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Cover Artist | Anly -後編-

“ギターも歌も上手かったね”って言ってもらえるアーティストになりたい

多様なジャンル、国籍、アイデンティティを持つアーティストを選出し、世界中の何百万人もの音楽ファンとつながるための総合的なマーケティングサポートを行うフェンダーのグローバルプロジェクト『Fender NEXT 2022』。その日本代表に選出された沖縄出身のシンガーソングライターのAnlyが、FenderNewsのCover Artistに登場。インタビュー後編では、今の曲作りに対するモードについて語ってもらっている。さらに、現在開催中の47都道府県ツアーや、プレイヤーとしての目標についても話を聞いた。

根源にあるのは“歌いたい”とか“音楽をしたい”

― 近年の作品についてお伺いします。2020年4月発表の3rdアルバム『Sweet Cruisin’』は、閉塞感を払拭してくれるような明るい楽曲が揃った作品ですが、制作はコロナ禍前になるのでしょうか?

Anly 『Sweet Cruisin’』はもともと明るい曲が並んでいたアルバムで、“さあ、リリースするぞ”ってタイミングで緊急事態宣言が出たんですよね。曲作りを沖縄でしたり、ロサンゼルスに行ってアレンジャーの(フアン・)アリーザと一緒に曲を作ったり、太陽燦燦(さんさん)な場所で作ることが多かったから、明るい曲が多かったんじゃないかなって。でも不思議なもので、「We’ll Never Die」(絶対死なない)とか「Not Alone」(一人じゃない)とか、コロナ禍前に作ったわりにはそういうテーマの曲が多くて、音楽の力を感じました。“作品が当てはまる時期が来る”と言いますけど、こういうことだなって思いましたね。

― 出るべくして出たというか。

Anly うん。たぶん、コロナ禍に作っていたらアンニュイな雰囲気の曲が増えたと思うんですよね。もしかしたら、リスナーの人たちにとってはこのアルバムが出た時期はコロナ禍が始まった時期みたいなイメージになるかもしれないけど、めっちゃ明るい作品だから、それもはねのけているんじゃないかなと思っています。

― 最新作は、2022年2月発売の『VOLTAGE』。TVアニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』(以下、『BORUTO』)のエンディングテーマです。“書き下ろしでも自分とリンクさせて曲を作る”と公言しているAnlyさんですが、この曲は作品に寄せている印象がありました。

Anly 以前は自分を重ねて曲を書きたいと思っていたのですが、コロナ禍になっていろいろな楽曲を聴く機会がたくさんあったし、アーティストとして音楽に触れる機会も多くなって、曲作りに関して壁が出てきたんですよね。そんな時に『BORUTO』のお話が来て、自分の中で“一回、カタいことは言わずに『BORUTO』のために書こうよ”と思ったんです。変なストップを自分でかけないようにして、作品のためだけに曲を書きました。

― Anlyさんの音楽は、制作したその時々のモードが顕著に反映されているなといつも感じています。「VOLTAGE」はエネルギッシュな楽曲ですが、2022年4月現在のモードはいかがでしょうか?

Anly どちらかと言うと、ちょっとロックというか、力強い系に戻っていますね。『Sweet Cruisin’』と1stアルバム『anly one』がうまく混ざってきているイメージ。ルーツも出てきつつ、新しいものもあるみたいな、心地良い状態ですね。

― 『anly one』は、Anlyさんのルーツが感じられる作品ですよね。

Anly 『anly one』は、ロックとかカントリーとかフォークが強めですね。今の曲は、まだ出していない曲たちも含めてそのテイストが混ざっているけど、新しい部分があるので、私が求めていたサウンドにちゃんと輪郭が出てきているというか。『Sweet Cruisin’』はコンセプトが固まっていて物語があるようなアルバムだったし、数年後に聴いても“これはいいね”と思えるアルバムができたんですけど、次のアルバムはまた超えてくるようなものがあると思います。

― 芯がきちんとあるからこそ、新しいところにも行けるし、ルーツにも回帰できますし。

Anly そうですね。自分自身の根源にあるのは“歌いたい”とか“音楽をしたい”ということで。私の中ではジャンルに執着していなくて、今の気持ちに正直なほうが人生楽しいし、今は“よっしゃ、いくぜ!”って気持ちが強いから、ロックなほうに行けたりもする。遊牧民みたいな感じですね。

ライヴは余韻。終わったあとにどう感じているかが大事

― 現在は47都道府県ツアー〈Anly“いめんしょり”-Imensholy Tour 47-〉を開催中です。

Anly アコースティックギターの弾き語りって、歌が一番届きやすい裸の状態なんです。だから、お客さんとの心の距離がすごく縮まるツアーになっていると思っていて。即興コーナーもあって、ライヴ本編中に曲を作っています。そういう遊びもしつつ、音楽ができていく瞬間を楽しんでもらったり、音源とはまた違う楽曲の楽しみ方をしてもらったりしています。

― ツアー中に、新しい曲も生まれそうですね。

Anly 毎回即興を3曲ぐらい披露しているので、ツアーが終わる頃には100曲以上になっていると思います。全公演、録音しているので、そこからいい曲があったらなって。実は「VOLTAGE」も即興からできた曲で。歌詞とかは書き直しているんですけど、インスタライヴの即興コーナーで作った曲をスタッフが覚えていて、“あの曲は『BORUTO』にもいいんじゃないか”と言われて、それをAmerican Acoustasonic Jazzmasterで弾き直して作ったんですよね。だから、即興コーナーも侮れない(笑)。

アコースティックギターだけで歌うと、(音源では)聴こえてこなかった歌詞が聴こえてくることもあるんです。自分自身もその曲を作った時の気持ちが蘇ったりしていて、ツアーが終わる頃にはいい意味で初心に戻っているかも。最近はループペダルを使ってギターを叩いたりしながらライヴをすることも多かったけど、親には“しみじみと歌っているAnlyが好き”と言われることが多くて。そういう、ギターを弾いて歌い出した頃を思い出してファイナルを迎えるんだろうなって思います。

― 『Fender NEXT 2022』の日本代表にも選出され、今後はさらに活動の幅が広がりそうです。プレイヤーとしての目標を教えてください。

Anly もちろんバランスも考えなきゃいけないんですけど、ギターの音色とかリフとか、アドリブ的な部分がもう少しできるようになったらいいなと思っています。私的には“あの人、ギターが上手かったね”じゃないんですよね。“ギターも歌も上手かったね”って言ってもらえるようなアーティストになりたいので、曲のアレンジの中でもっとギターが目立つ、そして声とのバランスもいい演奏を目指したいです。弾き語りもそうですね。そんなに難しいことはしていないけど、フックがある弾き方を研究できたらなって。一つのパフォーマンスにフォーカスさせるんじゃなくて、全体的に良かったねって言わせる中で“そう言えば、あの時のギターがカッコ良かった!”って感じにしたいなというのが目標ではあります。

― バランスを取るのは、一つの要素に特化するよりも難しそうです。

Anly そうなんですよね。バランスよくやっているアーティストは、海外だとジョン・メイヤーだと思うんですよ。ギターも歌もいいって言えるアーティストだし、ギターが歌っているなって感じます。あそこまでじゃなくてもっと微量でいいので(笑)、私もそういう印象になれたらいいなって。

ライヴって結局、余韻なので。終わったあとにどう感じているかが大事で、“楽しかったけど疲れた”じゃなくて“今日、めっちゃ幸せ!”と思って帰れるライヴにできたらいいなって。その中でのスパイスとして、ギターで印象に残るようなことができるアーティストになりたいです。

› 前編はこちら

Left to Right : Joe Strummer Campfire Acoustic / American Acoustasonic® Jazzmaster®


Anly

97年1月、沖縄・伊江島生まれ。沖縄本島からフェリーで約30分、北西に浮かぶ人口約4,000人、風光明媚な伊江島出身。英語詞、日本語詞、さまざまなジャンルの音を楽曲の随所に感じさせるミックス感覚、ループペダルを駆使したソロライヴ、バンド編成ライヴ、アコースティックギター弾き語りなど、イベントや会場に合わせパフォーマンスやスタイルを変え、日本国内、香港、台湾、ドイツなど海外でもライヴを行う、唯一無二の空気を感じさせる沖縄出身シンガーソングライター。
https://www.anly-singer.com

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