Cover Artist | Chara -前編-

私はギタリストではないけれど、ギターを持つことで出てくる曲や気分がある

1991年のデビュー以来、独自の歌声と言語感覚、そしてジャンルを軽やかに横断する音楽性で、日本のポップミュージックに唯一無二の存在感を刻んできたCharaが、FenderNewsの「Cover Artist」に登場。インタビュー前編では、楽器演奏や曲作りの原点を振り返る。さらに、自身へのご褒美として手にしたフェンダーSwingerの思い出や、ライヴでも使用したAmerican Acoustasonic Telecasterの印象を通して、Charaにとって楽器が単なる演奏の道具ではなく、まだ知らない感情や景色へと導いてくれる存在であることが見えてきた。


人が集まった時にセッションできるように、楽器は家の中のあちこちに置いてあるの

──まずは、Charaさんが音楽と出会った頃のお話から聞かせてもらえますか?

Chara 最初に憧れたのは、幼稚園の教室にあった足踏みオルガン。昭和生まれだから、各教室にああいう楽器が置いてあったのね。先生がお別れ会の時とかに伴奏するのを見て、“あれを弾きたいな”っていつも思っていて、休み時間に“先生、弾いていいですか?”って聞くと、“いいわよ”って言ってくれた。それで先生が弾いていた“さようなら、さようなら、これで今日はお別れしましょう”っていう曲を耳コピして弾いていたんです。そうしたらある日、“みーちゃん、今日先生の代わりに弾いてくれる?”って。まだその頃はCharaじゃなくて、みーちゃんだったからね(笑)。で、先生の代わりに伴奏したのが私の最初の演奏。みんながこっちを向いて歌っていて、私は伴奏する側にいる。その景色がすごく楽しかったことを覚えています。

──その先生の存在は大きいですね。

Chara 身近な大人の観察力って大事だよね。私は親に楽器を買ってもらえなかったから、最初は紙の教材の鍵盤で練習をしてたの。その後、音楽教室に通わせてもらうようになったんだけど、そこではコードを覚えたり、聴音をやったり、相対音感を鍛えたり、リトミックみたいなことをやったりしてたのね。そういうメソッドに触れたことも大きかったと思う。しかも小学校低学年になると、作曲の宿題もあったりして。そのうちシンセサイザーとか電子楽器のほうへ興味が向いていくんだけど。

──当時はどんな音楽を聴いていましたか?

Chara 家にそんなにたくさんレコードがあったわけじゃないけど、父が持っていたザ・ビートルズのベストと、母が好きだった映画音楽はよく聴いていました。“これ弾いて”って言われると、耳コピして弾いたりして。最初に自分で買ったレコードでいうと、邦楽はピンク・レディーで、洋楽はジョルジオ・モロダー。シンセサイザーがピュンピュン鳴っている「Fame」という曲が大好きでした。

──シンセサイザーへの興味はかなり早かったんですね。

Chara 小学校高学年くらいになるとYMOもすごく人気が出てきて、運動会で「ライディーン」を踊った記憶もありますね。中学生になると、ラジオの音楽番組や『ベストヒットUSA』で流れている曲をカセットに録ったりして。高校に入ると少しお金が使えるようになって、バイトして楽器を買えるようになったんです。最初はギターではなく、シンセサイザーだったけど。

──プリンスを好きになったのもその頃ですか?

Chara そうそう。ローラーディスコでリズムスケーティングをしていた頃、リンクではファンクミュージックがたくさん流れていて。ZAPPのトークボックスとか、プリンスが使っているSequential Circuits社のドラムマシンとか、そういうものにどんどん興味が湧いてきました。高校時代は、ローラースケート、チアガールの振り付け、バンドでキーボードを弾くこと、バイト。そのあたりが私の時間の使い方でしたね。勉強は全然していなかった(笑)。

──ギターに触れるようになったのは、もう少しあとですか?

Chara 本格的に触るようになったのはデビューしたあとだけど、高校1年の時にバイトして、6万円くらいのギターを買った記憶がある。ただ、たいして弾けなかったし、曲作りも最初はシンセサイザーや打ち込みでやっていましたね。今は、思いついたらすぐ演奏できるものでスケッチのように録ったり、Fender Studio Pro(音楽制作ソフトウェア: 旧:PreSonus Studio One)でトラックを作ったりしています。携帯のメモにも、スケッチがいっぱい入っていますよ。
人が集まった時にセッションできるように、楽器は家の中のあちこちに置いてあるの。息子のHIMIも、時々うちのスタジオにミュージシャン仲間を連れてきて遊んでいたりするから、そこで私自身も面白い出会いがあったりして。

──素敵な関係性ですね。Charaさんにとって“いい音”とは、キレイに整った音というより、気持ちが動く音に近いのでしょうか。

Chara そうですね。私はリバーブもコンプレッサーも大好きだし、ダビーな音もすごく好き。空間を作る感じが好きなんです。言葉で音を伝えなきゃいけない時は、“ドリーミングな感じ”とか“サイケデリックな感じ”、“女神感”とよく言っています。空間全体をどう感じてどう活かすか考えたとき、その背景にある気配とか文脈みたいなものも含めて感じ取ることが大事だなって思う。それって服をコーディネートしてメイクを整えることにも少し似ている気がして、外見を整えることは内面のすぐ外側にある表現だからこそ、その人らしさや本質がにじみ出るんじゃないかな。「空間を捉える」って目に見える形だけではないから、奥が深いしとても大切だと思う。


Acoustasonicはもっと悪くてかっこいい音も出せそう

──今回、撮影でも持っていたAmerican Acoustasonic Telecasterは、先日開催されたChara+YUKIのライヴでも演奏されていましたね。

Chara いつも使っているヴィンテージのアコースティックギターは、見た目は大きくて好きなんだけど、私の体には合わないところがあって。巻き肩になるし、手もねじれるし(笑)、体への負担が大きかったんです。その悩みはAcoustasonicでかなり解消されましたね。本当に持ちやすい。音はローディーの寺川さんに相談しながら作ったんですけど、可能性がいろいろあるなと感じました。もっと悪くてかっこいい音も出せそう。

──フェンダーというブランドには、どんなイメージがありますか?

Chara 昔、Mustangを持っていたんですけど、行方不明になってしまって。Mustangといえば、Charさんがコレクションしているのは知っています。大人になってからは、自分と同じ年のギターが欲しくなったことがあって。土屋公平さんに“私に合うギターないですか?”って相談したら、“フェンダーのSwingerとかいいんじゃない?”って言われたんです。調べてみたら小ぶりで、ショートスケールで、名前もかわいい。それで赤いSwingerを手に入れました。同じ年ではなく1歳違いだったんですけど、それが私にとっては、大人になってからの自分へのご褒美みたいなギターでした。

──そのSwingerはレコーディングでも使われたんですか。

Chara 買った楽器屋さんにスタジオまで持ってきてもらって、その場で“弾いてみる?”ってなって。「I wanna freely love you」という曲で、名越由貴夫さんたちと輪になって弾いたのを覚えています。私はギタリストではないけれど、ギターを持つことで出てくる曲や気分がある。ピアノとは違うし、シンセとも違う。道具って大事なんです。植物を育てる時も、料理をする時も、いい道具があると変わるじゃないですか。楽器も同じで、手にした時に何かが導入される。それによって、違うところに行ける感じがあるんです。

American Acoustasonic Telecaster

>> 後編に続く(近日公開)


Chara
1991年9月、シングル『Heaven』でデビュー。独特な歌声とオリジナリティ溢れる楽曲、ライフスタイルをも含めた“新しい女性像”の体現者として絶大な人気を誇る。1996年、岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』に劇中バンドYEN TOWN BANDのヴォーカルとして出演。主題歌「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」、翌1997年にリリースした5thアルバム『Junior Sweet』がともにオリコン1位を記録。収録シングル「やさしい気持ち」は世代を超えて愛される代表曲となった。デビューより一貫して気鋭のアーティストやクリエイターとのコラボレーションを重ね、2020年にはYUKIとのユニット“Chara+YUKI”名義でミニアルバム『echo』をリリース。2026年はデビュー35周年という節目を迎え、この夏には〈Chara Sweet Soul Sessions ~Mojo Popcorn Returns~〉をBillboard Liveにて開催する。また、デジタルシングル「Adorable」(アドラブル)を7月16日(ナナイロ=虹の日)に配信リリース。
https://charaweb.net/

Text_Takanori Kuroda
Art Direction_Fumiko Hirano(THROUGH.)
Photography_Masaya Tanaka(TRON)
Hair & Make-up_Shinji Konishi(band)
Styling_Yumeno Ogawa
Costume_QUIITO(Denim Jacket)/ LIVINGTONE(Overalls)/ ALM.(Loafers)

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