B x B | 中尾憲太郎(NUMBER GIRL)× ナガイケジョー(SCOOBIE DO)-前編-
プレシジョンのほうがアンサンブルの一体感を生みやすい
日本を代表するベーシスト同士による対談企画「B×B」。ベースを始めたきっかけ、ベースという楽器が自分に与えてくれたもの、ベーシストとして常に心に描いている目標など、アーティストとしての内面に迫りつつ、Precision BassやJazz Bassの魅力、そして現在のフェンダーを代表する最新モデル“American Professional IIシリーズ”のインプレッションについてトークを展開。第3回目は、NUMBER GIRLの中尾憲太郎とSCOOBIE DOのナガイケジョーが登場。中尾はPrecision Bass、ナガイケはJazz Bassと異なるタイプのベースを愛用する両者。前編では、それぞれのルーツやベーシストとしてのお互いの印象を中心に話を聞いた。
どの現場にも74年製のJazz Bassを持っていく時点で頑固なんでしょうね(ナガイケジョー)
― お二人は当然、面識があるとは思いますが、いつからのお知り合いですか?
ナガイケジョー(以下:ナガイケ) もちろん面識はありますけども、そもそもの話で言うと高校時代にNUMBER GIRLを聴いていたので。
中尾憲太郎(以下:中尾) えっ!? それは初めて聞きましたね。
ナガイケ 本当ですか? 高校3年生の時に「透明少女」が収録されている…タイトル何でしたっけ?
中尾 『SCHOOL GIRL DISTORTIONAL ADDICT』(99年)か。
ナガイケ そうです! それを柏のレコード屋で買って聴いていました。
中尾 マジっすか?
ナガイケ ミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)、ブランキー(BLANKEY JET CITY)の流れでナンバーガールも大好きで。大学に入った時も、サークルに行くとNUMBER GIRLのアルバム『SAPPUKEI』(2000年)を良しとするか良しとしないかみたいな議論があって、“あれがわからなかったらお前モグリだぞ?”みたいな。それくらいみんなNUMBER GIRLを聴いていたし、僕もしっかり聴いていました。
中尾 本当すみませんでしたね。
― (笑)。お互いベーシストとしてどんな印象ですか?
ナガイケ もちろん、ピックで歪ませた音のベーシストという印象はあります。あと、エフェクターをすごくいろいろと使っている。そういう風に機材を研究する一方で、僕のベースをフェンダーのショウルームで弾いた時に、ピッキングがものすごく繊細な印象を受けて。こんなに細かくリズムとかを右手で作れるんだなって。しかも、コンプの効き具合もちゃんと耳で感じながら調整しているのを見て、すごく繊細なベーシストだと思いました。
中尾 どうかわからないですけどね(笑)。
ナガイケ 自分の出している音の細かい部分まで、ちゃんと把握しながら研究しているんだなと。今日も試奏を聴いていましたが、最初の一音で“この音はすごいな”ってなりますよね。
中尾 あはは。ありがとうございます。
― 中尾さんから見たナガイケさんは?
中尾 器用な音を出すタイプではないじゃないですか。俺の想像ですけど、頑固そうな人やなって。静かだけど、頑固そうな人やなって感じが好きなんですよ。
ナガイケ ありがとうございます。ただ僕もけっこう振り幅はあるつもりなんですけどね(笑)。
中尾 あはははは。
ナガイケ まぁでも、多少はサポートで呼ばれたりすることもあるんですけど、どの現場にも74年製のJazz Bassを持っていく時点で頑固なんでしょうね(笑)。
― あらためて、お二人のベースを始めたきっかけを教えてください。
中尾 “お前は背が高いからベース”って言われたのがきっかけです。高校の同級生でバンドを組む話になって、俺はゲームが好きで別に音楽に興味はなかったんです。だけど、横でバンドの話をしているのが何となく耳に入ってきて、いきなり“お前は背が高いからベース”って言われて“は?”って。当時はバンドブームで、クラスの中にいくつかバンドがいるんですよ。でも、ベースなんて誰もやりたがらないから、別のバンドにも誘われて。
ナガイケ “お前ベース持ってんだろ?”みたいな(笑)。
中尾 そう! 親父がいつも飲みに行くバーのお姉ちゃんにも、“ベースいないから入らない?”って高校卒業した後に言われて。それで入ったのが、ドラマーの有松益男くんと一緒のバンド。で、福岡に引っ越してナンバーガールに入るって感じです。
― ナガイケさんは?
ナガイケ 僕も高校に入って“ベーシストいなかったから”みたいな感じです。
中尾 その前は? ギターとかやってたの?
ナガイケ 何もやっていなかったですね。ただ、バンドは組みたいと思っていました。GLAYとかL’Arc〜en〜Ciel、JUDY AND MARY、THE YELLOW MONKEYとか、そういう売れているバンドをみんなが好きで聴いていたので。で、バンドをやりたいなって思った時に、ベースのほうが弾けるかな?と思ったんですよね。
― ギターよりも弦が少なくて、って理由ですよね?
ナガイケ えぇ。ちなみに、初めて練習した曲がMr.Childrenの「everybody goes」でした。今思うと、ファンキーでけっこう(フレーズが)動くんですよ。それから高校1年生の秋にミッシェルを聴くようになって、そこらへんからミッシェルの曲をコピーしたりして。
中尾 でもブリブリ系じゃないですか。
ナガイケ そうなんですよ。だから、その頃はピックで弾いていました。
― ナガイケさんと言えば指弾きですが、指弾きに移行した理由は?
ナガイケ デキシード・ザ・エモンズというバンドのサポートで、“センパイ”と呼ばれている岩島篤史さんという方がいて、彼がフェンダーのJazz Bassを水平にして弾くんですよ。小柄な方で、体ごとスイングしながら弾くんです。“こういう風に弾きたいなぁ”と思ったのは岩島さんの影響です。
― その影響でフェンダーを買う流れに?
ナガイケ そうですね。ベースを始めて1年、高1の時に買いました。フェンダーの2ノブタイプで、たぶんリイシューです。それが初めてのフェンダーですね。
中尾 高1にしてはけっこうな買い物だよね?
ナガイケ でも10万円くらいだったんです。楽器店の正月セールで買いました(笑)。
今はフェンダーのプレベが弾けてとても良かったなぁと思っています(中尾憲太郎)
― 中尾さんが最初に買ったベースは…他社ですよね?
中尾 まぁ、はい。高校時代はみんなアメリカのメタルバンドか、レッチリを好きなわけですよ。でも僕は“けっ!”みたいな天邪鬼が出て、結局そのままフェンダーは何となく買わなくて。“フェンダーが良いのはわかっている。でも癪(しゃく)”みたいな気持ちがあるけど、フェンダーのプレベの音を聴くと毎回いいなと思うという…。
― 前回のインタビューで、サウンド的にはフェンダーのプレベが一番好きだとおっしゃっていましたよね?
中尾 そうなんです(笑)。
― 素直になればいいのになぁ。
中尾 本当にそうなんですよ(笑)。だから今は、フェンダーのプレベが弾けてとても良かったなぁと思っています。
― 今回、試奏していただいたAmerican Professional II Precision Bassの印象を聞かせてください。
中尾 今までフェンダーをあまり使ってこなかったくせに、American Professional (前作)が出た時もIIが出た時も、めちゃめちゃインスタを見てチェックして、YouTubeでも音を聴きまくっているんですよ(笑)。アメプロI(前作)は色もかわいいし、“これ絶対に良いわ!”みたいな。で、今回IIが出て、やっぱりカッケー!って。この色(Mercury)もめっちゃいいですね。
― 弾きやすさはどうですか?
中尾 めっちゃ弾きやすい。弾きやすいというか、別メーカーのプレシジョンタイプも使っているくらいなので、プレシジョンが好きなんですよ(笑)。
― (笑)。そもそもの使い分けとして、ジャズベ/プレベで言うとプレベはどんな時に使っているんですか?
ナガイケ それ、意外と難しいんですよね。僕が持っているプレベのイメージだと、ジャズベよりも甘さが出るというか、ちょっと質感が柔らかいイメージで。ジャズベで攻めるよりも、プレベのほうが曲全体がまろやかになるイメージがあるんです。
― プレベってシティポップに使いたくなるようなイメージはありますが。
ナガイケ そういうイメージもありつつ、いわゆる中尾さんみたいなピッキングのアタックとミッドの音圧でカッコいい部分もあって。このAmerican Professional IIもそういう印象ですよね。さっき中尾さんが弾いている音を思いっきり聴いちゃったからかもしれないですけど。
中尾 プレシジョンのほうが、アンサンブルの一体感を生みやすいかもしれないですね。ジャズベのほうが、もうちょっと分離のいい音像を作りやすいかなと思っています。
ナガイケ 人によって捉え方が違うところもありますし。
中尾 どういうアンサンブルの中に入るかでまた全然違うからね。
― American Professional II Precision Bassはどういう場面で使いたいですか?
中尾 どういう場面というより、僕はプレシジョンが大好きですから。このプレシジョンでいろいろと工夫してみたいですね。EQを使って、ジャズベっぽいニュアンスの抜けの良さを作ることも多々あるので。これでいろいろな音に持っていきたいですね。
ナガイケ 楽器って、結局は弾く人で音が変わるから。自分の感情をいかにストレートに表現してくれる楽器を持つかが、すごく大事なことだと思うんです。僕の場合は、それがジャズベであることが多い。なので、プレベで上手く鳴らせる人はすごいなと思います。
中尾 真逆のことを俺は言うけどね(笑)。ジャズベで上手く鳴らせる人はすごいなぁって。
› 後編に続く
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中尾憲太郎
NUMBER GIRLのベーシスト。95年、福岡にて結成。メンバーは、向井秀徳(Gt, Vo)、田渕ひさ子(Gt)、中尾憲太郎 47才(Ba)、アヒト・イナザワ(Dr)。地元福岡でのイベント開催や、カセットテープの自主制作などの活動を経て、97年11月に1stアルバム『SCHOOL GIRL BYE BYE』をリリース。99年5月、東芝EMIよりシングル「透明少女」をリリースしメジャーデビュー。以後、3枚のオリジナルアルバムと2枚のライヴアルバム(うち1枚は解散後の2003年にリリース)を発表し、2002年11月30日に行った札幌PENNY LANE 24でのライヴをもって解散。2019年2月15日、再結成しライヴ活動を行うことをオフィシャルサイトにて発表。
› Website : https://numbergirl.com
ナガイケジョー
SCOOBIE DOのベーシスト。95年結成。2001年加入。メンバーは、コヤマシュウ(Vo)、マツキタイジロウ(Gt)、ナガイケジョー(Ba)、オカモト “MOBY” タクヤ(Dr)。ROCKとFUNKの最高沸点“Funk-a-lismo!”を貫くサムライ4人衆。“LIVE CHAMP”の名に恥じぬその圧倒的なライヴパフォーマンスと、完全自主運営なインディペンデント精神が多くの音楽ファンに熱烈な支持を受けている。2019年7月リリースの『Have A Nice Day!』までに、14枚のオリジナル・アルバムなどを発表。また、ベース・マガジンでの連載コラムをまとめた書籍『ベーシストの名盤巡り 低音DO』も上梓している。
› Website : http://www.scoobie-do.com