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Cover Artist | TOSHI-LOW、KOHKI(BRAHMAN/OAU)-後編-

些細な木の塊が、人生を変えてくれた

日本のパンクムーヴメントを牽引。バンド結成25年を超えてなお精力的な活動を展開し、後進のバンドに多大な影響を与えているBRAHMAN。そのヴォーカリストであるTOSHI-LOW と、ギタリストのKOHKI がFenderNewsのCOVER ARTISTに登場。インタビュー後編では、〈Tour 2021 -Slow Dance-〉を通じて感じるBRAHMAN の進化、そして11月から始める全国ツアー〈Tour -slow DANCE HALL-〉について、これからギターを始める全プレイヤーにメッセージを聞いた。

消化不良で終わりかけてしまったものが、20年かけてやれるようになった

― 11月13日から全国ツアー〈Tour -slow DANCE HALL-〉が始まりますね。これは今年6〜8月にかけてライヴハウスにて行われた〈Tour 2021 -Slow Dance-〉のホールバージョンということでしょうか?

TOSHI-LOW うん。コロナ禍でしかできないことをやろうとした〈Tour 2021 -Slow Dance-〉は、言わばトライアルだからね。それをもう一回ちゃんと磨き上げた形で、まぁ言ったら『Slow Dance』の完成形をホールでやる感じ。そのあと、コロナが終わっていれば俺たちはまたライヴハウスに戻るし、そうじゃなかったら違う道を探していくし。どちらにせよ、音楽を止めることはない。こうやってまた新しい武器(楽器)を手にしたら、それで遊びながら新しい楽曲を作っていくんだろうしね。

― “三密の芸術”とも言えるBRAHMANのライヴですが、その三密が禁止された中で行われた〈Tour 2021 -Slow Dance-〉で手に入れられたものは何ですか?

TOSHI-LOW 面白かったよ。だって、自分たちとは正反対の“静かな面”ってライヴでは“中休み”にされているのかな?と思うわけで、それがメインになるわけじゃん。でも、俺たちもしっかり作ってきたものだからグッと来たし手応えがあった。あと、自画自賛するわけじゃないけど、自分たちは本当にちゃんと曲を作ってたんだなって思えたんだよね(笑)。この間のツアーでやった曲って、当時ちょっと背伸びをしていたり、自分たちに合わないアイディアを入れ込んで間口の広さをデカくした楽曲なんだけど、もしもバンドを辞めていたら、自分たちの中で消化不良で終わりかけてしまったものが、20年かけてやれるようになってみんなで“すごくいいね”って言っていたんだよ。やっとやれてるね、リズムがはしらないねとか言ってリハしてた(笑)。

― (笑)。KOHKIさんはどうでしたか?

KOHKI 単純に、やってみて楽しかったんです。例えば、今までは曲間をあんなに空けたことはなかったので(笑)。

TOSHI-LOW ギターを何回か持ち替えたもんね。弦が切れたって持ち替えないのに(笑)。

KOHKI 通常だったら、チューニングもしないですから。1時間のライヴでチューニングは1〜2回しかしないんですよ。それに耐え得るギターを選んでるので。〈Tour 2021 -Slow Dance-〉だと1曲が終わったらシーンとなって、その静寂が新鮮でしたね。今まではMAKOTO君(Ba)もTOSHI-LOW君も暴れ狂っていたけれど、今回はすごく音を楽しんでいる感じがしましたね。それもそれで楽しかったなって。

TOSHI-LOW 楽曲によってギターを換えるじゃん。その換えるタイミングを話し合った時に、確かにここで換えたほうがいいなとか、この曲にはこれが合うなとか、やっぱりギターを変えると“この曲にはこっちのほうが合うよな”ってあるよね。ライヴ中、KOHKIがテックの人にギターを掛け換えてもらっている光景を初めて見たし(笑)。

― すごいバンドです!

KOHKI だって、チューニング狂わないですからね。

TOSHI-LOW いいじゃん、狂ってても(笑)。

KOHKI そうそう。それだったら流れを重視する感じです。

― 月並みですが、マジでカッコいいです!

TOSHI-LOW で、そういうツアーができることがすごく贅沢っていうかさ、他の人はこれが当たり前のことだったんだろうけど俺らは違う。逸れた道だったらから。今は、音楽的にやっていることが歳相応でとても楽しい。ギターとか楽曲についてとか音楽的な話をすることもね。

KOHKI ツアーのリハに入り始めた時は不安でしたけどね。スロウな曲ばかりリハーサルするわけなので。自分も立て続けにそういう曲をやるのに慣れていないし。でも、結果的に良かったですね。

世界的に見てもこんなバンドはいないと思っている

― 正直、コロナ禍ではBRAHMANはやらずOAUだけでやっていくのかなと思っていました。

TOSHI-LOW はじめはそう思っていたんだよ。中途半端にやるよりは、そのほういいんじゃないかなって。

― なぜ、BRAHMANの違う面でトライアルしようと思ったんですか?

TOSHI-LOW BRAHMANの本質的な魅力は、さっきも言ったような“肉体的なもの”なんだと思う。でも、自分たちを構成している大事な役割として、音楽的だったり静かなものがすごくあると思っていた。ライヴを通じて、それを自分たちで気付くことができたのはすごくデカいよ。しかも、それだけでライヴができるなんて、積み重ねてきた厚みじゃん。アルバムの中に1〜2曲しかない静かな曲が溜まったってことでしょ? 俺たち、アルバムをそんなにたくさん作るバンドじゃないから、今のコロナの中でギリギリできる静かな曲数があることが運命だなって思うね。

― Fender Newsのインタビューで以前、Kjさんは“今まで通りのライヴができない状況では激しい曲はあまりやりたくない”とおっしゃっていました。

TOSHI-LOW そういう曲じゃないやつをやりゃいいじゃんって思うけど。わかるよ、心情は。俺たちはそういうフィールドで戦ってきたからね。

― むしろラウド以外の音楽性を志向したいと。

TOSHI-LOW それもわかるけどね。でも、俺たちなんか、違うバンドに行っても同じメンバーだから(笑)。OAUにBRAHMANのメンバー全員いるからね。

― どれだけ仲がいいのか! どれだけ信頼し合っているのか!

TOSHI-LOW そうじゃなくて、むしろミュージシャンの横のつながりが少ないのか(笑)。でも、結局は、色々な面を見せつつ、自分も考えつつ、引き出しつつやっていけばいいと思う。人生の大きな流れの中で、コロナだろうがそうじゃなかろうがソロになる人もいるしさ。で、またバンドに戻る人もいる。そういうことなんじゃないのかな。

― ええ。

TOSHI-LOW でも、俺たちはバンドを一切解散せずにやってきた。だからソロ的なもの、例えばギターで言ったらエレキしか弾けないとかはあったと思う。もしかしたらKOHKIはアコースティック的なものを弾きたかったりするのに、自分たちがやっている中ですごく満足できる両面を作ることがスゲェ面白いと思っていて。それができる人って、たぶんほとんどいない。世界的に見てもこんなバンドはいないと思っているし。しかもメンバーにアイドルもいるんだよ。すごくない?(笑)

― 好き好きロンちゃん! すごいです(笑)。最後に、これからギターを始めるビギナーへメッセージをお願いします。

KOHKI とりあえず、ちょっと我慢して向き合ってみてほしいと思います。続けないとできないことってやっぱりあるんですよ。僕もそれをわかっていなかった。でも、やり続けると光が見えてくるんですよ。そこに行くまではけっこう面倒臭いけど、やっていると何かいいことがあるんです。今はギターを弾かなくても、打ち込みでも音楽の表現方法は山ほどあります。ギターは最初はつらいかもしれないけど、ちょっと我慢しているとすごくいいことがあるよ。光が見えてくるよって伝えたいですね。

― ギターをやっていて良かったなと思う瞬間は?

KOHKI 僕は和歌山県の田舎に生まれて、東京に来たのもギターがきっかけだし、バンドを組んだのもギターがきっかけです。色々な仲間と知り合ったのもギターがきっかけだし、BRAHMANに入ったのもギター。ギターが軸になって人生が動いているんですよ。些細な木の塊が、僕の人生をすごく変えてくれたと思います。めちゃ真面目なこと言ってる。

TOSHI-LOW いや、良いと思うよ。

― TOSHI-LOWさんは?

TOSHI-LOW 好きなギタリストを見つけることはすごく良いと思う。いつも思うんだけど、“良いギタリストの定義”ってギターがカッコ良く見えるかどうかだって。すごく上手くても、ギターがダサく見える人もいる。ルックスでもないんだよね。何なんだろう?といつも思う。だから、良いギタリストを見つけて、そのギタリストの真似をすることで自分のギターに合ってくる。自分が欲しいものとか、自分が買ったものとか、そもそもギターを買っているってことは何かがあるじゃん。そのモデルのイメージがあるわけだから。そういう人に出会えるとすごく良いのかなって思うね。

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TOSHI-LOW、KOHKI(BRAHMAN/OAU)
95年、東京にてBRAHMAN結成。96年に初めての作品「grope our way」をリリース。97年にKOHKIが加入し翌年にリリースした1stアルバム『A MAN OF THE WORLD』は大ヒットを記録し、パンクムーブメントを牽引。2005年には、アコースティックバンドOAU(OVERGROUND ACOUSITC UNDERGROUND)を結成し、BRAHMANと並行して活動を続けている。
2021年11月から2022年1月まで、BRAHMANとしては初のホールツアー「Tour -slow DANCE HALL-」が行われる。https://tc-tc.com

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