Interview | Ken -後編-
「心からいいと思えるギターを、出来るだけ手に取りやすい形で出したかった。」
待望のシグネイチャーモデルを発売するKenのスペシャルインタビュー。彼のこだわりが凝縮された「Galaxy Red」。後編ではルックスとサウンドの話を中心に語ってもらいました。
― ボディカラーは本当に印象的ですよね。他にない色では?
Ken L’Arc-en-Cielは明るい曲もあれば暗い曲もあり、ちょっと和風なテイストの曲もあるので、そのすべてをカバーし、どんなときでも気分良く演奏できるような色をイメージした色です。深みを出すのにラメが入ってます。微妙なサジ加減を調整してもらうため、何パターンも試させてもらいました。ピックガードはアノダイズですが、そのままではライヴで長時間弾いていると爪が削れやすい。そのためラッカーを塗っています。
― ネックの太さにも相当こだわったとお聞きしています。
Ken そうなんです。フェンダーショールームにある、マスタービルダーのギターをすべて弾き比べ、なおかつ僕が今まで持っていたギターも改めて弾いてみて、その中でしっくりくるシェイプを選びました。さらにナット側のネックにボリュームを持たせると、ヘッドの先まで音が伝わるような感じがしていいなと思ったんです。弾きやすくなるというか、弾いた分だけ鳴る感じがする。それで、若干太めのシェイプにしました。よく「ネックが太いと弾きにくい」と考える人もいますが、例えばクラシックギターやアコースティックギターの太いネックを、手の小さい女性がちゃんと弾いていたりするじゃないですか。握り方や力の入れ具合によっては、ネックが太い方がラクなんです。
― L’Arc-en-Cielの楽曲の中で、この「Galaxy Red」の音を堪能できるのは?
Ken ライヴでは「MY HEART DRAWS A DREAM」をよく演奏するのですが、この曲のイントロはシンセパッドが鳴り続けている中、アドリブでギターを弾いていくんですね。ボリュームを絞って弱く弾いてみたり、突然ボリュームを開けて「ジャーン」と大きな音を出してみたり。いろんな音色が放り込めるセクションなんです。自分でも「Galaxy Red」の音を楽しみながらインプロヴァイズしているので、是非チェックしてください。
― 3月1日にリリースされたDVD『L’Arc-en-Ciel LIVE 2015 L’ArCASINO』でも、「Galaxy Red」をメインで使用しているのですよね?
Ken はい。クリーントーンと歪みの音を、2台のアンプで分けて出しています。つまり、レコーディングではパートごとに別録りしているギターフレーズを、この「Galaxy Red」1本だけで弾き分けている。ギターを弾く人なら分かってもらえると思うんだけど、マイクなどをライヴでは曲ごとにこまかく変えないので、アンプセッティングなど、色々テクニックが必要なんですよね(笑)。そのあたりを見て、聴いて楽しんでもらえたらなと思います。
― さて、そんなKenさんのシグネイチャーモデル「Galaxy Red」が今回、手に入りやすい価格帯の日本製でリリースされることになりました。かねてからKenさんは、手に入りやすい価格帯での販売を要望されていたそうですね。
Ken はい。自分がキッズだった頃、欲しくても手の届かなかったギターってあったじゃないですか。なので、僕自身が心から“いいな”と思えるギターを、出来るだけ手に取りやすい価格帯で出せたらいいなと。
― 憧れのギタリストが持っているギターを、キッズの時に手に入れるのは難しいですもんね。
Ken そこまでいうと恥ずかしいけどね(笑)。
― 値段を落とした上で、納得のいくサウンド、デザインを実現させるためにどんな工夫をしましたか?
Ken 最初のプロトタイプを試奏させてもらった段階で、かなり完成されたクオリティだったんですよね。アンプ無しの生音で弾いたら、その時点でちゃんと音の強弱のニュアンスが出せていた。「あ、この値段でいける!」と確信しました。で、実際アンプで出してみて、「もう一声欲しい」と思った部分を改良してもらいました。
― 例えば?
Ken やはり電装パーツですね。ここを改良してもらったタイプを今日、聴かせてもらったらバッチリでした。キッズが電装パーツを改造するのは大変だし、逆にお金かかってしまいますからね。そこは、ちゃんとしたパーツが搭載されているほうが、自分だったら嬉しいよなと(笑)。ピックアップを載せ替えたりするのは、割とカジュアルに出来ると思うんですけどね。
― では最後に、春という時期を踏まえて、「これから楽器を始めよう」と思っている人にアドバイスをお願いします。
Ken 気分のままの音が出るように、ギターを弾くと楽しいんじゃないかな。もちろん運指練習は大切なんですけど、「つまんない」と思って弾くと、「つまらない音」になってしまう。もちろん、イライラした時は、そのイライラをぶつければいいし、悲しい時はその悲しさを1音に込める。フィードバックを出すだけでも楽しい楽器ですからね、エレキギターって(笑)。もちろん、スケールはちゃんと覚えちゃったほうがラク(笑)。スケールの練習と、ニュアンスを込める練習。この2つを並行して練習すれば、豊かな表現力を持ったギタリストになれると思います。
› 前編はこちら
Ken Stratocaster® Galaxy Red
Galaxy Red最大の特徴とも言えるボディフィニッシュ、特注のピンクアノダイズド・ピックガード、ブラックパーツによるルックスを完全再現。さらに9.5インチラディアスのメイプル指板や、オリジナルのネックシェイプ、ヴィンテージフレット、SPERZELのロックペグなど、Ken自身の実機と同じスペックで演奏性を再現。カスタムワウンドのピックアップやUSメイドのサーキットパーツなど、見えない箇所にもこだわりが行き届いたモデルに仕上がっています。Kenが監修した証として、ヘッド裏にシグネイチャーサイン入り。
Ken
L’Arc-en-Cielのギタリストとして、1994年にメジャーデビュー。その後、数々の記録を打ちたてた。2012年には、アジア、アメリカ、ヨーロッパ、日本で45万人を動員するワールドツアーも成功させた。2002年からはSONS OF ALL PUSSYSとしても活動し、2006年からはソロとしての活動も開始。1stシングル「Speed」はオリコン初登場4位を記録。叙情性とハードさを併せ持ったロックなステージで全国ツアーも行った。最近では、自ら声をかけて集めたバンドらによるライヴイベント「PARTY ZOO」の企画や、MUCCやBAROQUEなど他バンドの楽曲プロデュースも行い、多才な能力で音楽と向き合い、活躍の場を広げている。