Special Column | American Vintage II 1966 Jazz Bass®︎

オリジナルスペックを追求し、50〜70年代を鮮やかに彩った名機たちを可能な限り忠実に再現したAmerican Vintage IIシリーズ。楽器業界のみならず、音楽シーンにも多大な影響を与えた名機たちの実像に迫りながら、American Vintage IIシリーズの魅力を紐解いていく。第5回は、American Vintage II 1966 Jazz Bassをフィーチャー。

過渡期に生まれたレアな仕様を再現したAmerican Vintage II 1966 Jazz Bass®︎

音楽そのものに革命をもたらしたPrecision Bass®の誕生は、ベーシストのプレイスタイルへも大きな変化を与えた。現代のポピュラー音楽は、レオ・フェンダーが考案した世界初のエレクトリックベースの誕生がなければ生まれなかったはずだ。Precision Bassは、まさに音楽史そのものを変容させた発明と言ってもいい。

51年に誕生したPrecision Bassの成功を受けて勢いに乗るフェンダー社は、フラッグシップモデルの開発にも乗り出した。その一つと言えるJazz Bassは、エレクトリックベースの最高級モデルとして60年に登場した。当時の価格はPrecision Bassよりも50ドル高い279ドル50セントだった。

Jazz Bassは、その名の通りジャズを演奏するベーシストに向けて開発された。当時のジャズシーンではウッドベースを手にするプレイヤーも多く、彼らをエレクトリックベースに転向させるための仕様が盛り込まれていた。

まずヘッドにはトランジションロゴが入れられ、べっこう柄のピックガード、クロムメッキの金属パーツなど、高級感のあるルックスに仕上げられていた。そして、ウッドベースに慣れたプレイヤーでも弾きやすいように、Precision Bassよりも狭いナット幅(※実寸では約38mm前後)が採用された。

さらにフロントとリアに二つのオリジナルのピックアップ(※一つの弦に対してポールピースが二つある)を配置したことで、並列で独立したブレンドができるため幅広いトーンバリエーションを生み出せる。また、各ピックアップのコイルを逆巻きにすることでそれぞれをフルにした時にPrecision Bass同様ハムキャンセル効果を生んだ。

発売当初は、スタックノブと呼ばれる内側がボリューム、外側がトーンを調整できる2軸のポットが採用されていたが、61年の後半頃から3ノブのコントロールへと変更され、現在までそのデザインが引き継がれている。他にも、63年の途中まではリアピックアップの後ろに取り付けるミュートが標準で取り付けられていた。

幅広いサウンドバリエーションと、高い演奏性を備えたJazz Bassは瞬く間に人気となり、時代ごとに少しずつ仕様を変化させながら進化していく。そして、スラップ奏法を生み出した一人(※スラップ奏法の元祖には諸説ある)であるラリー・グラハム、レッド・ツェッペリンを支えたジョン・ポール・ジョーンズ、エレクトリックベース奏法をさらに高めたジャコ・パストリアスやマーカス・ミラーなど、多くの伝説的なベーシストに愛され、数々の名演が残されている。

そんなJazz Bassは、華々しく復活したAmerican Vintage IIシリーズでももちろんラインナップしており、今回登場したAmerican Vintage II 1966 Jazz Bassは、特にマニアックな仕様のJazz Bassをリイシューしたモデルとして注目されている。

65年、フェンダー社がCBS(CBS Broadcasting,Inc.)へと売却されると、多くのモデルにさまざまな仕様変更が施された。Jazz Bassも例外ではなく、66年途中から指板にバインディングが施され、同年の後半にはポジションマークがドットからブロックへと変更されたため、それまでとは大きくルックスが変化していく。

そんな過渡期に生まれたレアな仕様を再現したAmerican Vintage II 1966 Jazz Bassは、通称“バインディング・ドット”と呼ばれ、製作期間が短いためオリジナルは入手が難しい。さらに注目したいのが65年後半から採用された、レース&オムステッド社が作っていたとされるパドルペグがリイシューされている点。まさに、この当時のJazz Bassそのままの雰囲気を味わえる。

木部の響きを生かすグロスのニトロセルロースラッカーが吹かれたボディにはアルダー材が使われ、3-Color Sunburst以外にもマッチングヘッド仕様のOlympic White、Sea Foam Green(オンラインストア限定)がラインナップしている。バインディングの施された指板は7.25インチラジアスが付けられたローズウッド指板で、メイプルのネックはヴィンテージを再現した66年仕様の握りやすいUシェイプ。弾き心地もオリジナルに近い感触だ。

当時のグレーボビンを再現した“Pure Vintage ’66 Single-Coil Jazz Bass”ピックアップを搭載し、指板にはバインディングが施されていることも相まって、サウンドはややタイトで抜けが良く、アンサンブルでも使いやすい。また倍音もまとまりがあるため、エフェクターやマイク乗りも良好で、レコーディングギアとしても重宝する。高いプレイアビリティと汎用性の高いサウンドは、DTMなどもポピュラーになった現代の音楽制作においても、きっと高いポテンシャルを発揮してくれるはずだ。

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第1回:American Vintage II 1951 Telecaster
第2回:American Vintage II 1954 Precision Bass
第3回:American Vintage II 1957 Stratocaster
第4回:American Vintage II 1966 Jazzmaster
第5回:American Vintage II 1966 Jazz Bass
第6回:American Vintage II 1972 Telecaster Thinline

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