な要素を取り込みながら、国内シーンにおいて独自の存在感を築いてきた。2018年7月、サポートメンバーとして活動していたAAAMYYYが正式加入し、現在の体制に。結成当初から自主制作での作品リリースや海外ツアーを行うなど、型にとらわれない活動姿勢も注目を集める。『from JAPAN 2』『ゴーストアルバム』などのアルバムを経て、幅広いリスナーを獲得。国内外のフェスティバルにも多数出演し、ライヴバンドとしての評価も高い。2024年には結成10周年を迎え、日本武道館で単独公演〈惑星X〉を開催。11月より、EP『Naked 4 Satan』を携えた全国リリースツアー〈“Naked 4 Satan” Tour 2025〉を行う。
https://tempalay.jp/

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