
Cover Artist | J(LUNA SEA)× MIYAVI -後編-
LUNA SEAのJとMIYAVI──唯一無二のプレイスタイルで時代を切り拓いてきた二人によるスペシャル対談が実現。Precision BassとTelecaster、それぞれ誕生75周年を迎えた“嘘のつけない楽器”との出会いと歩みを軸に、王道に対するアンチテーゼから始まり、フェンダーの懐の深さに惹かれていった共通の原体験、AI時代における楽器の存在意義、そして“音楽は手紙である”という信念まで、二人の言葉が熱く交差する。インタビュー後編では、人の手で鳴らす音楽が未来へ何を繋いでいくのか、そしてTelecasterとPrecision Bassを手にした者の使命について、さらに深く語り合ってもらった。
テレキャス、プレベを弾いてどう戦っていくか、これはもう使命でもあると思う(MIYAVI)
音楽って手紙のようなものだと思うんだ(J)
J ところでMIYAVIはいつからTelecasterを弾くようになったの?
MIYAVI 今のギターとの出会いは10年ぐらい前ですね。僕もJさんと一緒で、ある種、王道的な道は避けてきた部分があったので(笑)もともと僕はスラップした時の弦の音が近く、まっすぐ鳴る三味線のような楽器を求めていたので、セミアコやアコースティックギターを使ってて。で、当時アメリカのナッシュビルでアルバムを作っていた時に、ロバート・ランドルフっていうスティールギターの名手と出会って。ジャムした時に、スティールギターをアンプ直で繋いだ彼の音がとにかく強烈で。 “これはアコースティックだと勝てない。俺もアンプリファイしないと”って、レコーディングを一回ストップして、ナッシュビル中の楽器屋を回ってローカルブランドのTelecasterタイプのギターをゲットしたんです。で、ローリングストーン誌の表紙をやった時に、そのギターを持って撮影したのですが、それを見たフェンダーの社長から“ちょっと事務所に来ないか?”と電話が来て。そこで、“本物は本物を弾かなきゃだめだよ。フェンダーのTelecasterを使ってみたらどうか?”って言われたんです。そこで、それまで王道なものにある種のアンチテーゼがあったのが、素直に印象が変わったというか、単純に良い音だなって。
J わかるよ!
MIYAVI 型にハマるつもりもないし、むしろ邪道でも自分だけの唯一無二のスタイルを持ちたいと思っていたし、それは今でも思っています。で、フェンダー社にお邪魔した時に初めて2〜3本、本物のTelecasterを借りて。Fender USのコロナにあるCustom Shopのマスタービルダーが作ったギターだったんですけど、弾いた時にやっぱり何とも言えない響きがしたし、ギターにぐいぐい引っ張られて“こういうことか”と。いい料理人がいい包丁を持つのと一緒というか。一流のものを持ちたいと思わされた。僕がテレキャスと歩み始めたのはその時期から。特にテレキャスに関しては、それまではむしろ避けていた部分があったので。良く言うと無骨。ぶっちゃけ、気持ち1発で押し倒すみたいな。
J それで言うとMIYAVIはTelecasterのイメージを覆したよね。
MIYAVI なので、そもそもテレキャスの企画に僕を出すことは、ある種リスクがあると思いますよ(笑)。Telecasterプレイヤーとしては王道ではなくむしろ邪道だと思うし。ただ、僕がやりたいようにやらせてくれるフェンダーの懐の大きさ、そこに僕は感謝してるし、リスペクトしてる。これがフェンダーがフェンダーであるゆえんだとも思う。歴史を大切にしつつ、常に革新することを止めない。
J それは本当にそうだよね。俺もフェンダーのそういうアティチュードを心からリスペクトしているんだ。

──Jさんから見たMIYAVIさんのプレイスタイルと、テレキャス像を聞かせてください。
J Telecasterは本当に隠れるところがないギターだよね。弦があって、ピックアップがあって、ボディがあって、ネックがあって、その先に生身の体があって。まさにプレイヤーがどう表現するかっていうギターで、本当に刀のようなイメージはあるなぁ。MIYAVIのプレイスタイルについては、彼しかできない世界を未だに探し求めて、突き進んでいるのを本当に感じるよね、活動も含めて。そういった意味では代わりがいないし、自分を強く持っている人間じゃないと、やはりそこには立てないと思う。
MIYAVI ありがとうございます。
J で、先ほどAIの話をしていたけど、いい意味で最高に素晴らしい不完全なものが世の中にはまだ存在していると思うんだ。もっと言うと、ある意味音楽って手紙のようなもんだと思うんだよ。相手にどうしても伝えたい時って、何かの力を借りて書いたりしないよね。文章に情熱がこもっていたり、文字にも筆圧があったり。長さや短さだけじゃなくて、そこに想いは必ず乗ると思うんだよね。だから音楽って、セッションする時も、自分が曲を書いてメンバーに渡す時も、リリースする時も、それは手紙に近いものだと思っているんだ。その想いを乗せてくれるのが、今の俺にとってはPrecision Bassだったりするのかな。
MIYAVI 昨今は何でも代行しちゃう時代ですからね(笑)。本当に心に響かせるのなら、こっちも心込めないと響かない。
──技術的に書けてしまうのと、相手に届くかどうかはまた別の話ですよね。
MIYAVI だから今、人間として挑戦を挑まれている気がするんですよね。戦争もAIもそうですけど、改めて“人間とは?”が問われているし、僕たち音楽家、特に演奏する側はすごく試されている。楽器が生き残る、要するに続いていくかどうかは俺たち次第。変に捉えないでほしいけど、Telecaster、Precision Bassの100周年の時には博物館に飾ってあるような存在になっている可能性もゼロじゃないわけで。でも、テレキャスもプレベも75年経った今でも、こうやって第一線で光り続けているのはすごく大事なことだと思うんです。25年後、100周年の時に、そもそも楽器を弾いている人間がどれだけいるかは僕たちにかかっていると思う。そういう時代でこの楽器を弾いていることの大切さというか、責任感を感じますよね。僕たちがちゃんとしていかないとなって。
J 本当だね。75周年と簡単に言ってしまうけど、その間には僕らが生きていなかった時代も含めて、世界ではいろいろな時代の流れがあったわけじゃないですか。その時代背景の中で僕らが憧れてきたバンドや、未だに恋い焦がれているようなサウンドも生まれてきているわけでしょ。そういう意味で今の時代を生きている俺たちは今、とんでもない景色を見ているのかもしれないよ。それを繋いでいくのが、この楽器のような気がしてきたよね。
MIYAVI それと、ギターとかバンドとか、ロックがカッコいいのって、やっぱり楽器だけがカッコよかったわけじゃないと思うんですよね。ジェネレーションZの人たちすらバンドをカッコいいと思うのって、バンドをやってきた人たちが残してきた遺産というか、積み上げてきたものだと思う。つまり、もしバンドをやっていたやつが全員ダサかったら、人類史上におけるバンドの歴史ってこんなんじゃないと思うんですよね。キース・リチャーズにしろダフ・マッケイガンにしろJさんにしろ、“とっぽさ”というか“カッケー!”っていうのが根本にあると思う。憧れられるかどうか。テレキャスにしてもプレベにしても、カッコいいもんだっていう在り方って、たぶんプレイヤーの生き方なんだろうと思う。で、これから先はもっと複雑になっていくはずで。ロボットがダンスして、ドローンが駐車違反を取りに来る時代でしょ。そこでテレキャス、プレベを弾いてどうやって戦っていくか、これはもう使命でもあると思う。
──その使命をお二人は背負っていると。
MIYAVI そうですよ。戦士ですよ。
──そんな二人で音を出してみたい欲求はないんですか?
MIYAVI 機会があればいつでも。それこそフェンダーさんが機会を作ってくれれば。
──75周年のイベントで実現させたいです。
MIYAVI ぜひぜひ!
J 節目の年だし、MIYAVIと一緒に何かやれたら本当に楽しいと思うね。それに、これを読んでるみんなもそうだし、俺たちの世代が未来に繋いでいくべきものって絶対に沢山あると思うんだ。もっと言うと、フェンダーっていうブランドの中でPrecision BassやTelecasterを持っているプレイヤーはたくさんいるので、何か楽しいことをみんなで一緒にやれたら最高だなと思いますね。
──では最後に、楽器を始めようとしている人たちにお二人からメッセージ、アドバイスをお願いします。
MIYAVI 正直、茨の道だと思います。今からはAIを使って作る音楽のほうが楽だと思う。ただ、人として、充実感と、ステージに立って演奏する時の、あの“生きている”という実感は、やっぱり生身で楽器を演奏することでしか感じられない。どういう人生を歩みたいのか。成功したいのか、楽をして生きたいのか、自分の魂が震える人生にしたいのか。好きな音楽、好きなフレーズ、好きな演奏をして生きている実感を感じたいんだったら、自分の持つ楽器の鳴り、共鳴が与えてくれるものはすごく大きいと思うので、ひたすら自分だけが鳴らせるものを追求していってほしいと思います。
J 俺自身が若い頃に思っていたのは、 “俺だったらこうするのにな”っていうことをずっと考えていた。ベースという楽器を持ってからも、ずっとそんなことを考えていたの。皆もそう感じてほしいというか。みんなの存在それぞれがどこにもない個性だし、ルールはないから。せっかく素晴らしい楽器を手にしたなら、どこまでも全力で夢を追いかけて行ってほしいな。
>> 前編はこちら
J
小野瀬 潤 1992年、LUNA SEAのベーシストとしてメジャーデビュー。シンプルかつ骨太なプレイスタイルで日本のロックシーンを牽引し続けている。1997年のバンド活動休止を機にソロ活動をスタートし、1stアルバム『PYROMANIA』を発表。2000年の終幕、10年の再始動を経て、LUNA SEAとソロの両輪で精力的に活動中。2019年にフェンダーとエンドースメント契約を締結。2025年にはFender Custom Shopマスタービルダーのグレッグ・フェスラーが手がけた新しいシグネイチャーPrecision Bassが発表された。同年、ベース・マガジン誌の一般投票企画で#最も偉大なベーシスト1位を獲得。26年5月から全国22都市33公演のツアー〈LUNA SEA TOUR 2026 UNENDING JOURNEY -FOREVER-〉がスタート。
http://www.j-wumf.com
MIYAVI
ピックを使わずすべて指で弾く独自のスラップ奏法で世界的な注目を集めるギタリスト。“サムライギタリスト”の異名を持ち、これまでに約30カ国350公演以上のライヴと8度のワールドツアーを成功させている。アンジェリーナ・ジョリー監督映画『Unbroken』でハリウッドデビューを果たしたほか、2017年には日本人として初めてUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)親善大使に就任。YOSHIKI、HYDE、SUGIZOとともにTHE LAST ROCKSTARSのメンバーとしても活動する。2020年、サスティナーやトレモロシステムを搭載した唯一無二のシグネイチャーモデルMIYAVI Telecasterをリリース。2024年には最新アルバム『LOST IN LOVE, FOUND IN PAIN』を発表した。
https://japan.miyavi.com
Text_Joe Yokomizo
Photo_Hirohisa Nakano

