cover-artist-char2021-a

Cover Artist | Char

一人ひとりの個性が出てきてどんどん楽しくなっていった

創設75周年を迎える2021年、フェンダーでは未来を担う子どもたちに “楽器を奏でる楽しさ”“音楽で広がる世界”“音楽の伝統・文化を受け継ぐ大切さ”を伝えるため、日本の小学校・中学校・高校(公立)を対象にしたチャリティプロジェクト『Fender 75th Anniversary Charity Project – We Love Music』を実施。その想いに賛同したフェンダーアーティストが中心となり、“音楽”をテーマにしたチャリティソング「We Love Music」を制作。11月10日より主要ストリーミングサービス等でデジタル配信を開始し、配信で得た収益は音楽教育のための助成金として全額寄付される。本プロジェクトで、アーティスト全体総指揮として完全無償で楽曲提供・プロデュースした日本屈指のギタリストCharが、FenderNewsのCOVER ARTISTに登場。インタビューでは、「We Love Music」が生まれた経緯、レコーディングやMV撮影の秘話、そして未来のギタリスト/音楽家へメッセージをもらった。

プロじゃなくても聴いただけで弾けそうなリフを考えた

― このプロジェクトの話を聞いた時、どう思いましたか?

Char まずはどういう曲を作ろうかなと。大人数で演奏する企画だけど、一人ひとりの個性があるだろうし、普段演奏しているジャンルも違う。どういう曲ならみんなで演奏できるかをすぐに考えたね。

― 今まで、大人数で演奏するコンセプトの作曲依頼はありましたか?

Char ないない。大勢の人が歌うことはあったけどね。歌は同時に歌えるからそんなに難しくないけど、ギターソロは同時にできないし、やらないほうがいいじゃん(笑)。

― お互いを消してしまいますからね。

Char うん。だからそれをどう組み合わせるか。例えば、長く(時間を)とって弾いてもらうか、短くとってちょこちょこ弾くのか。でも曲次第になっちゃうし、ギターだけじゃなくベースもいるから歌から入ったんだ。”We Love Music”。みんなこれくらいだったら歌えるだろうって(笑)。

― 最初に”We Love Music”というパンチラインができたんですね!

Char そうそう。それをギターで挟まないとダメだと思ったの。最初からギターで押すものも考えたんだけど、どちらにしてもリフが要るなって。そうなると、やっぱりメッセージが必要かなと思って考えて出てきたのが”We Love Music”。

― 非常にシンプルですが、ありそうでなかったタイトルだと思いますし、MVの演奏を見ていても”We Love Music”の空気が伝わってきます。しかも、フェンダー75周年でコロナ禍でもあるのでジーンと来ます。

Char ありがとう。昨年(2020年)の〈NAMM Show〉に行った時に、“75周年で何かをやりたい”という話を聞かされて。その時は“ふーん”で終わったんだけど(笑)。

― 日本でこの企画の旗を振っていただけるのはCharさんしかいないと思い、今回のプロジェクトをお願いさせていただきました。制作過程で言うと歌詞から始まったんですね。

Char うん。歌詞というか、みんなで歌える言葉から入ったかな。で、プロじゃなくても聴いただけで弾けそうなリフを考えたね。それには2つの意味があって、ひとつは今回のプロジェクトに参加するアーティスト全員をよく知っているわけじゃなくて、誰がどういうプレイスタイルなのかまでは知らなかったの。忙しい人ばかりだから、どんなプレイスタイルの人でもすぐに弾けそうなリフなら、音源制作もスムーズにいくかなと。それと、聴いた人がすぐにコピーできる曲がいいじゃん? だって”We Love Music”なんだからさ。

― 核となるリフはすぐにできたのでしょうか?

Char そうだね。すぐにボイスメモに録音したと思う。だけど、ボイスメモにタイトルを入れていなくてさ、そのあとに他にもタイトルがないボイスメモがたくさん溜まっていたから、この曲のリフを探すのが大変だったよ(笑)。

自分らしいものを表現してくれれば良かった

― レコーディングはCharさんの自宅スタジオで録ったんですよね。

Char 基本的にはそうだね。スケジュールの都合で来られない人もいたけど。

― レコーディング時の秘話はありますか?

Char いやぁ、忙しかったよ。嘘。他の人がレコーディングしている時、俺は別にやることないからさ。暇だった(笑)。

― えっ!?

Char だって、好きなように弾いてほしかっただけなので。基本的にソロに関しては1人4小節だから、そこを弾いてくれればいいいし、あとは歌の部分をシャウトでも何でもいいから歌ってもらえればOKだったから。さっさと終わる人もいれば、いろいろなパターンを入れていく人、全曲弾く人もいるし。誰とは言わないけどJINO(日野”JINO”賢二)とか。JINOはずっとやっていたね(笑)。

― 初対面の方も多かったですよね?

Char 女性陣はほとんど初めましてだった気がするね。とにかく、楽曲がどう出来上がっていくかが大事で、2〜3人録音しただけじゃ完成形がわからないわけよ。どういう順番で弾いてもらうかで出来上がりも変わってくるしね。たまたま春畑君がギタリストの中では最初だったから、“じゃあギターソロに入るところも(弾いて)もらっていいですか?”“いいっすよ”みたいな感じで最初のパートを弾いてもらったの。ギターソロの最初は“We Love Music♪”の後が2小節あるから、他の人よりも弾けるパートが2小節長いんだよね。“じゃあ、そこは弾かせてもらいます”みたいな。これは最初に来てくれた人の特権です(笑)。

― ソロの最初を春畑さんが弾くことで、楽曲のその先のイメージは膨らみましたか?

Char それだけだと全然わからなかったよね。春畑君みたいにディストーションでギターソロを弾く人だけじゃないし、普段ギターソロを弾かない人もいるわけじゃん。自分らしいものを表現してくれれば良かったので、レコーディングで弾く時、俺は立ち会わなかったの。俺が立ち会うと、いろいろな意味で自分を出せなくなっちゃう可能性があるから。俺が決めるのではなくて、納得点は自分で取ってほしいわけ。そういう意味では、一人ひとりの個性が出てきてどんどん楽しくなっていったよね。さらに、ギターだけじゃなくベースソロもあるわけだしね。

― ベースは誰から録り始めたのですか?

Char JINOじゃない? 全部の中で最初がJINOだったかな。ギタリストとしては春畑君が最初で。山内君は後のほうだったから、他の人のプレイを聴いて被らないようにスライドギターを弾いてたね。だんだん録れてくると順番を決めるのは大変だった(笑)。でも、フェンダー括りとは言え、これだけいろいろな人に会うこともできなかっただろうし、それをギターで表現するのも今までなかっただろうから、そういう意味でいい仕事をさせてもらったと思っています。

cover-artist-char2021-b

リモート映像でそこにいるほうが、今の日常の発想ではすごくリアル

― 今回のプロジェクトには、Charさんに加えて、あいにゃん(SILENT SIREN)、INORAN(LUNA SEA)、Ken(L’Arc〜en〜Ciel)、J(LUNA SEA)、すぅ(SILENT SIREN)、TOMOMI(SCANDAL)、ハマ•オカモト(OKAMOTO’S)、HARUNA(SCANDAL)、春畑道哉(TUBE)、日野JINO賢二、MAMI(SCANDAL)、MIYAVI、山内総一郎 (フジファブリック)、Reiという総勢15名のギタリスト・ベーシストが楽曲制作に参加しました。「We Love Music」のMVも公開されましたが、撮影はいかがでしたか?

Char 面白かったよ。スケジュール的に来られなかった人も何人かいるけれど、俺はレコーディングでは基本的にみんなと会っているし。

― みんなが一同に集まるのは初めてですもんね。

Char そう。もちろん知っている人同士もいるだろうけど、その日が“初めまして”の人もいたはずだよ。ましてやフェスの楽屋とはわけが違って、これからみんなで演奏するわけだから。で、どういう映像を作るかミーティングを重ね、基本的にはドキュメンタリータッチで撮ろうということになったんだよ。うちのスタジオにみんなが集まって演奏している感じにしようって。リアリティを出すために、実際にうちにある小物をセットの一部として使っています。

― なるほど! それ以外のコンセプトなどはありますか?

Char 結局は全員が集まれるわけじゃないから、そこでライヴをやるわけにもいかないけれど、ギター・ベースを持っているのに音が出ないのはおかしいから、アンプは人数分用意してと伝えたね。オケに合わせて演奏するにしても、やっぱり音が出る状態にしないと良い表情は出ないんだよ。ちゃんとアンプから音を出して、それとレコーディングした音源をミックスしているんだよねMVは。

― あくまでもリアリティを大事にしたいと。

Char どちらかだったんだよ。例えば、一人ひとりを録って映像にしていく手もあるし、あるいは今回は学校に寄付するチャリティ企画なので子どもたちに歌ってもらうとか、色々なアイディアがあったんだけど、最終的にうちのスタジオを拡大したような場所で、みんなで演奏することにしたんだよね。時間がなくて大変だったけど、とある倉庫のスタジオに映画さながらのセットを作ってくれて。思ったよりもスムーズに事が運んで、無事に撮影することができたよ。

― 個々に撮るよりも集まったほうがメッセージが伝わりますよね。

Char そうなんだよ。ただ、何人来られるかが問題で。俺ともう一人じゃ意味ないし。結局、当日は俺を含めて10名のプレイヤーが集まれて良かったよ。

― 現地に参加できなかった方も、リモートながらその場で一緒に演奏しているのも良かったです。

Char あれは監督のアイディアだよ。リモートでの参加も2年前だったらリアリティがないと思うけど、今はリモートも日常じゃない? 来られなかった人を別途撮影するよりも、リモート映像でそこにいるほうが今の日常の発想ではすごくリアルだと思ったよね。そういう意味では、監督に知恵を絞っていただきました。

正解がない。だからギターは面白いんだよ

― 先ほどチャリティ企画の話がありました。チャリティについてどう思いますか?

Char 素晴らしい発想だと思うよ。より多くの子どもたちに楽器に触れる機会ができることは。先日、山内君ととある番組の撮影で話したんだけど、“何でギターを始めたの?”って話から始めたんだよね。曰く、ずっとサッカー少年だったけど、中学生のある日、親父がギターを持っていたのを思い出して、押し入れを探したらギターがあって。それで、Gコードをジャカジャカ鳴らしたところから一日中ギターを弾くようになって、お父さんのザ・ビートルズのレコードを引っ張り出して聴くようになった。親父さんのギターがなかったら、もしくは親父さんがザ・ビートルズのレコードを持っていなかったら今の山内君は存在しないかもしれない。そういう意味で、学校にギターが1本あるだけで運命は変わる。未来のギタリスト、もしくは音楽家がこういうプロジェクトから生まれてくるといいなと思う。

 そういうプロジェクトを、俺みたいな年齢のギタリストから20代の子までがやっているのも面白いよね。本来は音だけで伝わるのがいいんだろうけど、今は映像で伝えることも大事なのかなと思う。撮影の時、初めはみんな緊張していたけど、最後は本当にひとつになれた。“We Love Music”なんだなって思えたよね。

― 最後は“We Love Music”でつながれたんですね。

Char うん、自然と。ドキュメンタリータッチだからほぼ1台のカメラなんだけど、最初のうちは1カメとは言えカメラが回ってるわけだから、良い意味でも悪い意味でもみんな意識しちゃうじゃない。何度もその人のソロが出てくるわけだから、みんな手グセを把握しているわけ。さっきも言った通り、レコーディングでは俺も弾いているところを見ていない人もいたから、“この子こういうリズムの取り方をして弾くんだ”っていうのを見られて発見があったね。

― Charさんの日本武道館でのライヴで、「We Love Music」をお披露目すると聞いています。

Char うん。春畑君、INORAN君、JINO、山内君、あいにゃんちゃん、すぅちゃんが来てくれる。まぁ、それはそれでライヴのアレンジをしなきゃならないから手間がかかるんだけど(笑)。レコーディングに参加した人全員が来るわけじゃないから弾くパートも変わると思うし、ライヴならではのセッションになるかもしれないから楽しみにしててよ。

― はい。「We Love Music」のMVを見て、楽器を弾きたいと思った人は多いと思うんです。

Char それが一番嬉しいよね。楽器を弾くきっかけになればいいなと思う。ギターを弾くこと、バンドをやることにルールはないから。何歳から始めようが、自分が表現したいものを練習することだよね。そういうヤツが集まるとバンドってできるから。プロになる、ならないはあとから付いてくるもので、俺みたいに何十年もやってもまだ弾き足らないヤツもいる。コードを3つしか弾けなくても、作曲したり歌うことができる楽器がギターだから、その人のスタイルでいい。正解がない。だからギターは面白いんだよ。


Fender 75th Anniversary Charity Project – We Love Music

創設75周年を迎える今年、日本の小学校・中学校・高校(公立)を対象にしたチャリティプロジェクト『Fender 75th Anniversary Charity Project – We Love Music』を実施いたします。このプロジェクトは、国内の教育機関において革新的でサステナブルな音楽教育の機会を増加させ、音楽リテラシーが高い教育のサポートすることを目的としています。また楽器の学びの場や演奏体験を提供し、子どもたちの可能性を引き出すことを目指します。

本プロジェクトに応募いただいた小・中・高校の中から、選抜された学校に下記を無償で提供いたします。

  • 音楽教育のための助成金
  • ギター(エレクトリックギター、アコースティックギターまたはウクレレのいずれか)
  • アーティストによる特別ギターレッスン

応募はこちらから


Fender 75th Anniversary Charity Projectプロジェクトに賛同いただいたフェンダーアーティスト総勢15名のギタリスト/ベーシストとタッグを組み、”音楽”をテーマにしたチャリティソング「We Love Music」大好評配信中!配信で得た収益は、音楽教育のための助成金として全額寄付いたします。

WE LOVE MUSIC
Words & Music by Char

配信サービス
Apple Music / Amazon Music / Spotify / KKBOX / LINE MUSIC / AWA / うたパス / SMART USEN / RAKUTEN MUSIC / Deezer / PLAYNETWORK

配信サイトはこちらから


Char

1955 年6 月16 日東京生まれ。本名・竹中尚人(たけなか ひさと)。ZICCA REDORDS 主宰。8 歳でギターをはじめ、10 代からバックギタリストのキャリアを重ねる。1976 年『Navy Blue』でデビュー以降、『Smoky』『気絶するほど悩ましい』『闘牛士』等を発表。Johnny, Louis & Char 結成翌年、1979 年に日比谷大野外音楽堂にてフリーコンサート「Free Spirit」を行う。1988 年 江戸屋設立以降、ソロと並行して、Psychedelix、BAHO での活動を行う。2009 年にはWEB を主体としたインディペンデントレーベル「ZICCA RECORDS」を設立し、自身が影響を受けたギタリスト( エリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ベンチャーズ、ジミ・ヘンドリックス等) のカバーであるTRADROCK シリーズ(DVD/CD) 全7タイトルを発表。2015 年5 月、十二支のアーティストによる書き下ろしアニヴァーサリーアルバム『ROCK 十』( ロック・プラス) を発表 [ 子: 泉谷しげる, 丑: 佐橋佳幸, 寅: 布袋寅泰, 卯: ムッシュかまやつ, 辰: 石田長生, 巳: 奥田民生, 午: 松任谷由実, 未: 佐藤タイジ, 申:JESSE, 酉: 福山雅治, 戌: 宮藤官九郎, 亥:山崎まさよし]。6 月15 日、 生れ還る暦を迎える前夜に、13 組のアルバム参加アーティストをシークレットゲストに迎え、武道館公演を開催。ギターマガジン誌による、プロギタリストを中心とした音楽関係者へのアンケート投票「ニッポンの偉大なギタリスト100」にて、1 位に選ばれる。
2018 年、Fender Custom Shop にて日本人初のプロファイルドモデルを発表、またオリジナル楽器ラインZICCA AX も展開中。


【ライブ情報】
Char 45th anniversary concert special

日時:2021年12月11日(土) 開場16:00/開演17:00(終演予定20:00)

会場:東京・日本武道館

出演:Char/三人の侍(奥田民生、Char、山崎まさよし)/布袋寅泰/AI
Fender 75th Special Session : あいにゃん(SILENT SIREN)/INORAN(LUNA SEA)/すぅ(SILENT SIREN) /春畑道哉 (TUBE) /日野 JINO 賢二/山内総一郎 (フジファブリック)     

【ニューアルバム】
16年ぶりのオリジナルアルバム「Fret to Fret」絶賛発売中。
https://www.zicca.net

Related posts