乃紫 | Fender Experience 2025

ジャンルや世代を超えた注目アーティストによるライヴ、名器たちとの出会い、音楽と触れ合うワークショップ。音楽、クリエイティビティ、そして人とのつながりが交錯する体験型イベント〈FENDER EXPERIENCE 2025〉が、10月11日(土)〜13日(月・祝)の3日間にわたり原宿・表参道エリアの3会場にて開催された。ここでは、12日Fender Flagship Tokyoにて行われた「乃紫スペシャルライヴステージ」の模様をお届けする。


楽器との出会いは人生を変える──乃紫、リアルな言葉と音で魅せた特別な一夜

乃紫のスペシャルライヴステージは「先輩」でスタート。ソリッドなエレキギターのフレーズに続いて、タイトなバンドサウンドが鳴り響くと、一斉に体を揺らした観客。聴く者の胸をザワつかせるような、乃紫のどこか気だるいヴォーカルに呼応するように観客は腕を振り上げ、曲の最後に“ありがとう!”と乃紫。間髪入れず2曲目の「A8番出口」に突入。アッパーなビートに合わせて、“ハイ!ハイ!”と掛け声が上がる。乃紫は飛び跳ねるような雰囲気でステップを踏み、観客も曲に乗ってジャンプ。中毒性のあるキャッチーなメロディが心地良い同曲の、サビの繰り返しのフレーズを観客は一緒に口ずさんで彼女のステージを楽しんだ。

「アフターオール」では、スタンドマイクをつかんでバラードのようなムードで曲がスタート。ドラムのフィルインをきっかけに、一転アッパーにシフトしてからは、繰り返しのフレーズによって徐々に熱を増していく。高揚感と切なさが同居した、エモーショナルな同曲。最後はバンドメンバーと音を合わせた。そしてライヴパート前半のラストには、TikTokで19億回を超える再生数を記録し、「TikTok上半期トレンド大賞2024」でミュージック部門賞を受賞するなど、乃紫の名前を知らしめた「全方向美少女」を披露。リズミカルなビートが鳴り始めると、会場には自然と“パンパパン”という手拍子が広がった。色っぽく体を揺らしたり、手振りを交えながら歌う乃紫。一度聴いたら耳から離れなくなる特徴的なサビのキメも心地良く、会場は手拍子しながら一緒に歌って同曲を楽しんだ。

トークパートでは、音楽への想いや創作の裏側に迫る質問が次々と飛び出し、彼女の世界観を間近で感じられる貴重な時間となった。

中学時代から東京事変、RADWIMPS、BUMP OF CHICKENなどのバンドを聴いて育ってきたという彼女。憧れのアーティストを聞かれると「椎名林檎さんです!」と即答。最初にアコースティックギターで弾いた曲は、ベン・E・キングの「スタンド・バイ・ミー」。“2〜3年前からDTMで作曲を始め、パソコンにギターをつなぐためにエレキギターが必要でエレキを始めた”とのこと。

この日はサンバーストのTelecaster(Made in Japan Traditional 2025 Collection, 60s Telecaster)を弾いていたが、いつものライヴでは赤いStratocasterを弾いている乃紫。その赤いテレキャスは、大学の友だちに借りているものだそうで、友だちからは「もうあげる」と言われたことを明かして会場を笑わせた。ギターを始めた時のことについては、「高校の時はアコースティックギターを弾いていて、指が痛いし手が小さいので押さえられるコードが少なくて、弾ける曲がなかった」と乃紫。そんな実体験に、大きくうなずいて共感する女性ファンも多数いた。また、オススメの練習曲を聞かれると、彼女の楽曲「ヘントウタイ」と「東京依存症」を紹介。この2曲は同じコードでできているそうで、「アルペジオとバッキングという奏法の違いでまったく違う曲になる」と話し、その場でワンフレーズ実演すると会場には拍手が沸いた。

乃紫に憧れてギターを始めるという女の子も多いそうで、そういうメッセージをもらうとすごく嬉しいと乃紫。そんなファンの女の子に向けて、「今日使わせていただいているTelecasterは軽くて疲れないし、女の子にオススメ」とコメント。また、ギターを選ぶ時のポイントを聞かれると、Fender Flagship Tokyoの試奏スペースによく来ていたエピソードを交えながら、「衣装と合わせやすい色を選ぶのも大事だし、弾きやすさも重要なので試し弾きは必須。ギターは長く使う一生ものなので選ぶ時は慎重に!」とアドバイスを贈った。

曲作りについては、歌詞とメロディが同時で、編曲をする時に初めて楽器やパソコンに打ち込んだりするとのこと。作った曲の世界観に合う音色を選んでバッキングを決めるという。どんなものからインスピレーションを受けるか問われると、「家の外にある日常のすべて」と乃紫。「家にいると曲が生まれない。外で誰かと話したり、楽器や音がある場所に行ったり映画を観たり。芸術の秋じゃないけど、たくさん外に出てお散歩するといろいろ湧き出てくるものがあると思う」。

通常のライヴハウスよりもステージと客席が至近距離であることに、「めちゃくちゃ緊張する」と言いながら、「でも、ファンクラブイベントみたいで楽しい(笑)」と乃紫。最後には春にリリースした「1000日間」を披露。乃紫の“ワンツー”というカウントで始まった同曲。マイクを手に持ってエモーショナルにヴォーカルを響かせた彼女に、観客はサビで手を左右に揺らして一緒に歌って会場が一つになった。

最後に「こんなに近い距離で皆さんとお会いすることってないので、すごく楽しみにしていました。来てくださってありがとうございます」と挨拶。「楽器との出会いは人生を変える。そこから曲を作るという一歩を踏み出したら、みんなと出会えました。そういう音楽体験との出会いを、ぜひしてほしい」とのメッセージでステージを締めくくった。

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