F.C.Pyro. 20th Anniversary SPECIAL J BIRTHDAY LIVE
LUNA SEAのベーシストJが、自身のファンクラブ『F.C.Pyro』の発足20周年と自らの誕生日を記念した会員限定ライヴ〈F.C.Pyro. 20th Anniversary SPECIAL J BIRTHDAY LIVE -20220812-〉を、8月12日にSpotify O-EASTにて開催した。ここでは、自身が弾くカスタムショップ製の二つのシグネイチャーモデル(J Signature Precision Bass® Heavy Relic® Champagne Gold、J Signature Precision Bass® Heavy Relic® Black Gold)を中心に、当日の模様をお届けする。
“相棒”とも言える2本のシグネイチャーモデルが、楽曲に雄大なグルーヴを加える
開演が近づくにつれ、自然発生的に沸き起こったハンドクラップが徐々に大きくなっていく。定刻になり、サポートメンバーのmasasucks(Gt)、溝口和紀(Gt)、有松益男(Dr)とともにJがステージに現れると、その音はピークに。コロナ禍でマスク着用が義務付けられたオーディエンスたちが、声を出しての“応援”はできないぶん、ありったけの気持ちを拍手に込めている光景に胸が熱くなる。
「Wake Up, Tokyo! 待たせたな!」そうシャウトし、この日のライヴはスタート。曲はもちろん「Wake Up!」。2021年11月にリリースされた、通算12枚目のアルバム『LIGHTNING』からのストレートなロックナンバーだ。Jが抱えているのは、フェンダーのJ Signature Pression Bass Heavy Relic Champagne Gold(以下:Champagne Gold)。芯は太いが、少し“歪み”が加わった高域部分がベースラインの輪郭をくっきりと浮かび上がらせ、有松の叩き出す骨太なビートをぐいぐいとドライブさせているのがわかる。
続いて演奏されたのは、2007年にリリースされた10枚目のシングル『Twister』のカップリング曲「OVER DRIVE」。自身のルーツであるハードロックやグランジ、パンクロックを絶妙なバランスでブレンドしたJらしいナンバーだ。ここではエッジの効いたギターリフを補強するかのように、ブリッジの近くをピッキング。かと思えば歌中ではフロント側をピッキングするなど、セクションごとに音色を使い分けながらベースを弾いていたのが印象的だった。
「NOWHERE」(2004年『RED ROOM』収録)では、グレッグ・フェスラーとともに制作したカスタムベースJ Signature Precision Bass Heavy Relic Black Gold(以下:Black Gold)に持ち替えたJ。これは現在、ほぼすべてのステージやレコーディングのメインになっている“相棒”とも言えるベースである。中低域を強調したサウンドで、彼がこの雄大な楽曲に横ノリのグルーヴを加えると、フロアはまるでダンスフロアのように沸き返る。その光景に思わず笑みを浮かべながら、伸びやかな歌声を会場いっぱいに響かせるJ。
「会いたかったぜTokyo! 自分の誕生日を、こうやってみんなとライヴで迎えられるなんて本当に幸せなやつだと思っています。ここから見る景色は本当にすごい。今日も感染防止対策をしっかり行っているので、どうか安心して楽しんで帰ってください」と改めて挨拶。この日の模様は配信にて生中継もされており、リアルタイムで書き込まれたコメントを嬉しそうに読み上げる一幕もあった。
リズムが倍になったり半分になったり、まるでスポーツカーに乗ってハイウェイを自在に疾走しているかのような「Route 666」ではJが、masasucksが繰り出す高速ギターピッキングに合わせてピックでブリッジ側をゴリゴリとピッキング。続く「GO with the Devil」では性急なシャッフルビートに厚みを持たせるかのごとく、ベースの3弦と4弦を主に使ってフレージングしていたのも印象的だった。さらにこの曲でJが、人差指と小指をピンと伸ばし“悪魔のツノ”に見立てた右手を頭の上にかざすと、オーディエンスもそれに倣い、会場はあたかもサタン崇拝者による儀式と化した。
「みんなの声がなくても熱気ですごい圧を感じるよ!」と、半ば興奮気味に言葉をかけるJ。
「1stアルバム『PYROMANIA』から今年で25年も経つなんて信じられないけど、変わり続けてきたからこそ今も燃え続けているのかもしれない」
ライヴ中盤で披露した「PUNK FLOYD」は、曲名どおりパンクとプログレを合体させた、Jにしか書けない曲と言っても過言ではないだろう。ここで再びChampagne Goldに持ち替え、ヘッドバンキングしながら高速でダウンピッキング。一方、中盤のサイケデリックな展開では、歪んだ音色でロングトーンを効果的に用いたフレーズを弾いている。
畳み掛けるように演奏された「CALL ME」は、ヴァン・モリソンの「The House Of The Rising Sun(朝日のあたる家)」を彷彿とさせる哀愁漂う楽曲。本来ならみんなで一緒に“Call Me!”と叫びたいところだが、できない代わりに全員で拳を突き上げる。かえってそれが会場の一体感を、より一層高めていたのも感動的だった。
キックの四つ打ちに合わせてハンドクラップが鳴り響く、とびきりキャッチーなサビが印象的な「MY HEAVEN」から始まった後半戦では、Black Goldのベースを使用したJ。ハードコアばりの高速ビートが鮮烈な「Go Charge」、振り絞るようなシャウトから心をわし掴みにされる「BUT YOU SAID I’M USELESS」、さらに半音進行がスリリングな「break」とライヴ映えする楽曲たちを、エッジの効いた、かつファットなベースラインで支えていく。
「最後はお前らの曲だぞ!」と叫び、披露したのはもちろん「PYROMANIA」。ファンクラブの名称の由来にもなった楽曲である。その中盤では、ライターで火を灯したオーディエンスがフロアに光の絨毯を作り上げると、Jも満面の笑みで応える。 鳴り止まぬアンコールの中、サポートメンバーと登場したJ。「Feel Your Blaze」と、ラストはBlack Goldを使用し「Evoke the world」を演奏し、コロナ禍でようやく再開となったバースデーライヴ恒例の“ケーキ投下パフォーマンス”も無事に(?)行い、このスペシャルなイベントを締めくくった。
All photo by KEIKO TANABE
【SET LIST】
1. Wake Up!
2. OVER DRIVE
3. NOWHERE
4. Route 666
5. GO with the Devil
6. PUNK FLOYD
7. CALL ME
8. MY HEAVEN
9. Go Charge
10. BUT YOU SAID I’M USELESS
11. break
12. PYROMANIA
ENCORE
13. Feel Your Blaze
14. Evoke the world