Code "F" Vol.2 | アサノケンジ(TENDOUJI)

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ビギナーにとって最初の難関と言えるテクニックが”F Chord”。このコードを上手く押さえられずにギターを辞めてしまう人が多いが、ミュージシャンやプレイヤー人生においても、難関を超えられずに無限大の可能性を前に挫折してしまう人が多くいる。そんな中、困難を乗り越え、音楽業界の大海原に漕ぎ出した可能性に満ちたミュージシャン/プレイヤーにスポットを当てる『Code “F” 』。彼らはどうやって最初の難関を乗り越え、そして今どのような景色を見ているのだろうか。第2回目は、注目の若手バンドTENDOUJ からアサノケンジが登場。


自分たちがカッコいいと思うものから
絶対にはみ出さないようにしている

―  ギターを始めたきっかけは?

アサノケンジ  Mr.Childrenですね。ミスチルが好きで、小4の時にそろばんを習うのと同じノリで、家の近所にあったクラシックギター教室にうちのベース(ヨシダタカマサ)と一緒に通って。小4なのでギターは割と早くから触っていましたね。もちろん、ギターの種類もわからなかったからガットギターを習っていて、“全然ミスチルじゃねぇな”って(笑)。こう見えて、普通に俺J-POP育ち。

―  ビギナーの最初の壁、Fコードはどうやって乗り越えましたか?

アサノケンジ  実はそんな壁でもなかったですね。クラシックギターでは単音弾きが普通で、それに慣れてからミスチルを弾きたくてコードを覚えたので。Cコードですら、最初はたぶん難しいじゃないですか。でも、コードはサラッと押さえられる状態でFを押さえたので。その時はまだ小学生だったから手も小さいし、小学生用の教本で省略形のFでいいよみたいな。そこから入ったので割とスッと押さえられましたね。

―  それ以降、ギターを弾く上で挫折はありましたか?

アサノケンジ  技術的にはクラシックギターで指弾きに慣れてしまったので、エレキを持ったのがバンド結成時くらいなのですが、1回のライヴで2〜3回はピックを落としてましたね(笑)。ピックで弾くのが超苦手でした。

―  克服法は?

アサノケンジ  慣れですね。今も本当は嫌で、指で弾きたいんですよね。でも何か、ピックのほうがギターっぽいなと最近思いだして(笑)。だからもうピックで頑張ろうとは思いますけど、速い細かい動きは今もまだできないです。

―  今日持ってきたストラトは?

アサノケンジ  もう一人のヴォーカルのナオ(モリタナオヒコ)がギターを買うというので一緒に行ったのですが、ナオのためにバーっと並べられたギターを試しに弾いた時に、“これめっちゃいいな”って俺が買って帰るという(笑)。

―  なぜこのストラトを?

アサノケンジ  正直、ストラトはあまり好きじゃなかったんですが。音はもちろんいいですけど。ステッカーを貼ってるのもそうなんですけど、やっぱりヘンなギターのほうが好きで。見た目重視なので。だけど初めてショウルームでちゃんとしたストラトを弾いたら、1本ごとに全然音色が違って。その中でこれが抜群にいいなと思ったので、買っておいたほうがいいと思って(笑)。

―  TENDOUJIは音楽業界も注目しているし、音源のみならずライヴの評価も高く、大人のファンもついていますが、どうやって可能性を拓いてきたのですか?

アサノケンジ  たぶん、いつも一生懸命だからじゃないですかね(笑)。僕らバンドを始めたのが28歳とかで、その前はライヴキッズでもなかったんですよ。ライヴハウス実情もまったくわからないで、大きいバンド、それこそミスチルとかそういうイメージでバンドを始めているんです。だから小さい箱(ライヴハウス)で、人が全然いない時でも逆に焦らなかったですね。その場その場で、1回1回ちゃんとやらないと無理だってわかっていたんですよね。もう大人だったので(笑)。だからお客さんが全然いなくても、今まで1回も手を抜いたライヴをしたことはないですね。“人が少ないからこのくらいのライヴでいいっしょ”みたいなのは本当にないから。それが今でも続いている感じですね。

―  なぜ28歳からわざわざバンドを始めたのですか?

アサノケンジ  特に僕は高校を出てから10年間ずっとバイトをしているだけの生活だったので、バンドをやってもやらなくても捨てるものもないし(笑)、だったら楽しいほうがいいなと思って始めました。他のヤツらも働いてましたけど、すげぇつまらなさそうだったので。楽しいほうがいいから、ってだけですね。これでミスって40歳になるのと、バンドをやらないでそのままの生活で40歳になるの、たぶん変わらないと思ってます。だから別に年齢を考えないで始めましたね。

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―  TENDOUJIの売り、セールスポイントは?

アサノケンジ  僕ら編成的にギター2人、ベース、ドラムという本当にスタンダードなロックバンドで、そこに今まで割とプライオリティを置いてきたんですよ。同期で音を出しているバンド、鍵盤を使っているバンドもカッコいいんですけど、俺らが目指したいのはそれじゃないなと思って。4月29日にダブルA面シングル「HEARTBEAT/SUPER SMASHING GREAT」が出るんですけど、今回はそこにこだわり過ぎるのはダサいなと思い始めて、今までにない形で、音だけで言ったら今までとけっこう変わっていると思うので、そこは聴いてほしいですね。でも、完全にTENDOUJIの曲なので。

―  TENDOUJIの音はサブカル感がありながら、サブカルでは終わっていないですよね。

アサノケンジ  たぶんそれは精神性だと思いますね。もちろんサブカルも好きだし、わかってくれる人がわかってくれればいいっていうノリの人たちのこともわかる。でもやっぱり売れたいですね(笑)。そこに寄せているわけじゃないです。どういう音源を作るか?という時に、自分たちがカッコいいと思うものから絶対にはみ出さないようにしているし。わかってくれる人がわかってくれればいいわけでもないし、媚びてもいないですね。

―  理想のバンド像は?

アサノケンジ  そもそも、目指していたバンドのスタイルやファッションは90年代のグランジですね。気抜けたというか、ガチガチに決めないで私服でステージに出て、いい曲いいメロディをバーン!ってやって帰るみたいな。あの精神性はずっと憧れてますね。

―  今の目標は?

アサノケンジ  FUJI ROCK FESTIVALのグリーンステージはずっと思っておきたいですね。それも日本人で今売れているバンド枠じゃなくて、海外バンドとも遜色ないような立ち位置まで行けた上でグリーンステージに立ちたいです。海外の人からも“TENDOUJIフジロックに出るんだ”みたいな。そう言えばTENDOUJIって日本のバンドだったよね、ぐらいまで行けたらいいですね。

―  最後にギターをこれから始める人、ビギナーに向けてメッセージを。

アサノケンジ  マジで弾けるっす、ギターは。マジで俺も不器用なんで。手も小さいし。ムズイと思っているヤツも絶対に弾ける!

PROFILE


TENDOUJI
2014年、中学の同級生であったモリタナオヒコ(Vo,Gt)、アサノケンジ(Vo,Gt)、ヨシダタカマサ(Ba)、オオイナオユキ(Dr)により結成。自主レーベル「浅野企画」を設立して、これまでEP3枚、フルアルバム『MAD CITY』、シングル「COCO」をリリース。類まれなメロディーセンスと90年代のオルタナシーンに影響をうけた爆発力のあるサウンドを武器に、全ての会場をハッピーなグルーヴに包みこむ4人組バンド。2018年には「RUSH BALL」「BAY CAMP」などの国内フェス、そしてアメリカ最大級のフェス「SXSW」にも出演を果たす。 2019年には、グラスゴーの至宝バンド「TEENAGE FANCLUB」の来日公演のサポートアクトを務める。また「ARABAKI ROCK FEST.19」「VIVA LA ROCK 2019」「百万石音楽祭 2019」「FUJI ROCK FESTIVAL’19」「WILD BUNCH FEST.2019」など大型フェスに続々と出演し、シーンを席巻。11月に初のシングル『COCO』を発売し、タイで撮影したMVも話題に。 全国ツアー『TENDOUJI TOUR PINEAPPLE 2019-2020』も各地大好評で、2020年2月14日のツアーファイナル 恵比寿リキッドルームワンマンも完売御礼&大熱狂で幕を閉じた。2020年2月14日に2ndシングル「HEARTBEAT」先行配信リリース。4月29日にはダブルA面シングル盤「HEARTBEAT/SUPER SMASHING GREAT」リリース予定。2020年も2年連続で日本テレビ『バズリズム02』の「コレがバズるぞ!」にランクインし、今年もさらなる活躍が期待されている、東京インディ/オルタナ・シーン屈指の愛されバンド、TENDOUJI。
› Website:https://thetendouji.com

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