The One For All. | TOKIE
フェンダーが2020年秋に発表した最新シリーズ“American Professional II”。本シリーズのコンセプトである“THE ONE. FOR ALL.”=“ギターとベースを愛するすべての人に”をテーマに、日本を代表するアーティストにこれまでの歩みやこれからのビジョンを聞く新コンテンツ“THE ONE. FOR ALL.”。第1回目は、RIZEやAJICO、LOSALIOSといったバンドで確固たるスタイルを確立。さまざまなアーティストのサポートも行い、確かなテクニックに裏打ちされた縦横無尽なインプロヴィゼーションで魅せる稀代のベーシスト“TOKIE”が登場。
これからは、つまらないこだわりを捨てていかなきゃなと思っています
― コロナ禍での音楽活動はどんな感じでしょうか?
TOKIE “目の前のできることをやる”の一言に尽きます。例えば、今までやってこなかった、データのやり取りでベースを録ることもしましたし、去年の秋からは突発的に誘っていただいたインプロのライヴをやったりしました。去年12月にはようやくLOSALIOSでツアーもできて…本当に良かったなって感じです。
― 技術向上などの練習時間や、新しいことへの挑戦などをする方も多いみたいですが。
TOKIE 練習も新しいことの模索もやってはいたのですが、ライヴ活動が止まってしまうとモチベーションが上がらないんです。家でダラダラ練習していて、効率が悪いことへの葛藤がありました。正直、今でもその葛藤はありますが、秋からライヴがあったり、ちょっとでも動いている状況になってモチベーションも上がりました。動き出すと、あれやらなきゃ、これもやりたいなっていうことも必然的に出てくるので。そのおかげで何とか去年は乗り越えたかなという感じですね。
― 久しぶりのお客さんを前にしてのライヴはいかがでしたか?
TOKIE 去年秋のインプロのライヴが、久しぶりのお客さんを前にしてのライヴで、ステージから見る景色がコロナの前と今とではガラリと変わってしまって、最初はすごく戸惑いもありました。ただ、ライヴを重ねていくうちにその景色にも慣れ、こんな状況でも観に来てくれる人たちがすごいなって。観に来てくれる人たち、ライヴハウスの方たちもライヴができるように対策を整えてくださったり、音楽に対しての愛情を今まで以上に感じましたね。
― 今日は“プロ”というキーワードでもお話を伺いのですが、TOKIEさんの中でプロミュージシャンとしての転機を挙げるとすると?
TOKIE 転機はRIZEとAJICOへの加入ですね。それでガラリと活動が変わりました。それ以前もサポートのお仕事はやっていたのですが、いろいろなところからお仕事をいただくようになったのは、その2つのバンドに加入した2000年以降ですね。
― 確かにそこからは、TOKIEさんはバンドマンというよりもセッションプレイヤーのイメージが強いように思えます。
TOKIE 固定のメンバーでやっているのも楽しいし、お誘いいただいたらもちろん一緒に音を出してみたいという欲求もあるので、そこはバランスを取りつつどちらもやりたいなと思っています。
― バンドもサポートも両方やることで、ベーシストとしての欲求が満たされる?
TOKIE そうですね。固定のメンバーとやる時と、誘われてセッションだったりサポートのお仕事をする時ではベクトルが全然違うので、それはどちらも捨てがたいというか。どちらかを辞めてこれだけにする、という選択肢は私の中ではないですね。
― ベクトルが全然違うというのは?
TOKIE 自分がやりたいこと、表現したいことをそのままやるというベクトルと、誘っていただいたセッションであれば音の化学反応、サポートであれば誘っていただいた方に喜んでもらえるようにどう弾けばいいかな?と考えながら弾いたりするので全然違うベクトルなんです。
― なるほど。それだけに大変だとは思うのですが、自分がやりたいことと、相手のリクエストに応えるプレイの引き出しを増やすのを日々どうやって培っていますか?
TOKIE 日々のことと言うよりは、これまで自分がやってきたことですよね。つまり、自分のやってきたバンド活動や、これまでにお仕事でやってきたジャンル、今までやってきたことすべてが、今そしてこれから何かをやる時に引き出しの中に溜まっている感じです。
― ジャンルを選ばずにプレイしたほうがいいと?
TOKIE というより、私自身があまりジャンルにこだわりがないんです。でもそれは、自分はどのジャンルも弾けるよってことではなくて(笑)。“私はロックしかやりません”ってことではないですね。
― TOKIEさんからビギナーにアドバイスを送るとすると?
TOKIE 今はYouTubeなどで教えてくれる教材やフレーズの教材がいっぱいあって、それはすごく羨ましいんです。自分が楽器を始めた時に、“これがあったら良かったのに”ってすごく思うんです。でも、そこで完結しないでほしいなって。頭でっかちだったり、家で1人でカッコいいフレーズを上手く弾くだけで終わるんじゃなくて、最終的にみんなで大きな音で鳴らしてステージでライヴするまでを意識して、今頑張ってほしいなと思います。
― 逆に、プロとしてのTOKIEさんのこだわりを挙げるとすると?
TOKIE もう、こだわりはないですね。こだわらないほうがいいなと思ったんです。これからは、つまらないこだわりを捨てていかなきゃなと思っています。
― そう思うきっかけが何かあったんですか?
TOKIE きっかけというか、もうここまでやってきたし、今は好きにライヴもできない状況なので。お客さんが少なくてもライヴができるなんて、もうそれだけでありがたいなと思ってしまって。
― さて、今日はAmerican Professional IIを弾いていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
TOKIE American Professional IIのプレベとジャズベの両方を弾かせてもらったのですが、どちらと言うよりは総合してとても弾きやすかったです。私が一番嬉しかったのは、ハイポジションがとても押さえやすかった点。自分の機材で大きな音で鳴らしてみないと詳しい感想は難しいけれど、楽器のバランスも良く、ピックアップもバージョンアップしているということでとても期待しています。
― 今のところ期待大だと。
TOKIE そうですね。昔と比べると本当に音もバランスも良くなってきているなと思いましたね。American Professional IIはビギナーからプロまで、しかもジャンルも超えて使えると思います。
― なるほど。それでは最後の質問です。TOKIEさんにとってベースとは?
TOKIE 生涯の伴侶、ですね。
AMERICAN PROFESSIONAL II PRECISION BASS® は、60年以上に渡る革新、インスピレーション、進化を経て、現代のプレイヤーの要求に応えます。
TOKIE
93年にニューヨークへ渡り、イースト・ヴィレッジでアメリカやフランス出身のミュージシャンとともに“サルファー”を結成。96年の帰国後、さまざまなアーティストのサポートを開始。97年にはJESSE(Vo,Gt)、金子ノブアキ(Dr)とともにRIZEを結成。同年、UAと浅井健一らのAJICOに参加。
2001年にRIZEを脱退、AJICO活動休止後は中村達也(BLANKEY JET CITY)率いるロックジャムバンド“LOSALIOS”に加入。2006年、青木裕(Gt)、城戸紘志(Dr)とインストロックバンド“unkie”(アンキー)を結成。
2012年、EXILEのTAKAHIRO、GLAYのHISASHI、THE MADCUPSEL MARKETSのMOTOKATSU MIYAGAMIと“ACE OF SPADES”を結成。2013年には、それぞれに独立したキャリアを持ちながら世代をクロスオーバーした女性メンバーで結成したロックンロールトリオバンド“THE LIPSMAX”を結成。
個人としては、数々のアーティストのライヴやレコーディングに参加。近年かかわった主なレコーディングやライヴ、ツアーはTK from 凛として時雨、GLIM SPANKY、Caravan、Tourbillon、Baroque、布袋寅泰、井上陽水、安室奈美恵、清春、ゆず、長澤知之、清竜人、Char、Superfly、安藤裕子、Leyona、SUGIZO、Def Tech 他多数。
› Website:https://www.tokie-official.com